代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2012年版

リーダーを目指す人の心得

 ペプシ工場の清掃夫から国務長官にまで上り詰めた著者が説く、リーダーシップ論。黒人として初めて陸軍大将となり、統合参謀本部議長に最年少で就任したと言う。さすが、只者ではない。本書の内容も、単なる理論や理想論ではないから説得力がある。原著のタイトルは“IT WORKED FOR ME”俺はこうやって来たぜ、俺の場合はこうやったらうまく行ったぜ、みたいな感じか。まさに自らの体験に基づく人生とリーダーシップの指南書。部下を持つ人にももちろん読んでもらいたいが、上司がどんなことを考えているかを知るために部下の立場の人にも読んでもらいたい。こんな立派な上司ばかりではないが、上司は上司でいろいろ考え、苦労している。時に厳しいことを言うのも部下を思えばこそだ。良著。

著 者:コリン・パウエル

出 版:飛鳥新社

金 額:1700円




仏の心で鬼になれ

 東レインターナショナル、蝶理の元社長が書いたリーダーシップ論。経営者、管理者必読の書。1000億円の借入を1年で完済し、30年間赤字の会社の再生させた、という触れ込みだったが、とても大手のサラリーマン社長とは思えない泥臭い話が満載。その辺の中小オーナー社長なんかより余程シビアな経営をしている。上司と部下の細かい心理描写なども、とても具体的に書かれていて、参考になるだろう。部下が上司を舐めてしまうあたりは「あるある」と思いながら読んだ。不正に走る人間がいることもまさにそうだろう。「現金はつくれないが、利益はつくれる。」というのは名言だ。
 なかなか真似はできないだろうが、人の上に立つ人には是非読んでみて欲しい。自分の甘さに気付かされるはずだ。私もその一人。まだまだ甘い。仏の心にもなれないが、鬼にもなり切れない・・・。もう一回読もう。三回は読んだ方がいいな。是非、みなさんも三回は読み返しましょう。おすすめです。

著 者:田中健一

出 版:WAVE出版

金 額:1400円




MAKERS

 「ロングテール」「フリー」を提唱したワイアード編集長が書いた21世紀の産業革命論。要するに巨大な生産設備などが不要となり、個人がメーカーになれるようになる、という話。ドラッカーは、21世紀における生産手段は人間の頭脳になると言ったが、そこからはナレッジは産み出せてもリアルなモノは産み出せない。ところがそれがCADや3Dプリンター、レーザーカッターなどの進化によって個人がモノづくりまでできるようになる。個人では無理なものも生産受託業者にデジタルデータで依頼をすれば小ロットで生産が可能となる。そうなった時、産業や世界経済がどう変わり、個人はどういう働き方をするようになるか。これが本書の提言である。
 ということを伝えるために300ページを超える文量が必要とは思えない。第一章とエピローグを読めば言いたいことの9割は分かってしまうのではないか。余計な文章が長いようには思うが、伝えようとしている世の変化は重要なことだろう。いくらITが進歩し、ネットが便利になったと言っても、リアルなモノは作れない。本書を読んでメーカーになろう。私も本書を読んで早速ロボットを作り始めた。ディアゴスティーニだが(笑)。

著 者:クリス・アンダーソン

出 版:NHK出版

金 額:1900円




ワーク・シフト

 2025年に、どのような仕事の仕方、企業のあり方、個人の生き方が必要になるかを予測した本。著者は、日本では知名度が低いが、ロンドン・ビジネススクールの教授で、経営組織論の世界的権威だそうだ。驚くような予測は出てこないが、人口減少や資源の枯渇、格差問題など改めて示されると深刻な状況だと認めざるを得なくなる。2025年の予測だから、まだ大したことにはならないが、さらに先に進むと、エネルギーや食糧、水資源といった問題が大きくなって、仕事がどうかという前に、どうやって生き残るかというサバイバルな話になるのではないか。政治家の皆さんは、選挙のことばかり考えていないで、30年後50年後100年後の国家、世界を考えて欲しいものだ。
 仕事の面では、ロボット化が進むことは間違いないだろう。「人工知能アシスタントが普及する」という指摘もあったが、それはもう現実にSales Force Assistantという電子秘書ができたから、予測とも言えない。すでに起こった現実だ。きっとこれが秘書ロボットになり、人口減少時代の仕事はロボットにサポートしてもらうことになる。生産現場が人手不足とコスト対策でロボット化したように、ホワイトカラーの仕事場も、人手不足によってロボット化せざるを得ない。その時、生身の人間にはより高度な、より創造的な仕事が要求されるわけだから、ロボットが登場したからと言って単に楽チンになるわけではないから注意が必要だ。
 そういう意味では、本書は少し楽観的な未来予測本だと言えるかもしれない。2025年に生きているであろう人は読んでおくといい。未来に向けたシミュレーションをしておこう。

著 者:リンダ・グラットン

出 版:プレジデント社

金 額:2000円




ワンクリック

 世界最大のショッピングサイトAmazonを生み出したジェフ・ベゾスの生い立ち、仕事の仕方、ビジネスの進め方を浮き彫りにする本。著者はジャーナリスト。、ジェフ・ベゾス本人が書いたわけでも取材に答えたわけでもなく、過去の記事や周辺取材によって書かれたものである。
 Amazonが登場した時には、なんとも胡散臭い名前のネット企業だな、と警戒したが、今ではかなり買っている。送料もかからず1日2日で送られてくるのはありがたい。やはり単なるネット企業ではなく、リアルな部分も併せ持った企業が強い。と思いながら本書を読んでいたら、ヤマト運輸が東名阪で即日配送サービスを始めるというニュースを見つけた。うまく自社のサービスと連携させればAmazon並の配送を実現できるかもしれない。その時にはAmazonはキンドルを使って即時納品体制を実現してるのだろうが・・・。ネットオンリー企業は栄枯盛衰が速い。GoogleやFacebookあたりも怪しいな。Netscapeが消え、Yahooが落ち目なように。AppleやMSはリアルなモノや商流を持っているからすぐにはなくならないだろうし、IBMが依然として存在感を維持しているのもリアルな価値を持っているからだろう。何でもネットで解決するわけではないし、ネットでできることは模倣も速い。
 そんなことを考えながら読んでみると、いろいろとアイデアが湧いてくる本だ。ジェフ・ベゾスがインターネットが進化する過程でどのような判断をしたのか追体験してみるといいだろう。

