代表長尾が語るおすすめBOOKS

弊社代表の長尾が読んだ書籍の中から
特に皆様におすすめのものを厳選してご紹介するページです。
自己啓発や社内教育の参考にしてください。

おすすめBOOKS 2010年版

日本人の成功法則

 1964年生まれの神田氏と1930年生まれの渡部先生の対談本。父子のような年齢差、マーケッターと英文学者という立場の違いを、上智大学の同窓ということで結び付けた異色対談と言えるだろう。企画としては面白いし、読んでいても微妙に意見が違うところがあったりして、読者としては興味深く読めるが、果たして渡部先生は神田氏の主張をすべて良しとしているのか、この対談に納得しているのか、と気になってしまう。気になるところはあるけれども、80代に入られた渡部先生と40代の神田氏の世代の異なる視点から日本とは、日本人とは、成功とは、成功法則とは、と考えてみると、こちらの思考も深まっていいように思う。やっぱり年齢がモノを言うということがあるんだなぁ~。神田氏が人生について語ると「まだ40代なのに、何が分かるのか」と感じるところがあるが、渡部先生が語ると「まぁそうかもな」と納得したりする。神田氏と私は同年代だから、やっぱりまだ偉そうなことを言ってはいけないな、と変なところで参考になった。
 何を成功と呼ぶのかは人によって違うが、本書では、知的生活を楽しめるような思考力や経済力を身に付けることをイメージしていると思えばいいだろう。やはり小手先のテクニックで成功を勝ち取ろうということは無理なんだなと分からせてくれる。是非若い人に読んで欲しいと思う。いきなり渡部先生の本を読むのはちょっと難しいかなという人には神田氏の分かりやすさがMIXされた本書はおすすめである。

著 者:神田昌典+渡部昇一

出 版:李白社

金 額:1500円




強いチームをつくる技術

 フィンランド式チームビルディング「リチーミング」の解説本。なぜフィンランドなのか、なぜチームビルディングではなくて「Re teaming」なのかはいまいちピンと来ないが、組織(チーム)を活性化させる取り組みを分かりやすく書いてくれている本である。問題解決に直接結び付くかどうかは分からないが、コミュニケーションや人間関係の改善には役立ちそうである。ポイントは、チーム内の相互作用。一人ひとりでは難しいところをチームメンバー間の相互作用によって乗り切る。チームコーチングみたいな取り組みに近いのではないか。一対一でコーチングするよりもチームに対してコーチングすることで、コーチのサポートだけではなくメンバー相互のサポート(コーチング)も付加できるということだろう。「チームビルディング」「チームコーチング」「リチーミング」・・・・・・と似たような言葉があって一般の人には分かりにくいが、組織の人間関係や社員のモラルダウンに悩んでおられる企業には参考になるだろう。

著 者:ベン・ファーマン+タパニ・アホラ

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1600円




不合理だからすべてがうまくいく

 2008年の「予想どおりに不合理」に続く最新刊。人の判断は常に合理的、論理的に行われるわけではない。実は、かなり不合理なものであるという指摘が前作でなされ、今回は、不合理なところにも良い面もあるという指摘。高額報酬がナレッジ・ワークにとっては逆効果になったり、働く意味を感じて仕事をすることの大切さなど、ビジネス上参考になるような指摘も多い。特に参考になったのは、物事を創り上げていくプロセスに参加することでそれに対する評価が非常に高まるという点。企業経営においても重要なことだろう。そうした指摘を実験によって裏打ちしてくれるのがダン・アリエリー。まぁそうだろうなと思うようなこともあるが、それが実験で実証されると納得感が違う。
 不合理がマイナスに働くにせよ、プラスに働くにせよ、我々の意思決定、判断にはいろいろなバイアスがかかり、余計なことから影響を受けているということを忘れてはなるまい。人の心と行動を知るために参考になる本である。

著 者:ダン・アリエリー

出 版:早川書房

金 額:1900円




コトラーのマーケティング3.0

 近代マーケティングの父として知られている(かどうか・・・?)あのコトラーのマーケティング論。実際には、ヘルマワン・カルタジャヤとイワン・セティアワンという人が書いたのではないかと思われる。何でもかんでも2.0とか3.0とかバージョンをつければいいと思っているいるのではないか!?と突っ込みたくなる。
 マーケティング3.0とは何かというと「企業が消費者中心の考え方から人間中心の考え方に移行し、収益性と企業の社会的責任がうまく両立する段階である」そうだ。
 マーケティング1.0は、製品中心の考え方であったと。マーケティング2.0は、そこから消費者中心にシフトしたと言う。そして消費者目線などと言うのはもう古くて、今や価値主導なのだと。それが人間中心なのだそうだ。3.0のキーワードは、「共創」「コミュニティ化」「キャラクター構築」「ミッション」「ビジョン」「価値」。要するに商売優先、儲かればいいという発想ではなく、ゴマカシやマヤカシを捨て、正しい志を持ってサスティナブルなビジネスを構築せよといったことである。
 まぁ当たり前と言えば当たり前で、取り立てて参考になるようなことも大してないけれども、あのコトラーが最近はこんなことを言ってるよ、ということは知っておいてはどうか、という本である。

著 者:フィリップ・コトラー

出 版:朝日新聞出版

金 額:2400円




悪名の棺 笹川良一伝

 日本船舶振興会(現 日本財団)の創設者であり、政財界の首領と呼ばれた(かどうか私は良く知らないが、そうらしい)笹川良一氏の一代記。巨万の富を生み出しながら、自らはメザシを食べ風呂の湯も半分しか入れないという吝嗇ぶりで、子供に財産も残さなかったと言う。天下国家のために生きた人ではあるが、右翼、戦犯、ギャンブルの胴元といった悪名を受け、慈善事業も悪事の隠れ蓑と言われた。本書はそうした笹川良一氏の悪名を晴らす内容である。ただその情報元が笹川良一氏の子息であったり愛人であったりして、笹川良一擁護に偏っているのかな・・・とも感じさせる。多少は危ない橋も渡ったのではないかと詮索したくなるが、悪事ではなく綺麗事が並んでいる。唯一突っ込まれているのが、女性関係だ。英雄色を好むということだろうが、80代まで現役だったとか、70名の愛人の短冊を仏壇に飾っていたなど女性への執着を伝えている。著者が女性だからだろうか。
 いずれにせよ話半分と考えてもかなりの傑物であることは間違いない。やはり何事においても大事を成す人は腹が据わっているというか、胆力を感じさせる。腹心の裏切りや金目当てで騙されたことも多かったらしいが、笑い飛ばしていたという。ホントかな?「女の嫉妬は可愛いもんだが、男の嫉妬は恐ろしい」とも語っているから、嫉妬心から裏切ったりコソコソと裏で暗躍しようとする相手のことが可哀想になって、怒る気にもならなかったのかもしれないな。たしかに嫉妬は誰もが抱える暗部だろう。笹川良一氏の悪名もその大半は嫉妬心から来るものではなかったか。人の成功や富、名声を妬み、悪名を着せることで憂さを晴らそうとする己の嫉妬心を戒めることができる一冊。大物になるか、小物で終わるか、人間の器について考えてみよう。

著 者:工藤美代子

出 版:幻冬舎

金 額:1700円




ジャパネットからなぜ買いたくなるのか?

 今や知らない人はいないのではないか、というくらい有名になったジャパネットたかた、高田社長へのインタビュー本である。日経BPの「トップリーダー(旧ベンチャー)」「ビジネスオンライン」「ビジネスアソシエ」に掲載された記事を再構成したもののようだ。雑誌などで読んだことがある人でも、うまくまとまっていて新たな気付きがあるのではないかと思う。
 本書を読んで感じたのは、高田社長は永遠のTOP営業マンということである。だから本書は営業マンに是非読んでもらったらいいと思う。半分は営業の極意が書かれていると言ってもいいだろう。営業に携わる人はしっかり見習おう。
 だが、実は、そんなTOP営業マン社長が世の中にはたくさんいる。高田社長もその中の一人に過ぎないのではないか。しかし高田社長は、その営業活動をラジオやテレビを通じて何万人、何十万人、何百万人に直接行った。それによって物理的限界を超え、年商1500億円を実現したと考えるといいだろう。今は、高田社長以外の話せる人(売れる人)養成に取り組んでいるようだが、そこが成功するかどうか、楽しみだ。
 普通は、社長が万年TOP営業で頑張っているようでは、必ず物理的限界にぶち当たって、抱えられる社員数も10人とか20人とか、まぁよく頑張って50人、死ぬほどやって100人で一杯一杯だ。そうしてただの中小企業で終わる(社長はすごい人だったけどねぇ~とか言われながら)。たぶんそんな社長さんの中には高田社長よりも売る、スゴ腕営業社長がいると思う。しかし、残念ながら生身の人間が営業して回れる範囲には限界がある。
 高田社長のすごいところは、ラジオやテレビの番組を自ら制作して配信する決断をしたことだ。普通は「うちには無理」「人材がいない」「金がない」と言って終わり。そこを高田社長は「社内に専門スタッフがいなければ、勉強させればいい。テレビ局のスタッフだって最初は素人です。できない理由なんて何一つない。」と言ってのけている。ここのところを多くの中小企業経営者には見習って欲しい。同じ人間がやっていることなのだから、ノーベル賞級の研究とか国家プロジェクト並みの巨額投資が必要なこと以外は、他社にできて自社にできないことはない。そういう発想を持てるか、「どうせうちは中小企業なんだから大それたことは無理」と考えるか。。。。それによって企業は大きく変わってくる。
 中小企業経営者ならびに営業マン必読の書。

