代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2023年版

諸葛亮 上・下

 『天空の舟』『夏姫春秋』『重耳』『子産』『劉邦』『三国志』などで多くの文学賞を受賞して来た作家が諸葛亮を取り上げて『三国志』のスピンオフを書いたとあっては、孫子兵法家として読まないわけにはいかない。と言っても、私は宮城谷昌光氏の作品としては、孫武が登場して呉越の攻防を描いた『湖底の城』しか読んだことがなかった。それがなぜ『諸葛亮』を手に取ったか。それはやはり孫子の兵法が出て来るから。孫子兵法の研究の一環として、名軍師、名参謀と言われる諸葛孔明がどういう人物であったのかを知りたいからである。
 もちろん、『三国志』は吉川英治氏などいろいろな人が書いているしマンガ版もあり、孫子の注釈書まで残した魏の曹操を知るためにも、孫子兵法の使い手としては必読のものだから当然読んで来たのだが、もうそれで充分な気がして宮城谷版『三国志』は読んでいなかったわけである。ということもあって、宮城谷昌光氏が諸葛亮をどう描くのか確認せざるを得ない気持ちになったのだ。
 正直なところ、史実を淡々となぞっているような展開で、諸葛亮がなぜ名軍師、名参謀となったのかという背景や経緯のようなものは薄いように感じた。『三国志』が好きで、諸葛孔明が好きだという人にとっては、三顧の礼で劉備に仕える前のエピソードなどもあって楽しめる内容だろう。
 個人的には、地名と人名が覚えづらく、やっぱり歴史ものは日本のものの方が、土地勘もあるし登場人物を知っていることも多くイメージしやすいと思う。
 アニメやドラマで話題になっている「パリピ孔明」で諸葛孔明に興味を持った人や『三国志』ファンは是非本作を読んでみると良い。『三国志』には出て来ない諸葛亮を感じることができるだろう。

著 者:宮城谷昌光

出 版:日経BP

金 額:各1800円


諸葛亮 上・下

イーロン・マスク 上・下

 世界的ベストセラーとなった「スティーブ・ジョブズ」も書いた伝記作家による「イーロン・マスク」が書かれたら読まないわけにはいかない。アイザックソンは、2年間マスクに密着したらしい。そして本人チェック無しで本書は出版されたと言う。
 ジョブズもかなりイカれた人だったが、マスクはそれを上回るイカれ具合だった。だからこそ、テスラ、スペースX、旧ツイッターのXなど複数の世界を変えるほどの力を持った企業を率いることができるのだろう。「とても真似できない」と思う一方、「これだけやっているヤツがいるのにすぐにできない、無理だと言っていてはダメだな」とも思える。上下巻だけに結構な文量があるが、知っている会社が出て来て、生々しいやり取りも書かれているので、興味深く読むことが出来ると思う。企業経営に決められた正解はないことが理解出来るだろう。
 起業家を志す人、ベンチャー経営者は必読。普通の会社の経営者も、自社の停滞や現状維持に危機感を持っているなら読んでみると良いだろう。

著 者:ウォルター・アイザックソン

出 版:文藝春秋

金 額:各2200円


イーロン・マスク 上・下

経営学とはなにか

 国際大学学長、一橋大学名誉教授による、経営学解説。経営とは何か、その経営を科学する経営学とは何を考察する学問なのかを説いた内容であり、欧米企業向けの翻訳本ではなく21世紀の日本企業を対象としていて、日本の経営者には分かりやすく現実的なものになっている。伊丹先生は、「孫子に経営を読む」という著作もあり、孫子の兵法が現代の企業経営に通じることを分かっている人なので、経営に対する考え方は大いに参考になる。本書にも孫子の兵法が結構出て来る。
 難があるとすれば、少々冗長で、似たような話が何度も出て来るのでサクッと経営とは何かを知りたい簡便派には読みにくいように思う。経営を学問として究めようという気がないと微妙な言葉の定義や言い回しの差まで細かく読み込めないのではないかな。
 個人的には、日本の経営学の泰斗として日本流の経営のあるべき姿を示すのであれば、「ステークホルダー資本主義」を正解のように扱うのではなく、日本ならでは、伊丹先生ならではの経営思想を示していただきたかった。しかし良著。おすすめです。