著 者:リチャード・ブラント

出 版:日経BP社

金 額:1600円




ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか

 元DeNAに勤めていたというコンサルタントが書いたソーシャルゲーム儲かりの秘密。読めば読むほどグリーやDeNAは儲け過ぎではないか、と疑問に思うが、それくらいソーシャルゲームには魔力があるということ。魔力の秘密は、「人を集める力」「人を熱狂させる力」「熱狂をお金に変える力」なのだそうだ。本書にも「禁断の魔法」「どこまで儲けていいのか?」といった指摘もあり、さすがに儲け過ぎて気が引ける部分があるのだろう。
 本書の著者も東大卒だが、ゲーム業界には高学歴の優秀な人が集まっているそうだから、ゲームの魔力をゲーム以外のことに活かす「ゲーミフィケーション」で世のため人のために頑張って欲しいものだ。仕事のゲーム化はこれからの組織運営、企業経営において欠くことのできないテーマになるだろう。課金されてまでのめり込んでしまうゲームの力を、価値を創出し、成果をもたらす方向に使うことができたら、より一層楽しいと思う。実は、そんな仕掛けをすでに開発した。Sales Force Assistantだ。特許も出願中なので真似しないでね(笑)。ということで、ゲームやゲーミフィケーションにアンテナが立ってしまって、ついついこの関係の本を読んでしまう。読めば読むほど、ゲームの力を企業経営や組織運営にもっと活かすべきだと思う。

著 者:中山淳雄

出 版:PHPビジネス新書

金 額:820円




静かなる大恐慌

 著者は、滋賀大学経済学部の准教授。現在は、1929年の大恐慌に匹敵する危機的状況であり、その後の世界大戦に向かった経済状況と酷似していると指摘する。大恐慌並みのショックを受けてもおかしくないのだが、各国の対策も高度になって、表面上はごまかしている状態。だから、「静かなる大恐慌」だ。たしかにそうだ。どう考えても辻褄が合わなくなりそうな対策を日本だけでなく米国も欧州も続けている。それは当然バブルを生み出す。そしてバブルはいつか弾ける。経済だけの問題ならまだしも、それが最後は戦争に行き着くと説く。そう歴史が教えてくれている、と。
 歴史は繰り返す。であれば歴史から学ぶしかない。本書を読むことで、今の経済状況、国際情勢がそうなるべくしてなっていることが理解できるだろう。短期的な景気循環で説明のつく話ではない。では、どうすればいいのか、明確な答えが書いてあるわけではないが、現状を知っておくことは大切なことだ。どうしても日本は平和ボケで、戦争なんてあり得ないと思っていたりするから、戦争が起こり得ることを論理的に理解しておくべきだろう。世界大戦のような全面戦争は起こらないまでも、地域紛争は常に起こっているし、現に日本も領土問題に揺れている。100年に一度と言われる大恐慌に陥っているとするなら、次に70年前の戦争もあり得ないことではないと考えるしかない。
 さぁ~て、どうするかな。今から軍人になるわけにもいかないから、資本主義について考えてみようと思う。資本主義が必要なのかどうか、どうにも腑に落ちない。歴史を変えるには、新しい発想、思想が必要になるのだろう。

著 者:柴山桂太

出 版:集英社新書

金 額:740円




運をつかむ技術

 HIS会長であり、ハウステンボス社長である著者のビジネス論。ハウステンボスの黒字化に成功したことで注目が集まっているが、ビックリするような経営ノウハウがあるわけではなく、まさに率先垂範。これぞベンチャー経営者。流行に飛びついてITやってます、みたいな半端なベンチャーではなく、自分が好きなことに没頭していたらいつのまにか大きくなっちゃった、という経営。だから後で振り返ると成功要因は、運をつかんだ、となる。HISもスカイマークもハウステンボスも旅行にからんだテーマだから本気になれるのだろう。だが、金融のHS証券は勢い余って余計なことをしてしまった・・・ということか。ライブドア事件のせいで失敗したというよりも、澤田さんの好きなことでもないのに手を拡げ過ぎた結果だな。ちょうど当時弊社もHS証券さんと付き合いがあったから、社内の空気感が分かる。事件が起こる前も、なんだかヤバそうな匂いがした。事件前に縁切りしたから実害はなかったが、早めに気付いてよかった。澤田さんとも会ったりしたので、ベンチャーの雄にガッカリさせられた気がしたのだが、本書を読んで得意分野じゃないところについ踏み込んでしまっていたのだな、と理解できた。やっぱり得意なこと、好きなことをビジネスにしていくのがベンチャーらしくていい。儲けることを目的にアイデアを出そうなんてことは、どっかの経営コンサルタントに任せておけばいい。
 経営の勉強にはあまりならないが、起業家を目指す人は是非読んで参考にしてみるといい。やりたいこと、人生をかけたいことも見えてないのに起業家になりたいなんて考える本末転倒ではうまく行かないことに気付くといい。

著 者:澤田秀雄

出 版:小学館

金 額:1400円




100円のコーラを1000円で売る方法 2

 同タイトルの前著が20万部を超えるヒットになり、個人的には羨ましい限り。。。私の本もそれくらいは売れて欲しい(涙)。それだけ売れれば出てくるのは、その続編。前著もこのおすすめBOOKSで紹介したのだが、ストーリー仕立てでなかなか面白かった。本書はその続きのストーリーで競争戦略を解説する内容になっている。著者は、日本IBMのマーケティング・マネージャー。続きなので①を読んでいないと登場人物などが分かりにくいかもしれないが、②でもストーリーの中で上手に気付きを与えてくれる。さすがだなぁ~と思って読んでいたら、巻末の参考文献に私の「孫子の兵法 経営戦略」が!!!道理で分かりやすいと思った。あはははは・・・。正直に参考文献として書いてくれるところが偉い!どうみても私の本を参考にしたよね?と言いたい内容なのに知らん顔する本もあったりするのだが、ベストセラーの余裕だな。それはさておき、やっぱり孫子の兵法は重要だ。ちなみに、②ではコーラの話は出てこない。①を読んでいない人は、まず①から順番にどうぞ。営業戦略を考えるには読みやすいし、頭の中を整理するのにはいい本だと思います。参考文献もいい(笑)。