著 者:荻島央江

出 版:日経BP社

金 額:1400円




ドラッカーの講義1991-2003

 ドラッカーがブームである。高校野球のマネージャーがドラッカーを読んだらどうなるかとかいう本が売れているらしい・・・・・。いや、売れている・・・。すごく売れている。だが、意地でも読まない。邪道としか思えないからだ。そもそもドラッカーを読み込み、勉強してきた者にとって、あのアキバ系っぽいマンガの表紙の本を手にとることすら恥ずかしくてできない。あれだけ売れているのだから、中身も面白いのかもしれないが、読まない。
 そのドラッカーブームにあやかって、雨後の筍のように、ドラッカー関連本が出版されている。本書もその一つ。こうした二番煎じ、三番煎じは読むのか!?と指摘を受けそうだが、これは読む。ドラッカーの過去の著作を新しい切り口で整理していたり、著作には書かれていない内容などがあれば読む。読まねばならない。表紙にマンガが描いてなければ堂々と読める(笑)。
 本書はタイトルでお分かりのように講義録である。大学などでの講義を編集したものだ。著作にはない語り口で読みやすいし、もちろん本には書かれていないことが語られていたりする。収録された講義は91年から03年までのもので、05年に亡くなったドラッカーの最晩年の講義録と言える。経営学の巨人は最後に何を言い残したのか、本書を読んで再確認すると良いだろう。
 著作にはない発見も大いにあった。驚いたのは、なんと、BSCを最初に提唱したのは、ドラッカーだった!!ということ。03年にクレアモント大学院での講義において、「拙著『現代の経営』で私が“バランスト・スコアカード”を初めて提案したことを、ここで申し上げておきます。」と述べている。BSCは1992年にキャプランとノートンが発表したことになっているから、38年も前にドラッカーが先だったことになる。「現代の経営」読んだのにな・・・・・・。もう一回読み返さないといけない・・・。なんていう気付きがあるのが、本書。
 ドラッカーの正当な読者で、過去の著作も読み込んだ!という人が読んでも発見がある(あった)。ちょっと初めてドラッカーに触れる人には読みにくいというか、言葉の意味が分からないところがあるかもしれない。ある程度ドラッカーを読んだ人向け。

著 者:P.F.ドラッカー

出 版:アチーブメント出版

金 額:1500円




ドケチ道

 ドケチで有名な未来工業創業者の経営論。ただし、ドケチ一本槍ではなく、ドケチと反ドケチのバランスを説いている。大切なことは、当たり前や常識、以前からやっているといったことを疑って、改善や創意工夫をし続けること。それがドケチともなり、反ドケチともなる。著者も、自分のキャラクターだからできることであって、誰でもが同じようにはできないと言っているし、そのままドケチ道を真似したいとも思わないが、他社の横並び、後追いばかりではなく、独自の経営を追求する姿勢は多くの中小企業の参考になるだろう。見た目の体裁やカッコ良さを追いかけるだけではダメだし、ケチケチするばかりでコストダウンしか考えないようでもダメということか。中小企業の経営者、後継者は必読。自社の経営を見直すヒントがたくさんある。しかし部分的に真似をしてもうまく行かないだろう。確固とした信念というか哲学がなければ、ただのしみったれたケチと思われて終わり。経営コンサルタントとしては、こういう企業の事業承継がどうなっていくのか興味がある。創業者がいなくなった後も「ミライイズム」が継承されるかどうか・・・。そのために書かれた本とも言える。

著 者:山田昭男

出 版:東洋経済新報社

金 額:1500円




仕事を通して人が成長する会社

 高卒で郵便局員となりその後大学に通って今や福井県立大学の特任教授になったという異色の先生が書いた中小企業経営論。本書には、特別、特殊な経営者、企業ではなく、普通の人、普通の経営者、普通の会社が出てくる。普通の会社なんだけど、ちょっと違う。そんな事例が紹介されている。儲けも度外視して理念実現のために神様、仏様のような経営者が世のため人のために生きているといったすごい会社の話は、感動するし、立派だなと感心もするが、一般の人、一般企業は真似ができない。我々コンサルタントとしても参考にはなるけれども、その人、その会社にしかできないようなことでは、他の企業に転用、応用が利かない。だが、本書の事例は普通の中小企業が参考にしやすいと思う。中小企業で働くことの意味や大企業との差なども考えさせてくれる。
 大企業と中小企業には平均値では差があるし、全体の傾向としてのメリット、デメリットはあるけれども、個別企業においては、中小企業ならでは、中小企業だからこそできる働き方、経営の仕方がある。本書のテーマでもあるが、仕事を通して人が成長するという点において、小さいからこそ可能になる非給与利益(フリンジ・ベネフィット)は結構大きいと思う。規模が小さかったり、給与が多少低くても、その本人にとって成長という報酬をより多く得られる環境を提供したいものだ。釣った魚を与えるよりも魚の釣り方を教え、会社なんかなくなっても自力で魚を釣って生きていけるようになった方が、これからの時代には価値があるはずだ。中小企業経営者必読の書。

著 者:中沢孝夫

出 版:PHP新書

金 額:720円




この国を出よ

 あの大前研一氏とあのユニクロ柳井正氏との日本国家の行く末を憂う対談本。柳井氏曰く、「もう黙っていられない」のだと。大御所二人の危機感が伝わる熱い本である。是非多くの若者に読んでもらいたいと思う。20代30代のビジネスマンは必読。大学生も読んだ方がいいな・・・。いや、高校生も読んだ方がいいか。早めに危機感を持っておいた方がいい。学校の先生はきっとこんなことを教えてくれない。就職活動で苦労する頃になって焦っても遅い。
 と書きながら、すでに40代以上は諦めてしまっている私がまずい。60代のベテラン二人がこんなに頑張っているのだから40代50代も諦めずにチャレンジしなければならない。だがやっぱり難しいのかなぁ~。柳井氏は「今の日本人は、自分に不都合な情報には耳をふさぎ、戦後日本が世界に躍り出て急成長した過去の栄光を飽きることなくリプレイして自己満足し、それがこれからも続いていくと勝手に思い込んでいる滑稽な国民としか映りません」と斬り捨てている。確かに・・・・・。自虐史観は困るが、愛国心を持って今の日本を見てみても楽観的なことは言えない。
 国が何とかしてくれる、政治家や官僚が何か手を打つだろうという甘えを捨て、日本なんて国はアテにならないから自分で何とかしようと多くの国民が考えるようになれば、きっとこの国は立ち直るだろう。逆説的だけど・・・。国の実体は国民一人ひとりである。国ってヤツはいない。

著 者:大前研一+柳井 正

出 版:小学館

金 額:1400円




企業買収の裏側 M&A入門

 弁護士が書いたM&A入門書。企業買収の裏側というタイトルが良くない。買収、被買収だけでなく、M&A全般についてその裏で弁護士がどんなことをしているかといった具体的なところを分かりやすく解説してくれている。M&Aを結婚になぞらえて解説するというのがコンセプト。事例は大手企業が中心だが、中小企業の長期戦略や事業承継対策でのM&Aも勧めている。専門書をいきなり読むとハードルが高いが、新書だし、M&Aに対して買収、乗っ取り、ハゲタカ、といったマイナスイメージを持っているような人は本書から入って勉強してみるといいだろう。
 中小企業の後継者不足は深刻である。このままでは、人口減少スピード以上に企業減少スピードが加速してしまうのではないか。そこにM&Aを持ち込めば、少なくとも雇用減少スピードは抑えることができる。政治家も「雇用、雇用」と叫んでいる暇があったら、M&Aを中小企業でも簡単に進めることができるような支援体制やインフラを整備したらどうかと思う。大手企業のM&Aには肥大化した部分を削ぎ落とすリストラがついて回るが、中小企業はそもそも小さいのだから攻めの、発展的なM&Aができる。少なくともそういう戦略実行手段としてM&Aを見直すことがこれから重要になるように感じる。M&Aは大企業だけのものだと思っていてはならない。経営者、後継者は是非。

