代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2017年版

「孫子の兵法」で勝つ仕事えらび!!

 就職活動に孫子の兵法? と疑問に思う人も多いかもしれないが、就職戦線という戦いにおいても孫子の兵法は役立つ。小手先の就活テクニックではなく、時代を超えた人と組織の真理がそこにあるからだろう。孫子が重視した情報戦、諜報戦が、現代の就職活動でも必要とされ、短期決戦の就職戦線を勝ち抜くためには重要となる。
 本書は、高校生、大学生、20代の若手に向けて、仕事とは、人生とは、キャリアとは何かを考え、就職や転職に活かすものだが、40代50代の親世代の人も是非読んで欲しい。子供にアドバイスするにせよしないにせよ、今の就活を知る必要があるだろうし、もしアドバイスを求められた時には孫子の兵法がその指針となるだろう。
 また、高齢化が進み、人生100年時代に突入する中で、30~60代の中堅・ベテラン世代においても「セカンドキャリア」「サードキャリア」を積み、企業に依存しない、定年に左右されない生き方や仕事の仕方を考えてみるのにも本書が役立つはずだ。
 著者は、孫子兵法家である長尾一洋。そう、私だ。30年に渡って経営コンサルタントをして来て、20数年自社の採用も行ってきた実務も踏まえ、孫子の智恵を注入しながら本書を書いた。是非お読みいただきたい。若者に読んでもらいたいが、孫子は堅そうに感じて敬遠されかねないから、まずは親御さんに読んでもらいたい。そしてお子さんにお勧めして欲しい。同じ本を読んだ上で話をすれば人生や仕事について、より深い話ができるはずだ。
 お祖父ちゃん、お祖母ちゃんにもおすすめ。

著 者:長尾一洋

出 版:集英社

金 額:1300円




アマゾンが描く2022年の世界

 立教大学ビジネススクール教授によるアマゾン分析本。2022年の世界がどうなるかをアマゾンやジェフ・ベゾスが示しているわけではなく、著者の分析によって、アマゾンは2022年にこうなっているだろうと推論している内容。本書のためにジェフ・ベゾスのインタビュー記事や講演の動画など手に入るものはすべてチェックした上で書かれたそうなので、アマゾンの動きをそうした手間を省いてつかむのには便利な一冊だろう。
 なぜ本書に着目したかと言うと、アマゾンの分析に「5ファクターメソッド」と呼ぶ孫子の兵法を応用したフレームワークを使っているというのをどこかで見つけたから。孫子兵法家としてはそれはどんなものかチェックしなければならない。読んでみたら、孫子の「五事」を「5ファクターメソッド」と横文字にしただけじゃないかというものだったので、拍子抜けしたが、孫子の兵法を現代の企業経営に応用している点については素晴らしい。
 アマゾンの比較対象企業としてアリババも登場して、アリババの方がアマゾンよりすごいといった話になったりするので、アリババの本にしたら良かったのではないかとも思ったりもしたが、いずれにせよこうしたITの巨人がリアルな世界にも進出してきて、既存の業界や企業は「アマゾンエフェクト」「アリババエフェクト」で消滅する可能性もあるわけだから、しっかり敵のことを研究しておく必要がある。彼を知り己を知る孫子の兵法がやはり必要である。

著 者:田中道昭

出 版:PHPビジネス新書

金 額:910円




Hit Refresh

 マイクロソフトの第3代CEOによるマイクロソフト改革論。副題は「マイクロソフト再興とテクノロジーの未来」だ。3代目は、1992年にマイクロソフトに入社し、コンシューマー、法人両部門で、様々な製品やイノベーションを主導してきた人だそうだ。
 パソコン市場を創造し牽引してきたマイクロソフトだからこそ持っている強みもあれば、逆に壁にぶち当たって停滞している部分もあるのだろう。マイクロソフトのベンチャー魂と先進性を取り戻すにはどうするべきかを考え、チャレンジしている3代目の苦悩が描かれている。アップルもそうだが、カリスマ創業者がいなくなった後の舵取りは大変だろうと思う。おまけにパソコンの時代は終わろうとしていて、スマートデバイスやクラウドの世界では出遅れてしまった感のあるマイクロソフトだけに、本書に書かれている様々な悩みや苦悩は興味深い。
 かつて市場を席巻していた一太郎やLotus123などを駆逐してしまったWORDやExcelが、また同じように駆逐され淘汰されていくのではないかと私は思っているのだが、そこをどう3代目が泳ぎ切るか、Refreshボタンを押せるかどうか。本書を読んで、その辺りも考えてみると面白いだろう。

