売上増の無限ループを実現する 営業DX
デジタル人材がいない中小企業は、営業DXを起点に全社のDXへと広げ、ビジネスモデルを変え戦略も変えていくべきだと説く一冊。多くのDX本には、先にデジタル活用した自社の将来ビジョンを示して、それに向けてDXを進めるべきだなどと理想論が書かれているが、そんなのは企業の実態を知らないIT系の人が考えることであって、まともな経営コンサルタントなら(大手企業に自分のDXコンサルティングを売り込もうとしている人を除いて)そんな提言はしないはずだ。
大手企業の経営者であっても、そのほとんどは最新のデジタル技術を理解しているわけではないし、5年後10年後の技術動向など把握していないだろうから、デジタル活用した将来ビジョンをそう簡単に描けるわけがない。結局、高い金を払ってどこかのコンサルに頼むことになる。だが、中小企業はそんなコンサル費用など出せないだろう。理想論など捨てて現実的に取り組むべきである。
それが、顧客増、売上増に直結する営業DXから取り組むべき理由である。マーケットに直結したところからデジタル化するから、業績を上げつつ経理や物流、仕入や製造など他の領域のDXにつなげていくことができる。中小企業の社内業務のコストなど絶対額として大したことがないから、業務効率を上げたりスピードを上げる取り組みでは効果に限界がある。それよりも顧客を増やし、取引件数を増やすことで、一件当たりの限界費用をゼロに近づける努力をするべきなのだ。
そして、営業DXを進めるとモノ売りからコト売り、すなわちサービス化が進むことを本書では示している。これこそがビジネスモデル変革であり、それがあってこそ戦略の見直しが行われ、それによって将来のビジョンも変わってくる。
企業の実態が分かっている素晴らしいDX本だなと思ったら、著者はなんと、私。前著「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」から一歩進んだアドバンス編だと考えてもらうと良いと思う。前著は、まずデジタルのイロハを知ってもらい、デジタルの力を体感してもらうことを優先したが、本書は実際に会社を変えていく、まさにトランスフォーメーションのための内容になっている。もちろん、おすすめです。