著 者:淵邊善彦

出 版:新潮社

金 額:720円




デフレの正体

 都市計画や地域振興を得意とする日本政策投資銀行の参事が、日本経済停滞、長期デフレの原因を総人口の減少ではなく、生産年齢人口の減少にフォーカスして説いた本。人口が減れば内需はしぼむというのは当たり前の話で驚くようなことではないが、たしかに、総人口で見るよりも生産年齢人口で見た方が消費行動などとの連動性が高い。ちなみに生産年齢人口とは、15歳から64歳までの人口を指す。本書のポイントは、この生産年齢人口を「本当は『消費年齢人口』と呼ぶ方がいい」と着眼したところにあると見る。そこから「生産年齢人口=旺盛に消費する人口の頭打ちが、多くの商品の供給過剰を生み、価格競争を激化させて、売上を停滞ないし減少させてきた。」という指摘が導かれる。総人口の減少は2005年からだが、生産年齢人口の減少は全国的に90年代の後半から起こっていると考えられ、総人口の減少よりも約10年前倒しで、人口オーナス(負荷)がかかり始めたと見た方が、内需低迷やデフレの慢性化を説明しやすい。本書では、そうした統計データ(全数調査データ)をいくつか挙げてそれを実証している。
 そう考えると、2012年からは団塊の世代が生産年齢人口から離脱して高齢者の仲間入りをしていくことになり、さらにマイナスの影響が大きくなる。お金は持っていても、年金生活となり、日本国の将来に不安があるとなれば金は使わない。一般に言われている景気(景況感)についても、それが仮に良くなっても外需(輸出)で稼ぎ、国内のコストダウンで生み出した収益であれば、内需にはマイナスに働く。今も、円高で輸出産業が大変だ、日本は輸出頼みなのに、と騒いでいるが、実際に自動車産業などで利益を出しているのはコストダウン部分が大きく、それはすなわち下請、系列企業にコストダウンのしわ寄せが行き、そこで働く人たちの人件費抑制によって達成されているわけだから、稼いだ利益は配当としてしか国内に還元されない。輸出企業の業績が良くなったら、それでそのまま国内景気が良くなってデフレから脱却できる、というほど甘くはない。景気というのがそもそも景況感であって、実体とは違うというところに落とし穴がありそうだ・・・・。
 と、書いてたら長くなったからもう止めよう。。。いろいろ言いたいことはあるが・・・。ご興味のある方は是非本書をお読み下さい。日本経済、日本国が置かれた現状を知るには良い本です。色々と考えることがあるはずです。

著 者:藻谷浩介

出 版:角川書店

金 額:724円




『孫子』解答のない兵法

 また孫子である。中国語の先生による孫子解説である。兵学者でもなく孫子研究家でもない。京都大学の中国語学の先生である。その先生が孫子の成立から伝承、字句の解釈まで丁寧に書いてくれている。専門家ではないが故の丁寧さと客観性があるし、かなりの数の文献に当たられている。何しろ中国語の先生だから中国の文献も丁寧に調べられていて、こんな親切な孫子解説はなかなかないのではないか。魏武帝註、十一家註、銀雀山漢墓出土竹簡にはじまり、孫子がいかに写本され、どこで誤写が起こったかという考察まである。日本の江戸時代には、林羅山、山鹿素行、荻生徂徠、新井白石、佐藤一斎、吉田松蔭といった有名どころが並んで、どう孫子を解釈したかを解説。こういう先生がいてくれるから「孫子兵法家」を名乗っていられる。とてもではないが自分では調べられない。
 そして平田先生は、「孫子は、その本文自体として完璧な解答を与えてはいない。いわば解答のない兵法である。むしろ、読者がめいめいに解答を作りあげ、自らを託して語る余地をもつ。」と評している。さすがよくわかっていらっしゃる。拙著「孫子の兵法 経営戦略」はそういうことで、企業経営論として孫子を読みこなしました。私の本を読んで、孫子の原典に興味を持ち、勉強してみようかなと思った方は、本書を読んでみるといいでしょう。但し孫子に興味の無い人は間違いなく眠たくなります。

著 者:平田昌司

出 版:岩波書店

金 額:2200円




デフレ不況の正体

 日下公人先生の日本再生論。経済だけでなく日本という国がどうあるべきかを日下節で斬る。普段当たり前のように思っていることも、見方を変えれば全然違って見えてくる。さすが日下公人!批判も恐れずズバッと斬り込んでいる。失礼ながらもう80歳になられ、今さら世間から評価されよう、マスコミで取り上げてもらおうなどというスケベ根性がないのが良いのだと思う。世間の評価を気にしなければ思い切ったことが言える。
 お金で買えるものに価値があった時代には、お金を尺度にして良い悪い、高い低いを判断していれば良かったが、お金では買えないものが大切になってくると経済学や経営学も見直しが必要になるだろう。日下先生はこれを「脱貨幣社会」と呼んだ。その時日本はどうなるか。その時日本人はどうすべきか。日下先生は「日本は大丈夫」とおっしゃるが・・・・・なんだかそんな自信が持てなくなっている今の日本が悲しい。簡単な答えはないが、本書を読んで多くの人がこれからどう生きるべきかを考えると良いと思う。日本国の実体は日本人一人ひとりなのだから。

著 者:日下公人

出 版:KKベストセラーズ

金 額:1400円




下から目線で読む『孫子』

 またも「孫子」本である。これは間違いなく孫子ブームだ。孫子に関する本が次々と出てくる。そのほとんどと言うかすべての、と言っても良いくらい「孫子」本は勝つために書かれている。少なくとも負けないための兵法書だ。だが、本書は、孫子なのに「負けてもいいじゃないか」という目線で書かれた「ゆるキャラ」ならぬ「ゆる孫子」である。実にユルユルな孫子解釈だ。タイトルからして「下から目線で読む」と来た。孫子の兵法は帝王学であり将軍のための教えだ。上に立つものが「上から目線で読む」ものである。それを本書では、下の人間、現場の人間、使われる人間の立場で解釈している。おまけに、そのとき上に立つ人として自分の奥さんと娘さんをイメージして書いたと言う・・・。嫁と娘に虐げられる夫・父の目線で孫子を読む。なんともユルい。
 著者は、弘前大学の中国哲学の教授。老子や荘子の著書があるから、孫子というよりも老荘思想がご専門のようだ。それで納得。まさにこのユルい孫子解釈は老荘っぽい。ある意味、孫子の新しい読み方であり、親しみやすいものではあるだろう。こういう「孫子」本が出てきてファン層が広がっていくところにブームの兆しが見える・・・ことにしておこう。
 孫子兵法家としては、もうちょっと戦闘モードの解釈を望むし、企業経営に応用した解釈ならやっぱり「孫子の兵法 経営戦略」をおすすめするが、たまにはこうした「ゆる孫子」もあっていいだろう。なかなか面白い。大切なことは古典の孫子を読むことよりも、その智恵をどう活用、応用するかだから、いろいろな読み方があっていい。

著 者:山田史生

出 版:ちくま新書

金 額:700円




プラットフォーム戦略

 大前研一氏推薦というので読んでみたら、大前氏のビジネス・ブレークスルー大学の講座内容だった・・・。そのあたりが少々微妙な感じではあるが、プラットフォーム戦略というものは意識しておいた方がいいと思うのでおすすめしてみたい。
 本書ではプラットフォーム戦略はIT業界に限ったことではないとしているが、出てくる事例はほとんどNET系である。プラットフォームとは、ネットワーク外部性が働くコミュニティというか組織を作りながら、そこでやりとりされるルール(情報登録や課金システム)などを牛耳る立場に立つことを指す。その時に、より大きく、広い範囲でネットワーク効果を働かせようと思えば、当然リアル世界ではなくIT、NETを活用することになるし、それによってそのコストが逓減していく。
 と書くとお分かりのように、米国企業の得意分野であり、日本企業はいいようにやられている。本書では楽天が事例として取り上げられているが、日本国内でショッピングモールをやっているだけで世界的なプラットフォームを作っているわけではないから、やはりグーグルとかアップル、アマゾンなどとはスケールが違う。確かに大儲けしようと思えば、自らプラットフォーム側に立たなければならないだろうが、日本人的には、そのプラットフォームをうまく活用して小儲け、中儲けくらいで我慢する、という戦略もアリなような・・・。
 そんな感じで少し冷静に読んでみると、米国NET企業の横暴やわがままに踊らされない心の準備ができていいだろう。ハードカバーの立派な本だが、行間が広くて文字数が少ない。さらっと読める。