著 者:サティア・ナデラ

出 版:日経BP社

金 額:1800円




MAZDA DESIGN

 日本車メーカーでありながら、まるで欧州車のような洗練されたデザインを感じさせるマツダのデザイン力に迫る一冊。豊富なカラー写真で、読まずに見るだけでも楽しめる。今のマツダのデザインも良いが、過去の名車の写真を見ると、マツダのデザインへの思い入れを感じる。
 本書を通じて車のデザイン研究ではなく、ビジネスにおけるデザインの力を知ってもらいたいと思う。私は、企業経営におけるデザインは、人・物・金・情報に次ぐ第5の経営資源であると考えている。外観はもちろん、機能性や操作性に優れたデザインは、限界費用ゼロで商品に価値を与えていく。そしてそれが積み重ねられると企業ブランドというまさに資源となる。その価値を勉強するのに最適なサンプル企業がマツダだ。
 他業種の企業と比べれば規模は大きいが、自動車業界では小ぶりな存在でありながら、そのデザインと技術で存在感を大きくしている。日経デザインが取り上げるだけのことはある。是非ご一読を。

著 者:日経デザイン/廣川淳哉

出 版:日経BP社

金 額:2200円




90秒にかけた男

 日経新聞シニア・エディターなる人によるジャパネット創業者へのインタビュー。すでに今年のおすすめBOOKとして「伝えることから始めよう」(東洋経済新報社)を紹介していて、内容的にも被っている部分も多いのだが、改めておすすめしておきたい。新書サイズで持ち運びやすいし、非上場の道をあえて選ぶ意味について詳しく書かれているから。非上場だから、地元のサッカーチームの経営も引き受けることができ、その途端にJ1昇格が決まった。ジャパネットのおかげで昇格したわけではないかもしれないが、やはりこの人は何か持っている・・・。そんな気がしてくる。それにあやかってみるのも良いだろう。
 事業承継の問題はどこの企業でも難しい問題だから、ジャパネットから学ぶことも少なくないはずだ。企業の継続性ということを考えると上場すべきであるようにも思えるし、上場したことで思うような経営が持続できないとしたら、上場することに意味がないことにもなる。自社は誰のため、何のために存在しているのか、改めて考えてみる題材として読んでみて欲しい。オーナー経営者、後継者候補におすすめの一冊。

著 者:高田 明

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:850円




SHOE DOG 靴にすべてを

 ナイキの創業者による自伝。徒手空拳の若者による危なっかしい創業から1980年の上場までを赤裸々に語る大著。タイトルにすべてが凝縮されているように思う。SHOE DOGとは、靴業界で長年働くベテラン職人を言い、まさに「靴にすべてを」捧げた人間を指しているのだろう。それがフィル・ナイトだ。
 元陸上選手だったが、陸上では輝かしい活躍をしたわけではない。金があったわけでも経験があったわけでもないが、良い靴を求めていた。最初は日本のオニツカから輸入していたが自ら製造に乗り出し自社ブランド、ナイキが生まれた。自分のすべてを賭けられる仕事に出会えるかどうか。出会った仕事に自分のすべてを賭けられるかどうか。そこにかかっている。そこにはワーク・ライフバランスも働き方改革も副業容認もない(著者は途中まで副業しているが・・・)。
 経営的にはあまり学ぶところなし。うまく行った話は少なく、ヘタなことをしてトラブルになる話が多い。作った靴がプレミアムがつく程人気になった秘訣などは紹介なし。内輪の揉め事などはいろいろと書かれているので、創業から上場に至る過程が生々しく伝わってくる。ただ、内容が赤裸々なのはいいのだが、ちょっと人を悪く言い過ぎなのが気になった。特に、そもそも靴業界のスタートを切れた大恩人であるはずのオニツカは完全に悪者だ。一方的な主張なのでオニツカ側にも言い分があるように思う。経緯はともかく、代理店をしていた会社が勝手に自社ブランドを立ち上げたわけだからオニツカ側は激怒しただろう。もちろん、そんなトラブルも乗り越えて今のナイキを育てたという事実からの気付きや学びは大きい。500ページを超える大部だがつい引き込まれて読んでしまう。起業家を目指す人、経営者、後継者には面白く読める本だろう。