著 者:永井孝尚

出 版:中経出版

金 額:1400円




現実を視よ

 ユニクロの柳井さんによる憂国論。平和ボケして、かつての栄光を忘れられず自己変革を進めることのできない日本ならびに日本人への警鐘。ユニクロの商売だけを考えれば、本人も書いておられるが、このような本は書くべきでも出すべきでもないだろう。偉そうなことを言って敵を作るのは無駄なことだ。だが、言わずにおられないのだそうだ。
 資本主義や成長に対する考え方がどうも私とは違うので、言っていることをすべて受け入れることはできないが、山口の小さな紳士服店を全国区のチェーンにし、今まさにグローバルに展開をしている実績、実体験に基づく世界観、労働観、経営観は説得力があるし、参考になる。
 本来は政治家が読むべきものだろうと思う。この国をどうしたいのか、どうするのか、を考える内容。きっと政治家も読んだりするのだろうが、何か変えてくれる期待感が湧いてこない。一経営者とすれば、政治家や官僚に頼っていては間に合わないから、自社が生き残るために日本を脱出することも考えねばならない。残念なことだが仕方ない。だが、もしそんな経営者がいたら「あいつは日本を捨てた」とか言って批判する人が多いのだろうな、と思う。まぁ柳井さんもそうだな。中国で店舗を増やして行けば、中国寄りだと批判されることになる。自分はぬるま湯に浸かったままで他人の批判をするだけ、という日本に危機感を覚える。本書もその危機感によって書かれたものだと推察する。批判を恐れず声を上げていただいたことに感謝。
 あまりユニクロに興味はないが、ヒートテックは買いに行こうと思う。靴下も買うかな。

著 者:柳井 正

出 版:PHP研究所

金 額:1500円




道具としての「事業定義」

 「もしドラ」がヒットしたから書いたという、事業ドメイン、事業定義の解説本。「もしドラ」で野球部の事業定義が「感動の提供」とされたのが気に入らなかったということか。私は「もしドラ」に興味がないので、そんな本で何と書いてあっても専門家としてはどうでもいいのではないかと思うが、ドラッカーなら野球部の事業定義をこうするはずだ、という指摘が書かれていたりする。ちなみに事例としてAKB48も取り上げられており、さすが「もしドラ」に触発された本だなと思う。その割に中央経済社という堅い出版社から出ていて、2400円という価格設定だから、「もしドラ」を読むような人は読まないのではないかと余計な心配をしてしまう。
 もちろん、「もしドラ」以外にも事業定義について書かれていて、ドラッカーやレビットからの事業定義、事業ドメインについての議論の流れなどが参考になった。事業定義と呼んでも、事業ドメインと呼んでも、一般の企業経営においてはどうでもいいようなことだが、いずれにせよ自社が何業であるのか、という認識、定義というものは非常に重要だ。その割に解説書が少ないから本書も是非参考にして欲しい。私もよく事例として使うセコムも取り上げられている。やはり日本企業でドメインを考えたらセコムが参考になる。
 電機業界における事業定義と業績の相関について調査した分析も紹介されているが、こちらは何とも言い難い。何しろ電機業界全体が流動的で評価が難しいし、取り上げられた日本の電機業界各社がそれほど良い事業定義をしているとも思えない。シャープの苦境やソニーやパナソニックの苦戦を見ていると、日本の電機業界は製品軸で事業を見過ぎていて、その機能や効用に着目した戦略立案にシフトできなかったのではないかと感じる。
 ともかく、事業の定義やドメインは重要だから、企業経営者、戦略立案担当者は、しっかりと勉強して欲しい。こういう堅い本はちょっと・・・という方には、拙著「戦略の見える化」がおすすめ。アカデミックさは全くないが(笑)、とても分かりやすく事業ドメインについて説明しております。

著 者:若林広二

出 版:中央経済社

金 額:2400円




ビジョナリーカンパニー 4

 あのビジョナリーカンパニーシリーズの第4弾。今度は“GREAT BY CHOICE”「自分の意志で偉大になる」と来た。相変わらず偉大な企業を作るにはどうするかをテーマに多くの企業を調査、分析した結果を明らかにしてくれている。
 やはり個人的には、2の“GOOD TO GREAT”が面白かったし、参考にもなったのだが、今回の4では、偉大な企業と普通に良い企業とを分けるのは、環境や運ではなく、自分自身の意志と規律であると説いていて、これもまた自分を律するのには良い指摘だ。
 著者のコリンズは、ピーター・ドラッカーの後継者であり、ドラッカー亡き後、世界で最も影響力のあるビジネス・シンカーなのだそうだ。本当かな?ビジョナリーカンパニーも悪くはないけど、ドラッカーと比べるのはまだ早くないか?過去のデータを分析して成功法則、成功要因を明らかにするというアプローチではなく、未来をイメージし、そこでどういう経営が求められるかを提言したドラッカーはまた別格な存在だと思える。過去から学ぶのではなく、自ら未来を創造する提言をコリンズにはお願いしたい。私も負けずに頑張ろう。格が違うと怒られそうだが・・・。
 分厚い本で持ち運びには不便だが、最後の100ページほどは調査概要の説明になっているから、思ったほど読むのに時間はかからない。面白いし、参考になる。経営者は必読だろう。

著 者:ジム・コリンズ+モートン・ハンセン

出 版:日経BP社

金 額:2200円




僕は、だれの真似もしない

 フジテレビの朝番組、めざましテレビにコメンテーターとして登場したこの人は一体誰なんだ!?と思っていたら、アップル日本法人の前社長だった。アップルを復活させた仕掛け人だと言う。そうだったのか・・・ちゃんと紹介してくれよ。。。見てないだけかな。。。慶應の大学院を出て、ソニー、ベイン・アンド・カンパニー、ディズニー、AOLを経て、ライブドアを創業した人だそうだ。ホリエモンのライブドアの前身(ホリエモンに事業譲渡した)であって、ホリエモンの前の社長というわけではない。そして、アップルへ。なんだかややこしい人だ。iPodの仕掛け人と呼ばれ、2年ちょっとでアップルを退社。
 本書で訴えているのは、人真似や後追いではなく自分で革命を起こせということ。あのジョブズが日本を任せた男だけに内容も面白い。若いビジネスマンに読んでもらいたい内容だ。やらされ仕事ではなく、自ら取り組む仕事が楽しい。それは待っていても与えられない。自ら勝ち取り、生み出さなければならない。個人的にはアップルのことよりもソニーについて触れている部分が興味深かった。「明日の自分には無限の可能性がある」と信じて、「未来予測ではなく、未来創造に切り替えよう」と、本書を読んで多くの人が思えればいいと思う。

