代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2014年版

合理的なのに愚かな戦略

 セブン&アイ・ホールディングスの社外監査役で、立命館大学大学院経営管理研究科教授でもある著者が書いた企業戦略論。書名通り、合理的に理詰めで戦略を検討して行ったら、どう考えてもこの戦略にならざるを得ないというほど考え抜かれた戦略であっても、愚かな戦略だと言われることがあるという指摘かと思って読んでみたが、そうではなかった。有名企業の優秀な経営者であっても、不合理な判断をすることがあるという話だ。一見正しいような、顧客の声を聞き、おもてなしをするといったことをしているだけでは生き残れないという事例や、しがらみを断ち切るのは難しい、過去の成功体験が合理的な判断を阻害する、といった事例が挙げられていて、合理的なのに愚かなのではなく、合理的だと思っても実はそうではなく愚かだったという指摘である。
 そもそも合理的に考えるだけでは、他社も同じような結論になってしまって、戦略とは呼べないものになる。だから本書のタイトルを私がつけ直すなら「合理的だから愚かな戦略」としたいところだ。すると次には、何をもって合理的と言うのかが、事業内容や環境変化、競合状況などによって変わるので、これまたなかなか難しい。
 本書は、合理的に戦略を立てようと思っても、そう簡単にはいかないよという警告の書としておすすめ。実例も多くて参考になるだろう。じゃーどうすればいいかは、本にするのは難しいな。だから戦略は面白い。タイトルと中身は違うが、戦略の通説を疑ってみるキッカケとなる本。

著 者:ルディー和子

出 版:日本実業出版社

金 額:1700円




デザインコンサルタントの仕事術

 世界的なデザインファーム、“frog”の常識を破壊するノウハウを開陳するという一冊。私は経営コンサルタントであり、デザインを「第5の経営資源」と考え、デザイナーを「第5の経営顧問」とすべきであると考えているので、邦題にやられた。経営コンサルタントではなく、戦略コンサルタントでもなく、デザインコンサルタント???なに、それ、面白そうじゃないか。さらに帯には「戦略コンサル本はもういいと思っているあなたに」なんて推薦文が入っている。そうそう、もう戦略論は聞き飽きた。そんなにすごい戦略が立てられるなら、何年も赤字が続いているなんていう大企業は存在しないはずだろうと思う。と、期待感大で読んでみたが、ちょっと趣旨が違った。
 原題は、DISRUPT。崩壊させる、破裂させる、粉砕するといった意味だ。副題は、Think the Unthinkable to Spark Transformation in Your Buisiness.企業改革のためには、考えられないことを考えろ・・・。要するに、既成概念を打ち破り、常識をぶっ壊せ!という本だった。それを可能にするのが、デザイナーであると。まぁ思っていた内容とは違ったが、過激な主張が面白かったし、参考になる点もあった。論理的、客観的に分析し、戦略を打ち立てるという決まりきった手法、進め方だけでは打破できない障壁を乗り越えるためには、非論理的で、感覚的なデザインの力を使ってみると良い。
 我々はそうした取り組みを、Designed Corporationと呼び、企業経営をデザインし直すという提言をしているが、本書は、そうしたグラフィック(見た目改善)だけで終わらないデザインの可能性を感じさせてくれる一冊である。企業をデザインしてみよう。経営をデザインするとはどういうことか考えてみよう。

著 者:ルーク・ウィリアムス

出 版:英治出版

金 額:1600円




まんがで身につく孫子の兵法

 孫子の兵法ってどんなものだろう、孫子を読んでみたけど難しくてよく分からなかった、何千年も前のことを今更勉強しても意味がない、と孫子に対して懐疑的、否定的だった人に、是非読んでもらいたい孫子本である。古典の孫子をそのまま漫画にしたのではなく、現代のビジネスストーリー漫画の中に孫子の兵法がちりばめられているから、実践応用がイメージしやすい。
 漫画のストーリーも面白いし、ちょっと涙が出そうになる感動シーンもあり。どこの会社でも「ある、ある」と言いたくなるようなエピソード、次々に現れる強敵、難敵。それに対して孫子の兵法で立ち向かい、問題を解決していく。
 そして、孫子兵法家による分かりやすい解説つき。孫子兵法家とは私のことだ。だから当然分かりやすいし、参考になること間違いなし。漫画本でありながら、孫子の読み下し文もきちんと掲載。現代のビジネスに応用しながらも、そもそも孫子が何と言っていたのかもしっかり勉強できる。
 漫画を読んで、孫子に対する興味が湧いたら、巻末の解説編を読んで理解を深めると良い。そこでさらに孫子を勉強したいなと思ったら、一般の孫子本を読もう。私の「孫子の兵法 経営戦略」でもいいし、孫子兵法サイトを読んでもいい。
 孫子って何?という若者や古典嫌いにも、孫子を読んだことがあるけど活かせていないという方にもおすすめ。孫子の兵法で厳しい時代を勝ち抜こう。

著 者:長尾一洋+久米礼華(漫画)

出 版:あさ出版

金 額:1200円




楽天流

 楽天の三木谷会長兼社長による経営論。Googleに続いてインターネット企業楽天についてお勉強してみた。読んでみると、いかに楽天が素晴らしいか、いかに著者が既成概念をぶち壊すイノベータ―であるかが、かなり強い調子で訴えられている。よくこんな自画自賛の本を出せるな、人材採用向けに書かれた学生向けの本かな、と思いながら読んでいたのだが、あとがきに、「本書は、“Marketplace3.0 : Rewriting the Rules of Borderless Buisiness”と題して、海外向けに英文で先行発売した」ものであると書かれていた。なるほど、海外向けに楽天および三木谷浩史を知ってもらおうという狙いであり、そもそも英語で書かれたものの日本語訳であれば、この論調は理解できる。やはり日本語は謙虚で自己主張しない言葉なのだなと改めて思う。Marketplace3.0とはよく言った。自信の表れだろう。
 さすが、英語を社内公用語にする楽天だ。本書の内容そのものよりも、この本が海外向けに書かれたものであることが参考になった。Amazonやアリババ、Googleなど巨大ネット企業がうごめく世界で渡り合うには、これくらいの自己主張が必要だろう。人口減少で沈みゆく日本国内でチンタラやっていてはダメだなと考える経営者、ビジネスマンは読んでみるといいだろう。2013年に英語で出たものを日本語にしてもらって、2014年の暮れに読んでいるようではダメだな、と気付くはずだ。私もそうだが・・・。