著 者:平野敦士カール+アンドレイ・ハギウ

出 版:東洋経済新報社

金 額:1600円




30歳から読む孫子

 孫子ブームなのだろうか?孫子に関する本がたくさん出る・・・気がする。自分が孫子本を出したばかりだからアンテナの感度が高いだけだろうか?どうしても気になるから手にとってしまう。時代が大きく変わる時には、答えが見つからないから、ついつい原点回帰したくなる。その中でも孫子の兵法は現代の企業経営にとても参考になると思うので、孫子ブームも大歓迎だ。良いことだと思う。どんどんブームになってくれ。
 本書は、孫子の原文、読み下し文の扱いが小さくて、初心者も読みやすくなっている。ただどうしても孫子の解説をすると戦争や戦国時代などの例を挙げることになるんだな。その点では孫子の兵法を企業経営に応用しようと思うと、拙著「孫子の兵法 経営戦略」がやっぱりおすすめ(笑)。
 私個人としては、本書の「30歳から読む」という部分が新しい切り口なり読み方を教えてくれるかなと期待したのだが、どこにも30歳からとか30歳にどういう意味があるのかといった記述はなし。だから、30歳過ぎていなくても20代でも10代でも孫子は読めばいい。老いも若きも2500年間熟成され時代を超えてきた孫子の兵法に学ぼう。

著 者:中島孝志

出 版:マガジンハウス

金 額:1300円




「働きがい」なんて求めるな。

 ワークスアプリケーションズの社長が書いた仕事論。「日経ビジネスAssocie」の連載が単行本化されたもの。雑誌の連載になっていたようなものが単行本化されても、なんだか使い古しのお下がりをわざわざ買うみたいで気分が良くないので、基本的にあまり読まないのだが、パラパラと立ち読みしてみたら面白そうだったので買ってみた。著者の経営する会社は「働きがいのある会社No.1」なのだそうだ。ホントかな?どこが調べたのか?気になる。まぁそれはいいとして、そんな会社の社長が「働きがい」を求めるなというわけだから、タイトルと帯がいい。中身の前にまずそこ。
 そして中身は、というと、著者の会社のリクルーティングを意識して書かれた内容であり、20代30代の若手もしくは学生で、成長意欲が高い人には良いでしょう。面白いです。著者の会社は学生インターンを3000人採用しているというユニークな採用活動で有名だ。「人」に対してそこまでこだわりがあるのもいい。雑誌や本書を読んで、この会社で働いてみたいという人が応募してくれば、価値観採用になっていいな。なかなかうまいやり方だと思う。そういう研究をしてみるのにも良いだろう。
 ただし文章が、少々上から目線になっているので、読者対象は40代まで。50代より上の方は読んでいて苦々しく感じる可能性あり。

著 者:牧野正幸

出 版:日経BP社

金 額:1400円




業界のセオリー

 「部下は上司を3日で見抜く」「鍋に残ったソースをなめろ」といったビジネス上の格言、セオリー、常識を200項目ピックアップしたナレッジ集。フリーライターである著者が、数多くの取材の中で聞いた金言、名言を厳選して整理したと言う。業界も違えば仕事の勘所も違うから、そっくりそのまま参考になるかどうかは分からないが、それぞれの道で達人として評価されている人が教えてくれるセオリーは知っていて損はない。もちろん業界を超えて参考になることも多い。最近は、こういう業界に伝わるセオリー、勘所を教わる機会が少なくなっているように感じる。是非若い人に読んで欲しい。先達、先人の智恵を活用することは自分の成長を加速するために欠かすことができない。
 孫子の兵法でも「塗に由らざる所有り。軍に撃たざる所有り。城に攻めざる所有り。」と教えている。通ってはいけない道があり、攻撃してはいけない場合もあり、攻めてはいけない城もあって、予めそれを知っていれば防げることも多いと言うのだ。現代風に言えばナレッジマネジメントである。自分一人の経験や知識、情報には限界があるから、他人の智恵や情報をもらった方がいい。これを私は「疑似体験+実体験」と呼んでいるのだが、人から聞いた疑似体験を自分なりに実践して自分の血肉として吸収すれば、一回の実体験であたかも二回分の経験知を得ることができるというものだ。
 こうした学ぶ姿勢、進んで吸収する姿勢を持って本書を読めばとても役に立つだろう。

著 者:鹿島 宏

出 版:徳間書店

金 額:1400円




人を信じても、仕事は信じるな!

 中小企業経営者による中小企業経営のための中小企業経営実践書。小さな会社は決して大企業の真似をせず小さな会社なりの経営をすべきであるというお手本。「人を信じても、仕事は信じるな」というタイトルは中小企業だけでなく大企業でも同じことが言えるだろうが、小さな会社では人を信じたら仕事もそっくり信じました・・・で失敗することが確かに多い。内容的には、この著者のキャラだからできるのではないかと思われる点も多いが、たしかに中小企業だと「ある、ある・・・」というポイントを指摘してくれる。
 社員の数が少なくて代替人員がいないために社員に遠慮してしまうというのが中小のパターンだ。それを「人を大切にする」と言っていられる内はいいが、言うべきことも言えず、結局甘やかしているだけとなって、仕事の質を落としてしまってはビジネスが成り立たない。ここのところの微妙なバランスを本書を読んで考えてみると良い。中小企業を中堅、大企業へと成長させていこうと思うと参考にならないかもしれないが、中小が中小のままでいいと思えば、真似るべきことがたくさんある。

著 者:小山 昇

出 版:大和書房

金 額:1500円




ビジョナリーカンパニー③衰退の五段階

 ビジョナリーカンパニーの第3弾。1と2が時代を超えて偉大な企業であるための条件を示し、前向きな指針を提唱したのに対し、第3弾は、一度高い評価を受けながらその後衰退した企業の研究。なんともネガティブな気分になる本ではある。私は特にビジョナリーカンパニー2が好きだ。とてもいい本だと思う。GOOD to GREAT 良い会社で満足せず偉大な会社になれ!というメッセージ。つい現状に甘んじてしまう心にムチを打ってくれる素敵な本だ。ポジティブになれる。
 その続編であれば読まないわけにはいかないが、なんとも・・・。なにしろ偉大な会社になっていない場合はどうなるのか?とケチもつけたくなるのだが、平凡な会社であっても、衰退する時にはこの5段階を経るように思う。どんな企業でも反面教師として衰退に陥るパターンを知っておくべきだ。本書でも指摘しているように、パターンを知っていれば早期に対処も可能だ。1、2に続いて膨大なデータを基に企業の盛衰を分析し、比較対象企業とのコントラストを浮き上がらせる手法で、説得力がある。自社の経営に慢心があると思えば是非読んでみて欲しい。まぁ自分の慢心に気付くくらいなら問題はないのかもしれないが・・・。

著 者:ジェームズ・C・コリンズ

出 版:日経BP社

金 額:2200円




だれかを犠牲にする経済はもういらない

 公益資本主義を提唱し、世界でその事業化に取り組む原丈人氏と経理財務のプロとして有名な金児昭氏の対談本。誰かが得をすれば必ず誰かが損をするという金融資本主義の害と限界を説きながら、公益資本主義の可能性、日本の果たす役割について語り合う。米国でベンチャーキャピタリストとして数多くの投資実績を上げた原丈人氏だけに説得力がある。単なる理想論者の金融批判とは一線を画す。
 評論家的に理屈を述べるだけでなく、実業として実践しているところが素晴らしい。本書でも「いくら公益資本主義の考え方が大事だと口で言っても、金融資本主義の信奉者たちにはまったく理解されません。公益資本主義を実践する企業をつくり、金融資本主義が席巻する市場において、金融資本主義の考え方に基づく企業よりも良い結果を出す。実践の一方で理論もつくる。そうしないと公益資本主義は世界に広がりません。」と述べておられる。まったく同感だ。私もその理論と実践に一緒にチャレンジしてみたいと思う(会ったこともないけど・・・勝手に同志になる・・笑)。皆さんも是非取り組みましょう。公益資本主義って何?と興味を持った方は本書を読んでみるといいだろう。読みやすい本だ。

著 者:原 丈人+金児 昭

出 版:ウェッジ

金 額:900円




日本の復元力

 中谷先生のアメリカ礼讃懺悔の書「資本主義はなぜ自壊したのか」に続く、脱グローバル資本主義の書。今回は日本ならではの価値について主に語られている。日本ならびに日本人に何ができるのか。欧米流ではダメだ、グローバル資本主義は行き詰まっていると批判するだけでは何も生まれない。たしかに日本には他国にはない特殊要因があり日本文化の蓄積がある。他国、他民族からの蹂躙を受けていない(原爆は受けたが)という点もさることながら、武力によって王朝(天皇家)が転覆されていないという事実は大きいと思う。源頼朝も徳川家康も天皇にはならなかった。
 そして戦後の自虐史観についても指摘。日本は悪いことをした、日本人はダメだと言い過ぎ。占領政策の一環だから今さら言っても仕方ないが、やはり教育の見直しをすべきだろう。しかしすぐには無理だな・・・・。せめて大人たちが本書を読んで、子供たちに教えてあげよう。日本の未来は子供たちにかかっている。良著。

