代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2013年版

嫌な取引先は切ってよい

 社員21名の下請けバネ工場でありながら、無借金経営で1600社の取引先を持つという有限会社中里スプリングの経営論。著者はその2代目経営者。父親の会社に入った時、顧客に盲従する下請け根性に違和感を覚えたと言う。嫌な取引先はお断りして、その代わり取引したい先を探してくれば良い。まさにその通り。大賛成だ。
 多くの企業が、顧客は大切にしなければならない、お客様は神様だ、顧客第一主義という妄想に囚われている。顧客とは、お客様とは、自社に利益をもたらしてくれるありがたい存在を指すのであって、理不尽な要求や過度な値引き、そして多少の利益など返上したくなるような業者扱いや見下した態度はプライスレスにマイナスを産む。そんな相手は顧客でもお客様でもない。何しろ、不利益を産む存在なのだから。
 しかし、それで終わっては経営が成り立たない。だから、他で良い顧客を探す必要がある。その努力を怠って、目の前の客に安易にヘコヘコして値引や要求に応じるから、いつまで経っても儲からない。横着した自業自得であって、その客が悪いわけではない。そんな相手に頼らなければならない状態に甘えている自社が悪いのだ。
 この点については、規模が小さかろうと大きかろうと、是非本書を参考にして欲しいと思う。あとは小さい会社ならではの経営論だから、大手企業では真似ができない内容が多い。但し、数十名規模の会社は大いに参考にしたらいい。大企業を手本とした経営のあるべき論などクソ食らえということを参考にして欲しい。この会社がやっていることをそのままやるべきだとも思わない。だが、教科書に書いてあるような経営手法をお勉強しているようでは、いつまで経っても儲かるようにはならない。
 著者の言葉でまさにそうだなと思ったのは、「気持ちが貧しくなるような仕事はやめよう」という言葉だ。社員が少なかろうと、年商が小さかろうと、気持ちが貧しくなるような仕事はするべきではない。自分たちがお役に立ちたいと感じるお客様に対して、自分たちがプライドの持てる品質と価格でお付き合いいただけるような経営を目指すべきである。それを目指すから、結果として成長したり、儲かったりするのだ。

著 者:中里良一

出 版:角川書店

金 額:1500円




黄色いバスの奇跡

 倒産寸前の危機に陥ったバス会社が再生していく実話に基づくリーダーシップ論。北海道帯広市、十勝バスの4代目社長が従業員を愛することで、信頼を勝ち取っていくという感動ストーリーだ。なんと、本書が原作となってミュージカルにもなるらしい。著者はその4代目社長の大学時代の先輩であり、ワタミやキッザニアで人材育成に取り組んだ経営コンサルタント。
 小さな会社、それも倒産の恐れがあるような会社の経営者や後継者が読んでみるといいだろう。一発逆転の満塁ホームランなどない。バントヒットでも盗塁でもいいから泥臭く前進することの大切さが伝わってくる本である。

著 者:吉田理宏

出 版:総合法令出版

金 額:1200円




マクドナルドが大切にしてきた「マニュアルを超える」31の方法

 学生時代にマクドナルドでアルバイトを始め、そこから社員になり、最後はハンバーガー大学の副学長になった人の人材育成論。マクドナルドと言えばマニュアルが有名だが、マニュアルだけではダメなのだと説く。マクドナルドだからできるんでしょと言いたくなる点もあるが、一般企業においても人材育成で参考になる内容が多いように思う。金銭やルールによってコントロールしようとする発想ではうまくいかない。外発的動機付けから内発的動機にシフトしていく仕組みや思想を持っていなければならない。
 私はその仕組みを「ゲーミフィケーション」仕事のゲーム化として提唱しているが、同様の仕掛けがマクドナルドにも用意されている。
 多くの企業でできていなくて、参考にしてほしいと思ったのは、受け入れる側の姿勢だ。たとえば研修を受けさせる側もその研修を受けるなり、内容を理解するなりしておかなければならない。部下に研修を受けさせておいて、その内容を知らないという上司が結構いる。そんなことでは教育効果もないわけだが、さすがにマクドナルドではそうした点も考慮されている。
 人を増やし、組織を大きくしていきたい会社の経営者や人事、教育の担当者は是非読んでみるといいだろう。読みやすい割にヒントが多い一冊。

著 者:鈴木健一

出 版:中経出版

金 額:1400円




働く人の資本主義

 「海賊と呼ばれた男」のモデルとなった出光佐三の経営論。「海賊と呼ばれた男」が売れているからこその復刻版ということだろう。インタビュアーが出光佐三に疑問をぶつけていき、それをすべて打ち返す。資本主義、社会主義、共産主義の良いところを取り入れていったら「働く人の資本主義」になるのだという。資本家はいなくて、働く人が主体となるという考えで、果たしてそれを資本主義と呼ぶのかどうか、理論的には突っ込みどころも多いのだろうし、そもそも1969年のもので、その時代だから言えたのではないかと思う点もあるが、それを出光という会社で実践し、成果を残したという点で学ぶべき点は多い。復刻されたことで読み返す機会を与えられたことは喜ばしい。
 そして、日本とは、日本人とは、ということについても考えさせてくれる一冊でもある。なんでも欧米に追従すればいい、日本は遅れている、という風潮を打破することが、今まさに求められているのではないか。
 すでに資本主義が限界を迎え、終焉しようとしていると私は思うが、そうした中で、これからの経済や経営がどうあるべきなのか、本書を元にして考えてみるのも良いだろう。

