代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2025年版

天地震撼

 歴史小説の第一人者であり、武田、北条、徳川と言えばこの人しかいない伊東潤先生の武田家三部作最新刊。「武田家滅亡」、「天地雷動」と来て本作だ。時系列的には「天地震撼」→「天地雷動」→「武田家滅亡」なので、初めて伊東潤作品を読む人は、本作を読んでから「天地雷動」「武田家滅亡」と読み進めていただきたい。
 武田信玄、徳川家康と言えば知らない人はいないし、戦国時代に興味がなくても結末がどうなるかは分かっている。なのに、面白い。武田方と徳川方のシーンが交互に描かれているのだが、「そう来たか」「そう行くのか」「そんなことを考えていたのか」と引き込まれ、ついつい読み進んでしまった。大方の筋道が分かっているだけに、登場人物の心理描写など細かいところまで読み込む余裕があって、あたかもその現場を近くで見ていたかのような感覚になった。エンディングでは「なんと、そんな展開になるのか」とサプライズもあり。
 特におすすめしたいのは、事業承継を考えている経営者だ。病に侵された武田信玄がどう次代にバトンを渡そうとするのか、その思考と葛藤に没入できると思う。承継される後継者も読んでみるといいだろう。単なる戦国時代小説ではなく、ビジネス書として読んでも得るものがある一冊で二度おいしい本である。おすすめです。

著 者:伊東 潤

出 版:KADOKAWA

金 額:2000円


天地震撼

セブン&アイ 解体へのカウントダウン

 週刊「東洋経済」の副編集長によるセブン&アイの取材レポート。アリマンタシォン・クシュタールから買収されそうになっているセブン&アイに何が起こっているのかを知りたくて読んでみた。日本を代表する流通業界の雄がアクティビスト(物言う株主)たちに翻弄されている。そごう・西武の売却でもドタバタ劇があったが、これもアクティビスト絡み。そして、祖業であるイトーヨーカ堂の切り離し、売却の話も出ている。私の大学の先輩でもある伊藤雅俊氏が生きていたら何と言っただろう。
 株式公開、上場とは何かということを考えさせられる一冊だ。今や上場してしまえば、高値の買収提案にNOと言えない。経産省が「敵対的買収」を「同意なき買収」と言い換え、経営陣ではなく、社外取締役や特別委員会で意思決定するように誘導している。もちろん、業績が低迷し、配当もロクにせず株価も下がりっ放しといった状況であれば、買収されても何の文句も言えないだろうし、その前に上場廃止させても良いと思う。だが、セブン&アイは、売上11兆、営業利益5千億を超える優良企業であり、日本の流通業界のトップ企業だ。それでも狙われたら、逃げられない・・・高値で買収提案されたら断れない。イトーヨーカ堂や創業家である伊藤家の立場に立てば、いったい何のために上場したのか・・・ということになるだろう。
 セブンイレブンを始めたのもイトーヨーカ堂を守るため、より盤石な経営基盤を作るためではないだろうか。企業を安定させ、永続させるためには、一本足打法ではなく二本も三本も足があった方が良い。その中には利益率の低い事業もあるだろう。その代わり安定的な売上が見込めたり、地域に貢献し企業価値を高めたりする事業もあったりするものだ。
 資本市場では、それが許されない。効率の良い事業だけを残して、後は売却するか切り離せと迫る。そうして身軽にさせておいて、弱ったところをパクリといただく寸法ではないのか。
 上場を目指している経営者、上場企業に勤務する人には是非読んでもらいたい本である。M&Aを否定するつもりはないが、株主至上主義でとにかく株価が騰がればいいというのはいかがなものか。
 本書を読むと、鈴木敏文氏でもいてくれたらと思わずにいられない。しかし、その鈴木敏文氏を退任に追い込んだのも社外取締役であり、創業家であるという皮肉な因果があって、余計に考えさせられる。
 アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案に対抗して、創業家がMBOを計画しているとも言われているが、あまりに巨額なためにそこにもまた外資ファンドが入り込もうとしている。結局のところ外資においしいところを持って行かれて、後には残骸しか残っていなかったとならないことを祈りたい。