著 者:三木谷浩史

出 版:講談社A

金 額:1500円




How Google Works

 グーグルの元会長とラリー・ペイジCEOのアドバイザーによるグーグル流経営本。サブタイトルは、「私たちの働き方とマネジメント」。若い創業者たちをサポートしたベテランたちによる回顧録。今どきの若いベンチャー起業家はこんなことを平気でやっているから、気を付けてねと警鐘を鳴らしてくれているようだ。グーグル自体やIT系のベンチャー起業に興味のある人には、とても面白いだろうが、一般の企業にはほとんど参考にはならない。「そんなことができるくらいなら、今こんな苦労はしてないよ」と感じて終わり。だが、それをグーグルはやった。著者たちは決して若くはないが、若者たちに交じって一緒にやった。普通の企業の人たちはやっていない。やる前から諦めている。その差が、一般企業とグーグルの差になっている。
 読む人にとっては、とても参考になり、読む人にとっては、グーグルと自社を比べてイヤになる本だろう。一般企業の人が読む場合、357ページまで頑張って読んで、「おそらくいま、どこかのガレージ、学生寮の一室、研究室、あるいは会議室で、勇ましいビジネスリーダーが数人の熱意あるスマート・クリエイティブのチームを集めているだろう。もしかするとそのリーダーはこの本を手にしているかもしれない。そして私たちのアイデアをもとに、いずれグーグルを蹴落とすような会社を作るかもしれない。バカげていると思うだろうか。しかし永久に勝ちつづける企業はないことを思えば、これは必ず起こる。」という箇所を何度も読み返そう。その時、ワクワクするか、やっぱり諦めるかで、自分の起業家としての適性を試してみると良いだろう。ちなみに著者たちはワクワクしているそうだ。

著 者:エリック・シュミット+ジョナサン・ローゼンバーグ+アラン・イーグル

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1800円




実践版 孫子の兵法

 ここのところ、孫子兵法家も読むのに疲れてしまうほど孫子関連本が出る。どうやら孫子ブームである。他の人がどういう解釈をしているか、「彼を知る」ために一応読んでおこうとは思うのだが、多過ぎる。本書はその中でも、天下のプレジデント社から出て、帯にはSBI北尾吉孝社長の推薦文が本人の写真入りで付いていて、孫子兵法家として読まないわけにはいかない。実は、もうすぐ私の孫子本「まんがで身につく孫子の兵法」(あさ出版)が出るから、タイミング的にも競合している。これは読むしかない。著者は1972年生まれの経営コンサルタント。若いな・・・。自分を若い若いと思っていたら、最近は年下の著者も多い。後生畏るべし。
 著者の「孫子そのままの解釈ではなく、孫子を道具として使うとすれば、いま何ができるかを分析した」という気概や良し。いくら孫子が素晴らしい戦略書だと言っても、2500年も前のものだ。それをそのまま現代語に訳すだけでは応用が利かない。現代のビジネスに合わせた著者なりの解釈があるのはいい。だが、頼むからせめて読み下し文は入れておいて欲しい。孫子を素材としている以上、そもそも孫子がどう言っているのかは知りたい。その上で、それを現代に応用する。そうでなければ、古典を持ち出す必要もなくなる。だから私の孫子本は、マンガなのに解説には読み下し文入り。いくらマンガにしたと言っても元々の孫子の言葉を伝えたい。漢文そのままは読めないだろうから、日本語読み下しだ。
 そして本書は、現代語訳に、大御所、守屋洋先生のものをそのまま使用。プレジデント社つながりだからかな。守屋先生の訳は現代語が自然で読みやすい。要するに意訳が大きい。だから孫子の原文があれば対比して読みやすいが、本書には原文がなく、守屋先生の現代風の孫子しかないから、孫子兵法家にはちょっと辛い。私なら、金谷治先生や浅野裕一先生の、読みにくいけど原文に忠実な訳を参考にしたいところだ。あぁ、本書は、「兵とは詭道なり」と説いた孫子の本なのに、あまりに王道、正攻法をとってしまったようだ。
 天下のプレジデント社から、今や東洋思想家の様相を呈する北尾社長の推薦文付きで、中国古典の大家、守屋洋先生の現代語訳を元にして孫子を語る、まさに王道。
 それに対して、孫子兵法家である私は、「奇を以て勝つ」。出版社は、失礼ながらプレジデントより小さい目のあさ出版。そして孫子なのにマンガ。おまけに主人公は27歳の女の子。当然ながら孫子は、私の読み下しと現代語訳つき。奇法である。孫子兵法家である私は、「善く奇を出す者は窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し」で行く。実に面白い。そういう観点で、本書と私の「まんがで身につく孫子の兵法」を読み比べていただくと更に面白いはずだ。
 本書の最後にある、著者の超訳が孫子のエッセンスを分かりやすく伝えるものになっていたのは、何だか皮肉な話だが、なかなか良かった。

著 者:鈴木博毅

出 版:プレジデント社

金 額:1500円




賢く生きるより、辛抱強いバカになれ

 iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥先生と京セラ稲盛さんの対談本。ノーベル賞受賞の前から京都賞ですでに縁があったそうだ。稲盛さんの話は勉強になるけれども、いつも京セラフィロソフィーの話で、新ネタは出てこないので、最近は本を読むこともなくなっていたが、山中教授との共著(といっても対談だが)ということで読んでみた。そもそも、タイトルがいい。だが、タイトルでどんなことが書いてあるか予想がついた・・・。
 予想通り、小賢しく要領よく生きるのではなく、一つことにバカになって辛抱強くやれ、という内容。ノーベル賞をとるだけあって山中教授のVW(ビジョンとワークハード)もすごい。どうせやるならおもいっきり高いところを目指す。そして3倍やる。3倍やれば3倍はやく実験が進む。当たり前の原理だが、それをやり切ったからこそ若くしてノーベル賞をとったわけだが、それを軽々と超える愚直ぶりが稲盛さんだ。「山中君、まだまだ甘いね」という声が行間から聞こえてくる。研究をマラソンに喩え、一気に全力で走らずにペース配分が大切だと言う山中教授に対して、常に100メートル走でやってきたと。全力疾走でなければ勝てなかったと。ノーベル賞学者をつかまえて、「まだまだ若いな。これからまだまだ君は伸びるよ」と、53歳のおじさんを子供扱い。歳も親子ほど離れているが、まさに別格なハードワーカーぶり。さすが平成の“経営の神様"である。前にも読んだような話なのに、改めて感動する。
 人並みの努力で、人より良い人生にしたいと考えていたり、努力もせずに、人並みに生きていきたいと考えている人に是非読んでもらいたいが、きっと刺激が強過ぎるだろう。マラソンの距離を全力疾走するかどうかは議論も分かれるだろうが、人生のどこかでは、一定期間でも全力疾走しないと人並み以上の成果は出せないということは間違いない。それを思い知る一冊。良著。