著 者:フィル・ナイト

出 版:東洋経済新報社

金 額:1800円




武士の碑

 西武ライオンズの菊池雄星投手が、心に残った一冊として紹介していた、西南戦争を舞台に西郷隆盛が最も頼りにしたという村田新八を主人公としてその眼から西郷、大久保、薩摩隼人、明治政府を見、語った小説。来年のNHK大河ドラマ「西郷どん」の予習をするのに最適な一冊。大河の原作は林真理子だが、「西郷どん」では描かれない、もしくは描かれても最終回のちょっとしたシーンで終わりそうな、西郷の最期がどうだったのか、なぜ西南戦争へと突き進んだのかという暗部を先に頭に置いておいて、幕末から明治にかけての西郷の活躍を見たい。
 村田新八のパリでの出来事と西南戦争での奮闘が交互に描かれるのだが、その流れが自然であり、また切なくて泣けてくる。長編だが、文庫版も出たので旅のお供にして年内に是非お読みになるといいだろう。

著 者:千本倖生

出 版:中央公論新社

金 額:1600円




塑する思考

 ニッカのピュアモルト、明治のおいしい牛乳、ロッテのクールミントガムなどの商品デザインをしたデザイナーによるデザイン考。単なるグラフィックデザインやインダストリアルデザインではなく、モノやコトを生み出す時にはデザインが必要だという発想のようだ。「人の営みにおいては、どんな発想も、どんな技術も、どんな素材もデザインを経なければ役立つ物や事にはなり得ません。」と言う。私もそう思う。仕事も経営も企業も組織もデザインだ。だからどこまでをデザイナーさんに頼むべきか、どこまでを経営コンサルタントが担当すべきかを迷う。
 この著者のようなデザイナーさんならいろいろ頼めそうで良いが、経営戦略や長期ビジョンということになるとどうなのかな?そこもやるよと言われたら、経営コンサルタントの出番もなくなるので、そこはやっぱりこちらで考えよう。
 そんなことを考えながら読んだら、なかなか楽しかった。「デザインの解剖」という発想にも興味を持った。そちらの本も読んでみようと思う。前半は事例が多くてイメージしやすいが、後半は哲学っぽい話になってやや難解になる。自社製品のデザインや売り方について興味のある人は読んでみるといいだろう。

著 者:佐藤 卓

出 版:新潮社

金 額:1900円




経営戦略の思考法

 一橋大学の教授による経営戦略解説書。経営戦略という言葉は、どの企業でも当たり前のように使うが、分かったようで分かっていない、不明瞭な言葉であり、明確な定義がない。定義が明確になり、誰しもが同じように経営戦略を考えたら、横並び戦略となって戦略的な意味がなくなる。ある戦略があれば、それとは違うことを考えるのが戦略の基本であって・・・と言い始めると、いつまで経っても定義は一つに定まらない。
 しかし、企業経営において、非常に大切なものであり、よく分からないで済ませてはまずい。そこで本書では、メジャーな、戦略計画学派、創発戦略学派、ポジショニング・ビュー、リソース・ベースト・ビュー、ゲーム論的アプローチの5つの考え方を整理した上で、それらをどう組み合わせて経営戦略を考えて行けば良いかを解説してくれている。なかなか分かりやすく書かれているなと思ったら、今年すでにご紹介した「ゼロからの経営戦略」を書いた先生だった。沼上先生、なかなか良いです。おすすめです。