著 者:中谷 巌

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1600円




モチベーション3.0

 「ハイコンセプト」に続く大前研一氏(訳)とのコラボ本。大前研一推奨、全米ベストセラーと言われたら読まないわけにはいくまい。モチベーション3.0とは内発的動機付けのこと。モチベーション1.0は生存欲求による動機。生きるために働く本能的なモチベーションだ。モチベーション2.0は、アメとムチ、信賞必罰的な報酬。If-then式の動機付けは単純労働には有効だが知的作業では逆にクリエイティビティを引き下げてしまうと説く。そこでモチベーション3.0へと移行すべきだと言うのだが、これがすでに数十年も前から科学的には常識であり、未だに2.0をウロウロしているビジネスの常識がずれていると指摘。確かにエドワード・デシやミハイ・チクセントミハイなどはその筋では有名だが、あまりビジネスの世界では知られていない。ついつい、給料を増やせばやる気を出すだろう、賞与を出せば頑張ってくれるだろうとモチベーション2.0で考えてしまう企業がほとんどだ。
 だが、残念なことに本書を日本語で読んでいる時点で米国よりも遅れていることを意識しなければならない。原著 “Drive” が出たのは2009年。WEB上ではほぼ本書の内容と同じダニエル・ピンクの講演が昨年から流れている。何か新しいネタがあるかなと思って日本語版を読んだが、無かった・・・当り前か。。。翻訳本なんだから。(大前研一氏のまえがき有り・・・笑)
 ダニエル・ピンクはゴア副大統領のスピーチライターをやっていただけに言葉の遣い方がうまい。講演も上手だ。多くの研究者の成果をうまく組み合わせ、つなぎ合わせて分かりやすくモチベーションの進化を教えてくれる。専門家にとってはすでに当り前の常識ではあるが、一般のビジネスマンには大いに参考になるだろう。19世紀、20世紀の常識によって毒されていることに気付くはずだ。

著 者:ダニエル・ピンク

出 版:講談社

金 額:1800円




戦略の見える化

 戦略を「見える化」しなければならないのはなぜか。それは、戦略を実行し、戦略目標を達成しなければならないからだ。では、誰がその戦略を実行し、目標を達成するのか。全社員である。だから戦略が全社員に見えていなければならない。どこを目指すのか(戦略目標)も分からないのでは、頑張りようもない。
 そして、そもそも戦略と呼べるようなものがあるのか?と考えてみなければならない、と本書は指摘する。単なる同業他社との相対比較や先行企業追随型の単なる目標設定になっていないか?それのどこが戦略的なのか・・・。そこで本書では、ドメインという切り口を提示する。ドメインとは事業領域のことで、それを物理的定義から機能的定義に変えよと説く。それによって自社独自の土俵を作って一人横綱になることができる。「戦わずして勝つ」これこそが究極の戦略だと孫子も言っている。
 これからの日本企業は、勝たなければ生き残れない。勝つためには戦略が必要だ。それを分かりやすく、簡単な事例(魚屋さん)を挙げて教えてくれるのが本書である。経営者、後継者必読。自社に戦略がないとお嘆きのビジネスマンにもおすすめ。何しろ、私が書いた本だ。おすすめでないわけがない。

著 者:長尾一洋

出 版:アスコム

金 額:1300円




孫子の兵法 経営戦略

 兵法書と言えば孫子。その2500年前から伝わる孫子の兵法を現代企業の経営に応用するにはどうすればいいかを分かりやすく解説した経営指南本。フルタイトルは「小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法 経営戦略~強い会社を作る69のポイント~」だ。小さな会社向けに書かれているが、中堅企業、大企業であっても孫子の兵法は大いに役立つはずだ。
 古典としての孫子解説本ではない。漢文や現代語訳が細かく書かれているのではなく、あくまでも孫子の兵法をどう現代企業の経営に応用するかという視点で69項目に整理されている。中国古典には興味がないけど、孫子の智恵だけは拝借したいという人にはピッタリだ。
 本書は、中国古典の研究家によって書かれたものではなく、実践経営者、コンサルタント(実は私、孫子兵法家 長尾一洋)が自らの実体験に照らして孫子の兵法をどう活用するかという点について書いたものだから、具体的かつ実践的である。今さら紀元前の戦争のやり方について学んでも役に立たない。孫子の著者と言われる孫武の心を読み取り、孫武の目で現代の企業経営を見ることが大切。本書はそういう本である。経営者、管理者必読の書。もちろん若いビジネスマンにも役に立つ。どちらかと言うと若い人に読んでもらいたいかな。

著 者:長尾一洋

出 版:明日香出版社

金 額:1500円




社員の見える化

 人が大切、人材が重要と、どこの企業でも言うけれども、本当に人を大切にし、人材を人「財」として磨き上げている企業はどれくらいあるだろうか?本書は本当に人を大切にし、人を活かすための具体的なノウハウを分かりやすく解説している。
 経営の見える化、可視化経営において欠かすことのできないのが、この社員の見える化、人材の可視化だ。企業は人なり。企業経営にとって大切なものであれば見えていなければならない。人は、「能力」「心」「価値観」で動く。どれもパッと見ただけでは見えない。だから見える化する。
 見えないものを見えるようにするには、それなりの尺度、道具、手法が必要だ。それが高コストであってはならない。本書では、ほとんどお金をかけずに、採用から教育、評価、配置まで、人材活用の具体的な方法を紹介している。「人が大切」「人材あっての会社」と口では良いことを言いながら、人材を企業の宝にできていない経営者、管理者は必読。一般ビジネスマンも、人をどう見るかということを知っておくのは大切だ。是非お読みいただきたい。私が書いた本だから当然「超」おすすめである。

著 者:長尾一洋

出 版:中経出版

金 額:1300円




成功への孫子

 アメリカ人が書いた孫子兵法解説本。副題は「覇権国アメリカ的な孫子分析」。分かったような分からないような副題だが、原題は、“ Sun Tzu for Success ”。 孫子の英語表記は、“ Sonshi ” ではなく “ Sun Tzu ”。 この著者は “ Sun Tzu : The Art of War for Managers ” という7ヵ国語に翻訳されたベストセラーを書き、中国政府にも招待されて孫子解説の講演を行ったという人物。
 孫子は今やアメリカでも高い評価を受けている。洋の東西を問わず2500年の年月を経ても多くの示唆を与えるのは、孫子の教えに単なる戦争手法ではなく思想、哲学のような深さがあるからだろう。
 日本人には漢字、漢文の素養があるから、読み下し文で何となく孫子の原文の意味が伝わってくるが、これが英語だとどうなんだろうと思う。そういう意味で、アメリカで孫子がどう解釈され、どう解説されているかは興味深い。実際読んでみると、ちょっと意訳し過ぎじゃないかな、と思う。自分が言いたいことを言うために、孫子の都合のいいところだけを抜き出してきただけではないかと突っ込みたくなるような部分もある。さすが、覇権国的な解釈。自分の都合のいいように解釈するということか(笑)。失礼ながらこの程度であれば、孫子兵法家、長尾一洋の方がいいんじゃないの?と思ってしまう。おっと、この慢心がいけない。孫子は「始めは処女の如くあれ」と教えてくれているのに・・・。ふふふ、怒られたら脱兎の如く逃げよう。
 おすすめなのか、おすすめではないのか、分かりにくい話になったが、アメリカ人が孫子を解説するとどうなるのかを知るためには有効な一冊。そんなことはどうでもいいから孫子を勉強したいという人は、拙著「孫子の兵法経営戦略」をお読み下さい。

著 者:ジェラルド・マイケルソン

出 版:主婦の友社

金 額:1500円




生きる哲学 トヨタ生産方式

 トヨタ生産方式の父、大野耐一氏や張富士夫氏らの下で鍛えられ、トヨタ取締役を経てデンソー副社長になった人が書いたトヨタ流仕事術。副題は「大野耐一さんに学んだこと」。トヨタ生産方式のノウハウ本ではなく、生々しい現場でのやり取りやカンバンやアンドンを産んだ哲学などがリアリティーを持って書かれている。その場にいた人でなければ書けないものだろう。「人偏のついた自働化」「作業者一人ひとりの自立性をどうやって実現させるのか」という考え方には大いに共感した。ここまでやらないと儲からない、トヨタのようにはなれないというお手本も示してもらえる一冊。経営者や管理者が読むべきなのはもちろんだが、若いビジネスマンにも読んでもらいたい。甘い仕事では成長がないことが良く分かるだろう。良著。