著 者:稲盛和夫+山中伸弥

出 版:朝日新聞出版

金 額:1300円




問題解決のあたらしい武器になる視覚マーケティング戦略

 ヒトが得る情報量の90.9%は視覚によるという研究に基づき、その視覚に訴えることの重要性を説く。人は視覚から得る情報によって錯覚を引き起こし、その感覚のシミュレーションを体験するという、トール・ノーレットランダーシュの「ユーザー・イリュージョン」から着想を得たようだ。本書で言う「視覚マーケティング」と他でも言われている「デザインマーケティング」や「ブランドマーケティング」などとの違いが今一つよく分からなかったが、要するに「見た目」「デザイン」が重要だということ。本書は、ノンデザイナー向けのデザイン戦略入門として書かれている。ノンデザイナー向けと銘打つくらいだから、素人にも分かりやすくかかれており、巻末には、素人向けに「デザインのこれだけはやってはいけない」という付録もある。たしかにやってしまいがちで、参考になる。
 著者は、三菱電機、日清食品、服部セイコーなどのデザインを手掛けるデザイナー。「視覚マーケティング」の提唱者だそうだ。せっかく中身が良くても見映えが悪くて手に取ってもらえない、価値を感じてもらえない商品は多い。会社自体もそう。特に知名度、実績のない小さな会社ほど、「あぁ、その社名聞いたことがある」なんてことがないのだから、デザインは大切だと思う。「見た目が9割」とかいう本もあったな・・・。見た目はいいけど、中身がイマイチというのでは冴えないが、見た目はいいに越したことはないので、本書を読んで視覚マーケティングに取り組んでみてはいかがだろうか。

著 者:ウジトモコ

出 版:クロスメディア・パブリッシング

金 額:1580円




「ザクとうふ」の哲学

 6年間で売上を4倍に伸ばしたという、「ザクとうふ」を作っている豆腐屋さん、相模屋食料の社長による経営哲学本。著者は1973年生まれ。早稲田を出て雪印を経て、先代の娘婿さんとして相模屋食料に入社したという若い社長さんだ。相模屋だけど、会社は群馬にある。業界の常識を打ち破り、ムリだ、出来ない、と言われる工場新設や豆腐製造の機械化に果敢に取り組んだストーリーで、なかなか面白い。儲かる商売、景気のいい業界があるのではなく、儲かる経営、景気に関係なく伸びる会社があるというお手本だ。事業構造、収益構造を考え、儲かる仕組みを確立する際の思考過程が参考になるだろう。そして、その構造を確立するためにリスクを負って勝負に出る。現状に甘んじ、業界の常識に凝り固まっている経営者は是非読んでみるといいだろう。
 今度、ザクとうふ食べてみようと思う。

著 者:鳥越淳司

出 版:PHP研究所

金 額:1400円




戦略は1杯のコーヒーから学べ!

 「100円のコーラを1000円で売る」シリーズで50万部を超えるヒットを生んだ著者による戦略解説ストーリー本。今度はコーラではなくコーヒー。コーヒー業界を例にして戦略立案、主に差別化を学ぶ内容。ストーリー形式なので楽しく読めるが、他社のモノマネ、後追いではなく、自社なりの戦略を考える時のヒントになるポイントがうまく散りばめられていると思う。
 100円コーラシリーズもそうだったが、ちょっと登場人物のキャラがコテコテというか、泥臭いというか、発する言葉にちょっと違和感があったりするが、その分、キャラが立って分かりやすいのかもしれない。コーヒー業界の話ではないが、ユーカリが丘を開発している山万という会社の紹介もあって、この会社の長期戦略は是非参考にすべきだ。どこの会社も短期的な利益を狙い過ぎる。しっかりした経営コンセプトと長期戦略が必要であることが分かるだろう。
 著者は元々IBMに勤めている人だったが、2013年に退職し、今はオフィス永井の代表。あれだけ本が売れると仕事も入っているだろうから、サラリーマンの立場では難しかったのかもしれない。
 戦略の小難しい本を読むのはイヤだけど、やっぱり戦略を考えないといけない、という人は本書を読んでみるといいだろう。コーヒー業界の構図を自分の属する業界に当てはめてみると、頭の中が整理されるのではないか。

著 者:永井孝尚

出 版:KADOKAWA中経出版

金 額:1400円




USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?

 書名にまったく興味が持てず読む気もなかったのだが、NHKの「プロフェッショナル」で著者が紹介されていたのを見て本書も読んでみた。テーマパークに行くこともないし、映画ファンということもないので、USJがどうなっているのか大して興味はなかったが、当初の第三セクターは2004年に破綻し、経営再建されたそうだ。大阪市民の血税が結局米国資本のものになってしまったのではないか?と余計な心配をしたくなるが、本書とは関係ないのでそれは置いておこう。
 著者は、その再建中の2010年にマーケティングの責任者として入社した人。元々はP&Gでヘアケア商品のマーケティングをやっていたそうだ。データを客観的に分析して、やると決めたらリスクをとって成果を出すために全力を尽くす。当たり前と言えば当たり前のことだが、多くの企業が、本当にここまで考え、必死になって努力をしているのか、振り返ってみるには良い本だろう。USJでも既成概念、過去の成功体験によって新しいチャレンジを受け入れない風土があったと言う。その事例の一つが本書のタイトル、ジェットコースターを後ろ向きに走らせるというアイデア。金もかけずに集客を伸ばすためには、そこまで考えないといけなかったと著者は訴える。単なる思い付きだろうと批評するのは簡単なことだが、ちょっとやってダメならすぐに諦めてしまう多くの人には見習うべき点があるはずだ。かく言う私も、まだまだ考えが足りないな、努力が足りないなと反省させられた。
 特殊な業態であり、一定の規模と知名度もある上での話なので、中堅・中小企業などがそのまま使える事例はないが、その取り組み姿勢や、成果を出す執念などは大いに参考になるだろう。

著 者:森岡 毅

出 版:角川書店

金 額:1400円




社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話

 STORYS.JPというサイトで殿堂入りしたという、ライブドアの元社員が書いたライブドアストーリー。著者はライブドアで開発業務をしたり、出戻りして人事をしたりしていたという人。現在はベネッセコーポレーション勤務。ホリエモンを通じて語られることの多いライブドアの中がどうなっていたのかを社員目線で見せてくれる。ライブドアが日本のインターネットビジネスにどれだけ貢献したのかはいまいちピンと来ないが、OBは各方面で活躍しており、今話題のLINEを手掛ける主要メンバーも元ライブドアだったりするそうだ。
 ライブドアがハチャメチャな会社であったことは予想した通りだったが、本書は思いのほか仕事への情熱に満ちた熱い本だった。自分が良かれと思う仕事、自分が楽しいと思える商品やサービスを、自ら進んで楽しんで行く仕事働楽がこれからの働き方になるのだろうと感じさせてくれる一冊。ホリエモンのスキャンダラスな内容は一切書かれていませんので、そこに興味がある方は期待を裏切られるでしょう。

