代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2024年版

企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか

 埼玉大学経済経営系大学院准教授による経営改革本。結構売れているみたいだし、「構造的無能化」というワードに引き寄せられて読んでみたのだが、JTC(Japanese Traditional Company)向けのエッセイ集のように感じた。企業変革と言葉で言うのは簡単だが、JTCを変革させるのはかなり難しいだろう。その難題に対して解決策を提示するチャレンジは素晴らしい。
 本書では、その難しい企業変革を成し遂げるには、組織の「多義性」を理解し、組織の「複雑性」に挑み、組織の「自発性」を育めと説く。言葉はそれっぽいが、そんなことはJTCにお勤めのご当人たちがよく分かっているのではないかと思う。分かっているけど出来ないから困っているのであって、それを他人事のように評論されても解決策は見えてこない。
 問題を論うばかりで解決策がないなぁ~と思いつつも読み進め、最終の第8章「企業変革を推進し、支援する」に到達。いよいよ具体的な策が出て来るか!?と期待したのだが、「本社のコーポレート機能の1つとして特命組織を作って、経営陣が『全社戦略を考えられるようになる』ようにファシリテートして、各役員が自分の役割をしっかりと理解し、実行できるようになるまで支援せよ」と来た。こんな呑気なことを言っているからJTCの変革が進まないのだろうなと思う。
 そもそも全社戦略も考えられず、担当部署の役割も理解できないような役員は解任して、戦略立案できない人をできるように支援していくだけの力量のある人材が社内にいるなら、その人をトップに抜擢せよ。そうしたらすぐに企業変革できるよ、と思った。では、なぜこの本をおすすめBOOKSに取り上げているのか?ということになるのだが、どうも売れているようなので、日本企業の99.7%を占める中小企業の皆さんはこの本を参考にしてはダメですよという情報提供である。もちろん、反面教師という役割もあるわけで、本書を読んで「こんな経営をしていては大企業病になるだろうな」と学べるという点ではおすすめできる。興味のある方はご一読を。

著 者:宇田川元一

出 版:日本経済新聞出版

金 額:2200円


企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか

暗黙知が伝わる 動画経営

 『知識創造企業』の著者として有名な野中郁次郎先生が監修し、早稲田大学大学院の入山章栄教授が絶賛し、事例解説も書いている動画活用の解説本。サブタイトルは「生産性を飛躍させるマネジメント・バイ・ムービー」。著者は、元アクセンチュアでコンサルタントをしていた人で、動画配信サービスを提供しているClipLine株式会社の社長。本書はその動画配信サービスが、野中郁次郎先生の提唱する知識創造理論を実践するカギになると主張している。「生産性と知識創造理論を結び付けるカギは動画だった」という序章が本書のすべてと言っても良いだろう。自社のサービスに箔をつけるために、野中、入山の両先生まで登場させたのかな(笑)。
 文字や静止画よりも動画の方が伝わる情報量が多いのは素人が考えても分かる当り前なことであって、わざわざ知識創造理論のSECIモデルとか、入山先生の解説などは無くても良いような気がしなくもない・・・。入山先生には「普段からさまざまなご協力をいただいている」との記述もあるので顧問か何かを頼んでいるのかもしれない。もちろん、知識創造理論には、学術的に「形式的な知識を暗黙知であると誤解したことによって、SECIモデルが成り立っていて、単に形式知の共有に過ぎないものを知識創造と呼んでいるに過ぎない」といった指摘をする人もいるので、動画によって、本人が意識していない(まさに暗黙知)が「表出化」し「共同化」することが可能になるという改善案を示したかったのかもしれない(本書にそのような記述はないが)。
 本書の半分くらいは著者の会社が提供する動画サービスの事例紹介。各事例にはQRコードがついていて、実際の動画を見ることができる。だったら、書籍ではなく著者の会社のWEBサイトかYouTubeで良いじゃないか!!と突っ込みたいところだが、動画の活用を知識創造理論につなげ、野中郁次郎、入山章栄というビッグネームを登場させて敢えて書籍にした点が素晴らしい。是非、多くの人が本書を読んで、動画活用の意味や大切さ、活用方法などを学んで欲しい。なぜかというと、弊社でも「Video Viewer」という動画活用サービスをご提供しているから(笑)。NI Collabo 360というグループウェアのオプション機能なので、予め社員登録は済んでいて、テスト・アンケート機能と連携してeラーニング的な活用もできる。
 最後は弊社の宣伝になってしまいましたが、知識創造理論のSECIモデルを昇華させる取り組みとして動画の活用と本書の購読をおすすめします。

