代表長尾が語る経営の道標

弊社代表長尾の経営に関するメッセージを
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2018年版 経営の道標

経営の道標11月

IoT時代に向け納入品管理を

 2020年から提供がスタートするという話だった、第5世代移動通信システム(5G)が2019年には順次前倒されて投入される流れになって来た。通信キャリアが新たな収益機会として投入を焦っているのか、社会的要請によるものなのかは良く分からないが、「高速・大容量」「多接続」「低遅延」という特徴を持つ5Gが登場することで、IoT化、IoT活用が一気に加速することは間違いないだろう。
 IoTは今さら説明する必要もないだろうが、 Internet of Thingsの略であり、モノのインターネットと和訳されている、あらゆる物がインターネットにつながり相互に情報交換する仕組みのことである。モノのインターネットなんて言うから余計分かりにくい感じになっているが、自動車の自動運転もIoTであり、コネクティッド・カー(接続されたクルマ)も5Gによって実用に耐えうるものになるということだろう。

 さて、そこで考えるべきことは、自社のビジネスモデルを見直し、自社の商品を「コネクティッド・〇〇〇」にし、一発で売り切るビジネスから、継続的に利用料・使用料もしくはメンテナンス料をもらうサブスクリプション型のビジネスに変える検討だ。
 消費者向けに食品を売るような、その場で商品を客が食べてしまって消えてなくなるビジネスでは、コネクティッドにはできないが、同じ食品でも製造や卸であれば、自社の商品がどう運ばれ、どう売られているかまでフォローするビジネスを考えることができる。
 もちろん、機械や装置、耐久品、不動産などカタチあるものを売っている場合には商品をコネクティッドにできて、課金方法もいろいろと工夫できるはずだ。
 ところが、一部の先進企業を除いて、自社が販売した後の商品(納入品・納入機器)がどこに置かれ、どうなっているかを管理できている企業はほとんどない。どの客に何を売ったかは、販売管理データが残っているが、その先のデータがないのだ。
 もうすぐIoT元年とも言える2019年がやって来ようとしている今、企業が取り組むべき課題の一つとして、「納入品(納入機器)管理」を挙げたい。顧客管理だけで満足していた時代から、顧客に紐づく納入品の管理までできなければならない時代へとシフトしようとしているのだ。

 実際に、ある機械の製造販売をしているクライアントであった話だが、その企業では1千万件を超える販売実績データ(販売管理システムから取り出した納入品のデータ)があるということだった。1千万件もあれば、それが10年サイクルで買い替えになるとすると、年に100万件の見込データがあることになり、20年サイクルだとしても年に50万件のネタがあることになる。素晴らしいデータだ。このデータを元に見込先の観覧車を回す「ストラテジック・セールス」を実践すれば、大きな成果を上げることができる。よしっ!と思って乗り込んだら、そのデータには、販売先はあっても設置場所はなく、どの会社に売ったかは分かってもそれがどこの拠点にあるのか、どの工場に設置されているのかといったことは分からなかった。さらに悲しいことに、その半分以上が代理店を経由しており、代理店に何を売ったかは分かっていても、その先の二次店やエンドユーザー情報はなかった・・・。このデータも無いよりはあった方がいいが、いざ営業を仕掛けようとすると、いちいち問い合わせたり、調べたりしなければならず、当初の意気込みは一気に雲散霧消してしまった。
 だが、この企業はまだ良い方だろう。そもそも1千万件の実績データがあっただけでも優秀だ。多くの場合、売りっぱなしでデータが残っていないし、あっても紙の納品書控程度で、それをデータ化する手間を考えたら使い物にならない。
 こうした残念なことにならないように、顧客管理だけでなく、納入品管理に着手していただきたい。弊社では、元々コピー機などのリース販売を想定して管理システムを作った関係で、納入機器管理と呼んでいるが、顧客情報に納入した商品や機械などを紐づけて管理すると良い。今は、住所を入れればそこから緯度経度を求めて地図にプロットもできる。案外、顧客住所と納入機器の設置場所は違っていることが多いから、顧客情報の住所データだけでなく、売った商品にも住所をつけて管理すべきである。
 これができていると、この納入品・納入機器にGPSをつけなくてもIoT化が可能となる。要するに安価なセンサーと通信回線を使うだけで、納入品・納入機器からのアラートを発信・受信できるようになる。それだけなら5G回線は必要ないのだが、来年から5Gが登場してIoTが広まれば、それに使うセンサーなどの汎用部品が安くなるはずだから、それらを活用してローコストにIoT化、コネクティッド化を進めてもらいたい。