著 者:出光佐三

出 版:春秋社

金 額:1600円




一流を育てる

 今や珍しくなってしまった徒弟制度で職人を育てる、秋山木工の職人心得。住み込みで、丸坊主になり、携帯電話も恋愛も禁止という厳しい環境に、自ら身を置く若者がいることに驚きもするが、それだけの覚悟と努力があってこそ一流になれるというのもまた真実なのだろう。今はどこでも甘やかし過ぎだ。
 この秋山木工ほど徹底するのは一般の企業では難しいだろうが、若い内に徹底して鍛え、本人も一心不乱にその道に心血を注ぐというのは、見習うべきではないか。仕事も遊びもほどほどにしていて、一流になろうというのはどの道であっても不可能だ。
 20代30代の若い人に本書は読んでもらいたい。自ら気付き、自ら決意しなければ、本物にはなれないと思うから。それ以上の世代の人が読んだら(そういう人たちが読みそうな本ではあるが)、本書の内容を若者に押し付ける材料にしてしまって、かえって逆効果にもなり得るのではないか。と思うので、私の会社でも社員に課題図書として読ませたい気もするが、我慢してここでおすすめするに留める。何人かは、このおすすめBOOKSに気付いて、自ら読むことだろう。(それが押し付けではないのか!と思う人は読まないように)

著 者:秋山利輝

出 版:現代書林

金 額:1200円




これならわかる!できる!自信も湧いてくる!営業の強化書

 新人営業マンや若手営業マン向けに営業活動全般について心構えからちょっとしたテクニックまで分かりやすく解説した一冊。まさに営業の教科書だ。図解やイラストを多用し、各章には振り返りの問題がついている。営業の基本も書かれているが、中堅、ベテランでもできていないことが多い営業手法や考え方も紹介されていて、すべての営業マンに参考になるものだろう。何しろ、私の営業指導ノウハウをまとめたものだから当然役に立つ。簡潔に書いてあるしイラストも多いから、パッと読んで分かったような気になってしまうかもしれないが、奥が深いので何度も読み返し、吟味してもらうといいと思う。営業のバイブルにするといいだろう。
 当然、営業マネージャーが部下を指導する時のテキストにするのにも適している。項目ごとに見開きで、短い文章でまとめられているだけに言葉足らずになっている面もあるから、それをマネージャーが自社に置き換えながら行間を補足していくと、良い指導になるはずだ。
 若手営業マンには是非読んで欲しい。壁にぶち当たった時の対処法も書いてあるから、悩んだら読み返してみよう。そして若手を指導するベテランも内容を把握しておかないといけないから、結局全営業マン必読の書。おすすめです。

著 者:長尾一洋

出 版:ナツメ社

金 額:1400円




「営業がイヤだ!」と思ったら読む本

 経営コンサルタントとギャル漫画家の異色コラボによる営業ノウハウ本。なんと、私と「パネェ」「パギャル」などギャル語を世に広めた自称二十歳のギャル漫画家、浜田ブリトニーとの共著本である。かつては、ホームレス漫画家として渋谷あたりをうろついていたブリトニーも、今や会社の社長である。漫画も描き、経営もして、タレント業もこなす、そんなブリトニーの成功ノウハウも本書に注ぎ込まれている。
 もちろん、漫画もあり。かなりあり。ブリトニーらしいギャグ漫画。私も登場するが、この絵はあまり褒められない。ハッキリ言ってかなり年寄り臭い。恐らくギャルからすれば、年老いたオヤジに見えるのだろう。頭にくるが、それもまたよし。
 そんな漫画で面白おかしく解説しながら、私の提唱する「ストラテジック・セールス」が学べる超入門書でもある。売り込まずに売れる、売れなくても勝てる、戦略的な営業手法が、たったの1000円で学べればかなり安い。ページ数も少ない。すぐに読める。それでいて営業力が身につき、「イヤだ!」と思っていた営業が楽しくなり、おまけに漫画で笑えれば、かなりお買い得な一冊と言えるだろう。

著 者:長尾一洋+浜田ブリトニー

出 版:中経出版

金 額:1000円




リーダーは誰だ?

 次期の経営者を選ぶストーリーからリーダーシップを学ぶビジネス小説。リーダーの条件が10項目挙げられ、10のエピソードを通じてその条件を学んでいくという構成。ストーリーだからまるで自分がその場にいるかのような臨場感でリーダーのあるべき姿を学ぶことができる。単なる知識としてリーダーシップを語られても当り前じゃないかと感じることが多いが、こうしてストーリーになると、もし自分ならどうするか?と考えて疑似体験ができる。次々に起こる事件や問題からは、企業経営の大変さも伝わってくる。企業には様々な問題が発生するが、トップリーダーはそれらをすべて処理しなければならない。
 後継者選定や育成に悩む経営者にも、リーダーとしてどうあるべきかに悩む次世代リーダーにもおすすめの一冊。何しろ私が書いた本だから(笑)。間違いなく面白い。多くの企業で遭遇したリアルな題材を元にストーリー化しているから、どこの企業にも「あるある」と思うエピソードが満載のはずだ。リーダーは誰だ?リーダーは君だ!誰でもリーダーになれる。その覚悟さえあれば・・・。本書でリーダーの要諦を学ぼう。