著 者:前刀禎明

出 版:アスコム

金 額:1400円




良い戦略、悪い戦略

 「競争の戦略」で知られるあのポーターと並ぶ「戦略の大家」(らしい)が書いた戦略論。良い戦略の特徴と悪い戦略の特徴が対比されていることで、戦略をどう考えるべきかが分かりやすくなっていると思う。大切なことは、これだけ戦略論が発表され、戦略コンサルタントが跋扈しているにも関わらず、良い戦略はほとんどなく、悪い戦略があふれている、ということだろう。よく「○○戦略」とか「戦略フレームワーク」などと簡単そうに言うが、戦略を立てるにはかなりの情報やあらゆる面からの検討、考慮が必要であり、「こうすればこうなる」みたいな簡単な話にはならない。周知の情報をただ論理的に分析し、決まったフレームに当てはめて整理するだけなら、どこの企業も似たような戦略となり、そもそもそれは戦略とは言わないだろ、という話になる。だから、この本を読んでも、パパッと簡単に良い戦略が作れるということにはならないのだが、少なくともとても戦略とは呼べないようなものを戦略だと勘違いしたままでいることは避けられるようになるだろう。
 戦略の大家も本書で述べているが、戦略はどれだけ考えたとしても仮説に過ぎない。唯一の正解というものはないから、常に仮説検証の繰り返しによって戦略を研ぎ澄ましていくことになる。このことを理解して、自社の経営に仮説検証体質を醸成するべきである。私はこの経営体質強化を「可視化経営」と呼んで体系化したが、これがあってはじめて戦略が実行に移され、また検証されて、戦略の進化が可能になる。戦略立案は簡単ではないからこそ私の仕事も成立するので、こんな本をおすすめしなくてもいいようなものだが、参考になる本だと思う。

著 者:リチャード・P・ルメルト

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:2000円




営業マンは「目先の注文」を捨てなさい!

 精神論や気合や根性で売れるくらいなら苦労しないと思っている人、顧客に魔法やプレッシャーをかけて売るようなことはしたくない人、結構頑張っているのに売れずに困っている人、月末に追い込んでも翌月またゼロからスタートしなければならないと思うと憂鬱になる人、自分は気合や根性が大好きだが、部下や社員が気合や根性を出してくれそうにはないと悩んでいる人、個々の営業マンの属人的なセンスに頼るのではなく、安定して業績が見込めるようにしたいと考えている人・・・、お待たせしました!!是非本書を読んでみてください。営業活動、営業力強化にお悩みの方には必ずお役に立つ一冊。薄くてすぐ読める。
 営業とはモノを売ることだという発想を捨て、情報の力で相手を動かすインテリジェンス活動だと考えてみる。そうすると、売れそうもない顧客に無理してアプローチして時間を浪費するのが惜しくなるだろう。今売れなくても長期で見れば売れる可能性があるのだから、顧客のダムに入れる。出会ったすべての顧客をダムに入れていけば、ダムは必ず大きくなる。当り前のことだが、当り前にできている人や企業は少ない。目先の売上や受注を追いかけるから、却って売上が伸びない。急がば回れだ。売れないこともあるのだから、それを見越して戦略的に営業を組み立てる。これを「ストラテジック・セールス」と言う。
 実行すれば必ず成果が出る。私が保証する。私の本だから。経営者、営業マネージャー、営業マン必読の書。

著 者:長尾一洋

出 版:中経出版

金 額:1300円




100円の不良在庫を5000円の商品に変える方法

 15の利益モデルを相談形式の実例に即して解説している一冊。業種、業界といった発想から、ビジネスモデル、利益モデルという切り口、見方に変えることは大切なことだ。ほとんどの企業が業種発想から抜け出せない。それではどうしても他社と似たようなビジネスになってしまい同質化競争に陥る。自社のビジネスモデルを考える上で参考になる本だろう。実例も紹介されているので分かりやすい。
 しかし、本とすればそれでいいのだが、ついつい事例を読むと分かったつもりになってしまい、自社への適用が甘くなるので注意して欲しい。事例を読んでそのまま自社に当てはまることなど滅多にない。それを修正し、複数を組み合わせ、微妙に調整したり、さらにひねったりして、独自のビジネスモデルが出来上がる。すでに誰かがやっている事例をただモノマネしても、それこそ同質化競争だ。その辺り、分かりやすく読みやすい事例が書いてあるだけに注意して読んでみるといいだろう。

著 者:村山涼一

出 版:中経出版

金 額:1500円




Think Simple

 スティーブ・ジョブズとアップル、NeXTを通じて広告のディレクターとして仕事をしてきたという著者のアップル論であり、ジョブズ流仕事術。そのポイントが「シンプル」ということだそうだ。「シンプルであれ」ということを伝えるがためにアップルならびにジョブズのエピソードが数多く紹介される。そのために300ページを超える大部となっていて、その辺り、もう少しシンプルでも良かったのでは?と突っ込んでみたくなる。本の装丁もシンプルでいい。
 ジョブズは「シンプルであることは、複雑であることよりもむずかしい」と言ったそうだ。たしかにそうだ。製品作り、商品企画でも、あれこれ良かれと思って付け加え・・・、出来上がりはとても複雑になってしまう、ということが良くある。無いよりはあった方がいいか、と言っていたらどんどん無くてもいいものが増えていく。本書を読んで大いに反省した。ついつい余計なものを加えてしまう。シンプルであるためには足し算ではなく引き算ができなければならない。顧客の要望を聞いているだけでは、全部足し算になる。「これで間違いない」「これだけでいい」と言い切れるだけのビジョンというか信念、確信がなければシンプルにはできない。
 なんでもアップルの真似をしたらいいというものではないが、一度自社の商品、製品について見直してみるために本書を読んでみるのはおすすめだ。