著 者:岩月伸郎

出 版:幻冬舎新書

金 額:780円




論語の一言

 孫子もいいが、論語もいい。最近は孫子ばかりに意識が向いていたので論語も読んでみる。やっぱり論語もいい。経営とか営業とか勝ち負けの話になると孫子だが、人としてどうあるべきか、仁、恕、徳のある人間になるにはどうするか、人とどう接していくかといったテーマになれば論語だ。リーダーたる者、右手に孫子、左手に論語。人の上に立とうとするなら最低限読んでおかなければならない二大古典である。
 本書の著者は田口佳史氏。同氏の本はすべて読んでいるくらいのファンである。以前はCIなどのコンサルタントだったが、最近は東洋思想研究家を名乗っておられる。本書は慶應の丸の内シティーキャンパスでの講義が元になっているようだ。話言葉で分かりやすくなっているから読みやすい。田口流の論語解釈もいい。ただ、田口先生には関係ないが、読み下し文が古い本から引用してあるので少々読みづらい。漢字も古い。時代と共に読みやすくする工夫があってもいいなと思う。
 人の上に立つ人、必読。人としてどうあるべきか考えてみることをおすすめする。

著 者:田口佳史

出 版:光文社

金 額:1600円




「孫子」を読む

 「人間通」などで知られる谷沢先生による孫子解説本。孫子に関する本は、漫画本に至るまでだいたいチェックしていて、最近出た面白そうなものは読んでいるはずなのに、なぜか抜け落ちていた一冊。有名な谷沢先生の本で、尚且つ幻冬舎から出ている。見逃すはずはなさそうなのに、見逃していた。そもそも日本文学の先生だから孫子の専門家ではなさそうな気がしてスルーしていたのかな・・・。今回、たまたま書店で見つけてゲット。孫子研究、兵法研究、中国古典の専門家ではないから書けた現代語訳がとても良い。元は雑誌の連載だったようで、微妙に力が抜けて、思い切った意訳ができているのではないか。「あとがき」にご本人も、「あえて原文に拘らず、気易く通読してもらえるような現代語訳にした」と書いておられる。たしかに、中国古典の先生や兵法の専門家は、一字一句の解釈に拘るあまり、読んでもスッと入ってこないことが多い。さすがにベストセラー連発の著者と出版社のタッグだけに読みやすく、理解しやすい。だが、あまり売れていないようだ・・・。残念。良い本なのに。ただ、本にするにあたり書き加えられた「解説」が手抜きというか、簡単すぎるというか、雑な感はあるかな。学術的に孫子を知りたいのではなく、実践応用するために孫子の兵法を知りたい人にはおすすめ。是非多くの人に孫子の兵法を知ってほしい。現代の企業経営やビジネスにも大いに役立つ教えである。

著 者:谷沢永一

出 版:幻冬舎

金 額:1300円




ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社

 「日本でいちばん大切にしたい会社」で有名になった法政大学の坂本先生の本。「奉仕を先に、利を後に」という経営をしている企業を8つ紹介している。もちろんどの企業も素晴らしい理念や使命感を持って取り組んでおられるのだけれども、小さいからこそできる経営でもあり、できれば、より多くの人に奉仕すべく規模も大きくして、よりローコストにしてくれるといいのに・・・。本書で学ぶべきは、経営というよりもその理念や職人魂、職人のこだわりである。利益が悪いわけではなく、生み出した利益の使い方の問題であるという観点で企業経営を見てくれるともっと良いのではないかとも思う。
 もちろん企業経営は経営者の想いや使命感が大切だし、規模の大小は価値観の問題だから、大きくても小さくても良いのだが、せっかく世のため人のためになる商品や製品を生み出すことができたのなら、それを一人でも多くの人に提供するために、「経営」という智恵を使うべきだと私は考える。「ちっちゃいけど」ではなく、「おっきいけど、世界一誇りにできる会社」を目指そう。「あの会社、奉仕を先にして利を後にしたのにおっきくなったね、すごいね」と言われる会社がいい。そうだ、それがいい。そのために本書は多くのヒントをくれるはずだ。

著 者:坂本光司

出 版:ダイヤモンド社

金 額:1429円




ブラック企業、世にはばかる

 第二次ベビーブーマー世代のキャリアカウンセラー(転職支援者)が書いた、職業選択論。本書の定義で行くと、ほとんどの企業がブラック企業ということになるのではないかと思う。いわゆる一般的なブラック企業とは詐欺的な商売や強引な営業活動、過労死続発の過重労働企業など法に触れるか、脱法スレスレの企業を指すと思われるが、本書では、緩くて定型的な業務が中心で成長機会がないような職場、知的労働を要求されどうしても時間的に長くなってしまう職場などもブラック企業と呼ぶ。そしてブラック企業ではない勝ち組企業は、ブラック企業に低賃金、過重労働を要求する加害者企業であると指摘。これではまともな企業はないことになる。本書は、安易に就職活動に臨んだり、転職しようと考える若い人に是非読んでもらいたい。世の中の現実を知るために・・・。経験もなく、能力も大したことのない人間が、毎月決まった給料を稼ぐということがどれだけ大変なことか知るのに良い一冊。どこの会社も悪いところがあるし、良いところもある。違法行為、脱法行為を繰り返すような真のブラック企業は別だが、どんな企業であっても自分にとってプラスにできるはずだ。もちろん転職したければ転職しても良いが、前向きな転職にしよう。

著 者:蟹沢孝夫

出 版:光文社新書

金 額:740円




JAL崩壊

 サブタイトルは「ある客室乗務員の告白」。要するにJALの内部告発本。キャビンアテンダントやパーサーらで作るグループ2010なる人たちが書いたそうだ。匿名なのが、なんだか微妙だが、「この本に書かれたことは全部事実です」と帯に書いてある。組合との抗争やJASとの合併、パイロットの生態やCAの仕事の大変さなどが赤裸々に書かれていて、JALは潰れるべくして潰れたということがよく分かる一冊。このままではいけない、という危機感によって敢えて恥部をさらけ出したのだと言う。
 JAL再生について、そもそも私は悲観的だし、稲盛さんがCEOになったことについて疑問もある。それを心配して1月には雑記も書いた。本書の内容をすでに稲盛さんは読んでいるのだろうか。それが心配だ。稲盛さんが良いように担がれて、最後は再生失敗の汚名を着せられることになりはしないか。本書を読めば読むほど心配になった。本書をまず稲盛CEOにおすすめしなければならない。
 JAL以外の人には、企業が腐敗し、消滅していく時の内部がどんなものかを研究する本としておすすめする。ナショナル・フラッグ・キャリアの転落が悲しい・・・。

著 者:日本航空・グループ2010

出 版:文春新書

金 額:740円




先の先を読め

 大和ハウス工業の創業者、石橋信夫氏の経営について、現大和ハウス工業会長兼CEOが書いた熱い一冊。著者は「熱湯経営」という書名からして熱そうな経営本も書いている。これにも創業者、石橋信夫氏のエピソードがたくさん出てきたが、本書は、石橋信夫の生き方まで踏み込んで書いている。創業者はシベリア抑留を生き抜いた人だけに、不撓不屈の精神の持ち主だ。修羅場を潜った人はやはり強い。創業経営者の心情を理解するために参考になる本だ。是非、二世、三世の経営者に読んでもらいたい。きっと自社の創業者にも同じ気持ち、同じ苦しみ、同じ気概があったはずだ。
 私が特に共感した創業者の言葉は「どんな仕事であれ、人から言われたからやなく、自ら目標を立て、道筋を描いた仕事を実らせる瞬間、それ以上の幸福はないで」というもの。私はこれを「自己発働」という言葉で提唱しているが、どうしても社員の立場、後継者の立場では、「人から言われて」やる部分が最初にあって、この幸福感、充実感を得るのに苦労するようだ。すべての人が創業者精神、ジブン株式会社のオーナーのつもりで仕事に取り組めば、この幸福を味わえるのに・・・。もったいない。「仕事がつまらない」「仕事で充実感を味わえない」という人にも是非読んでみて欲しい。

著 者:樋口武男

出 版:文春新書

金 額:820円




買わされる「名付け」10の法則

 関西学院大学のビジネスコミュニケーションの先生が書いたネーミングの本。ネーミングだけでなく、キャッチコピーやキャッチフレーズ、マーケティングメッセージなど、言葉の使い方で、ビジネスがどう変わるかという内容。言葉のちょっとした使い方で、商品の印象が変わり、売上に差がつく。これらを多くの事例によって説明してくれる。自社の社名や商品名、キャッチフレーズがイマイチだなと思う人は是非読んでみると良い。ヒントが得られるはずだ。特に社名や商品名はビジネス上とても大切。何しろ商売をしようと思うと必ずついて回る。余計なキャッチフレーズなどがなくても、その価値や内容が伝わる社名や商品名をつけることを真剣に考えてみよう。