著 者:長尾一洋

出 版:あさ出版

金 額:1500円




「仕事のゲーム化」でやる気モードに変える

 ゲームに没頭し、楽しみながら創意工夫していくように仕事に取り組んだら、いい仕事ができるのではないだろうか。ゲームには人をその気にさせ、のめり込ませる魔力がある。その力を仕事に活かすのが、仕事のゲーム化、ゲーミフィケーションだ。本書では、仕事のゲーム化を分かりやすく解説し、実践事例まで公開されている。業績アップのストーリーをゲームに落とし込んでいくことで、楽しく前向きに仕事に取り組むだけでなく、業績もアップするのだ。
 ゲーム業界の人が書いたゲーム本はあるが、経営コンサルタントが企業経営の実態に迫る手法としてゲームをとらえた本はないと言っていいだろう。だから、最終章にはゲーミフィケーションの限界についても指摘してある。こうした限界を知った上でうまく使えば、このゲーミフィケーションは人のモチベーションを高めるのにとても有効だ。
 私が書いた本だからというわけではないが、読みやすく、分かりやすいと思う。そもそもゲーム否定派だった私がなぜゲーミフィケーションに取り組もうと思ったのか。本書を読んでいただければご理解いただけるはずだ。ゲーム好きな人もゲームなんかやらないという人も是非お読み下さい。

著 者:長尾一洋+清永健一

出 版:実務教育出版

金 額:1800円




アイリスオーヤマ一目瞭然の経営術

 プラスチック成型加工からホームセンターを中心販路としたメーカーベンダーへと飛躍したアイリスオーヤマの取材レポート。本の帯には、サムスンを上回る開発スピードとか驚異の経営術などと大袈裟に書かれているが、そこまで驚くようなことをしているわけではない。最近では、LEDの照明器具にも参入して家電メーカーでもあるが、それほど高い技術や加工度があるわけではないだろう。だが、プラスチック成型の町工場からこれだけの成長を実現したアイリスオーヤマからは中堅・中小企業が参考にすべきことが多いと思う。良いと思えばすぐにやってみて、ダメなら撤退。過去に囚われず数打ちゃ当る的にどんどん新商品を出し、改善を繰り返す。この仮説検証力が同社の強みとなっている。やってもみないで「できない」「無理だ」「技術がない」などと泣き言ばかり言っている経営者は是非読んでみるといいだろう。

著 者:三田村蕗子

出 版:東洋経済新報社

金 額:1500円




人を動かす、新たな3原則

 ダニエル・ピンクの最新刊を神田昌典が翻訳。著者と訳者が同じ大きさで表紙に並ぶ。さらに訳者解説付き。これまで「フリーエージェント」「ハイコンセプト」「モチベーション3.0」とシンプルな単語で新しい時代の流れを浮き彫りにしてきたピンクなのに、どうにも歯切れの悪いタイトルである。原題は「TO SELL IS HUMAN」。これも微妙だが、「売ることは人間なり」と直訳してもまた微妙ではある。だが、この「人を動かす、新たな3原則」というタイトルはなんとも・・・。
 と、思いながら、まぁピンクだし、面白い提言をしているのではないかと期待して読んでみると、要するに、すべての人にセールスが必要という話で、セールスとは、他人を動かすことを指す。モノを売る一般的なセールスだけでなく、教育や医療などもセールスと捉える。これを「売らない売り込み」と訳しているが、ピンクは、「non-sales selling」と言っている。「ピンクよ、今頃そんなことに気付いたのか」と思わず突っ込みたくなった。営業力とは、「自分が持っている価値を相手に伝え、その価値を認めてもらう力」であり、営業とは「情報の力で相手を動かす」活動だから、営業マンではなくても営業力が必要である。そんなことは当り前で、今さら一冊の本にするには私ならかなり勇気がいるが、さすがダニエル・ピンク、世界中で売っている。
 従来の営業スタイルは、売り手と買い手の情報非対称性(売り手が情報を持っていて買い手が情報を持っていない)が逆転し、ネットの情報などで買い手の方が詳しかったりするし、もし不良品だったり、不当な取引だった場合には、買い手がネットで反撃もできるようになったことで、通用しなくなったと言う。これも今さら、当り前だろと言いたい。そんなことはセールスの最前線では百も承知。特にピンクにガッカリだったのは、その古い営業スタイルの標本として、ジョー・ジラードを論ったことだ。今年85歳になるおじいちゃんに「インターネットの影響はどうか」とか「あなたが70年代にやってきたことが今でも通用するか」と突っ込んで、それを実名公開。そりゃー85歳の人にインターネットを尋ねても・・・。いくら世界的に有名になったからと言っても、人生の大先輩をコケにすることはないのではないか。
 期待が大きかっただけに、言いたいことも多くなり、つい長くなってしまった・・・。ダニエル・ピンクがこうした提言をしてくれたことで、営業力というものについて見直され、すべての人に必要だという認識が拡がることはとても良いことだと思う。今どき、客を騙して売る、押し売りをする、といった営業は成り立たない。セールスに対して勘違いをしている人には是非読んでもらいたい。
 やっぱり翻訳は大前研一が良かったのではないかな。。。。講談社だし。断られたのかな?他者を動かすためには営業力が必要であり、営業力とは旧来の売り込みテクニックではなく、相手との関係性を作り、新たな判断軸を共有して行くことである。本書から、そのあたりをうまく読み取って欲しい。