著 者:伊丹敬之

出 版:日経BP 日本経済新聞出版

金 額:2200円


経営学とはなにか

アウトプット思考

 ボストン・コンサルティング・グループの元日本代表で、昨年3月まで早稲田大学ビジネススクールで教授をされていた内田氏の思考ノウハウ本。内田氏の思考法と言えば、「仮説思考」が有名で、本書はその具体的なノウハウを整理したものとも言える。
 仮説によって出すべきアウトプットは想定される。それに必要なインプットがあれば良いのであって、アウトプットするアテもないのに、ただ勉強し情報収集するインプットを増やしても効率が悪いよというわけだ。本書は2011年に出された新書の加筆修正版なのだが、なぜ今本書が必要だと著者が考えたかというと、AIの普及やネット情報の氾濫があるからだ。もはや人間が少々頑張ってインプットしても生成AIやネット検索による情報量には勝てない。
 では、もうAIやネットがあるから勉強も情報収集も必要ないのかというとそうではない。誰でも手に入れられる情報では他者と差別化できないと著者は説く。だから自分なりのアウトプットを決め、それに向けたインプットをして行く。そのために本書では「20の引き出し」を持てと説く。自分が関心のあるテーマを20ほど挙げて、それに対してインプットして行くのだそうだ。もちろん、「20の引き出し」で設定したテーマがそもそも独自性のあるものの方がいいだろう。大切なのは差別化だから。
 私は、内田氏の「競争戦略」ファンだ。「仮説思考」はコンサルタントにとってはある意味常識のようなもので、まぁそうだよねということになるのだが、内田氏には競争戦略思考があるから面白い。本書でも、書籍によるインプットについて「いくら多くの本を読んだところで、その本の内容や著者の主張を理解しているというだけでは、差別化は図れない。」と指摘。やっぱり差別化が出てくる。これは本当に大事な指摘で、弊社でも若いコンサルタントを見ていると、ネット情報や他人の書いた本を読んで分かった気になっている人が多過ぎる。まさにインプット思考の「お勉強」になっているわけだ。
 知的アウトプットで戦うためには何が必要か、知的サービスを提供するコンサルタントは当然だが、一般のビジネスパーソンも本書を読んでみるといいだろう。差別化、競争戦略を意識しながら読むことをおすすめする。

著 者:内田和成

出 版:PHP研究所

金 額:1500円


アウトプット思考

英雄たちの経営力

 小説家の伊東潤先生が、歴史上の偉人たち(蘇我馬子、白河上皇、平清盛、源頼朝、日野富子、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、荻原重秀、田沼意次、大久保利通、大隈重信)の能力を企業の経営力に置き換えたらどう評価できるかを解説してくれる一冊。登場する12名の多くを小説の題材としても取り上げている伊東先生だけに、それぞれのエピソードが簡潔にまとめられているのに深くて面白い。また、荻原重秀や日野富子など一般にはあまり知られていない人物も取り上げられていて新たな発見もある。
 歴史上の人物と企業経営をつなげて気付きや示唆を与えることができるのは伊東先生を置いて他にいないだろう。IBMに長く勤められコンサルタントも経て歴史小説家としてデビューしたキャリアがあってこその本書である。
 12名の経営力はレーダーチャートになっていて採点結果でランキングされている。詳細はネタバレになるので書けないが、注目すべきは大隈重信。知名度は高いが大隈の実績を知っている人は少ないと思う。本書を読んで大隈重信についてもっと知りたくなったら、このおすすめBOOKSでも2022年にご紹介した「威風堂々」上下巻を読んでみると良いだろう。
 賢者は歴史に学ぶ。BS11の歴史教養番組「偉人・敗北からの教訓」の解説者としても活躍されている著者の知見を吸収して、歴史から学び企業経営に活かしたいものである。企業経営者ならびに経営者を目指す人は必読。