著 者:高橋勇人

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1800円


暗黙知が伝わる 動画経営

読む・聞く、まとめる、言葉にする

 本の要約サービス「flier」のコンテンツDivゼネラルマネージャーであり、日本インタビュアー協会の認定インタビュアーでもある著者の、読んで、聞いて、それを要約する技術や考え方が詰まった一冊。まさに要約のプロ中のプロと言っても良い人の実体験の生々しさがにじみ出る内容になっていて、言葉を扱う知的作業に従事する人は是非とも読んでおくべき本である。
 「要するに、一言で言うとどうなの?」と問われて、的確にパッと返答する力のある人こそ、本質を理解できる本当に頭のいい人だと思う。要するに、要約力である。その要約を売っている「flier」は頭のいい人の集まりだ。実は、「flier」の社長さんをはじめ、本書の著者の松尾さんなど数名の方にお会いしたことがある。というか、拙著の要約もしてもらったし、インタビューを受けたこともある。本書に書かれた技術を使われた経験もあるので、余計に本書の内容を生々しく感じたのかもしれない。「flier」の人たちはどなたも優秀な人ばかりだった。学歴ももちろん高いのだが(著者の松尾さんは京都大学文学部卒)、学校の勉強ができる優秀さだけでなく賢さを感じる人たちなのだ。そんな「flier」の手の内を一部でも知ることができる本書はとても価値があると思う。
 個人的には、メモを取る際に「インプットメモ」と「アウトプットメモ」を使い分けるという点が非常に参考になった。「なるほど、確かに」と思わず納得。早速使って行きたいと思う。おすすめです。

著 者:松尾美里

出 版:フォレスト出版

金 額:1600円


読む・聞く、まとめる、言葉にする

ユニクロ

 日経新聞の編集委員によって書かれたユニクロの企業本。柳井正の半生記と言ってもいいかもしれない。この著者の「ホンダジェット誕生物語」も読んだことがあるが、文章が読みやすく、登場人物がリアリティを持って描かれていて、グイグイと引き込まれる感じがする。本書も500ページ近い大部だが、つい先を読みたくて案外早く読み終わった。ユニクロ(ファーストリテイリング)が山口県の寂れた商店街から世界へと飛躍した要因は何かを探りたい人は必読。
 私は広島出身なので、まさにユニクロの第一号店にも行ったことがあるし、本書のストーリーと同時代を生きて来たので大変興味深く読むことが出来た。詳細はここでは紹介し切れないので是非本書を読んでいただきたいが、お伝えしたいのは、ここまでの内容をよく取材したなという著者の取材力とこの内容を公開することを許した柳井氏の度量を感じることができる一冊であるということだ。
 様々な人物や会社が実名で登場するのだが、一番冴えないのが広島銀行だ。山口と広島は近いし、ユニクロが広島で一号店を出し、広島証券取引所に上場する縁もあったのだろうが、メインバンクとしてファーストリテイリングの成長を支えるべきところをそのスピードについて行けなかった数々のエピソードが何だか悲しい。取材も受けなかったようで反論もなし。私も広島銀行に口座を開設し給与口座も置いていたことがあるが、一切提案などはなし。弱小零細企業など相手にしませんという態度だった。結局、最初に融資を受けたのはそれまで付き合いもなかったメガバンクだった。中小零細は相手にせず、世界に飛び出そうとする企業には置いて行かれるという何とも冴えない話なのだが、私には実感のある地元のエピソードで印象に残った。
 地方から全国へと打って出よう、日本から世界へと飛躍したいとお考えの企業経営者は是非読んでみるといいだろう。多少の失敗で諦めていてはダメだということに気付き、また明日から気合を入れて頑張ろうという気になれる一冊。
 ついでに言うと、地銀や信金などにお勤めの金融マンにもおすすめ。本書を読んで地方の金融機関の将来に危機感を持とう。そして、このままではまずいと思ったら是非NIコンサルティングに転職を(笑)。全国8拠点でエリア限定も可。広島銀行の方も是非。

著 者:杉本貴司

出 版:日経BP

金 額:1900円


ユニクロ

シン・日本の経営 悲観バイアスを排す

 カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル政策・戦略大学院教授による日本企業論。冒頭から「1990年代から2010年代は『失われた時代』ではない。」「遅いのは停滞ではない。」「日本企業は世間で言われるよりもはるかに強い。」といった主張が並び、日本人としては悪くない気分になれる。
 読み進むと「俊敏で多彩な技を繰り出した舞の海のような戦略をとれ」といった話が出て来て、遅くても良いのか俊敏でなければならないのか、どっちなんだ!?と突っ込みたくなり、日本企業が強い理由は「ジャパン・インサイド」という重要部品や生産機械を日本企業が押さえているからだと言われると、結局、舞の海みたいに小技でしか勝負できなくなっているということでは?とまた突っ込みたくもなる。今や日本を代表するSONYですら最終製品では目立ったヒットはなく、部品勝負となっているような有り様だから、あまり日本企業を持ち上げられても素直には喜べない。
 本書の意義は、ドイツ人の米大学教授が、グローバルスタンダードと言われるような欧米の勝手なルールやシリコンバレーのような文化も違う特殊な環境の真似をするべきではないと指摘していることだろう。何でも米国流が良く、欧米に倣え、日本は遅れていると考える「悲観バイアス」は確かに排すべきである。
 ウリケ・シェーデさんには是非「ジャパン・インサイド」ではなく「ジャパン・ブランド」でしっかり稼ぐ日本企業が増えるように指導してもらいたい。私個人としてはSONYにCMOSセンサーなどの部品ではなく最終製品で頑張ってもらいたい。直近ではXperiaをもうちょっと小さくて洒落たものにしてもらいたいな・・・。
 欧米礼賛、日本はダメだと思っている人には必読の書。しかし、対象はすべて上場企業なので、中小企業にはそんなこと関係ないと思うような人にはつまらない一冊でしょう。