著 者:小林佳徳

出 版:宝島社

金 額:1200円




経営はデザインそのものである

 タイトルがいい。経営をデザインという切り口で考えてみる。または、企業そのものをデザインすると考えてみる。デザインと言っても、いわゆるデザイン、意匠、グラフィックデザインとは違う。従来のデザインが、図案化であり空間配置でありカラーリングであったとすると、私が考えるデザインは少し違う。「構想を具象化し可視化して相手に何らかの意図や価値を伝えること」と定義したいのだ。これらは似て非なるものである。経営をデザインすると考えれば、「企業の構想を具象化し可視化し、その意図や価値を社内外に向けて伝えること」となる。常日頃、そう考えているので、この本のタイトルに惹かれた。
 やっぱりタイトルがいい。そうなんだよ。まさにそういうことなんだよ。しかし「経営はデザインそのものである」とまで言い切ったか・・・。やるなぁ~と思った。経営をデザインするのではなく、経営はデザインそのものなのだ、と。一体どんな提言があるのか、とワクワクして読んでみた。
 うーん、期待が大き過ぎたか・・・。従来のデザインと何がどう違うのか、イマイチよく分からない。デザインの大切さや、経営にデザインを持ち込むべきであり、それによってビジョンを見える化し、共感を得なければならないという話はいいのだが、ではそれをどうすればできるのか、ちょっと分からない。事例もあるが、経営がデザインそのものである、と言うなら、その事例企業の経営はデザインでなければならないのだろうが、従来のロゴやマークをデザインしてブランド化していこうという話との違いが見つけられない。
 だが、タイトルがいい。タイトルからインスピレーションを得て欲しい。経営をデザインしよう。企業をデザインしよう。それが経営なのだ。経営とはデザインだ。

著 者:博報堂コンサルティング+HAKUHODO DESIGN

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1800円




孫子に経営を読む

 東京理科大学大学院イノベーション研究科教授、一橋大学名誉教授である著名な経営学者が孫子の兵法を企業経営目線で斬ったというので、孫子を企業経営に活かす「孫子兵法家」を名乗っている者としては読まないわけにはいかない。
 Amazonを見たら、「従来の『孫子』の解説書は、軍事研究者、中国研究者が当たることが多く、戦略を熟知した経営学者が真正面から解説することはありませんでした。本邦初の対決をお楽しみください。」と書いてある。おいおい、確かに軍事関係や中国文学者が多いのは間違いないが、俺を忘れてないか?と少々腹立たしかったが、まぁ経営学者ではないので、許すことにした。
 読んでみると、孫子の一節がタイトルに来て、孫子の読み下しがあり、経営的な解説という作り。おいおい、これはどっかで見たカタチだぞ。そう「孫子の兵法 経営戦略」と同じじゃないか!と思ったが、参考文献にちゃんと書いてあったので、許すことにした。
 やはり孫子をただ現代語訳するのではなく、そこから経営への応用解釈をするのが良いと思う。孫子の言っていることは、現代の経営に当てはめるとこう考えたらいいよというサジェストがあるから生きた兵法になる。これぞ兵法家。ただちょっと高名な先生だけにご自分でも書かれているが、少々小難しい解釈なので、私の「孫子の兵法 経営戦略」の方が分かりやすいとは思うが・・・(笑)。
 古典としての孫子を研究したい人は、本書でも訳本として使われている金谷治先生の岩波文庫や浅野裕一先生の講談社学術文庫を読むと良いだろう。兵学者を目指すのではなく、兵法家として孫子を実践に活かしたいなら、本書や拙著を読むことをおすすめする。

著 者:伊丹敬之

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1600円




「好き嫌い」と経営

 「ストーリーとしての経営戦略」で有名になった一橋大学大学院教授による経営者インタビュー集。有名経営者に「好き嫌い」を聞いていく。経営者は「良し悪し」で動くのではなく、「好き嫌い」で動いていると言う。そして、「事業コンセプトの創造は、論理演繹的なプロセスというよりも、その経営者の直観やセンスとしか言いようがないものにかかっている」とする。確かにその通りだと思うし、結果的にそうなっているというよりも、むしろそうするべきだと私は考える。特に中小企業はそれでいい。それがいい。
 ということで、本書を読んでみたわけだが、出てくる会社は上場企業ばかりで、そうした経営者の「好き嫌い」の話はなかなか聞けない内容でおもしろいが、それが戦略にどうつながっているのかまでの落とし込みはなし。登場するのは、日本電産、ファーストリテイリング、ローソン、サイバーエージェント、スタートトゥデイなどなど。創業者が多いので、上場していても好き嫌いでいいと思うが、その後はどうかな。好き嫌いからスタートして、好き嫌いを超越したビジネスモデルを確立するというストーリーが欲しい。
 とはいえ、経営者、後継者、起業家志望の人は読んでみるといいだろう。経営者のキャラクターが経営に影響しているのも参考になるだろうし、何より、好き嫌いでビジネスを考えていいという気付きを得て欲しい。大したシェアもない中小企業は、好きこそものの上手なれで、好きなことを真剣にやる経営がいい。それを戦略的にやるにはどうするかは、本書を読むだけでは分からないかもしれないので、その場合は、ご相談ください。

著 者:楠木 建

出 版:東洋経済新報社

金 額:1600円




熱く生きる

 天皇陛下の心臓手術の執刀をしたことで有名になった順天堂大学の心臓血管外科医が語った「医師道」の本。土井英司さんのビジネスブックマラソンで紹介されていたので、読んでみた。タイトルに違わず熱い本だ。プロとして、「医師道」を究める求道者として、どうあるべきかをシビアに語った本である。だが、きっとビジネスブックマラソンで紹介されていなければ読んでいなかっただろう。土井さんに感謝。
 毎日かなりの数の手術をこなし、さらに緊急の手術などに備えて病院に泊まり込んでいるという。自宅に帰るのは土曜日の夜。そして月曜日からまた病院。世のため、人のために生きているから、当然のようにそうしているのだそうだ。熱い。さらに「自己犠牲の気持ちを持たなければ、信用されることはない」「思いがあれば、3倍の努力は当たり前だ」「受けた恩に報いるために、最低20年は世の中のために働く」などの熱いメッセージが溢れている。
 私は、「医療に限らず、自分で選んだ仕事をしていて自分の行っていることに『飽きる』という感覚があるとしたら、中途半端に妥協していることにほかならない。」という指摘に己を振り返ることができた。「このぐらいでいいだろう」という甘えがあるのではないかとさらに突っ込まれた。そして先生は「自分の行っている仕事につねに完璧な完成度を目指し、そこをひたすら求めていく限り、飽きるということはまったくない。」と言い切る。長くやっていて、ちょっと結果も出たりすると、ついもういいだろう、これくらいのものだろう、俺も頑張っているという自己満足に陥りがちだ。これには気を付けたい。
 プロフェッショナルな仕事をしたいと考えている人は必読。それ以外の人にはちょっと火傷しそうなほど熱い。良著。