著 者:田島靖久

出 版:東洋経済新報社

金 額:1600円


セブン&アイ 解体へのカウントダウン

破壊なき市場創造の時代

 「ブルー・オーシャン戦略」のチャン・キムとレネ・モボルニュによる最新刊。副題は「これからのイノベーションを実現する」というもので、それがどのようなイノベーションかというと「経済善」と「社会善」の両立を目指すイノベーションだそうだ。それを彼らは「非ディスラプティブな創造」と呼ぶ。
 「非ディスラプティブ」とは、ディスラプション(破壊)がないということで、イノベーションによって既存市場を破壊するのではなく、まったく新規の市場を創造することによって、競争を回避(ブルー・オーシャン)する方がより望ましいという提言だ。言いたいことは分からなくもないが、まったくの新規市場を創造すると、言うのは簡単でも実際にはかなり難しいだろう。仮に何らかのアイデアを思い付いたとしてもそれを実現するだけの能力やリソースが自社にあるのかどうか。それがあったとしても、ある程度の市場規模までまったくのゼロから拡大させることが本当にできるのかどうか、と考えると現実味がない。
 ということで、おすすめBOOKSで取り上げておきながら、実は、あまりおすすめではない。が、孫子兵法家の私としては戦わずして勝つブルー・オーシャン戦略には賛成なので、一応紹介しておく。きっと、ブルー・オーシャン戦略の次のアイデアがなくて、暇になったんじゃないかな。ブルー・オーシャン戦略が世界的にヒットしたので、経営学の大家に祀り上げられて、より高尚な理論を出さないと納得してもらえないという切迫感か。
 ブルー・オーシャン戦略は、既存の市場、既存の競合関係の中で、ちょっとした視点を外したり、付け加えることで正面衝突を回避して、新たな市場を開拓するというプチアイデアなところが良かったのに、あれこれ高邁な理屈をつけようとするから、「言いたいことは分かるけど、実際やろうと思ったら無理なんじゃないの」という本書に着地したように思われる。
 ちなみに、仮にまったく新しい新市場を創造できたとしても、その市場に魅力があれば必ず競合の参入はあるわけで、世の中のすべての破壊をなくす「非ディスラプティブ」というのは、あったとしても一瞬の幻のようなもののように思う。
 「ブルー・オーシャン戦略」のチャン・キムとレネ・モボルニュによる最新刊なら読まねばなるまい、と考える私と同じような人がいてはいけないので、ここでご紹介しておきます。言いたいことはよく分かるよ、という本です。それが分かった上で読んでみようという方は是非。

著 者:W・チャン・キム&レネ・モボルニュ

出 版:ダイヤモンド社

金 額:2300円


破壊なき市場創造の時代

国民総株主

 ZOZOの創業者で退任後には宇宙ステーションに行ったりして、何かとお騒がせな前澤氏の新ビジネス「カブ&ピース」が目指す「国民総株主」化について書かれた一冊。「カブアンド」というサービスを契約すると株がもらえるということで話題だが、本書も株がもらえる権利付き。
 顧客を株主にする、「インベスタマー」、「顧客所有型企業」といったアイデア自体は目新しいものではないが、それを実行する規模感が違う。さすが前澤氏は全国民を株主にすると言う。彼が本書で述べている「大切なのはやはり『主体者になる』ということです」という考えにも賛成だ。彼が以前やっていた「お金配り」よりも「株配り」の方がよほどいいと思う。
 だが、主体者になってもらうなら、配ってはダメだろうと思う。タダでもらった株で、受け身のまま配当や値上がりを待つだけでは結局、お金配りと変わらないことにならないか。継続性があるかどうかの違いにしかならない。そして、これだけ株を配ろうとするなら、株の希薄化は避けられず、一人の株主が保有する株数がどれだけあっても、配当など微々たるものにしかならないのではないか。年に数百円、数千円、仮に数万円配当があったとしても、それなら100万円でもポンともらった方が良かったとなる人が多い気がする。
 個別銘柄を長期保有して、その会社を応援し、配当を受け取るべきという考えも至極真っ当な、資本市場の本来あるべき姿であって大賛成だ。だが、如何せん今の資本市場が、そんな呑気なことを言っていたら許されないものになっていることを知っているはずなのに、そこが考慮から外れているのではないか。「カブ&ピース」が上場しても業績が伸び悩めばそれまでだし、業績がグングン伸びて行きそうだとなったら、株の希薄化などを嫌気して株価が下がったところをアクティビストにでも狙い撃ちされて、TOBでも仕掛けられたら、タダで株をもらった人たちはこぞって売り払うことになるだろう。そこでゲーム終了、とならないことを祈りたい。
 「カブ&ピース」のビジネスが現状では、代理店商売の寄せ集めで、自社が付加価値を生んでいるものではないことも懸念材料だ。国民総株主にして、世界を平和にしようという意気込みは良いが、他社でも同じサービスを提供しているところに割って入って、自社の業績を伸ばせば、逆にビジネスを奪われて、株価も下がる企業がある。その会社の社員や株主は平和なのかな。
 そう考えると、「国民総株主」を実現するためには、「顧客所有型企業」ではなく「従業員所有型企業」を増やすべきだ。「従業員所有型企業」なら、金商法の制約も少なく、上場を目指す必要もない。非上場なら自社の業績以外の外的要因や景気に左右されることなく、安定した配当が可能になる。拙著「すべての見える化で会社は変わる」(実務教育出版)を参考にしていただきたい。
 最後は、拙著の紹介になってしまったが、前澤氏の挑戦も面白いので、株引換券をもらっておいて、「カブ&ピース」が今後どうなるか見届けたいと思う。

著 者:前澤友作

出 版:幻冬舎

金 額:1500円


国民総株主

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