著 者:ウリケ・シェーデ

出 版:日経BP 日本経済新聞出版

金 額:1200円


シン・日本の経営 悲観バイアスを排す

売上増の無限ループを実現する 営業DX

 デジタル人材がいない中小企業は、営業DXを起点に全社のDXへと広げ、ビジネスモデルを変え戦略も変えていくべきだと説く一冊。多くのDX本には、先にデジタル活用した自社の将来ビジョンを示して、それに向けてDXを進めるべきだなどと理想論が書かれているが、そんなのは企業の実態を知らないIT系の人が考えることであって、まともな経営コンサルタントなら(大手企業に自分のDXコンサルティングを売り込もうとしている人を除いて)そんな提言はしないはずだ。
 大手企業の経営者であっても、そのほとんどは最新のデジタル技術を理解しているわけではないし、5年後10年後の技術動向など把握していないだろうから、デジタル活用した将来ビジョンをそう簡単に描けるわけがない。結局、高い金を払ってどこかのコンサルに頼むことになる。だが、中小企業はそんなコンサル費用など出せないだろう。理想論など捨てて現実的に取り組むべきである。
 それが、顧客増、売上増に直結する営業DXから取り組むべき理由である。マーケットに直結したところからデジタル化するから、業績を上げつつ経理や物流、仕入や製造など他の領域のDXにつなげていくことができる。中小企業の社内業務のコストなど絶対額として大したことがないから、業務効率を上げたりスピードを上げる取り組みでは効果に限界がある。それよりも顧客を増やし、取引件数を増やすことで、一件当たりの限界費用をゼロに近づける努力をするべきなのだ。
 そして、営業DXを進めるとモノ売りからコト売り、すなわちサービス化が進むことを本書では示している。これこそがビジネスモデル変革であり、それがあってこそ戦略の見直しが行われ、それによって将来のビジョンも変わってくる。
 企業の実態が分かっている素晴らしいDX本だなと思ったら、著者はなんと、私。前著「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」から一歩進んだアドバンス編だと考えてもらうと良いと思う。前著は、まずデジタルのイロハを知ってもらい、デジタルの力を体感してもらうことを優先したが、本書は実際に会社を変えていく、まさにトランスフォーメーションのための内容になっている。もちろん、おすすめです。

著 者:長尾一洋

出 版:KADOKAWA

金 額:1500円


売上増の無限ループを実現する 営業DX

戦略の要諦

 世の中には、経営戦略があると言いながらも、まったくもって戦略的ではなく、ただ単にキャッチフレーズのようなものであったり、方針を示しているに過ぎなかったり、実現したい経営指標を掲げているだけであったりする、似非経営戦略が多い。この事実を、「戦略論と経営理論の世界的権威」、「戦略の大家」と言われるリチャード・ルメルトが指摘してくれた一冊。2012年に出た「良い戦略、悪い戦略」(日経BP)での主張と大きくは変わっていないように思うが、「10年も前から指摘しているのに相変わらず分かってねぇな・・・」とでも言いたげな内容になっている。
 本書では、流行りのミッションやパーパスは無意味であるとまで言い切っている。そんな上っ面な綺麗事を並べても戦略になんかならないよというわけだ。私は、ミッションやパーパスが無意味とも思わないし、それなりに意義があると思うが、それと戦略はまったく別モノであって、世の流れに迎合するようなキャッチフレーズを掲げてそれを戦略であるかのように誤解している会社が中小だけでなく大企業であっても多いことは間違いないと思う。
 本書の要諦は、「企業経営における戦略的有効性とは、あなたの会社にだけ生み出すことのできるユニークバリューを創出し、かつ、その生み出した価値を競争相手による浸食や模倣から守ることに尽きる。」という指摘に尽きると思う。
 中身は面白いし参考になるが、冗長で図表なども少なくて整理されていないので、戦略構築ノウハウとして活用するのは難しい本だと思う。しかし、企業経営者には頑張って読んで欲しい。経営コンサルタントは必読。経営コンサルタントはちゃんと戦略的な戦略を指導すべし。

著 者:リチャード・P・ルメルト

出 版:日本経済新聞出版

金 額:2200円


戦略の要諦

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