著 者:伊東 潤

出 版:実業之日本社

金 額:1600円


英雄たちの経営力

ハッキング・デジタル DXの成功法則

 スイス・ローザンヌにあるビジネススクール、IMD(International Institute for Management Development)のマイケル・ウェイド教授を中心とするグローバルセンター・フォー・デジタルビジネス・トランスフォーメーションによるDX指南本。基本的に大規模かつデジタル人材も社内にいる企業を対象にした研究ならびに提言をしているのだと思うが、DXで考慮すべきポイントやそれを進める際の注意点などがきちんと整理されていて,それ以外の企業にも参考になる一冊。
 「DXを始動する」に始まり、「推進力を構築する」「外部環境と協働する」「ビジネスモデルを変革する」「人と組織を導く」「推進力を持続する」「デジタル組織になるための道のり」という具合に、単にシステム導入するとかデジタル化などの話ではなく、企業を変革していくDXの全体を指南する内容になっている。
 もちろん、大企業向けであり、日本のデジタル人材がいない中小企業では必要ないことも書いてあるし、それは無理だから無視していいなと思えるところもある。そうした点は拙著「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」を先に読んで中小企業がどうDXに向き合うべきか、デジタル人材がいない場合はどうすれば良いかを理解した上で、本書の内容を学ぶと良いと思う。
 「DXで重要なのは技術よりも、リーダーシップや人材、組織構造、文化などにある」という指摘は、まさにそうだと思うし、IMDのように世界で高い評価を受けているビジネススクールの研究者が日本企業を対象としている私と同じような見解を持っていることに自信も持てた。どの国であれ、どんな規模であれ、デジタルの力を活用して企業を変えていく本質は変わらないことが良く分かった。久しぶりに良い本に出会った。DXを進めている企業の経営者やDX担当者は必読。翻訳本だが、読みやすい。

著 者:マイケル・ウェイド+ディディエ・ボネ+横井朋子+ニコラウス・オブウェゲザー

出 版:日本経済新聞出版

金 額:2400円


ハッキング・デジタル DXの成功法則

中小ベンチャー企業を壊す!人事評価制度 17の大間違い

 かつて「すごいしかけ」シリーズでベストセラーを量産し、トーマツで定額制研修サービスを始めて教育研修業界にイノベーションを起こした白潟敏朗氏の最新刊(?)だと思う。ここのところあまりご著書を見かけなかったように思うが(私が知らないだけかもしれないが)、2014年に独立して白潟総合研究所(株)を設立されている。
 本書をおすすめする理由は、「人事評価で人が育つ」とか「人事評価制度で会社を変える」といった一部の人事コンサルの提言を一刀両断している点にある。人事評価制度は人の行動を変える上で大切なものであることは間違いないが、それで人が育ったり、ましてや会社が変わるようなものではない。私も本書で白潟氏が回顧しているのと同様に、若い時に多くの企業に人事評価制度を導入したので本書で訴えている17の大間違いはよく分かるし同感だ。 
 著者がこの境地に至ったのはトーマツという看板の下から独立して白潟総合研究所の経営で自社の社員の採用や育成に苦労して来られたからではないかと思う。人事コンサルが外部から人事制度を綺麗にしたところで実態がどう変化するのかまではフォローできない。綺麗な制度を作ったからと言って組織や経営が良くなるとは限らない。そういう泥臭い体験がないと大間違いに気付けないはずだからだ。
 書名に「中小ベンチャー企業を壊す」とあるように、中小企業の経営者に向けて書かれた本だが、人事制度をいじくって会社を変えることができると安易に考えている経営者には是非読んでみることをおすすめしたい。
 本書で面白いのは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に賛同している社員でなければ人事制度をどういじくっても意味がないという指摘と、業界平均より少し高い年収を出せなければ評価制度を変えても効果がないという指摘をしている点だ。まさにそうだと思うし、結局、人の評価の前に、どういうマーケットにどういうビジネスモデルで価値提供し収益を上げるかという経営戦略がなければ経営は成り立たないということなのだ。この指摘を中小企業経営者には知って欲しいが、現実には、MVVをただの綺麗事のお題目ではなく本当の意味で明文化し可視化し実践している企業などほとんどなく、業界平均以上の給与を出せる企業もまた非常に少ないという問題がある。だからこそ会社を変えたいと思い人事制度にも手をつけようと思うのだろうが、そもそも人事制度ではどうにもならないという自己撞着を起こす。だから一般の人事コンサルにはこのような指摘はできない。著者がどんなコンサルティングをしているのかは知らないが・・・。
 ではどうすればいいのかという答えは残念ながら本書にはないが、「人事評価制度で会社を変えられる」というのは大間違いであるという本書の主張が正しいことには気付ける一冊である。
 と、ここまで読んでも「いやいや、人事制度を何とかすれば会社は変わるはず」と思った経営者は必読。