著 者:則定隆男

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:850円




儲ける社長の「頭の中」

 週1の出社で年収が8000万円。それで30年間増収増益を続けているという社長の書いた経営論。「秘密の逆発想ノート」だそうで、お金と成功を手にする80の法則が書かれている、と帯に書いてある。好き嫌いの分かれる本だろうなぁと思う。「オレも楽して儲けたい」と思う人はパッと手に取りたくなるだろう。まぁ読んでみたらいいね。世の中、そう簡単に儲けさせてはくれないということが分かるでしょう。反対に「楽して儲けようとは思わない。真面目にコツコツやるのが一番だ」と思う人は、表紙を見ただけで毛嫌いしてしまうだろう。まともで立派な考えを持った方だと思うが、そういう人にこそ読んでもらいたい。
 私もすべてに賛同しているわけではないし、当り前じゃないかと思う内容もあったが、常識を疑ってみよ!という教えが満載。真面目にコツコツやるのは立派なことだが、それだけではダメ。これからの時代はますますそうだ。本書も鵜呑みにせず、頭の体操だと思って読めば多くのヒントが得られるだろう。
 さすがに30年間増収増益を続けている経営者だけに、「過去の報告をする日報ではなく、明日の日報を書け」といった、普段私が「日報を報告書ではなく計画書にせよ」と説いているようなことを書いていた。やはり本質を見抜く人はそこに気付くんだな。「自己重要感」の指摘も大切なことだと思う。読みやすい割に気付きの多い本だ。

著 者:川合善大

出 版:かんき出版

金 額:1300円




ウケる!トーク術

 お笑い芸人を目指す人たちを対象に行われた専門学校での授業を元にした「エピソードトーク」の本。著者は放送作家だそうだ。この本を読んでお笑い芸人になれるとは思わないが、ちょっとしたエピソードを聞いている人に分かりやすく話したり、共感を持ってもらうというヒントにはなるのではないか。どうも自分の話がつまらない、伝わらないと感じる人は是非読んでみるといいだろう。単に理論や事実を伝えるのではなく、それに関連したちょっとしたエピソードを添えるというのは、相手に実感を持って理解してもらうために有効なことだと思う。だが、これがヘタな人が多い。自分もしくは身内にしか分からないような話をしたり、自分で言って自分でウケたり・・・。本書を読んで自分のエピソードトークを見直してみると良い。うまく使えば講演やプレゼンの伝達力がアップするだろう。講義を元にしているからか、読みやすい一冊。ちょっと表紙が恥ずかしい感じなので、カバーをつけてもらいましょう(笑)。

著 者:田中イデア

出 版:リットーミュージック

金 額:1300円




論点思考

 BCG流問題設定の技術という副題のついたコンサルティングノウハウ本。コンサルタントの思考術を一般のビジネスマンに教えようというもの。以前「仮説思考」という本を書いた人が著者。ボストンコンサルティングの元日本代表だ。「仮説思考」が問題解決手法とすると、「論点思考」は問題設定、課題設定の手法と言えるだろう。副題の方が分かりやすい。要するに、問題をいかに解くかの前に、そもそもどういう問題を設定するか、何を問題として取り上げるかを考えてみよ、ということ。こんなことは、コンサルタントにとっては当り前のことで、そもそもクライアント企業は本当のことを言うとは限らないし、「これが問題なので解決して欲しい」と依頼されても、それは単に表面的に起こっている事象であって、その原因、真因は別のところにあるということが多い。この何を問題とし、どういう問題として設定するかというのが本書で言う「論点」。そんなこと当り前じゃないか、と思うのだが、ふと気付いた。確かにできない人が多い。相手の言うことを鵜呑みする人が多過ぎる。私にとっては当り前だから人に説明するのは難しいのだが、本書にはそれを丁寧に説明してあるから、読む価値はあると思う。私には書けない。頑張ってはいるけど成果につながらない、評価されない、という人は必読。コンサルタントと名乗る人の中にもできない人がいる。だが、読んだからといってすぐにはできないのが、この問題設定だ。本書にも書いてあるが、場数を踏み、量をこなす中でセンスを磨こう。日々の実践が重要であることを肝に銘じて読んでいただきたい。

著 者:内田和成

出 版:東洋経済新報社

金 額:1600円




ほんもの

 「ほんもの」とは何か、どうすれば「ほんもの」になれるのか、哲学と物理学を駆使して解き明かす本。ハッキリ言って難解というか、何が言いたいのか分かりにくい本である。だが、言わんとしていること、伝えようとしていることは大切なことだと思う。原題は“ WHAT CONSUMERS REALLY WANT ”消費者が本当に求めているものは何か。どうも訳が悪いようにも思える。訳者の解説にも「正直言って、本書には、難解な部分がある」といきなり書かれている。全部で10章あるが、前半の5章は読まなくていいかもしれない。読むのが面倒な人は後半だけ読もう。前半は、すべてのものはにせものである、と言ってみたり、にせものもほんものになる、とか・・・最後は、ほんものかどうかは本人が決める、と・・・。もうどうにでもしてくれ、と言いたくなる。だが、後半はいろいろヒントがある。要するにインターネットがこれだけ普及してくると、にせもの企業のゴマカシが利かなくなるということ。悪評が口コミで広まることもあるし、内部告発もある。ほんもの企業になるしかない。ほんものとは、正しい動機で誠意を持って提供価値の向上を徹底し続けること、と言い切って良いと思う(本書では言い切っていないが)。それを続けていける企業だけが、「ほんもの」として顧客に認知される。ややこしい本で、大部ではあるが、「ほんもの」を目指す経営者はチャレンジしてみて欲しい。

著 者:ジェームズ・H・ギルモア+B・ジョセフ・パインⅡ

出 版:東洋経済新報社

金 額:2500円




Googleの正体

 あのマイクロソフトを脅かし、ストリートビューとかブック検索などで物議を醸し、ついには中国政府と対決するというGoogleとはいったいどんな会社で、何を考えているのかに踏み込んだ一冊。Googleの研究というよりインターネットとは何かを学ぶのに参考になると思う。リアル世界でのビジネスとネット世界でのビジネスは似て非なるものである。そこをつかんでおかなければ、それこそGoogleなどのネット企業ににいいようにされてしまう。いずれにせよ、タダ、Freeであれこれサービス提供されては、既存の事業者は苦しいだろうな・・・。Googleの無償サービスを喜んでばかりはいられない。本書を読めば、その表と裏が見えてくるだろう。

著 者:牧野武文

出 版:マイコミ新書

金 額:780円




成功する人の条件

 人生における成功とは何か。ビジネス上の成功だけではなく、身体、知性、感情、財産、精神の5つの基本領域のバランスが重要だと説く。内容はストーリー仕立て。投資銀行家の主人公がアルという謎の人物に出会うところから話が始まる。副題に「それはすべてドラッカーの言葉から始まった」とあるが、ちょっとそれはどうかな?と思う。「ポスト資本主義社会」での処世法について書いたということか、ボランティア団体をアルが運営していることを言っているのか、よく分からないがドラッカーを期待すると少々残念かも・・・。要するにGood Life Balanceの本だと言えばいいだろう。仕事かプライベートかという単純なワーク・ライフ・バランスではなく、仕事、個人、家族、地域、地球などもっと広いバランスを考えるべきである。バランス、バランスと言いながら、結局、己のこと、家族のことばかりを考えています、というのではバランスを欠いている。仕事ばっかり、プライベートばっかりという二者択一的な考えに毒されている人は読んでみることをおすすめする。仕事もうまく行かなければプライベートを充実させることも難しいし、プライベートがうまく行っていなければ仕事に身が入らない。分けることなどできないのだ。Good Life Balanceとは何か考えてみよう。

著 者:ラマー・スミス+タミー・クリング

出 版:マグロウヒル・エデュケーション

金 額:1500円




社長!会社を継がせたいならココまでやっておかなくちゃ!

