嫌な取引先は切ってよい
社員21名の下請けバネ工場でありながら、無借金経営で1600社の取引先を持つという有限会社中里スプリングの経営論。著者はその2代目経営者。父親の会社に入った時、顧客に盲従する下請け根性に違和感を覚えたと言う。嫌な取引先はお断りして、その代わり取引したい先を探してくれば良い。まさにその通り。大賛成だ。
多くの企業が、顧客は大切にしなければならない、お客様は神様だ、顧客第一主義という妄想に囚われている。顧客とは、お客様とは、自社に利益をもたらしてくれるありがたい存在を指すのであって、理不尽な要求や過度な値引き、そして多少の利益など返上したくなるような業者扱いや見下した態度はプライスレスにマイナスを産む。そんな相手は顧客でもお客様でもない。何しろ、不利益を産む存在なのだから。
しかし、それで終わっては経営が成り立たない。だから、他で良い顧客を探す必要がある。その努力を怠って、目の前の客に安易にヘコヘコして値引や要求に応じるから、いつまで経っても儲からない。横着した自業自得であって、その客が悪いわけではない。そんな相手に頼らなければならない状態に甘えている自社が悪いのだ。
この点については、規模が小さかろうと大きかろうと、是非本書を参考にして欲しいと思う。あとは小さい会社ならではの経営論だから、大手企業では真似ができない内容が多い。但し、数十名規模の会社は大いに参考にしたらいい。大企業を手本とした経営のあるべき論などクソ食らえということを参考にして欲しい。この会社がやっていることをそのままやるべきだとも思わない。だが、教科書に書いてあるような経営手法をお勉強しているようでは、いつまで経っても儲かるようにはならない。
著者の言葉でまさにそうだなと思ったのは、「気持ちが貧しくなるような仕事はやめよう」という言葉だ。社員が少なかろうと、年商が小さかろうと、気持ちが貧しくなるような仕事はするべきではない。自分たちがお役に立ちたいと感じるお客様に対して、自分たちがプライドの持てる品質と価格でお付き合いいただけるような経営を目指すべきである。それを目指すから、結果として成長したり、儲かったりするのだ。