著 者:ケン・シーガル

出 版:NHK出版

金 額:1600円




雑巾がけ

 小沢一郎の秘書を経て国会議員となりながら陸山会事件で逮捕されてしまうという数奇な運命の衆院議員が書いた小沢一郎論。逮捕されても声もかけてもらえなかったというからすごい世界だ。それでも「小沢スーパーチルドレン」であると自認し、いざとなれば小沢一郎を首班指名するというから、やはり小沢一郎がすごいのだろう。
 あまり政治の世界に興味はないのだが、ちょっと厳しいことを言われたくらいで死にそうな顔をして、すぐに会社を辞めてしまうような若い社会人に是非読んでもらいたい。こういう世界もあるのだと。多くの会社で若者たちが甘やかされている。というか、すぐに落ち込んだり、辞めたり、病気になったりするから、怖くて手出し口出しができない状況だ。雑巾がけなどもってのほか・・・。清掃業者にカネを払ってやってもらい若者に雑巾など持たせない会社も少なくない。もし上司が「この雑巾がけという本でも読め」と直接部下に言ったら「パワハラだ」と言われかねないから、私が代わりにおすすめしておく。若者よ、本書を読め。自分の置かれた環境が恵まれたものであることが分かるだろう。

著 者:石川知裕

出 版:新潮新書

金 額:680円




「有名人になる」ということ

 あのカツマーが有名人になり、有名になったが故にバッシングもされたりした実体験を赤裸々報告。たしかに「有名人になる」ことでメリットもあるだろうがデメリットも大きいのだろう。なってみないと分からない、というところを教えてくれるのがカツマーのすごさだな。いかにして有名になり、有名になったことで起こった変化は何かを教えてくれる。有名になろうと思ってなれてしまうところが、やっぱり凡人とは違うわけで、本書の教えの通りにやったとしても、そもそもその人に有名になれるだけの素がなければならないことは言うまでもない。そして一度有名になったら、無名には戻れず、「元有名人」になるのだと言う。有名になるのも楽ではないな。
 カツマー本がどんどん売れ、テレビなどにもバンバン登場した時に、同業に近い私も感心するとともに「なんだよ」と嫉妬する気持ちが芽生えたことは間違いない。人の嫉妬心というのはやっかいだ。だが、アマゾンなどで執拗なバッシングがされているのを見ると、なんとも気の毒な気がしたものだ。ネット上には心無いことを平気で書き込む人がいる。それも匿名で・・・。それを有名税と言って笑っていられる根性が有名人には必要なのだろう。私などはアマゾンのレビューにひどいことを書かれるとすぐに心が折れる。ちゃんと読んだのか?と詰め寄りたくなるが相手はネットだからどうにもならない・・・そしてガクッと落ち込んでしまうが、そんなことでは有名人にはなれない。
 本書の帯には自虐的なイラストが・・・。批判されることも逆手にとって本を出すとはさすがだ。ディスカヴァー・トゥエンティワンにも脱帽。有名人になりたい人はもちろん、カツマーを批判したい人も読んでみるといいだろう。いろいろと気付きがあるのではないかと思う。

著 者:勝間和代

出 版:ディスカヴァー・トゥエンティワン

金 額:1000円




人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない

 昨年の「憂鬱でなければ、仕事じゃない」に続く、幻冬舎の社長とサイバーエージェントの社長の往復書簡形式によるビジネス論第2弾。前作が売れたから二匹目のどじょうを狙って出した本ではないそうだ。それが本当かどうかは分からないが、そんなことはどうでもいい。タイトルがいい。このタイトルだけで1300円払ってもいい。頑張っても頑張っても、それが報われず、成果につながらなくて、落ち込む日々もある。誰にも評価されていないのではないか、誰も自分を見てくれていないのではないか、と悩むこともある。だが、やはり誰かが見ていて、地道な努力は評価してくれていたりするし、もし評価されないなら、その努力がまだ評価に値するものになっていないだけのことだったりする。この二人もそんなことがあったりするんだろうなぁ~と思えるだけで救われる。私はこのことを「評価は他人なり」と言っているが、清沢満之の「光ったナイフは草原の中に捨てられていてもいつか人が見出すものだ。」という言葉を思い出した。清沢満之もいい。
 相変わらずハードワーカーな内容なので、好き嫌いがあるだろうが、これだけ真剣に仕事に取り組んでいる人もいるんだと気付かされることも必要だろう。必死に、全力で、仕事に取り組んでいる人なら、きっとのこのタイトルで読みたくなるはずだ。努力は自分なりにするしかないが、評価は他人なり。きっと誰かが見ていてくれる。認めざるを得なくさせるまでひたすら頑張ろう。

著 者:見城 徹 + 藤田 晋

出 版:講談社

金 額:1300円/p>


模倣の経営学

 模倣と言ってしまうと何だかサル真似っぽく聞こえてしまうが、「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だと言われるように、まずは良いと思うものを真似てみる、模倣してみる、ということは知的活動、創造的仕事の第一歩である。本書のサブタイトルは、「偉大なる会社はマネから生まれる」だ。事例としてヤマト運輸や吉野家、セブンイレブン、ドトール、グラミン銀行などが挙げられて、何を手本として、どう模倣し、それをどう独自性のある(模倣されにくい)ものにして行ったかを説く。特に重要なのが、「模倣できそうで模倣できない会社」になることだ。ここでは事例としてKUMONが挙げられている。KUMONも模倣から始まったが、模倣できないところまで昇華した。習い事、芸事で必ず言われる「守・破・離」と同じことだろう。それを一人の師匠(一社のお手本企業)からだけ行なうのではなく、複数から「真似ぶ」。それによってハイブリッドな止揚形が生まれ、模倣といっても単純なサル真似ではなく、独自性のある模倣となる。
 大いに真似よう。ただし単なる後追いのサル真似にならないように。そして真似できない存在になるべし。本書はそのヒントをきっとくれるはずだ。ビジネスモデル、経営戦略を考える人にはおすすめ。
 著者は、早稲田大学の教授。何歳かは分からないが、若そうな先生だ。こういう先生に頑張って欲しいと思う。と思っていたら・・・あとがきに渡米準備とある・・・。どうやらペンシルベニア大学のウォートンスクールに行くらしい。日本から優秀な人材が流出してしまうと思うと残念でもある。