著 者:ダニエル・ピンク

出 版:講談社

金 額:1700円




200万円でもできるM&A

 M&A仲介会社の社長が書いた中小企業向けM&A解説本。ハッキリ言って200万円ではM&Aはできないが、「たまたま売り急いでいて200万円で成立した案件もあったよ」ということらしい。タイトルは気に入らないが、中小企業でもM&Aを考えるべきだという全体の主張には賛成だ。M&Aの解説本は小難しい本が多いが、小さな会社が遭遇するであろう疑問点などを分かりやすく説明しているので、入門書としておすすめだ。
 実際のところ、細かい話は専門家にアドバイスしてもらうしかない。会社の評価に正解はない。ただ、実際に弊社でも扱っているM&Aの案件を見ていると、超お買い得なものもなければ、法外な高値をつかまされる話もないように思う。確実に儲かる利益体質のしっかりした会社が安く売りに出るわけはないし、安く売りに出された会社が良い会社であるはずがない。M&Aのアドバイザーや仲介業者が入れば、それ相応の評価を行い、まぁ妥当な線に落ち着く。要はそれをどう生かすか。自社との統合、連携、相乗効果をどう生み出して行くかにかかっている。
 ひとつ確実に言えることは、売るなら早く売った方がいいということ。売れるうちに売る。ジリ貧になってからでは安くしても思うように買い手はつかない。世の中は後継者不足でもあるし、人口減少で国内は過当競争だ。良い条件で売却して、従業員にも配慮できるなら、経営者にとっても取引先や従業員にとっても良い結果だと考えるべきだろう。まずは本でも読んで研究してみるところから始めてみよう。

著 者:萩原直哉

出 版:スモールサン出版

金 額:1600円




不恰好経営

 元マッキンゼーにして、DeNAの創業者でもある著者の初書籍。マッキンゼーのコンサルタントとして経営のアドバイスをしていたのに、いざ自分で起業してみると失敗ばかりだったという笑い話が中心だが、その中に創業の苦労や思いを込めた一冊。きっとDeNAの社員やこれからの採用のために書いたんだろうな。自分の弱みや失敗をさらけ出すことで、コンサルタントから事業家への転換を成し遂げた人なのだろうと思う。
 本書にも何度も出て来るが、コンサルタントと経営者は同じ経営のプロでも、似て非なるものであり、経営者がアクセルを踏むのをコンサルタントはブレーキで抑えるような立場だ。コンサルタントが実際に経営をしたら失敗したという話は珍しくないし、現にマッキンゼーのコンサルタントが3人で始めても本書のようにすったもんだがある。経営のお勉強のためにコンサルタントを目指す人がいるので、そういう人には本書を是非読んでもらいたい。コンサルタントは腰掛気分でやるような中途半端な仕事ではなく専門分野のスペシャリストだ。
 そして、コンサルタントだからと言って、経営をわかったつもりになっている人にも本書はおすすめだ。理屈や論理で考えるのがコンサルタントだとすると、実際の経営は理屈通りに行くことも、論理的に進むこともないし理屈ではどうにもならないところに経営の実体がある。
 ちなみに、この元マッキンゼーの南場さんが企業経営で苦労したからと言って、すべてのコンサルタントがそうだというわけではないので勘違いしないようにして欲しい。もちろん私も一緒にされたくない。元マッキンゼーの人が書いた綺麗事の本は多いが、DeNAほどの会社になったからこそ言える不恰好経営。不恰好をさらけ出せる人だったから、あの大前研一氏の会社より大きく成長できたのではないか。たしかに面白い。

著 者:南場智子

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1600円




情熱商人

ドン・キホーテ創業者による小売経営論。単に奇抜な雑貨屋のように見えるが立派な上場企業であるドン・キホーテ。その創業者が語る実践的な小売経営手法だ。もっと奇想天外かつ血湧き肉躍るようなことが書いてあるかと思ったが、案外地味というか、商売の基本を徹底する泥臭い内容だった。売上を追うよりも「変化対応力」が重要だ、といった主張は、流通業界の雄であり王道を行くセブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長の提言と重なるものであり、これまた興味深い。やはり勝ち組には変化に対応する力が備わっている。仮説検証力だ。ドン・キホーテも大量に試し、うまく行ったものを残すそうで、ユニクロの「一勝九敗」はまだいい方だと言う。ドンキもユニクロもセブンも日々失敗を繰り返しながら精度を上げているということだろう。
 ドンキ成功の決め手として紹介されている、仕事をワークからゲームにするという発想は、まさにゲーミフィケーションであり、「仕事のゲーム化」を提唱している私にとっては、良い事例を見つけることができた。仮説検証サイクルをスピーディーに回すためにもゲーム化は有効だし、人の創意工夫を引き出すためにも有効だ。こうした取り組みが、あのような楽しい店を作っているのだろう。