著 者:白潟敏朗

出 版:すばる舎

金 額:1600円


中小ベンチャー企業を壊す!人事評価制度 17の大間違い

経営生きもの論

 日本能率協会80周年記念ということで出版された本で、サブタイトルは「稀代のコンサルタント岡田潔の経営哲学」となっている。著作を残さずに亡くなられた日本能率協会のコンサルタント、岡田潔氏の講演録や寄稿文などを集めて、門下生らが「経営生きもの論」としてまとめたものである。
 「コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル」に続いて、コンサルティング業界本が連続してしまったが、本書には、日本における大正時代からの「能率運動」すなわちコンサルティングの歴史が書かれていて、コンサルティング業界に身を置く者としては老いも若きも是非読んでおくべき内容ではないかと思う。テイラーの「科学的管理法」が出た翌々年には、小説風にした「無益の手法を省く秘訣」という本が出版されて150万部のベストセラーになったといったトピックも紹介されていて、すでに大正期には日本でもコンサルティングの素地があったことが分かる。
 第二部は岡田氏のコンサルティング論になっている。表現は多少古く感じるが、企業経営をどう見て、どう指導していくのかという基本は変わらない。アメリカから持ってきた知識や理論を振りかざす「横文字説明屋」「ではの守」みたいなコンサルタントではダメなのだ。
 企業を生きものとして捉え、矛盾の統合に価値を見出す点など、岡田氏のコンサルティング論には同意できる点も多い。特に川喜田二郎氏のKJ法を高く評価しているのが嬉しい。KJ法も日本が生んだ創造創発手法であり、日本のコンサルタントはもっと活用すべきものだと思う。デジタルの時代になっても活かせることが多いし、そのコンセプトは全く色褪せていない。
 一般の事業会社の方にはあまり必要ないだろうが、日本で経営コンサルタントを名乗る人なら必読である。日本能率協会様にもこのような書籍を80周年という歴史を踏まえて世に出していただいたことを感謝したい。もっと普段から日本のコンサルティングの歴史をアピールされてはいかがだろうか。日本のコンサルティングの歴史を知り、誇りを持てる一冊。

著 者:中村正己(監修)

出 版:日本能率協会マネジメントセンター

金 額:1800円


経営生きもの論

コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル

 1986年生まれで、上智大学法学部法律学科卒業後、2009年に外資系大手コンサルティング会社に入社し2021年に退職した著者によるコンサルティング会社の内幕暴露本。元々Twitterやnoteで発信していて人気が出たことで本になったもののようだ。ペンネームで、勤めていたコンサル会社名も出していないからこそ書けた具体的内容になっていて、コンサルタント志望者や現コンサルタントには参考になるだろうと思う。たぶん、アクセンチュアだと思うけど(笑)。
 最後辺りは著者自身を美化し過ぎではないかと思うところもあったが、なかなか実名では出てこない失敗談もたくさんあり、クライアント側の人が本書を読んだら、「こんな若造にあんなに高いコンサル料を払っていたのか」と怒り出すかもしれない。なので実名で書かれたコンサル業界本にはこんな内容は書かれていない・・・。
 2009年入社ということで、最初のうちはかなり過重労働、ブラック労働ぶりが強調されているが、今やコンサル業界も働き方改革だなんだでホワイト化が進んでいて、実情には変化がある。しかし、本書に書かれているような知的バトル、知的筋トレが必要な職業であることをコンサル志望者、若手コンサルタントには知っておいてもらいたいと思う。労働時間は短くなっているが、その分限られた時間でアウトプットを出さなければならず、以前は通用していた時間をかけてカバーするという技が使えない。より一層の質的鍛錬が必要となっているわけだ。若いうちからそれなりに高い収入を得ようと思うならそれ相応の実力と努力と知的筋力が必要であるのは当然のことである。とコンサル歴35年、還暦間近の私は思う・・・。
 ちなみに弊社、NIコンサルティングでは「コンサルティングの新しいカタチ」を実現したことで、同じコンサルティングでもやり方が違っていて、労働集約型の人月仕事ではないのでコンサル志望の方はご安心を。クライアントサイドの方も「コンサルティングの新しいカタチ」によってローコスト化を実現しておりますのでご安心ください。
 コンサルタント志望者や若手コンサルタントにおすすめの一冊。いろいろと気付きやヒントが得られると思います。