著 者:井上達彦

出 版:日経BP社

金 額:1800円




ゲーミフィケーション

 ゲーミフィケーションとは何か。「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するもの」だそうだ。ゲームで遊ぶことではない。私はこれをもっと仕事や経営に取り入れるべきだと思う。本書は、ゲーミフィケーションの価値やその活用のヒントを分かりやすく解説してくれている本だ。著者は、国際大学GLOCOM研究員/助教。これでは何者かはよく分からないが、慶應のメディア研究科の修士を修了し、SFC研究所の研究員をしていたという1980年生まれの若者である。何しろゲームの応用だから若者でなければならない。
 60年代生まれの私はゲームなどしない。時間がもったいない。だから(ゲームにお金がかかった)ギャンブルもしない。時間がもったいない。時間がもったいないから(ゲーム要素があるけど時間のかかる)ゴルフもしない。ゲームをゲームとして楽しむ気はない。そんなことに時間を使いたくない。しかし、ビジネスにゲーム感覚が入ることはいいと思う。ゲームのように時間を忘れて楽しんでいたら仕事が進んでいた・・・なんてことになったら最高だ。私自身はそんなことをしなくても仕事を楽しめるが、世の多くの仕事がイヤだという人にとってはゲーミフィケーションは有効だと思う。本書の「ゲーミフィケーションとは、外発的動機づけとの境界線的な要素(報酬)を求めるうちに、内発的動機づけを駆動させるようなメカニズムだと言っていい」という指摘は、とても素敵だ。活用すべきだろう。
 すでに私はこのゲーミフィケーションを仕事に取り入れるシステムを開発した(笑)。決して本書を読んでパクって開発したわけではない。もうすでに出来ているし・・・フフフ。営業マンの営業活動を支援するSFA(営業支援システム)にゲーミフィケーションを取り入れ、営業活動をしながらゲームができ、ゲームのように営業が楽しくなる仕組みを作った。営業マンの専属IT秘書となる「Sales Force Assistant」だ。本書を読んだ後に、その実践事例として研究してみてもらうのもいいだろう。
 仕事にゲーミフィケーションを!

著 者:井上明人

出 版:NHK出版

金 額:1400円




大災害・国難に立ち向かう! 二宮尊徳のこころ

 未曾有の大災害、危機的な財政など多くの国難に際し、今こそ二宮尊徳に学べという一冊。日本におけるコンサルティングの草分けとも言える二宮尊徳だが、著者が経営コンサルタントだけに、いかに改革を進めて行くかというポイントを浮き彫りにして伝えてくれている。単なる伝記ではなく、農民たちの意識を変え、行動を変えていく具体的な手順や心構えが、弟子に教える形で詳細に書かれている。経営改革、組織改革などに取り組む経営者、コンサルタントは是非読むと良いだろう。そもそも私もコンサルティングの師匠のおすすめで本書を読んだ。政治家にも読んで欲しいな・・・。地味な本なので書店などでは出会えないが、こういう本こそ私もおすすめしなければならない。良著。

著 者:梅津敏裕

出 版:日本地域社会研究所

金 額:1600円




経営分析のリアル・ノウハウ

 産業再生機構で有名になった冨山氏の経営分析論。経営共創基盤という会社を2007年に立ち上げたようで、その社員との共著となっている。要するに、経営分析の際に、数字だけを見ずに、その裏にある実態を見抜けということ。単に教科書通りに数値を見て、平均値を出し、良いとか悪いとか言っていても役には立たない。そうだ、その通り。だが、残念ながらただ数値データだけを見て分かったようなことを言うコンサルタントや会計士、中小企業診断士などが多い。弊社にも中小企業診断士の資格を持った人が多いのだが(私もそうだが)、単なる試験勉強をしてきた人間は使えない。教科書通りに比率を計算して、良いとか悪いとか言うので、「何を基準にして良いと判断したのか?」と聞くと、「業界平均です」とドヤ顔で答えたりする。「その会社は業界平均を目指した経営をしているのか?」と聞くと、答えられない。「アホか!」と説教しなくてはいけなくなる。なんてことがある。試験の答案ならそれで良くても、実地のコンサルティングでは使えない。どういうビジネスモデルで、どこを目指して経営しているのかが分からなければ、良いも悪いも判断できない。本書でも同業種と言われていても実はビジネスモデルが違うという指摘が多かった。
 この著者を中小企業診断士の研修の講師に呼んだらどうか、と思うがまぁ無理だろうな。診断士諸君、せめて本書を読もう。まぁプロなら当たり前のことなんだけどね・・・。

著 者:冨山和彦

出 版:PHPビジネス新書

金 額:820円




私、社長ではなくなりました。

 民事再生法適用となったワイキューブの元社長が書いた回顧録。生い立ちから経営が行き詰まるまでの経緯を冷めた目で見て淡々と語っている。利益を出すことなど考えず借入金を原資に派手な経営をして、リーマンショックで万事休した。まぁそうなるべくしてそうなったと言えるだろう。本人も書いているが、とても楽しかったそうだ。そりゃそうだろう。40億もの金を踏み倒してやりたい放題やったのだから・・・・。そしてこうやって本も書いたりしているのだし。
 起業家を目指す人、若い経営者は、こういう経営をしてはダメだよという反面教師として本書を読むと良いだろう。ママゴトのような経営をしてはいけないし、そこに世間を知らない多くの新卒学生が巻き込まれたと思うと可哀想になる。まぁ面白おかしく過ごした人もいるだろうが・・・。人の一生を左右する就職というテーマをこういうイベンターのような人、会社が扱ってはいけないと思う。この人自体はアイデアマンで発想がユニークだから、なるほどと思うような手法や仕掛けもあった。個人とすれば優秀な人なのだろう。満員電車に乗るのがイヤだったから経営者になったなどと言ってしまう人だから、今後も会社勤めはできないだろうが、なんだか怪しいコンサルタントとして生き残って行くのだろうな・・・。こうしてコンサルタントってやっぱり怪しい商売だと思われてしまうのが私としては残念だ。是非再起して、失敗を活かして欲しい。
 本書を読むと、銀行の役割やあり方についても考えさせられる。企業経営を見極める力、融資先を指導する力もなく、調子のいい時は不要な金まで貸し付け、調子が悪くなると引き上げる。それで融資先が破たんしてもすでに引当済みで、痒いくらいで痛くはない。潰れた会社がダメなのは当たり前だが、銀行のダメさ加減が印象に残った。日本経済を支えるため、銀行マンにもっと頑張って欲しいと思う。