 このIoT化、コネクティッド化ができることで、売った商品、製品の継続メンテナンスができるようになり、そこからサービス料をもらいやすくなる。SaaS(Software as a Service)やMaaS(Mobility as a Service)などと略されることが多い、ビジネスのサービス化への第一歩だ。それを課金方法から見た呼び名がサブスクリプションである。  売った商品、納入品、納入機器にIoTセンサーをつけよう。そこからどんな信号、情報を受け取れば、自社のサービスを付加したり、人員を効率的に動かせるかを考えてみよう。これが平成が終わり、IoT元年となる2019年に向けた宿題だ。

2018年11月

経営の道標9月

更に事業継続計画の見直しを

 前回、7月の道標に、6月に起こった大阪府北部地震と7月の西日本豪雨を踏まえ「事業継続計画の見直しを」と提言したばかりなのだが、西日本豪雨からちょうど2ヶ月後の9月6日に起こった最大震度7の北海道胆振東部地震における被害状況を鑑み、更に事業継続計画(BCP)の見直しを提言しなければならなくなった。ブラックアウトによる長期間かつ広域の停電が現実のものとなったからだ。
 弊社もそうだが、多くの企業の事業継続計画において、停電の想定は数時間程度から長くて一日程度ではないだろうか。停電となるエリアも、北海道全域が一気に停電となるような広域(一地方全域)での停電を想定していないのではないか。今回、たまたま北海道で電力供給が綱渡り状態であることが露呈したわけだが、原発が止まっている現状では他のエリアでも同様のことが起こらないとは限らない。
 事業継続計画に、数日間、場合によっては一週間程度の停電が起こった場合にどう対処するかという対策を盛り込むべきだろう。事業継続を考えた時に、まず人命優先、従業員の安否確認があるのは当然として、次に必要なのが顧客情報とスケジュール情報だ。これが社内に置いたサーバーにあって、電源喪失して動かなくなるか、水害等でお釈迦になったら、顧客に対して被災して業務が止まっているという連絡も出来なくなる。
 長時間の停電、電源喪失を想定すると、やはり一般企業が自社にサーバー類を設置する選択肢はなくなるだろう。どこかのデータセンターに置くか、クラウドサービスを利用するしかない。今回の北海道胆振東部地震では発生当初、停電が一週間ほど続くのではないかと予想が出たので、これはさすがにデータセンターもまずいのではないかと思って色々と調べてみたところ、自家発電設備の燃料は48時間分確保しているという例が多かった。データセンターに置いていても丸2日は持ちこたえられるが、その間に燃料供給の道も寸断されたりしてしまうと、そこでアウトとなるわけだが、逆に言えば48時間は持ちこたえてくれる。
 北海道胆振東部地震では、震源近くの停電は長引いたが大半の地域では2日程度で復旧したから、大事には至らなかったし、燃料供給は出来ていたみたいなのでそれ以上でも耐えられたかもしれないが、いずれにせよギリギリの綱渡りであったことは間違いないだろう。
 そう考えると、データセンターも一ヶ所ではなく他地区にも分散させる必要が出て来て、一般企業ではクラウドサービスを活用した方が手っ取り早いだろう。この辺りも踏まえて、事業継続計画の見直しをしておく必要がある。
 さらに今回の北海道胆振東部地震では、広域で停電が続いたので社員個々が使うパソコンの電源確保も出来ずサーバーが無事でも情報が見られないという問題が生じた。そこで活躍したのがスマートフォンだ。これも充電をどうするのかという問題があったが、パソコンよりは余程長く使えるし、充電サービスなども提供されたり車から電源を取ったりするなどいくつかの対処方法があった。そう考えると、災害による緊急時に、スマートフォンである程度の情報が取れ、業務処理が出来るような仕組みを用意しておくことも、事業継続計画に求められるだろう。
 その際に考慮しておきたいのが、従業員の安否確認の方法だ。まず無事かどうか、無事な場合どこにいるのかをスマートフォンのGPSも活用して確認したい。今回の地震では、弊社にも北海道支店の社員がいて、安否確認アプリ「NI Collabo NOW!」を活用した。東日本大震災での経験を踏まえて開発した仕組みなのだが、緊急時にとりあえず安否確認だけ出来ればいいというシンプルな作りにしていたので、今回、色々と付け加えたい機能も思いついた。そこで、緊急対応でバージョンアップすることを決めた。急な話だが、開発担当者が男気を出してやってくれると言ってくれた。