著 者:安田隆夫

出 版:商業界

金 額:1600円




負け方の極意

 あの野村監督が敗戦から何を学び、それをどう活かすかを説いた一冊。その要諦は、まさに仮説検証の繰り返しだった。普通の仕事もプロ野球も、一流になるには失敗から学ぶのだ。すなわち仮説を実行し、失敗してもそこから学んで修正し、また次のアクションに活かすというサイクルを回さなければならない。「人は勝利からは学ばない」とノムさんは説く。たしかに勝てばそれがたまたまであろうと振り返ろうとすることは少ないだろう。売れたら結果オーライになってしまうビジネスマンと同じだ。
 ノムさんは現役時代、「一日3ゲーム」を自分に課したそうだ。一試合目は「予測野球」。試合を仮説してシミュレーションする。二試合目は実際の試合。実行部分だ。そして終了後の第三試合は「反省野球」。スコアブックをもとに振り返るのだそうだ。これが検証になる。仮説し、実行し、検証し、次に活かす。この「一日3ゲーム」の積み重ねが野村監督を生んだ。企業経営においても大いに学ぶべきだろう。
 本書では、才能や能力がありながら、成功に溺れ、大成しなかった選手や、能力的には問題があっても、その弱点を補う方法を編み出して再生した選手なども紹介されている。すぐに諦めてしまったり、すぐに調子に乗って努力を忘れるビジネスマンも多いから、このあたりも是非参考にして欲しい。

著 者:野村克也

出 版:講談社

金 額:1300円




変わる力

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長による経営論。もう鈴木さんの本はいいだろう。散々本も出ているのに、なぜまた新書まで出すのか、よく分からないが、頼まれるとイヤと言えないのかな。出張中に読む本がなくなり、空港の小さな書店で読みたい本が見つからず、仕方なく買った一冊。
 聞いたことのあるような話が多いが、改めて読むとやはり参考になる。新書でうまくまとまっていて読みやすい。いかに軸をブラさずに、変化に対応していくか。セブンならではの仮説検証の力だ。セブンの具体的な施策をそのまま取り入れることは無理でも、仮説検証によって変化への耐性を高めていくことはどこの会社でもできる。後半のセブン&アイ・ホールディングスの今後については、新しい内容で興味深い。セブン&アイがこれからどこに向かうのか、その考え方も大いに参考になるだろう。720円は安い。

著 者:鈴木敏文

出 版:朝日新書

金 額:720円




リーダーに大切な「自分の軸」をつくる言葉

 今や東洋思想研究家として有名になった田口先生の最新刊。先生も昭和17年生まれだから、71歳か。以前はCIとかPIとかどちらかと言うと西洋風だったが、ここのところはすっかり東洋だ。コンサルタントとしては、年齢とともにテーマやスタイルを変えていくお手本として参考になる。
 本書は、論語、孫子、老子、佐藤一斎、西郷南洲などを元にリーダーとしての要諦を田口先生がコメントしたもの。短い文章で、文字数は少ないが、それがまた良し。説明し過ぎない。私だと、ついつい余計な説明までしてしまう。かんき出版がつけた本書のタイトルがまた良し。自分の軸をつくる。最近は軸のない管理者、経営者、リーダーと呼ばれる人が多いように思う。軸のないリーダーでは困る。やはり判断軸、思考軸、行動軸をつくるには古典がいいだろう。時代の変化を超えて語り継がれる価値がそこにはある。
 本書では、佐藤一斎の深さに改めて気付かされた。孫子や論語が素晴らしいのは当然だが、言志四録も押さえておきたい。韓非子は出てこない。田口先生の韓非子論を聞いてみたいところだが、どうだろうか。

著 者:田口佳史

出 版:かんき出版

金 額:1400円




創造こそあなたと会社を成長させる

 海洋温度差発電を提唱する元佐賀大学学長が書いた「創造の原理」解説本。著者は、福島第一原発の復水器を設計したが、原発の限界を感じ、海洋温度差発電の世界的権威となった。本書では、エネルギーの理論をベースに、人間の創造性の発揮を説く。すべての価値は創造から生まれる。これが企業経営にも応用されるそうだ。
 創造性を高めるには明確な目標を持たねばならず、それもできるだけ大きな目標を立てるべきだという指摘に同感だ。「無理だ」と言われるくらいの大目標がいいと言う。これも大いに同感だ。普通にやっていては無理だからこそ創造性が発揮される。自然の原理だ。天地自然の利、物理の法則に基づいて仕事をし、経営をしてみるという視点を持ってみるのもとても有意義だと思う。読みやすい一冊。

著 者:上原春男

出 版:東峰書房

金 額:1400円




海賊とよばれた男 上・下

 2013年本屋大賞に選ばれた本だと言うので、ゴールデンウィークに読んでみた。出光興産の創業者、出光佐三をモデルにした一代記。石油メジャーや官僚、業界など巨大な敵に挑んでいく姿は、読む人に勇気と感動を与える。おまけにそれが実話だと言うから、その胆力には恐れ入る。読後、出光を応援したくなり、ガソリンスタンドを探したが、ない。あったけど少ない。今の出光はどうなのか?心配になる。
 主人公があまりにすご過ぎて経営的にはあまり参考にはならない。こんな人の真似をしていたら、普通の人は失敗間違いなし。主人公の没後、出光がどういう経営をしたのかの方がコンサルタントとしては気になる。もちろん、経営者や幹部、後継者は是非読んでみるといいだろう。自分の仕事に対する使命感と主人公のそれとを比べてみることで、気付きもあるのではないか。こんな人もいるのだから自分も頑張らねばと、勇気付けられることは間違いない。