著 者:安田佳生

出 版:プレジデント社

金 額:1400円




最強スパイの仕事術

 元CIAで、国際スパイ博物館の代表でもあるピーター・アーネストによるスパイ流ビジネス術。スパイのノウハウがビジネスでも役立つと説く。ミッション・インポッシブルや007などで描かれる過激なアクションは映画の世界であって、普通(何が普通かは難しいところだが)のスパイは、地味に目立たない活動をしながら、情報の力で人を動かす活動を行っている。インテリジェンス活動だ。通常のビジネスでも大いに役立つし、情報を軽視してビジネスはできない。本書はそのヒントを教えてくれる。読めばできるようになるほど簡単なものではないだろうが、そういうものなんだと意識しておくことが重要。
 私は、営業活動はまさに諜報活動だと考えているし、世界一のセールスマン、ジョー・ジラードも「セールスはスパイゲームだ」と言っている。そして、現にスパイとして活動した人が、スパイのノウハウはビジネスに役立つと言う。著者はCIAを辞めた後、起業してビジネスをしているそうだ。だから、スパイのこともビジネスのことも分かって言っている。間違いないと思う。
 大切なことは、情報を集め、分析して、行間を読む「インテリジェンス」。インテリジェンスの語源は行間を読むということらしい。一つひとつの情報には答えがなくても、それが線となり面となり、つながっていくそのまた裏に真実が隠れていたりする。それを読みこなす力がスパイ活動にもビジネスにも求められる。本書には、そうした活動をする人材や組織はどうあるべきかが書かれている。一般企業でも参考になるだろう。

著 者:ピーター・アーネスト+マリアン・カリンチ

出 版:ディスカヴァー・トゥエンティワン

金 額:1600円




日本既成権力者の崩壊

 日下先生の最新刊。2012年は大変化と大動乱の年になると言う。そこで日本人はどう生きるべきかが説かれている。繰り返し強調されているのは、「ぶら下がるな、自立せよ」ということ。国や企業など既成のもの、既成の価値観、既成の権威などアテにはできない。何しろ崩壊していくのだから。頼れるものは自分自身であり、そう考えれば、日本人は案外強いよ、と。ところが現実には、国や企業などに、頼り切り、ぶら下がろうとする日本人が少なくない。日本国の実体は日本人であり、企業の実体は社員である。ぶら下がろうとする日本人ばかりになれば、当然日本はぶら下がることのできない国になる。ぶら下がろうとする社員が増えれば増えるほど、その企業は崩壊に近づきぶら下がることができなくなる。
 後半は、大震災と原発事故への対応について述べられている。ここでも「お上」依存のぶら下がり体質が指摘される。流される情報に流されてしまって思考停止するのではなく、自らの頭で考えてみることが必要だ。こういう本を政治家の皆さんも読んだりするのだろうし、本書を読む人も数万人いるとすると、もっと具体的なムーブメントが起こってもいいような気がする・・・。と言っている自分もここで本書をおすすめするくらいしかしていないが・・・・・・。おすすめです。是非読んでください。

著 者:日下公人

出 版:李白社

金 額:1500円




ビジネスモデル・ジェネレーション

 戦略的思考を視覚化したフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」を紹介した大型本。9年の歳月をかけて作られたモデルだそうだ。ビジネスモデルを考える際のポイントが1シートになっていて、それを共有しながらPost-ITでブレーンストーミングするワークショップ形式の戦略立案法について紹介してある。本書自体がビジュアル重視のもので、大型かつ分厚くて持ち運びには適さないが、ワークショップのイメージが伝わってくる。ビジネスモデルを考える際の項目はいいのだが、それを一覧にした図(というか表)の妥当性には議論があるだろう。まぁ1シートにまとめようとすると限界もあるから仕方ないか。一覧性というメリットはある。
 何より本書で参考にして欲しいのは、業種ごとのやり方や常識に捉われるのではなく、独自のビジネスモデルを生み出すことの重要性だ。業界なんかクソ食らえ!と思って、業界の常識を打ち破ることこそ今求められている。しかし、未だに業界における「良い会社」を目指そうとする企業が少なくない。独自のビジネスモデルを確立すれば、もはや業界などは関係なくなる。少なくとも業界の異端児と評されなければならない。このビジネスモデルを考えるのはなかなか難しいから、本書のフレームワーク、キャンバスを参考にしてみるといいだろう。結局はそこで何を考えるか、アイデアを思いつくかどうかにかかってはいるけれども。。。。

著 者:アレックス・オスターワルダー+イヴ・ピニュール

出 版:翔泳

金 額:2480円




資本主義以後の世界

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの理事長が書いた資本主義の真実。資本主義とは何か、どのようにして資本主義が広まったのかを知れば、自ずとその限界が見えてくる。副題は「日本は『文明の転換』を主導できるか」。資本主義の自壊が始まり、崩壊した後、我が国日本はどうするべきか、そこでの役割は何かを考えてみようという一冊。西洋文明にいいようにされている歴史を知ってガッカリする人も多いだろうが、今も尚、国と国は国益を求めてせめぎ合っており、民族や宗教の違いによって争いが絶えない現実があることを知っておくべきだろう。あまりにも日本が平和ボケしており、それがまた米国の意図でもあると分かれば、安穏とはしておられない。さて、そこでどうするか。
 たしかに「交換」から「贈与」の文明へと転換するのは地球にとっても必要なことだろうし、そこで日本の文化なり日本人が役に立つことがあるだろうと思う。日本だからこそ出来ることがあるだろう。しかし、骨抜きにされ、西洋かぶれ、何でも米国流、という日本の現状を見ると暗澹たる気持ちになるのも事実である。
 では、どうすればいいのか。本書を読んでもよく分からない。よく分からないが、まずはこの本をより多くの人に読んでもらうために、ここでおすすめすることにする。より多くの人に読んでもらうために、中谷先生もこんな堅苦しい本ではなく、図解入りの新書本でも書いてくれたらいいのに、と思うが、是非読んでみてください。それから一緒に考えましょう。

著 者:中谷 巌

出 版:徳間書店

金 額:1600円




100円のコーラを1000円で売る方法

 日本IBMのマーケティング・マネージャーが書いたマーケティングストーリー。物語仕立てでマーケティングの考え方が分かる一冊。100円のコーラを1000円で売る話は、その中の一部であって、ストーリーの本論はシステムを売る話。さすがIBM。売る物は何であっても、顧客の言うことを聞くだけ、言いなりになるだけでは価値はない、ということが語られている。御用聞き営業や値引き営業ばかりしている人は是非読んでみるといいだろう。システム販売をしている人は必読。マーケティング理論が知りたいのではなく、それをどう応用するかを知りたいという人には読みやすくていいだろう。理論派は、こういう本を読んで批判するのではなくもっと分厚い専門書を読むべし。