著 者:天野 篤

出 版:セブン&アイ出版

金 額:1600円




競争優位の終焉

 ポーターの競争戦略はもはや通用しないという指摘。著者はコロンビア大学ビジネススクール教授。「持続する競争優位」を確立することは無理だから、「一時的な競争優位」に基づいて、どういう経営をすべきかを考えよという内容である。そもそも本書でも指摘しているが、競争戦略とは業界内での相対的な競争であり優位性を競う概念であって、今現在、業界の垣根を越えた複雑な競争が当たり前になっている時代に不適合である。それが持続するか一時的なものかというよりも、どのような優位性を構築するのかより重要である。その点について本書に有効な指摘がないのは残念だ。
 変化が激しく、業界の枠組みも固定的ではないために、必要となるのが、「仮説指向型思考」だと言う。こちらが著者の元々の主張のようだ。これには同意する。変化が当たり前、常態化するならば、如何なる戦略も経営計画も仮説に過ぎない。日々の経営は仮説検証だ。これを我々は「可視化経営」というコンセプトで提示してきた。そして、それを実践するには、「耳が痛い情報をあえて求める」ことが大切だと本書では説く。これもまさに「現場の見える化」であって、トップマネジメントが現場の情報をバイアスなしで「見る」ことが仮説検証を実行する鍵である。本の帯に、C.クリステンセンが「競争について、私が読んだ本の中でも珠玉の一冊だ」とコメントしていたので、過大な期待をして読んだが、それほどでもなかった。だが、未だに業界、同業種の中での相対的競争意識から抜け出せない経営者が多いから、そういう人には是非読んでもらいたい。

著 者:リタ・マグレイス

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:2000円




営業のゲーム化で業績を上げる

ゲームの仕組みや人を惹きつける力をゲーム以外のことに応用する「ゲーミフィケーション」を、営業という仕事に適用した解説本。一年前に、「仕事のゲーム化でやる気モードに変える」という本も同著者で出していて、シリーズの2作目。前作の仕事全般のゲーム化から、本書では営業にフォーカスしたものとなっている。より具体性が増し、実際にゲームを進める手順や事例も細かく書かれている。
 営業はきつい、営業は大変な仕事だ、とネガティブに捉えられることの多い仕事だけに、ゲーム化することの効用は大きい。もちろん営業は業績に直結する部分であり、企業経営全体を考えても、まず取り組んでみるべき領域だろう。だから、本書のサブタイトルは「成果に直結するゲーミフィケーションの実践ノウハウ」となっている。
 何を隠そう、本書は、私と弊社の清永の共著であり、良い本に決まっている。営業ならではの課題をクリアするゲームの事例は、数多くの営業現場を見てきた我々だからこそ書ける内容だと自負している。そして、もちろんゲーム化だけですべてが解決するわけではないから、その限界の超え方も解説した。営業マンにもっとやる気を持ってほしい、もっと前向きに営業に取り組んでほしい、顧客に喜ばれる営業という仕事をもっと楽しんでほしいと願う、すべての企業におすすめである。経営者、営業責任者必読。営業マネージャーさんも是非。

著 者:長尾一洋 + 清永健一

出 版:実務教育出版

金 額:1800円




会社が消えた日

 2011年3月に上場廃止となり、10万人の社員を抱えていたにも関わらず消滅してしまった三洋電機。なぜそうなってしまったのか、日経ビジネスの記者として、日経新聞の編集委員として三洋電機を見てきた著者が明らかにする。創業家親子、救世主として登場したジャーナリスト、翻弄される社員。登場する人たちはそれぞれ頑張っていて、可哀想にもなるが、会社がつぶれるにはそれ相応の原因があるということがよく分かる。そして、元々兄弟会社でもあるパナソニックが、救済したはずなのに、9千人を残して、売却してしまう。すっかり悪者だが、パナソニックの側に立てば、それもまたビジネスの必然。甘いことを言っていては自社も危ない。
 企業とそこで働く人たちは一心同体。つぶれる原因を作るのも人なら、成長のエンジンとなるのもまた人である。勤めていた会社が行き詰まれば、決して他人事では済まず、その会社にいた事実は消せない。会社が消えて以降の日々を紹介されている人も何人かいるが、ここで著者の取材を受けているような人はまだ恵まれた人だろう。取材の声もかからず、取材されてもとても人には言えないような事情を抱えている人が実際には多いのではないか。
 本書を読んで、社員も経営者も危機感を共有できるといいと思う。10万人もの社員を抱えていた会社も消えてなくなる。それでは自社はどうなのか?と一緒になって考えてみるといい。勤めていた会社が倒産して良いことになった人はいない。経営者はもちろん、社員もだ。

著 者:大西康之

出 版:日経BP社

金 額:1600円




日本の存亡は「孫子」にあり

 元防衛庁情報本部長が書いた孫子兵法解説書。いかにして中国の横暴を孫子の兵法で食い止めるかが書かれている。サブタイトルは、「中国は孫子の兵法で日本を征服しようとしている。日本も孫子に学び、これに打ち勝たねばならない。」というもの。防衛大学を出た軍事の専門家だけに、孫子の解説も生々しくて興味深い。また事例も古代の戦史や日本の戦国時代の話ばかりでなく、現代の中国と日本の間の紛争などが取り上げられていてリアルである。改めて、2500年前から伝わる孫子の兵法が現代の国や組織の在り方にも応用できるのだということを実感できる。
 孫子の解説も全文ではないが、とてもわかりやすく書かれている。中国文学の先生による古典解釈とはちょっと違った趣きの孫子兵法である。ただ、剣道のたとえも出てくるのだが、剣道をやっていない人にはちょっと伝わりにくいように感じた。
 国同士は今もなお国益のため、領土拡張のために、せめぎ合っているのだということを知るためにも参考になるだろう。中国とどう戦うかは別にして、これからの日本を考えていくためには孫子の兵法くらいは知っていなければならない。孫子を学ぼう。