著 者:沼上 幹

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1900円




善と悪の経済学

 24歳でハヴェル・チェコ共和国初代大統領の経済アドバイザーを務めたという経済学者による、経済学再考の書。1977年生まれの新進気鋭の学者が、古代の神話から、哲学や宗教、心理学、文化史にまで踏み込みつつ、経済学史を紐解く。近年の経済学が数学に依拠し過ぎていて、数値で表せない善悪や道徳、不合理性などを考慮できないことでミスリードしかねないと指摘する。
 また、アダム・スミスの「見えざる手」も、人の利己心(悪)を社会全体の利益(善)に変えるものであり、アダム・スミスの主張は「国富論」ではなく、その前に書かれた「道徳感情論」に主眼があると言う。「どんな経済学も、結局のところは善悪を扱っている」のだと。
 そして終盤で、現在直面している危機は、「資本主義の危機ではなく成長資本主義の危機である」と指摘する。なぜなら成長の限界に直面しているから・・・。成長が止まったことによって、富の公正な分配という哲学的、倫理的、社会的な問題を避けて通ることが出来なくなっているのだと。そこで「善と悪」。
 500頁近い大部で、途中、神話や宗教の話が続くので読み切るのは大変つらい本だが、何のために成長を目指すのかを考えてみるのには是非読んでみるといいだろう。成長のための成長はもう止めるべき時なのだろうから。
 ただし、著者も自ら書いているが、本書にその時の答えは書かれていない。それは一人ひとり、一社一社が考えるしかないのだろう。私なりの答えはあるが、もう少し確信が持てたところで発表したいと思う。

著 者:トーマス・セドラチェク

出 版:東洋経済新報社

金 額:3400円




アマゾノミクス

 amazonの元チーフ・サイエンティストで、ビッグデータの世界的な専門家と評される著者による「ネット企業にあなたの行動はすべてチェックされてますけど大丈夫ですか?」という警鐘本。それを分かった上で、そのネットサービスをうまく利用するか、それとも利用しないようにするかを判断せよと言う。amazonだけでなく、Facebook,Uber,Google,Airbnbなどのデータ利用についても解説している。自分たちが散々データを集めておいて、集められているから気を付けようと言うのは如何なものかと思うが・・・。元amazonだから許す。
 ネットには無料のサービスが溢れている。それをタダで利用する以上、データをとられてしまうリスクがあることくらい分かっているだろうと言いたいが、そんなことは考えずに喜んでプライベートな情報まで公開している人も多いから、こうした本も必要だろう。フリーランチはないということを知ってもらいたいものだ。そんな人は本書をきっと読まないだろうが。。。。
 本書を読むのは、個人データを利用して新たなサービスを生み出したり、収益改善を図りたいと考える企業側だろう。だが、本書を読んで、参考になったから自社でもやってみようなんて現時点で考えているようでは、とても本書に載っている事例企業などに太刀打ち出来ないから、諦めてせいぜい収集されたデータの開示を求めるにはどうすれば良いかを検討しておこう。
 ネット上での無料サービスで情報を集めて、世の中のことをすべて分かったつもりになっているIT企業に警告しておくと、そこに集まっている情報は、タダだから情報取られてもOKと思う人たちの情報であって、利便性が高くてタダであっても、そう簡単には個人情報を渡さないよと考える人たちの情報はとれない。集めた情報が商売になるのは、タダを求めてプライバシーを公開する客ではなく、金を払ってもプライバシーを守りたいと考える客であることを忘れてはならない。  そんなことをいろいろ考えてみるには良い題材となる本である。

著 者:アンドレアス・ワイガンド

出 版:文藝春秋

金 額:1800円




閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済

 「資本主義の終焉と歴史の危機」で知られる著者の新著。大きな主張は変わっていないが、英国のEU離脱や米国のアメリカファーストなどの新しい動きを踏まえて解説している。要は「資本の自己増殖が不可能になり、資本主義がその役割を終えようとしている現代においては、膨張や拡大をも終えなくてはならない」ということに尽きるのだろう。マイナス金利はその分かりやすい証明みたいなもので、金がタダで借りられても投資先がない、リターンを見込める投資先がないからタダで金を借りられる、という現状は否定できない。
 著者によれば、「金利ゼロは理想の社会が実現したことになる」のだそうだが、やはりそれでは困る旧体制の人や国が、戦争で一度壊して投資先を作るのか、それとも宇宙に行くのか、分からないが抵抗して何が起こるか分からないという不安がある。「より近く、よりゆっくり、より寛容な」社会を目指せと言われても、「より遠くへ、より速く、よくシビアに」突き進みたい人がまだまだたくさんいるだろう。
 いずれにせよ、こういう時には歴史に学ぶしかないのだろう。目先の動きに右往左往せず、歴史の大きな流れの中でどうあるべきかを考えたい。いろいろ考えさせられる一冊。