著 者:永井孝尚

出 版:中経出版

金 額:1400円




さよなら!僕らのソニー

 ソニーがなぜソニーらしさを失ってしまったのか。そうしてしまった犯人は誰なのか。日本のソニーではなく、世界のソニーになってしまったのは良いことだったのか。そんな疑問に、デジタル・ドリーム・キッズではなく、ソニーファンのジャーナリストが答える。たしかに、昔のソニーは輝いていて、ソニーブランドに憧れがあった。私もそうだ。ウォークマンが出た時、カッコ良過ぎて、持っている友達を妬んだ。家が貧乏でとてもではないが買えなかった・・・。その何年か後に、サンヨーだったか何だったか忘れたが、ウォークマンもどきを買ってようやく音楽を外に持ち出せた。やっぱりソニーのウォークマンは高くて買えなかった。その時の記憶がトラウマになっているのか、大人になって多少お金が自由になるようになってからソニーに執着が出た。大学時代にソニーのワープロ専用機を買った。性能がどうかというよりもカッコ良かったから。今もノートPCはソニーのVAIOだ。イマイチ使いにくいがカッコいいからだ。何より薄い。10年前くらいに、近所のパナソニックのお店でホームシアターセットを買った時も、テレビとかはパナで我慢したが、スピーカーやDVDプレイヤーはソニーにさせた。カッコ良かったからだ。その後地デジ対応にさせられていつのまにかパナソニックに置き換えられて、使わなくなったけどまだソニーが置いてある。パナのお店の人はソニーもつながると言っていたが、使い方が分からない。
 そんな感じで未だにソニー信奉というかソニーならではのデザインというか製品力があるように思うので、本書で言うほどソニーがダメ会社になったとは思わない。ただ創業の精神が薄れ、アメリカかぶれになって、大きくなり過ぎただけに、時代の変化についていけていない面があるのは確かなのだろう。井深・盛田という創業者がいなくなってソニーらしさを失ってしまったのがまずいのであれば、ジョブズのいなくなったアップルだって同じようにアップルらしさを失う可能性もあるのだから、ソニーがアップルに負けてしまったとも思わない。だから、さよなら!は言わない。
 本社も近いし(関係ないか・・・)、社長も交代するし、ソニーには頑張って欲しい。小さくて、細くて、洗練された製品をまだまだ世に生み出して欲しいと思う。ソニーへの思い入れを語っていたら、本書のことを忘れていた・・・。創業の精神を守りつつ、時代の変化に対応するにはどうすればいいのか、本書からヒントを見つけて欲しい。答えは書いてないが、反面教師も含め参考になる点がある。

著 者:立石泰則

出 版:文春新書

金 額:830円




孫子の至言

 東洋思想研究家、田口佳史氏による孫子解釈。以前紹介した「論語の一言」の時にも書いたが、私は昔っからの田口ファンである。会ったことはないが・・・本は読んでいる。その田口先生が孫子を解説した本を出したら読まないわけにはいかない。孫子を戦争や経営に当てはめるのではなく、人生に当てはめた「人生孫子」だそうだ。そう、孫子は人生の指針としても役立つと思う。
 本書は、田口先生による、「論語の一言」「老子の無言」に続く三部作目。「上り坂の儒家、下り坂の老荘、険しい坂の孫子」なのだそうだ。残念ながら私はまだ田口先生の境地にまで達しておらず「下り坂」には興味がない。「右手に孫子、左手に論語」くらいがいい。そしてやっぱり、今は険しい坂を上って行くしかない時代だから孫子の兵法が優先となる。田口流孫子解釈は少々ソフトな感じで、これもまた良し。是非多くの人に読んでもらい、孫子兵法が現代人にも役立つことを知ってもらいたいと思う。著作権もない古典は人類の共有財産だ。活かしてナンボ。どんどん自己流解釈をしてもいい。本書も大いに参考になるだろう。

著 者:田口佳史

出 版:光文社

金 額:1500円




成毛眞の超訳・君主論

 日本マイクロソフトの元社長が書いたマキアヴェッリ「君主論」の超訳。超訳とはどんな訳か、よく分からないが、成毛流の自由な解釈ということらしい。会ったこともないし、ビル・ゲイツでもないので、どれだけすごい人なのかよく分からないが、かなり上から目線な君主論解釈が、そこまで言うか?というほどで気持ちいい。古典の解釈はこれくらいでいいと思う。何しろ君主論の原文は読みにくいというか、具体的な名前とか地名が出てきて、現代の日本には関係ないことが多いのだが、エッセンスだけを抜き出して、現代風に解説してくれるのはありがたい。そして、こういう本を読んでみると、やっぱり原典に興味が湧き、多少難しいけれどもマキアヴェッリに挑戦してみようかという気にもなる。私の「孫子」の解釈も、現代の企業経営に向けた解釈だから同じようなものだ。古い話をそのまま現代語に訳すよりも応用が利いていい。そしてまたそこで興味を持って原典に当たると古典に対する抵抗感も薄くなるし、それで古典を学ぶ人が増えるのはいいことだろうと思う。人の上に立つ人にはおすすめ。成果を出すにはシビアさも必要だ。

著 者:成毛眞

出 版:メディアファクトリー

金 額:740円




勝ち続ける経営

 日本マクドナルド社長の経営セミナーの内容を本にした一冊。講演内容の収録だから、本としては物足りない感じもするが、その分、読みやすく、質疑応答の内容も入っていて、より生々しくなっている感じもある。マック(Apple)からマック(マクドナルド)への転身で注目される経営者だけに、スティーブ・ジョブズについての記述もあり、興味深い。どちらのマックにせよ、独自性、「らしさ」にこだわり、やると決めたら徹底してやる、というところが高業績につながっているように感じる。原田氏も語っているが、顧客の声やリサーチ結果に従っていては必ず総花的な平均点経営になる。そして横並びとなって過当競争を生む。だが、実際には、顧客から言われたことから離れて独自の方向性を示すのはなかなか難しいから、ついついどこの企業も顧客に言われるがままになってしまうんだなぁ~。企業経営者は自社の経営を見直すネタ本として読んでみるといいだろう。勝つには理由がある。他社の真似をしているだけでは勝てない。勝たなければ生き残れない。

著 者:原田泳幸

出 版:朝日新聞出版

金 額:1400円




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