著 者:メン獄

出 版:文藝春秋

金 額:1800円


コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル

ビジネスの兵法 孫子に学ぶ経営の神髄

 米国のジャーナリストで、人気ポッドキャスト「Business Wars」と「Business Wars Daily」の主催者である著者が書いた孫子兵法のビジネス応用本。これを日本の孫子兵法家が読まないわけにはいかない。
 孫子の兵法は世界中で今も読まれていて、ビジネスにも応用されている。2500年も前の話が21世紀に通用するのか?と疑問に思う人も多いだろうが、人や組織の本質は何も変わっていないのだ。戦争の原理原則を説く孫子は、命のやり取りをする極限状態での人間観察に基づいているから、本質を突いていてビジネス戦争にも役立つ。そして中国や日本、東洋だけでなく米国など西洋でも役に立つということが、本書を読むと良く分かるだろう。最近、孫子本であまり良い本がなかったので、久しぶりに紹介する孫子本である。
 本書は、孫子の兵法を細かく紹介していくのではなく、孫子の一節を挙げて、それに関連するビジネス戦争、ライバル対決を実例によって紹介する形式になっている。米国の事例で、尚且つちょっと古いネタが多いが、事例は結構詳細で、人物像にまで迫る内容になっているので、読んでいて面白いし参考になる。
 ビジネス戦争はたとえば、ブロックバスター対Netflix、ギブソン対フェンダー、IBM対ユニバック、ネットスケープ対マイクロソフト、レイ・クロック対マクドナルド兄弟、iPhone対ブラックベリー、H&M対ZARA、アディダス対プーマという感じで27紹介されている。日本では馴染みのない企業も出てくるが、任天堂も登場したりする。
 孫子の兵法が現代のビジネスにも応用できることが良く分かる一冊。おすすめです。

著 者:デイヴィッド・ブラウン

出 版:早川書房

金 額:2500円


ビジネスの兵法 孫子に学ぶ経営の神髄

キーエンス解剖

 日経ビジネスの記者によるキーエンス解説本。サブタイトルは「最強企業のメカニズム」。キーエンスの22年3月期の売上は7552億円。社員の平均年間給与は2000万円超で、それだけ払っても営業利益率は55.4%。変動はあるが時価総額ランキングで第3位だという。すごい企業であることは間違いないが、時価総額が高いのはその高い利益率によるものであり、資本家はそれに喜ぶだろうが、顧客の立場に立てばどうだろう。創業者である滝崎武光氏は過去に2社経営に失敗して3度目の起業だったそうだ。それ故か、経営理念の第一に「会社を永続させる」を置いた。当社のホームページも確認して現社長のメッセージを見てみると、優先度の高い課題は「付加価値の高い商品を創造し続けること」とある。とにかく自社の付加価値を高めて利益を出し、給与も人並み以上に払って辞めたければ辞めていいよと言える人材確保を実現することで、会社を永続させる体制を築いた執念のようなものを感じる。資金繰りに窮する、人に辞められるという経営者の憂いを徹底的に排除した、世の経営者にとって最高の経営を実現した滝崎氏の本音に迫ってくれたら「解剖」の甲斐があったと言えたのではないだろうか。ちなみに、自己資本比率は93.5%。
 強い会社を作る源泉は値引きせずに売上を作る営業力だ。その秘密はSFAの運用徹底に尽きる。多くの企業はSFAを導入しても運用を徹底できずに中途半端な日報システムにしてしまうが、キーエンスがどのような運用をしているのか本書を読んでみるといいだろう。Sales Force Assistantを提供しているNIコンサルティングとしても同意できる内容が多かったが、これを普通の会社でそのままやったら、厳し過ぎて営業担当者が逃げ出してしまいそうなので注意が必要だ。ロープレの徹底は良いと思う。やっているかやっていないかの行動管理をするだけでは管理のための管理になって形骸化してしまう。どうやるか、どう話すか、どう提案するかが大事なのであって、それができていてこその数や量である。
 頑張っているのに利益が出ない企業、「貧乏暇なし」というのが口癖になっている経営者は是非本書を読んでみるといいだろう。いかに自分の経営が甘っちょろいかがよく分かるはずだ。
 私はやっぱりこの会社の創業者が何を目指そうとしたのかが気になる。良い製品を生み出しそれが顧客の生産性向上に寄与すると思えば、それをより多くの顧客に提供できるようにリーズナブルな価格設定にするのではないだろうか。社員の平均給与は1000万程度で、営業利益率は30%もあれば充分立派な経営ができる。それで売上が2兆円になれば、利益の絶対額は大きくなる。その方が世のため人のためになると思うがどうだろうか。その辺りのお考えを聞いてみたいものだ。「強い会社」「最強企業」とは何か。「良い会社」「優良企業」とはどうあるべきか。改めて考えてみたくなる一冊。