著 者:水野和夫

出 版:集英社新書

金 額:780円




真説・企業論

 東大を出て通産省に入りエディンバラ大学に留学して博士号までとって、京都大学大学院工学研究科の准教授を務めたという評論家による企業経営論。サブタイトルは、「ビジネススクールが教えない経営学」というものだが、それより本の帯にある「アメリカに学んではいけない」というキャッチが目に付く本だ。
 日本では、アメリカに学べ、シリコンバレーに学べ、アメリカのベンチャー精神に学べ、アメリカのITに学べと言われ過ぎ、そう思い込んでいる人が多いが、それらの定説というか常識を、具体的なデータによって粉砕し、否定しているのが本書だ。アメリカに学び、アメリカの真似をしているから日本はダメなのだと。私もそう思う。アメリカが優れている点もあるが、アメリカと日本は置かれた状況や文化や人も違うわけだから、そのまま有難がって真似しているだけではうまく行かない。特にコンサルやITの世界には、本書でも指摘があるように「アメリカではの守」が多い。アメリカではこうだ、シリコンバレーでは・・・と言うのが提言の根拠で、日本の現状、目の前の現実を見ていないことが多い。本書では、元マッキンゼーと元BCGの著名コンサルタントが実名で名指しされて、そのお説の間違いを指摘されていて、可哀そうになるほどだ。そこまで実名で言ってやるなよ・・・と思うが、とどめに「アメリカではの守がもてはやすアメリカの経営手法は、本場のアメリカでも失敗している」と断言。アメリカで通用したやり方が日本で通用するとは限らないと言う話ではなく、そもそもアメリカでもうまく行ってないじゃないかという指摘。もう立つ瀬無し。
 何でもアメリカ礼賛で、「アメリカではの守」を信じる人や企業は是非読んでみるべきだろう。本書の反論を受けて改心するもよし、反論に反論することで確信を深めるもよし。

著 者:中野剛志

出 版:講談社現代新書

金 額:800円




「白い恋人」奇跡の復活物語

 北海道のお土産として知らない人はいないであろう「白い恋人」の製造元、石屋製菓の社長が書いた復活劇の舞台裏。賞味期限の偽装などによる倒産危機から脱出し、更なる飛躍を目指す同社の取り組みを創業家3代目の著者が開示。若社長の決意表明本と言っても良いだろう。
 各地には土産物があり、ご当地菓子が存在するが、「白い恋人」のように一社で圧倒的な存在感を作り出している例は「赤福」など一部の例を除いて少ないように思う。不祥事もありながら、短期間に信頼と業績を回復させ、そうした存在感を生み出している素は何なのか、考えてみるのに良い本だろう。それを支援した森永製菓がまたカッコイイのでそこにも注目だ。
 そして何より、本書には弊社に関する記述があるので是非読んでもらいたい(笑)。著者が社長就任し新方針を掲げるくだりで、「情報公開については、社員全員が情報を共有できる『NIコラボ』というシステムを導入しました。そこで売り上げの情報や、お客様サービス室がもっているお客様の情報などを公開して情報の共有化を図っています。」と書かれている。実際にはNI Collabo以外にもお使いいただいているのだが、そんな細かい話はどうでも良い。会社を引き継ぎ、過去を活かしながらも、変えるべきところは変え、新たな取り組みを進める時に何が必要か、学べる点も多い。二代目、三代目の後継者やこれから承継を考えている現社長には特に参考になるだろう。北海道に行く予定のない人は、GINZA SIXに直営店が出来ているのでそちらで。

