天地震撼
歴史小説の第一人者であり、武田、北条、徳川と言えばこの人しかいない伊東潤先生の武田家三部作最新刊。「武田家滅亡」、「天地雷動」と来て本作だ。時系列的には「天地震撼」→「天地雷動」→「武田家滅亡」なので、初めて伊東潤作品を読む人は、本作を読んでから「天地雷動」「武田家滅亡」と読み進めていただきたい。
武田信玄、徳川家康と言えば知らない人はいないし、戦国時代に興味がなくても結末がどうなるかは分かっている。なのに、面白い。武田方と徳川方のシーンが交互に描かれているのだが、「そう来たか」「そう行くのか」「そんなことを考えていたのか」と引き込まれ、ついつい読み進んでしまった。大方の筋道が分かっているだけに、登場人物の心理描写など細かいところまで読み込む余裕があって、あたかもその現場を近くで見ていたかのような感覚になった。エンディングでは「なんと、そんな展開になるのか」とサプライズもあり。
特におすすめしたいのは、事業承継を考えている経営者だ。病に侵された武田信玄がどう次代にバトンを渡そうとするのか、その思考と葛藤に没入できると思う。承継される後継者も読んでみるといいだろう。単なる戦国時代小説ではなく、ビジネス書として読んでも得るものがある一冊で二度おいしい本である。おすすめです。