著 者:百田尚樹

出 版:講談社

金 額:各1600円




どん底から生まれた宅急便

 小倉昌男氏と共に戦ってきたというヤマト運輸の元社長が書いた回顧録。宅急便誕生のエピソードは、小倉昌男氏の著書などでたくさん紹介されているが、この本には、その裏にある社内の苦労や葛藤などが細かく書かれている。ビジネスモデルを変えようと思うと、社内の心理的な壁が現れるという好事例。それをどうやって解きほぐし、崩して行ったかを本書から学ぶべきだろう。この人は小倉社長と現場との板挟みになって苦労したのだろうなと思う。小倉社長も立派だが、こういう人がいてこそ大を成せるのだろう。
 たまたま入った会社がどん底状態だったら、どうするか。今の若者ならさっさと辞めていただろうと言いたいが、当時も著者以外の同期もすぐに辞めてしまったそうだ。そんな会社だったら、逆にチャンスもあるという発想の転換もしてみるといいだろう。本書はそれを教えてくれる。人生万事塞翁が馬。

著 者:都築幹彦

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1700円




起業家

 サイバーエージェントの社長による自伝本。自伝を書くほどの歳でもないだろうが、すでに2冊目。起業家として、社長としての苦悩をさらりと語っている。批判されることも覚悟で、こうした本も出し、ブログも書いて自社の知名度を上げ、ページビューを伸ばす起業家精神は天晴れだ。最年少上場あり、ネットバブル崩壊あり、女優さんとの結婚離婚、ホリエモンとの交友など、批判されるネタには事欠かない。普通ならじっと黙っておとなしくしていようとするのだろうが、そうはせずにこうしてオープンにしてしまうところがさすがだと思う。私などは、本を書くのが半分仕事のようなものだが、ちょっとアマゾンあたりでネガティブなことを書かれると心が折れて本など出したくなくなる・・・。弱過ぎるな。藤田社長を見習って頑張っていこう。そんな力ももらえる本。
 起業家志望の人、若い経営者、ネット業界の人は是非読んでみるといいだろう。ネットとは縁のないベテラン経営者にはピンと来ない話が多いのではないか。社員の立場の人は、経営者がどんな思いで経営をしているかを学ぶために読んでみてもいいだろう。傍で見ているより辛く苦しく悲しいことも多い。

著 者:藤田 晋

出 版:幻冬舎

金 額:1500円




社長は少しバカがいい。

 エステーの会長が書いた経営論。いや、社長論か。タイトルからしてユニークだが、中身もなかなかユニークだ。創業者ではないけれども、創業者らしい武勇伝が満載。たまに「がっちりマンデー」でお見受けする名物経営者だが、厳しい環境を生き抜いた人だから言える泥臭い提言がとても参考になる。上場企業ではあるけれども規模的にもそう大きくはないから、中小企業経営者にも大いに参考になるはずだ。上場企業の経営者がここまで泥臭くやっているのだから、未上場の中堅・中小企業が綺麗事を言っていては話しにならない。経営者、後継者必読の書。リーマン根性の人にも読んで欲しいが、あまり参考にならないだろうな。将来経営幹部になりたいという人は社員の立場であっても読んでみるといいだろう。経営者の苦労を理解することが幹部への第一歩だ。
 本書を読んで、韓非子と君主論を読み直そうかなと思った。しかし、参考にはなるけど、読んでて楽しくないんだよなぁ。つい論語の仁や恕に共感してしまうのは、まだまだ甘い証拠なのかもしれない。シビアに経営しよう。

著 者:鈴木 喬

出 版:WAVE出版

金 額:1400円




ありがとういとしの うぉーくまん・すかいせんさー

 元ソニーのデザイナーが書いたソニーデザインの回想録。ウォークマンなどのソニー製品が生まれるプロセスがデザインの視点から語られている。やっぱりソニーのデザインは洒落ている。世界中の短波放送も受信できるスカイセンサーもなつかしい。中学生の頃、BCLを叔母さんから借りたスカイセンサーでやっていたことを思い出した。他にもかつてお世話になった製品の写真がたくさん掲載されていて嬉しくなる。
 文章はぶつ切りで、決して読みやすくはないが、リアルな現場の話で、デザインがビジネスにどう影響するかを改めて学ぶことができる。ただ技術があって機能を実現するだけでなく、そのデザインが洗練されていなければならない。やはりデザインは、人、モノ、金、情報に次ぐ第5の経営資源だ。その点でソニーから学ぶことは多い。

著 者:谷口修平

出 版:早稲田出版

金 額:1100円




ソーシャルな資本主義

 この本は、なぜ弊社が、可視化経営で「見える化」をすすめ、開発部隊を創発部と呼び、ネットを介して協働作業を行うITツールを提供しているのか、といった理由がバレてしまう一冊。なので、あまりおすすめしたくないけれども、ネットワーク社会においてどういう変化が起こり、それがこれからの企業経営やビジネスにどう影響するかが、とても分かりやすく書かれている本なので、「おすすめBOOKS」ファンのために仕方なくおすすめしておこうと思う。この著者は、なかなかネットワーク化の本質を分かっておられるみたいだ。慶應の教授だが、東大を出てNTTに入りハーバードへ。NTTでの実業経験が良かったのかな。つながり、見えると、どういう力が働くか、を知り、それを踏まえてネットワーク化や可視化を進めていかなければならない。普通の人はそんなことはあまり考えず、つながると便利だから、見える化すると分かりやすいから、程度で進めようとするから大した成果に結び付かない。
 本書では、「個」と「公」の間に、「共」という概念を置き、それをソーシャルと称した。それでタイトルが「ソーシャルな資本主義」ということなのだろうが、「共」をソーシャルと呼ぶことで、流行モノの浅薄な感じと、SNSを使えばそれが実現するかのような安直さを読者に与えてしまう恐れがあるように思う。また資本主義についての洞察はあまりなく、ポスト資本主義といった意味合いで「ソーシャルな資本主義」という言葉を遣っているので、資本主義というよりも、資本主義の終焉について書かれていると考えた方がいいだろう。
 いずれにしても良い本だと思うが、あまり多くの人には読んで欲しくないとも思う。