著 者:石水 創

出 版:宝島社

金 額:1300円




普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法

 普通の会社の普通の営業リーダー、平均(たいら ひとし)と普通の会社が普通の社員を使って成果を出せるようにするコンサルタント、矛盾両(ほこたて りょう)との対話形式で、営業部門が抱える7つの矛盾を克服し、普通の営業マンでも確実に成果が上がるようになる方法を解説。対話形式なのでページ数はあるが、文量は多くはなく、読みやすい。普通の会社の経営者、普通の営業マネージャー、普通の営業パーソンは必読。今まで、特別な会社の特別な営業マンの特殊なやり方を真似しようとして、無駄な努力をしていたことに気付いて目からウロコが落ちるでしょう。
 著者は私。自分で書いて自分でおすすめするのもどうかとは思いますが、自分で読んでいても改めて参考になります(笑)。本書の内容を実践すれば確実に成果が出ます。たった1400円+税で確実に成果が出るわけだから、読むしかないでしょう。もしちゃんと読んでも、どう実践したらいいのか分からない場合は(そんなことはないと思いますが)、ご質問をどうぞ。読めば分かるはずなので、よく読んでから質問してください。
 構成としては、韓非子が問題提起した「矛盾」を孫子の兵法を使って克服していくストーリーの中で、営業部門の7つの矛盾を「矛も盾もどっちも」という武器でクリアしていく流れ。営業経験者なら誰もが「あるある」と感じる矛盾がクリアされることで、「そうだったのか!」と気付きを得られるはず。もちろん解決策は、普通の会社の普通の人でも出来る方法なのでご安心を。
 フルコミッションやマルチなどの特殊な営業スタイルの人は読まないように。普通の会社の普通の人向けです。

著 者:長尾一洋

出 版:あさ出版

金 額:1400円




「公益」資本主義

 現状の「株主」資本主義、「金融」資本主義を否定し、「会社は従業員、経営陣、顧客、株主、地域社会、地球全体すべてのものである」と考える「公益」資本主義を提唱している。シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストとして活躍し、英米流の経営を知り尽くした著者だからこそ、その限界が指摘できるのだそうだ。日本には何でも米国が優れていると考えて米国流を受け入れてしまう人が多いので、そういう人に是非本書を読んで欲しいと思う。四半期決算や社外取締役などを廃止すべきとする提言ももっともであり、たしかにROEは経営を危うくする指標だと思う。「公益」資本主義という提言も大いに賛成だ。
 ただ、せっかく上場には意味がないと資本市場を否定しながら、出された処方箋が上場企業向けなのが残念・・・。そもそも上場しなければ、四半期決算も社外取締役も必要なし。株を短期売買する人もいない。私が処方箋を書くなら、従業員を株主にする社員オーナー経営とする。そして、配当性向はもちろんだが、社会還元性向も予め決めておいて社員オーナーと地域社会や地球環境への還元もルール化する。良い仕事をして利益を出し、まずは税金をしっかり払って社会還元し、その上で社員オーナーや趣旨に賛同できるNPOなどに寄付を行う。これなら上場などしていなくても「公益」を考えた経営ができるはずだ。

著 者:原 丈人

出 版:文春新書

金 額:820円




ビートルズの英語タイトルをめぐる213の冒険

 ビートルズの全曲名を解説した初めての本らしい。特にビートルズのファンというわけではなくても、ビートルズの曲はいくつか知っているだろう。私もそうだ。そして、ファンでもないのに、その知っている曲のタイトルが、なぜそのタイトルなのかが気になる曲がある。なんと、それを解説してくれるのが本書。公式録音全213曲ではなく有名な曲だけでも私の場合は良かったが、ビートルズファンにはたまらない内容だろう。タイトルがつけられたエピソードとともに英文法、スラングなどの解説もついている。中にはビートルズの曲の歌詞で英語を習得したという人もいるのではないだろうか。そういう人には曲とともに英語の復習にもなる一冊。
 ちなみに私が気になっていたタイトルは、Love Me Do, Can't Buy Me Love, A Hard Day's Night, All You Need Is Love, Ob-La-Di,Ob-La-Da, The Long And Winding Roadあたり。謎が解けたものも解けなかったものもあるけれども、なかなか興味深い内容だった。
 ビートルズを懐かしみつつ、英語の勉強をしてみるのにおすすめの一冊。たまにはこういう本を読んでビートルズを聴いてみるのも良いだろう。