著 者:太田文雄

出 版:致知出版社

金 額:1800円




ツイッター創業物語

 ニューヨーク・タイムズの記者が書いた、ツイッター創業にまつわるストーリー。かなり細かい取材と長時間のインタビューによって、創業メンバーたちの心情や言動が明らかにされている。ブログの延長線上のちょっとした思い付きが世界中を席巻するSNSの代表格になった。しかしそのプロセスは、よくこんな経営で成長できたなと思うほどの杜撰さだ。さすがアメリカ。ベンチャーをサポートする仕組みや資金供給がある。今になって思えば、ツイッターをやり始めた頃は、サーバーが止まることが多かった。それはなぜかが本書を読めば分かる。
 サブタイトルは「金と権力、友情、そして裏切り」。仲間を裏切り、裏でコソコソと画策する辺りも細かく書かれていて、野次馬根性は満たされるが、気分の良い話ではない。
 だが、私はTwitterを利用している。余計な機能がなくて、シンプルなのがいい。米国政府の情報開示要求にも抵抗しているらしい。この体制に迎合しない点もオタクっぽいが、腹の括り具合がベンチャーらしくていい。つぶさないように頑張って欲しいものだ。
 起業家志望の人は是非読んでみるといいだろう。社員の集め方や組織を大きくする時にぶつかる人の裏切りなどを予行演習できる。Twitterユーザーでもない、普通の会社の人にはあまり参考になりそうにないので、他を読みましょう。

著 者:ニック・ビルトン

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1800円




暴露 スノーデンが私に託したファイル

 アメリカの国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)の機密情報をリークした、エドワード・スノーデンの情報公開を支援したジャーナリストによる暴露本。スノーデンとのやり取りや、情報公開後の顛末などが詳細に語られる。ハッキリ言って、個人的なやり取りには興味がないが、暴露された情報の中身が問題だ。ネット上のやり取りや電話の会話など、米国の主要IT企業の協力もあって、NSAやCIAがすべてつかんでいるという。もちろん、それらの諜報は米国以外の国にも及ぶ。当然日本もだ。こうした国家権力対、元職員、シャーナリストの戦い。本書を読むと、ここまでやるのかと驚くと同時に、こうした暴露本が世界24ヵ国で同時刊行される平和さも感じる。もちろんスノーデンは、亡命して生きていて自由の身だそうだ。
 テロリストや反体制派、犯罪者などでなければ、情報をとられたからといって何かされるわけではないだろうが、日本の政府関係機関や公的な団体などが米国企業にデータを預けたり、運用を任せたりするのはいかがなものかと疑念を持たざるを得ない。
 これからの情報通信のあり方や国家のあり方などを考えておくべきと思えば読んでおくといいだろう。日本は平和なんだからアメリカさんに全部任せておけばいいじゃないかと思う人は読んでもつまらないことこの上なしだろう。

著 者:グレン・グリーンウォルド

出 版:新潮社

金 額:1700円




タックスヘイヴン

 普段はビジネス書ばかり読んでいて、あまり小説のようなものは読まないのだが、幻冬舎創立20周年記念特別書き下ろし作品という広告が気になって読んでみた。Amazonで注文したので本の厚みが分からなかったのだが、届いてみたら400ページオーバーの厚さ。とたんに読む気がなくなって置いていたのだが、読み始めたら面白くて一気に読んだ。
 タックスヘイヴンというタイトルではあるが、税金の問題ではなく裏社会や国際金融が中心のドラマだ。そこに恋愛ありサスペンスあり裏切りあり友情ありのストーリー。そして最後はどんでん返し。あまり書くとネタバレになるのでこれくらいにしておこう。フィクションだから、割り引いて考えないといけないだろうが、旬なネタも多くて、なるほどそういうことかと気付かされることも多かった。いざという時、国はあてにならない。自分で自分を守るしかないと感じる。たまにはこういう本もいい。

著 者:橘 玲

出 版:幻冬舎

金 額:1700円




勝つまでやめない!勝利の方程式

 日清食品の二代目社長による経営論。タイトルがいいから買ってみた。競合他社が出したヒット商品にはすべてカウンターヒットを狙った「セカンドベスト」商品を出す。二番煎じでも、一番茶を超えるものを出せば、元々体力はあるのだから、必ず勝てる。勝つまでやめない!という戦略。
 インスタントラーメン、カップ麺で、世界に先駆けた会社とは思えないが、創業者と同じことができるはずがないという、この開き直りが二代目経営者には必要なのだろう。ナンバーワン企業だからこそできる囲い込み戦略であり、悪くない。
 さらに、ユニクロなどのデザインで有名な佐藤可士和氏を招いて、グローバル・ブランド戦略を推進していると言う。本書でも後半に対談つき。「コカ・コーラ、マクドナルド、カップヌードル」が世界三大ブランドになると、佐藤可士和氏が豪語。ユニクロに行った時には、「コカ・コーラ、マクドナルド、ユニクロ」が三大ブランドになると言っていないことを祈る。
 カラー刷りで、ビジュアルを多用した本書は、社内向け、採用向けに書かれた意識改革本だろう。「安く作って、安く売って儲ける」というグローバル戦略を浸透させ、「勝つまでやめない!」という戦う意識を徹底させる狙いのように感じる。
 日清食品だからできるんでしょ、と言いたくなるかもしれないが、企業経営者、後継者は、経営戦略、マーケティング戦略の参考として読んでみるといいだろう。特に、すごい創業者から引き継いだ後継者にはおすすめ。創業者と同じ土俵で戦ってはならない。

著 者:安藤宏基

出 版:中央公論新社

金 額:1500円




情熱の伝え方

 「情熱大陸」を担当する毎日放送のプロデューサーによる仕事論。「情熱大陸」がTBSの制作ではなく、MBSの制作だということにまず驚いたが、いつも見ている番組だけに裏話が面白い。本論は、MBSに追加募集で補欠入社し、失敗ばかりだったところから、看板番組のプロデューサーになるまでの体験的仕事論である。特殊な仕事で、かなり特殊な登場人物ばかりなので、一般企業の仕事に直結する話題は少ないが、仕事に対するこだわりは参考になる。
 「情熱大陸」では、話題の人、時の人、一流の人に密着するだけに、刺激も受けるだろうし、著者の成長ぶりも楽しい。出てくるエピソードが実際に見た番組だったりするので、へぇ~、ほう~、そういうことだったのか、と思えて、これもまた面白い。ということで、「情熱大陸」をよく見ている人には楽しめる一冊。私も「情熱大陸」に取り上げられるくらい頑張りたいと思う。