著 者:西岡 杏

出 版:日経BP

金 額:1600円


キーエンス解剖

人を選ぶ技術

 コンサルティング会社を経て、ベンチャー起業し、楽天に買収されてヴィッセル神戸の取締役となり、さらにプロ経営者として数社の役員を経験した後に、世界最高峰のエグゼクティブヘッドハンターであるエゴンゼンダー社に入社して、ヘッドハンティング、アセスメント、コーチングを100社以上の企業、約5000人の経営人材へ実施し、2016年には同社の共同経営者(パートナー)になった・・・ところから2017年にZOZOの前澤友作社長にスカウトされ、ZOZOスーツの立ち上げや海外72か国へのグローバル展開を指揮したと思ったら、現在はグロービス・キャピタル・パートナーズにて、組織グロースの支援、起業家メンタリングなどにあたりつつ、自身のスポーツマネジメント会社を経営中という著者が書いた、人材選定の極意についての本だ。
 著者の経歴を見ただけで、こんな経験をして来た人が人材をどう見てどう選ぶのか、人材についてどう考えているのかを知りたくなるだろう。私もそうだ。本書を読んでみて興味深かったので、著者がいったいどんな人物なのか知りたくて、ラジオ番組にかこつけてゲストにお呼びして実際にお会いして話も聞いた。そんな本である。
 内容については触れないでおくので、経営者や人事関係の人は是非お読みいただきたい。面接テクニックなど小手先のHow to本ではない。人をどう見るか。人材とは何か。それを考えるための一冊。 

著 者:小野壮彦

出 版:フォレスト出版

金 額:1800円


人を選ぶ技術

DX戦記

 DXに取り組んだ会社が直面する苦労や失敗がストーリー仕立てで紹介されている一冊。サブタイトルは「ゼロから挑んだ デジタル経営改革ストーリー」。あるべき論や綺麗な事例を紹介するだけのDX本が多い中で、陥りがちな罠や多くの企業がぶち当たるであろう壁について書かれていて、特に前半部分は参考になると思う。
 著者自身が経営する会社での事例ということでよりリアリティがあるのだろうと思うが、最初は不動産の会社だったのが、上場し、さらにDXを指導する会社を立ち上げるという話に展開して行くため、途中からは話がうまく行き過ぎ、デジタル人材がいない中小企業とはかけ離れて行く感じにはなる。デジタル人材がいない、雇いたくても雇えない中小企業はどうすれば良いのかというところまでの示唆はないので、そこは「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」を読んでいただくとして、その次に本書を読んで、DXを進める際の流れをつかんでもらうと良いと思う。ストーリー形式で読みやすいのでおすすめだ。

著 者:中西 聖

出 版:幻冬舎

金 額:1500円


DX戦記

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