著 者:國領二郎

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1800円




経営は何をすべきか

 あの名著「コア・コンピタンス経営」の共著者ゲイリー・ハメルの最新刊。コア・コンピタンスからは多くの学びや気付きを得た。何度も読み返した。その著者の本だ。そして、本の帯には、「ウォール・ストリート・ジャーナル誌が選ぶ世界の経営思想家ナンバーワン渾身の最新作」とまで書いてある。これは読むしかない。
 コア・コンピタンス経営が1995年に日本語版が出ていて、すでに20年近く経過。あの本で、まさに思想家になってしまったようだ。実務をしない思想家は好きな理想が語れる。それで高額の報酬がもらえてさぞ幸せだろう。だが、実務家、企業家、実践マネージャーはそれをどう実行するかが問題。「今、経営は何をすべきか」と語ったのは、「理念」「イノベーション」「適応力」「情熱」「イデオロギー」の5つ。はじめにと最終章を読んだら分かるようなことだった。はじめにを読んだ時、「こんなこと?」と疑問には思ったが、あのハメルの渾身策なのだから、何か深い洞察があるはずだと思って頑張って読んだ。何度も眠くなったが、何とか読み切った。期待値が高過ぎたか。。。。
 もちろん書かれている内容は、その通りだと思うし、これからの企業経営は変わっていくことになるだろう。その流れを知っておくことは重要である。だから、この「おすすめBOOKS」に載せようかどうしようか迷ったが、おすすめすることにした。あのハメルがこんなことを言っているということを知っておくことは意味があるだろうし、ハメルでもこの程度のことを言っているのかと自信にもつながるだろう。
 ちょっと褒めておくと、官僚制の限界を指摘する「イデオロギー」部に書かれている対談は面白かった。コア・コンピタンス経営を久し振りに読み返してみようかな。

著 者:ゲイリー・ハメル

出 版:ダイヤモンド社

金 額:2200円




機械との競争

 MITスローン・スクール、デジタル・ビジネス・センターのディレクターと主任によって書かれた、テクノロジー失業の脅威啓蒙本。コンピュータの進化によって人間の仕事が奪われていくと説く。雇用なき景気回復という指摘は以前からあったが、それがアウトソーシングやオフショアによるものではなく、機械に奪われているのだと指摘する。本の帯には「恐るべき最新レポート」とか「アメリカ経済界で話題沸騰!!」とハデハデしく書かれているが、それほど驚くような内容ではない。仕事を奪われると考えずに、システムやロボットにできるようなことはどんどんやらせて、生身の人間には人間にしかできないことをやってもらえばいいと思う。反復、定型の創造性を発揮できない仕事は人間がやらなくて良い。能力的に難しいことができないという場合でも、人と人のヒューマンなケアは機械にはできないから活躍の余地はある。
 アメリカは違うのだが、先進国はどこも人口減少へ進んでいく。人は足りない。特に日本では、単純かつ低賃金の仕事には就こうとしないミスマッチもある。どんどん機械化、システム化、ロボット化を進めるべきである。と思うので、私は電子秘書を作った。営業事務やアシスタントを雇う余裕のない会社も増えているから、これによって営業マンの生産性を上げたらいいと思う。おかげさまで大好評だ。何しろ人と比べて圧倒的に安い。そして、本書で指摘しているように、人には到底真似ができないほど緻密で、反復、定型の業務を不平不満も言わずにこなしてくれる。
 アメリカの失業率が高止まりしている理由を解説することが主目的のようで、そのまま日本には当てはまらないし、ロボットへの抵抗感も違いがあるように思うが、こうした世の流れから逃れることはできないと気付くには有効な一冊。

著 者:エリック・ブリニュルフソン+アンドリュー・マカフィー

出 版:日経BP社

金 額:1600円




トヨタ新現場主義経営

 朝日新聞の名古屋版の連載「TOYOTA再発見」の補筆、書籍化。著者は朝日新聞社。なんだか変な感じがするが、トヨタの担当記者が書いた内容になっている。豊田章男社長のインタビューがベースになっていて、そこから過去のトヨタを振り返る構成。トヨタのリコール問題をきっかけにして始まった連載のようで、よくあるトヨタ礼賛本とは違って中立的に書かれているが、やはりトヨタの担当記者が地元名古屋版のために書いたものだけに、多少のヨイショが入っている気がする。
 だが、改めてトヨタの過去からの取り組みを読んでみると、さすが世界一になった会社だけはあるなと思う。何事にも徹底しているし、モノづくりに取り組む生真面目さが伝わってくる。豊田章男社長の人柄もうまく表現されているのではないか。豊田家への大政奉還的な感じがして、あまりいい印象を持っていなかったが、さすが創業家。思い入れが違う。同族経営の良さはこういうところにあるんだろうなと思う。
 経営者、後継者必読。モノづくりの会社も読んだ方がいい。米国のビッグスリーに教わり、追いつき追い越して世界一になったストーリーは、すぐに「日本は遅れているから」「うちは中小だから」と言い訳ばかりしている経営者に喝を入れてくれるはずだ。