著 者:福岡元啓

出 版:双葉社

金 額:1300円




私の起業ものがたり

 「ゆるキャラ」ならぬ「ゆる本」。かなりユルい語り口で、たった147ページしかない薄い本だが、起業、経営に関してのするどい指摘が満載。職員720名を抱え、全国に30もの支所を擁する国内最大規模の税理士法人の理事長が著者。顧問先6500社の経営を37年間に渡って見てこられたリアルな知恵や見識が感じられる一冊。
 実際に何度か本郷先生にお会いしたことがあるのだが、真面目そうな感じで、会計士さんらしい印象だった。しかしその後、届くようになったメルマガが、おやじギャグ満載で「クスッ」と笑えて、そのギャップに驚いたものだ。そして本書。メルマガ同様、笑えるし、学びも多い。多くの企業を見てきたこともあるだろうし、実際にご自身が事務所を開設され、規模を拡大してこられた実践者だからこそ言える箴言が書かれている。
 起業家志望、経営者、後継者は是非読むといいでしょう。読みやすい割に、きっと多くの気付きがあるはずです。

著 者:本郷孔洋

出 版:東峰書房

金 額:1400円




申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

 経営コンサルタントによるコンサルティングの限界論。細かいデータを集めて、グラフの体裁を整え、大量の報告書を残して去っていく、従来型のコンサルタントが如何に役に立たず、流行の経営手法が業績改善につながるとは限らないという実例を、著者自らの経験を通して示してくれている。どんなに優秀なコンサルタントがいても、どんなに高いコンサルフィーを払って膨大なデータを分析したとしても、「必ず成功する」戦略など立てることはできない。過去のデータから未来が分かるわけでもなく、そもそも正解はないし、競合や環境が変われば、変更も必要となる。
 したがって、戦略は実行し、仮説検証しながら随時修正していくべきである。そうなると経営コンサルタントが戦略レポートを書くだけではダメで、現場のモニタリングを行う仕組みが必要となる。それがないのに、戦略を打ち出しても、絵に描いた餅となる。
 こういう本で、コンサルタントやコンサルティング会社を十把一絡げにされるのは迷惑だが、きちんと読んでもらえれば、NIコンサルティングが提唱する「コンサルティングの新しいカタチ」が正しく、また必要であることを理解してもらえるだろう。コンサルタントを雇う側も、何でもコンサルタント任せにせず、余計な時間フィーを払わないようにして、自分たちでできることはしようと主体的に考えることが必要だ。
 ちょっとタイトルは、大袈裟というか、トリッキーな感じだが、コンサルタントやコンサル志望の人、コンサルタントに痛い目に遭わされた経営者は読んでみるといいだろう。「やっぱりコンサルタントはダメだ」と思われた方は、是非「コンサルティングの新しいカタチ」を実現したNIコンサルティングにご相談を。

著 者:カレン・フェラン

出 版:大和書房

金 額:1600円




従業員をやる気にさせる7つのカギ

 稲盛さんの主宰する「盛和塾」での問答集。過去にも2冊、同様の本が出ていて、それも読んだ気がするが、今回の本が一番グイッと深い稲盛回答が入っているのではないか。叩き上げの創業者で、京セラ、第二電電、JALと実績を残してきた、稲盛さんだから言える厳しい箴言。稲盛さんと言えば、リストラしない、従業員のために経営する、といったイメージが強いが、「信賞必罰」「ついてこられない社員には辞めてもらう」「調子のいいことを言う人にかぎって簡単に辞めていく」など、シビアな言葉が並ぶ。
 いつの時代も、どんな会社も、問題を突き詰めると人の問題に行き着く。この「人」に対してどういう姿勢、信念で臨むかが経営者の要諦だろう。その参考になるのが本書である。中期計画を立てないとか、アメーバ経営とか、あまりピンと来ない経営手法もあるが、経営者が稲盛イズムを学びに「盛和塾」に集まる気持ちはよく分かる。稲盛さんの言うことなら素直に聞けるということだろう。本書も経営者、後継者は必読。フィロソフィーを学ぼう。

著 者:稲盛和夫

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1600円




資本主義の終焉と歴史の危機

 日本大学国際関係学部の教授による資本主義終末論。ゼロ金利が長く続くということは、資本を投下して配当(利潤)を得る先がないということであり、資本主義が資本主義として機能していないことを示していると指摘する。無理矢理景気を刺激して、インフレ期待を起こそうとして、それで本当に金利が上がってしまったら、日本の財政は破綻することになる。まさに袋小路。行き場がないのに、マネー供給を続ければバブルを生むことになり、バブルは必ず弾ける。そこで本書では、定常状態を維持せよと説く。定常状態とは、ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ。このモデルになれるのが日本だと言うのだ。
 一人当たりの仕事量を減らしてワークシェアせよという処方箋は気に入らないが、資本主義が限界を迎えていることは間違いないと思う。現物の裏付けもなくマネー供給されて、企業実体と関係のないところで株価が上がったところで、いずれ弾けるバブルに過ぎないし、そんなことをしていてはそもそも地球環境がもたないと思う。
 経済はゼロ成長でもいいけれども、人々は成長を目指す「仕事道」を今こそ世界に訴えるべきではないか。その成長は心の成長であり、人格の陶冶である。日々の仕事の中に自分の精神を投影し、それを練磨する。売上や利益が増えなくても、己の鍛練と成長があれば良しとする。これが「仕事道」だ。
 アベノミクスで多少浮かれた気分になっている今、本書が多くの人に読まれることを願いたい。

著 者:水野和夫

出 版:集英社新書

金 額:740円




仕事に生かす孫子

 靴下屋、タビオの会長による孫子兵法解説本。中卒からたたき上げで上場企業を作るまでになった秘訣が孫子にあったと言う。孫子の学び、活用はこうでなくてはならない。実戦に活かしてナンボ。字句の解釈や歴史的経緯を研究するのは「兵学者」。それを実践し、現場に応用するのが「兵法家」。正しく日本語訳をしようと思うのは学者の仕事であって、兵法家は2500年前の孫子の心を読み、それを現在に活かすのだ。
 昭和30年に著者が中卒で奉公に出る時に、国語の先生から「中国古典を読め。分からなくても読め」と言われたと言う。素晴らしい先生だ。それをまた実践した著者もえらい。そして、論語や韓非子や老子や孟子などではなく、孫子に行きついたのはさすがだ。企業経営には断然孫子が役立つ。戦争という命のやり取りをする現場をどう生き抜くかという真剣勝負の智恵だからこそ、企業経営に生きる。私も孫子兵法家として、日々そのことを実感している。本書は、そうした孫子の兵法をビジネスの実戦に活かすためのエッセンスが詰まっている。
 ただ、孫子の第一章と言える計篇は丁寧に触れているのだが、それ以降の篇はサラッと流したものになっている。もうちょっと解説しても良かったのではないかなと思う。そこが少し残念だったが、単なる古典の解説本ではないから、企業経営に関わる人には読みやすいだろうし、孫子を現代に活かす参考になるはずだ。孫子を読んでみよう。