著 者:長島水際

出 版:あさ出版

金 額:1400円




AI経営で会社は甦る

 産業再生機構で名を上げ、現在は経営共創基盤CEOとなっている著者のAI時代の経営論。AIを自動車の自動運転など具体的な実生活(命を落とすことがあり得る状況)に応用しようとすると、AI技術の優劣ではなく、それを具現化する実地の技術と、ビジネスモデルによる戦いになると指摘。だからグローバルなサイバー世界で後れをとっている日本企業にもチャンスがあるよという指摘がなされる。その通り!! AIであれIoTであれ限界費用がゼロもしくはそれに近いものは必ず価格競争が起きてコモディティ化するので、そこで負けていても気にする必要はない。AIだなんだと騒いで、今さらAI技術で戦おうなんてことを言い出さないところは偉い。さすが東大からスタンフォードのMBAへと進んだ人はバカではないなと、東大すら出ていないのに思っていたら・・・。
 後半で、資本主義の限界を唱え、ヒューマンキャピタルの重要性を訴えたまでは良かったが、そこから天才技術者を雇えだの、MITかハーバードの修士以上じゃないと通用しないだの、大企業にいる人間は中小に行ったら活躍できるだのと言い出すので、東大卒やハーバード卒がうじゃうじゃいるような一部の企業しか参考にならなくなる。本当の天才は学歴など関係ないしそもそも組織に属そうともしないと思うのだが・・・。
 東大卒でもなくMBAも持っていない人間には後味の悪い本だが、Amazonのジェフ・ベゾスだけは他のIT経営者たちとは違うと指摘するところまでは参考になるので、おすすめしておく。ヤマト運輸とAmazonの関係を見れば分かるようにビジネスは頭脳だけで完結することはなく、ラストワンマイルが詰まるだけで破綻することを忘れてはならない。ちなみに宅急便の父、小倉昌男氏も東大卒で、ジェフ・ベゾスはブリンストン大卒。やはり学歴は必要なのか(笑)。いずれにせよ、新たなビジネスモデルを生み出せる賢い人がたまたま良い大学に行っていたのか、良い大学を出たら良いビジネスモデルを生み出せるのか、因果と相関を混同しない程度の知力は必要だろう。

著 者:冨山和彦

出 版:文藝春秋

金 額:1500円




逆説のスタートアップ思考

 東京大学で学生や研究者のスタートアップ支援事業を行っている著者によるスタートアップ指南本。ちなみに、スタートアップとは、「短期間で急成長を目指す一時的な組織体のこと」だそうだ。一般的なベンチャー企業よりも、より短期間により高い成長を目指す企業をスタートアップと呼んでいると考えれば良いだろう。
 そのスタートアップに大切なことは、反直観的であることだそうだ。一般の人が直観で感じることの反対の道を行くということらしい。それを書名では「逆説」としたそうだ。要するに一般論、一般常識の逆を行けということであって、「戦わずして勝つ」孫子の戦略論から言えば当然の帰結でもある。
 と、口で言うのは簡単で、実践が難しいわけで、本書の事例もほぼ米国のものだ。スタートアップ向けの教訓めいた言葉も米国のスタートアップ支援者やベンチャーキャピタリストなどの例が多い。やはり日本では初期の資金調達も難しいし、起業後もまずは日本国内で・・・まずは日本語でと考えてしまって、米国のスタートアップのように巨額の赤字も気にせずに一気にグローバル展開する話になりにくい。
 それよりも日本では、本書の内容は中小企業の新分野進出、新事業開発において参考になると思う。カテゴリーもなく、名前も定まっていないようなニッチな事業分野へ逆張りしておいて、その後スケールさせるというシナリオが良い。人口減少、マーケット縮小で閉塞感のある中堅・中小企業の経営者がまるでスタートアップの起業家になったつもりで読むならおすすめの一冊。