 事業承継、相続対策、後継者問題の専門書ではない「専門書」。何が言いたいのかというと、ここまで生々しく事業承継のポイントを書いた本はない、ということ。税法や財務の専門書ではない。しかし参考になる。税金面ばかりでなく、古参幹部の処遇や中継ぎ経営者、銀行対策、兄弟での争い、そして社員の心理など、専門書にはない専門的な内容が豊富である。私も多くの事業承継、バトンタッチを見てきたが、「ある、ある」「そう、そう」というエピソードが連発だった。特に兄弟が危ない。元々仲の良かった兄弟姉妹でもそれぞれに配偶者がくっつくとモメる。例外はもちろんあるが、だいたい鳩山兄弟みたいになると思えばいいだろう(笑)。そんなことがあれこれ書いてあり、それに対する処方箋が提示されている。ちょっと税務面でスレスレ?、ヤバイのでは?と思われるような箇所はあったが、全体として事業承継を考える経営者、後継者は必読の価値あり。数字、財務、税務で事業承継はできない。この著者は事業承継の実体が分かっている人だと思う。

著 者:小山 昇

出 版:すばる舎

金 額:1500円




日下公人が読む日本と世界はこうなる

 日下公人先生が、250年続いた近代化の行き詰まりとそこでの日本の対応策を説く。産業革命によって生産性が向上し、人口が増え、経済は大きくなったが、やがて先進国では人口が増えなくなり、ついには地球環境が悲鳴を上げている。もはや欧米中心の強欲資本主義は通用しない。逆に言えば、常識のように考えている欧米中心の資本主義もほんの250年間のものであり、不変の真理ではないということだろう。欧米式近代化への盲目的な追従はもう止めるべきだ。その中で日本はどういう道を進むべきか、日下先生ならではの思い切った提言が満載。毀誉褒貶を気にしないからこそ書ける内容。たとえば核武装。こんなことはテレビなどでは絶対に言えない提言だ。米国、中国の実態や日本の真価について知ることのできる本である。日下先生の言う通りになるかどうか私には分からないが、こういう考え方もあるということは知っておくべきだろう。テレビや新聞で言っていることが常識であり正しいことだと思っていては、正しい意思決定ができない。時代の変革期には正しい歴史観が必要だろう。経営者必読。若い人もこういう本を読むといいと思う。視野が広がるはずだ。

著 者:日下公人

出 版:ワック

金 額:1238円




人間の器量

 日本人は小粒になり、器が小さくなったと言う。人物評価が平板で、高いか低いか、良いか悪いかという1つか2つの物差しで測ろうとしていると言う。確かに平和ボケで生死を分ける修羅場もなく格差のない日本で泰然とした大人物は出てきそうにない。ではどうすれば器量が大きくなるかという方法論について5つ挙げられている。1.修行をする。2.山っ気を持つ。3.ゆっくり進む。4.何も持たない。5.身を捧げる。分かったような分からないようなことではあるが、まぁ無私の境地ということかな。うーーん、器量を大きくするというのは難しい。ところでこんな本を書いている人はどれほどの器量の持ち主なのか?と尋ねたくなる。たまにフジTVのとくダネに出てくる文芸評論家の先生だ。プロフィールを見たら見た目より結構若い。昭和35年生まれ。今年50歳か。こういうテーマは難しいな。「そういうお前はどうなんだ?」と突っ込まれる可能性大。内容は面白いし、器量人と言われる人のエピソードは確かに参考になるのに。ただ、私もそうだが、自分の器を大きくしたい、器量が大きい人だと思われたいなんてスケベ根性で本書を読んでいるあたりがすでに器量が小さい気がする・・・。本書は参考にはなるが、「こんな本、俺には必要ない!」と言い切れる大きな自分になりたい。いやぁ~小さい。またこんな本をおすすめしているのが少々恥ずかしい・・・気もする。

著 者:福田和也

出 版:新潮新書

金 額:680円




異業種競争戦略

 早稲田大学ビジネススクール教授、元ボストン・コンサルティング日本代表の著者が書いた企業戦略論。業種・業界を超えた戦いが起こっていることを「異種格闘技」になぞらえて、「異業種格闘技」と呼び、その事例を紹介している。人口減少でマーケットが縮小していくとなると、当然同業界、同業種内での戦いも厳しくなり、ついには業界の垣根を超えて戦う必要性も高まる。そんな当り前のことを何を今さら言っているのか!と突っ込みたくなるが、それだけ業種や業界の概念、過去の常識に囚われている企業や経営者が多いということなのだろう。従来の競争戦略、企業戦略というものは、同業者間、同業界内での相対的な強弱を比べ、ポジショニングするというものが中心だったが、今やそんなものは通用しない。そのことを改めて知るには有効な本だろう。そもそも私は独自の事業ドメインによる独自戦略を基本にしているから業種・業態で考えているコンサルタントがいることを不思議に思うが、元ボスコンで早稲田の教授にもなっているような人が、さも新しい発見をしたかのように本を書いてくれているから、まだまだチャンスはある。特に中堅・中小企業に業界など関係なし。いくらでも打ち手はある。有名企業の事例が紹介されているので、それに基づいて自社の戦略を考え直してみるのには参考になるだろう。業界の常識などというものを捨て去ってしまおう。

著 者:内田和成

出 版:日本経済新聞出版社

金 額:1700円




人生と仕事について知っておいてほしいこと

 経営の神様、松下幸之助氏の口述記録を基に、PHP総合研究所が編纂した人生論、仕事論。松下幸之助氏の本はほとんど読んでいるが、こうして整理されたものをまた読み返してみると、気付かされることがまだまだある。本書は若手ビジネスマン向けに編纂されたようだが、管理者、経営者などベテランでも充分に参考になるし、もちろん若手ビジネスマンにも是非読んで欲しいと思う。時代は変わっても人の本質は変わらないし、仕事において大切な要点はそう変わるものではない。短い文章でまとめてあるから、読みやすいし、値段も安い。読んでいて思ったのが、「こういうことを日々の仕事の中で教えてくれる上司が減ってきたんだろうなぁ」ということ。かつては折に触れ、人生や仕事について語り、教えてくれる部下思いの上司が当り前のようにいたのに、最近はそういう話題、会話そのものが避けられるというか、遠慮してしまう風潮があるように感じる。そういう指導を受ける機会が減っている若い人は特にこういう書籍を読み、自ら吸収していくように意識すべきだろう。本当はこういう本すら読まない人に教えないといけないのだが・・・。仕事や人生に対する価値観教育が求められていると感じる。

著 者:松下幸之助

出 版:PHP研究所

金 額:952円




目のつけどころ

 「さおだけ屋」で有名な公認会計士による発想法の本。本のタイトル通り、目のつけどころについて書かれているのだが、著者は「ノウハウ集ではなくパターン集だ」と言う。思考のパターン、発想のパターンを身に付けよという意味らしい。得意なパターンを2つ、3つと増やしていくと「目のつけどころがいい人」となれる。確かに、発想が貧困というか、目のつけどころが固定的な人が多いように感じる。言われたこと、見たことをすぐ鵜呑みにする。そういう人は是非読んでみるといいだろう。ビックリするようなことは書いていないが、さすがベストセラー作家だけに、とても読みやすくまとめられている。そもそもページ数も少ないが・・・。うちの社員にも読んでもらいたいな。コンサルタントなのに思考の深みがない人がいる。どうしても自分が慣れ親しんだフレームで考えてしまうんだな。多くのパターンを身に付けて、相手や事象に応じて使い分けられるようになってもらいたい。若いビジネスマンには参考になるでしょう。

著 者:山田真哉

出 版:サンマーク出版

金 額:1200円




競争力の原点

 早稲田大学ビジネススクールの遠藤教授が、日本企業は「体格」ではなく「体質」で戦うべきだと説く。「現場力」や「見える化」を提唱してきた先生だけに、地に足の着いた具体的提言が並ぶ。現場、現物、現地の三現主義はその典型。確かに、綺麗事やあるべき論ばかりで、現場や現物を見ようとしない経営者、管理者が少なくない。現場が大切だから、と現場にばかりいて世間の動きを見ようとしないのも感心しないが、現場、現物、現地、現状、現実をつかまずに組織をリードすることはできない。まさに経営の見える化、可視化経営が必要なわけだが、さすが「見える化」の遠藤先生は企業経営の本質を理解しておられる。たとえば、米国から入ってきたCRMやSFAといったシステムでプロセス管理をしようとしてもうまく行かず、日報を大福帳のように活用することを提言するあたりは、現場を知る人であればこそだろう。私もよく言う言葉なのだが「たかが日報、されど日報」という指摘が遠藤先生からされるとは思わなかった。また、営業日報によって営業マンを管理するのではなく、顧客や競合を見える化すべきだという指摘も的を射ている。多くのIT屋さんやコンサルタントや大学の先生は米国から来たものを鵜呑みにして綺麗なコンセプトを横文字で語ろうとするが、まったくもって日本企業の現場が見えていない。日本企業だからこそできることがあるというヒントを本書から得ると良いだろう。先行きの見えない今、是非読んでみることをおすすめする。良著。

著 者:遠藤 功

出 版:PHP研究所

金 額:1400円




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