著 者:越智直正

出 版:致知出版社

金 額:1600円




ハーバード戦略教室

 ハーバード・ビジネス・スクールの教授による戦略論。年間売上が10億円から2000億円の企業のオーナーもしくは経営者だけが受講できるEOPプログラムが元になっている内容。EOPとは、Entrepreneur(起業家)、Owner(オーナー)、President(経営者)の略だ。原題は「THE STRATEGIST」。プログラムの受講者に、ストラテジストとは何か、ストラテジストになるにはどうするべきか、問いかけていくのと同じように、本書でも読者にストラテジストたるにはどうあらねばならないかを問いかけてくる。ハーバードだけに、イケア、アップル、グッチなど有名企業のケーススタディーもある。
 印象に残ったのは、「決定的な独自性を持て」という主張である。単なる差別化とは違う。決定的に違わなければならない。そして、「もし今日、あなたの会社が消えたら、明日、世界は変わっているだろうか」と問いかける。なかなかガラッと変わっていると答えられる企業はないだろう。
 そして、その企業がなぜ存在し、どのようなニーズを満たそうとしているのかを明快な文章にまとめよと説く。たしかにこれは大切なことだ。戦略を立てたと言いながら、それを明快に説明できない経営者も少なくない。説明もできないようでは実行もできない。実行できない戦略など無意味だ。
 さて、あなたの会社の戦略はどういうものだろうか。あなたはストラテジストだろうか。この問いにサッと答えられない人は本書を読んでみるといいだろう。

著 者:シンシア・モンゴメリー

出 版:文藝春秋

金 額:1500円




奇跡の職場

 JR東日本テクノハートTESSEI、おもてなし創造部長による新幹線清掃チームのプライド作りストーリー。清掃業務という、きつい、汚い、危険な3K職場であっても従業員に働く喜びと誇りを持たせることができるという事例。清掃会社と言っても、JR東日本の100%子会社で、やりやすい面はあっただろうが、どのような中小企業であったとしても、自分たちの仕事に誇りを持ち、楽しく仕事に取り組むことはできるし、とても大切なことだと思う。本書は、そのためのヒントが満載。
 リッツ・カールトンやディズニーでも似たような話があるが、このTESSEIの方が現実的で、多くの企業が参考にしやすいだろう。「ついて来れない人には辞めてもらう」などシビアな話もある。おまけに仕事は清掃だ。
 やはり、仕事のネーミングや服装(制服)など、目に見える工夫は重要だと思う。ちなみに社名も、鉄道整備からTESSEIに変更になっている。鉄道整備という会社で、如何にも清掃員ですみたいな制服を着て、人から「掃除の人」なんて呼ばれたら、誇りも吹き飛ぶだろう。
 著者は、国鉄からJR東日本指令部長を経て当社へ移り、専務取締役を退任して、嘱託でおもてなし創造部長になっている人。JR東日本には、11の清掃子会社があって、話題になるのはこのTESSEIだけだから、この人がいてこそ「奇跡の職場」ができたと言えるだろう。
 組織変革、社員活性化のヒントになる一冊。

著 者:矢部輝夫

出 版:あさ出版

金 額:1400円




ジェフ・ベゾス果てなき野望

 Amazon創業者ジェフ・ベゾスの人物像、経営思想を有名ビジネス誌の記者が生い立ちまで遡って浮き彫りにした一冊。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどを取り上げた似たような本はたくさんあったが、ジェフ・ベゾスは初なのかもしれない。ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2013を受賞したそうだ。
 500ページもあり、面白かったけど、読むのに疲れた。ジョブズもそうだったが、幼少期というか生い立ちが複雑で、こういう起業家はパラノイア的な偏りがあった方がいいのかなとも思う。参考にしようと思っても参考にできないが・・・。もちろん、ネットの世界、クラウドの世界がどう動いているのかを知るためにはとても参考になる本だ。
 特に参考になったのは、「スティーブ・ジョブズの失敗を繰り返さない」という点。利益率を下げて、競合を排除し、顧客を集めるという戦略だ。巨大資本を投じながら、赤字覚悟で、この戦略をとられたら、なかなか太刀打ちできない。こういうITベンチャーは、成功すると高い利益率を維持し、豪華なオフィスや多大な福利厚生で無駄遣いしてくれて、自ずと消えて行ってくれるが、「倹約」を掲げ、ローコスト経営を徹底されると簡単には戦えない。そうしたビジネスモデルの研究をするには、良い題材になると思う。
 そして何故か、起業家は宇宙を目指す。イーロン・マスクもホリエモンもリチャード・ブランソンも、そしてジェフ・ベゾスも。お金の使い道がないのかなと余計な心配をしてしまう。ただ、そうした果てなき野望を持っていてくれるから、弱みを見せてくれることもあるだろうと思ったりもする。
 スティーブ・ジョブズ亡き後、ネットの世界では、このジェフ・ベゾスに注目だ。

著 者:ブラッド・ストーン

出 版:日経BP社

金 額:1800円




イーロン・マスクの野望

 映画「アイアンマン」のモデルになったと言われる起業家の半生記。電気自動車のテスラモーターや宇宙ロケットのスペースX社の経営者が主人公である。それがまた若い。1971年生まれ。若い起業家も読んで刺激をもらえば良いと思うが、1971年生まれよりも年長者が読んで、この若造にここまでできるのに、自分はいったい何をしているのか!?という痛い刺激を受けると良いだろう。かく言う私もその一人。若い若いと思っていたが、もう全然若くはない。
 本書はちょっと本人を美化し過ぎではないかと思うが、地球と人類を救うために、電気自動車と太陽光発電で環境を守り、宇宙ロケットで火星への移住を目指すと言う。それが本当なら、でか過ぎる。とても真似できない。だが、将来を見越した手の打ち方や経営観は参考になる。戦略実行のヒントも多い。企業経営が楽しくなる一冊。負けずに頑張ろう。

著 者:竹内一正

出 版:朝日新聞出版

金 額:1400円




会社を絶対につぶさない仕組み

 中小公庫に勤務中に公認会計士資格をとったコンサルタントの書いた経営書。副題が「経営者が最低限身につけておくべき7つの原則」。会計士だけに財務面の指摘が多いが、経営戦略やビジネスモデル、経営者のリーダーシップにまで言及していて、バランスが取れた内容になっていると思う。読んで面白いという本ではないが、経営者や後継者は読んでみるといいだろう。特に、第5章、経営は先行管理に帰着するという指摘がいい。財務データは過去の結果を示すが、その財務を良くするためには、未来を先行して変えて行かなければならない。良著。

著 者:高畑省一郎

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1900円




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