著 者:馬田隆明

出 版:中公新書

金 額:820円




「週刊文春」編集長の仕事術

 「文春砲」と呼ばれるスクープを連発している週刊文春の編集長による仕事論。編集という仕事、雑誌や書籍に関する仕事でなくとも、プロとしてトップを走る人、走りたい人には参考になる本だろう。まずこの本の企画を考え著者にOKをもらったダイヤモンド社の編集者のプロ根性を称えたい。
 本書から学べるのは仕事に対する「熱」である。著者は「フルスイング」すると表現している。仕事を自分のものとして、自ら主体的に取り組む「自己発働」があってこそ、プロフェッショナルな仕事が成立し、それによって大きな成果が出る。本書を読んでいると、「働き方改革」で労働時間を減らせ、副業兼業を認めよ、休みをとらせろと、ますます働く人の自主性自発性を阻害し、中途半端な仕事で良しとしようとする流れ、風潮が心配になる。育児や介護など事情がある人や高齢者などは良いのだが、まだ仕事を楽しむほどのスキルもなく、面白さを実感する成功体験もなく、質も量も半人前の若者が、自己成長の機会を失わないことを祈りたい。
 なるべく仕事をしたくないと考えているような人に、本書を読めと言いたいところだが、読んだらきっと「文春の編集部ってブラックっすね」などと言い出しそうなので止めておこう。プロとしてその道のトップを走る人、走りたいと思っている人におすすめの一冊。

著 者:新谷 学

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1400円




伝えることから始めよう

 あのジャパネットたかた創業者、高田明氏による自伝。家業のカメラ店からのれん分けして、1700億円企業を作った著者の人生と仕事が綴られる。テレビショッピングでの口調がそのまま文章になったようで、とても読みやすく、あの微妙に訛った言葉遣いが聞こえてくるかのように読み込むことができる。
 「伝わるコミュニケーション」という章は、営業マン必読。スキルだけで売ろうとしてはならない。パッションとミッションが必要だと説く。ご本人は天性の営業マンなのだろうが、その伝えるコツについても丁寧に教えてくれている。
 企業経営のポリシーは、「目標を設定しない」「自己更新を続ける」「他社と比較しない」の3つだそうだ。目標を持たない主義だという話が本書では何度も出てくるのだが、すぐその後に「月商を300万円にしようと決めた」といったエピソードが出てくる。恐らくインタビューでライターさんが書いているからだろうが、矛盾する話も少なくない。正しくは「目標を設定しない」のではなく「目標に縛られない」「単なる数値目標には意味がない」といった意味だと考えれば良いだろう。ちなみに、最後は「何歳になっても夢や目標を持とう」という話で締めくくり。やっぱり目標は大切だ。
 こうした相矛盾する価値を同時に成り立たせるところに経営の妙があるということだろう。突っ込みどころはあるが、著者の熱い思いが伝わる良い本である。事業承継に悩む経営者、後継者にも参考になるだろう。

著 者:高田 明

出 版:東洋経済新報社

金 額:1600円




ゼロからの経営戦略

 一橋大学の教授による経営戦略ケーススタディ。11の事例で経営戦略の考え方、特にビジネスモデルの考え方が分かりやすく解説されている。取り上げた企業が、なぜそのビジネスモデルを構築できたのかを創業の経緯などからも紐解く。企業経営者に、経営戦略を考える時にはこれくらいのことを考えてよと言いたい内容。同業者に見えても、実はビジネスモデル、要するに収益構造がまるで違うということが良くある。そこを考えずに同業者と自社を比べて強みが、弱みが・・・とやっているから、どれだけ考えても同質的な戦略しか出てこないことになる。
 事例も新しくて、多くの企業の参考になるはずだ。良著。

著 者:沼上 幹

出 版:ミネルヴァ書房

金 額:2000円




わがセブン秘録

 言わずと知れたコンビニの父、元セブン&アイ会長、鈴木敏文氏による回顧録。そもそも小売の世界を目指していなかった人による究極の素人発想が日本一の小売グループを作ったのだということが理解できる一冊。玄人の常識、業界の常識に囚われて過去の延長線上でしか動けない人は、時代の変化に対応できないということだろう。
 最後の退任の仕方が残念ではあるが、未だに新商品の試食などもしているそうだから、やはり鈴木氏の力は本物だったということか。本書の中にも不可能と思われたビジネスを成功に導いた実績が挙げられていて、参考になる点も多い。人口も減少しマーケットもなくなってしまう中で、なんとか勝機を見出すヒントを見つけたい人は読んでみると良いだろう。常識を打ち破れば戦い方はいくらでもある。

著 者:鈴木敏文

出 版:プレジデント社

金 額:1500円




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