著 者:朝日新聞社

出 版:朝日新聞出版

金 額:1500円




社長復活

 「社長失格」の著者がついに復活。一時はうつ状態にまでなったそうだが、3.11の大地震で生きることの大切さを感じて甦ったという。倒産も、そこからの復活も、なかなか体験できないから、こういう生々しく書いてくれる人はありがたい。一度は失敗したとは言え、アイデアマンであることは間違いない。新しいビジネスモデルを立ち上げるヒントにもなるだろう。「会社2.0」という社員を雇用しない経営の在り方も提唱している。雇用契約ではなく、業務委託契約でパートナーシップを結ぶのだそうだ。少ない人数のうちは可能だろうが、ビジネスが大きくなり、頭数を増やしたいとなった時にどうなるのか、興味深い。
 私は、似たような考え方をNI(ネットワーク・アイデンティティ)経営と呼んでいるが、今の日本の法制度の中では雇用関係を結ばないのはなかなか難しい。雇用の必要のない人には遠心力がかかるから、それを求心させるビジョンや戦略が必要になるだろう。今後の展開をウォッチングしたい。
 起業家志望者、ベンチャー経営者は是非読んでみるといいだろう。事業の失敗を疑似体験させてくれる本であり、新しいビジネスを起こすプロセスを教えてくれる本である。

著 者:板倉雄一郎

出 版:PHP研究所

金 額:1400円




7大企業を動かす宗教哲学

 宗教学者の目から見た企業の経営哲学や理念のあり方が書かれた一冊。何をもって7大企業と言っているのかは不明確だが、取り上げられた企業は、松下電器(パナソニック)、ダイエー、トヨタ、サントリー、阪急電鉄、セゾン(西武)、ユニクロである。創業者、第二創業者に特徴のある企業を集めたと言ってもいいかもしれない。本のタイトルからは、宗教と企業経営の関わりについて書かれたものかと期待したが、そうではなく、企業経営も宗教と似たところがあり、それは経営者の理念や哲学が宗教における経典のような役割を果たすのだといった内容。とりあげた企業が特定の宗教と関係しているといったものではない。
 企業のあり方、風土、経営規律といったものは、経営者の哲学を反映するものであることは間違いないだろう。明確な理念や目的も持たず、単に小手先のテクニックで経営をしようと思っても永続的な繁栄を実現することは難しいと学ぶには良い一冊だろう。パナソニックもダイエーもセゾンも現状厳しいが、それが経営者の哲学とどう関係しているのかも考えてみたい。

著 者:島田裕巳

出 版:角川書店

金 額:781円




個を動かす

 ローソンの新浪社長の経営手腕についてまとめられた一冊。ハーバードのMBAホルダーで三菱商事のエリートが社員食堂で皿洗いまでしたと言う。そんなエリートにそこまでされたら敵わないのだが、そんなエリートがそこまでやってもセブンイレブンには敵わないのだから面白い。新浪社長が優秀な経営者であることは間違いないのだろうが、それよりも巨人セブンイレブンに対してローソンがどう戦うのか、という視点で興味深く読んだ。セブンの中央集権に対して、ローソンは分権。加盟店オーナーの地位を上げようという取り組みには特に興味をそそられる。そもそもフランチャイズビジネスには、加盟店(フランチャイジー)の本部(フランチャイザー)への依存心が大きくなり過ぎるという問題があると思う。だからどうしても中央集権的にならざるを得ない。フランチャイジーが分権、独立して動けるなら、加盟料やロイヤリティーを払う必要がない。そこをローソンは覆すというのであれば、面白い。
 リーダーシップやビジネスモデルを考える上でも参考になる本だろう。ただ、正直なところ新浪社長には悪いけれども、ローソンの店舗レベルは低いと思う。特にうちの近所のサークルKから看板を変えた店が酷い。サークルKの時の方がよっぽど良かった。まだまだ伸びシロがあるということにしておこう。頑張れローソン。

著 者:池田信太朗

出 版:日経BP社

金 額:1500円




結果を出すリーダーはみな非情である

 元産業再生機構の冨山氏が書いたミドルクラス向けリーダー論。マキャベリの君主論の日本企業ミドルマネジメント向けだそうだ。みんなで仲良く力を合わせていけばなんとかなる、みたいな甘い話では今のご時世を渡っていくことはできない。上司や置かれた環境を批判するばかりの人間も使い物にならない。分析したりあるべき論を言うだけなら誰でもできる。著者はそうした人間を「野党的評論家」と呼ぶ。たしかに野党は、言うだけ、批判だけでいいから、好き放題なことが言える。聞いていると、その時は理想論だからいいような気がするが、いざやらせてみるとできない。まるで民主党のような話だな。
 ミドル向けというよりもトップ向けのリーダーシップ論と考えてもいいような内容だ。要するに、経営者の意識で課長をやれということであり、社長の意識で課長をやっている人間が上に上がっていくということなのだろう。課長になったら、部長になったら・・・とロクにやりもしないで肩書を先に欲しがる人間が多いが、肩書があるだけでは人は動かせない。そして上に立つことは、下から見ているほど楽しいわけでもない。イヤなことも多いし、イヤなことを敢えてせざるを得ないことも少なくない。
 管理職以上が読むべきなのは当然だが、課長の意識で平社員をやろうという人も読むといいだろう。リーダーを目指すすべての人が読むべき本。

著 者:冨山和彦

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1500円




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