 安否確認する社員を選択したり、簡単なメッセージも伝えたり出来るようにして、スマートフォンを持っていない人やアプリの登録をしていない社員のためにガラケーへの通知機能も盛り込むようにする予定だ。あまり喜ばしいことではないが、実際に使ってみると改善点が見つかって、さらに役に立つツールに仕立てることが出来る。この安否確認アプリは、弊社のグループウェア「NI Collabo」をご利用の企業では無料で使うことが出来るので、是非事業継続計画の中に「NI Collabo NOW!」のアプリをダウンロードしてスマートフォンに入れておくように書き加えて欲しい。イザという時に役に立つはずだ。
 加えて、今回の経験で必要性を感じたのが、社員の親御さんやご家族の安否確認が事業継続に必要ではないかということだ。札幌の支店にいる社員の安否に気を取られてしまっていたが、東京など他地区で働いてくれている社員の中には北海道出身者もいて、親御さんは北海道在住であるということを忘れてはならない。なぜそんなことに思い至ったかというと、ある北海道出身の社員が停電復旧時に「実家が停電していたが復旧したので安心して業務に集中できます」と連絡をくれたからだ。申し訳ないが正直なところ、社員の実家、ご家族のことまで思いが至っていなかった。だが、こうした天災・災害があった時に実家が被災しているとなれば、社員も気掛かりで仕事に集中できなくなるのも理解できる。事業継続のためには、社員が仕事に安心して取り組めるよう実家やご家族の安否確認やケアも必要なのだ。
 そこで、離れて暮らす従業員の親御さんやご家族の安否確認が出来、それに対するケアを会社として支援できる仕組みをIoTを活用して作ることを決めた。そうなれば、天災や災害だけでなく介護や子育てにも活用できるだろう。業務中だと本人宛に連絡があっても通じなかったりすることもあるだろうし、営業活動で客先にいたりするとすぐには対応出来ないこともあるだろう。そもそも無事でなければ連絡も出来ない・・・。それを組織的にバックアップ出来るようにすれば、「家族が心配で仕事どころではない」と言い出しにくい人もケアしてあげることが出来る。
 今回の北海道であれば、もし何かあっても東京から行くには時間もかかるし、今回のように新千歳がクローズしていれば飛ぶことすら出来ないが、札幌には弊社の社員がいて、そこからなら何らかの支援なり対処が出来るかもしれない。そこまで会社としてやるべきかどうかの判断はそれぞれの経営者が考えれば良いが、大手では難しくても中堅・中小企業なら、そうした支援体制もあって良いと思う。介護離職の問題もあるし、実際に親御さんと離れて仕事をしている人も多いはずだ。社員が「気が気でない」状態でいたのでは、結局仕事にならないわけだから、事業継続計画の一環としてでも良いし、介護・育児支援の施策としてでも良いが是非検討してみてもらいたい。
 そのための仕組みを来年には「NI Collabo」に搭載するか連携させて、ご提供できるはずだ。ご期待いただきたい。そう書いている今、また猛烈な台風が日本列島に接近中である。秋雨前線も停滞しているだけに心配ではあるが、こうした台風が年に何回もやって来て、地震もあり、ゲリラ豪雨もあり、雪害もある。今一度、事業継続計画の見直しを行っていただきたい。

2018年9月

経営の道標7月

事業継続計画の見直しを

 実は昨年の7月にも「テレワーク体制構築でBCPの整備を」と題して、ここで事業継続計画の見直しとその一環としてテレワーク体制を作るべきだと訴えたのだが、また今年も同じことを言わなければならない。
 200名を超す死者を出した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)が起こったこともあるが、ここ数年「線状降水帯」の発生による豪雨災害が続いているのに、有効な対策が取られていないように感じるからだ。「数十年に一度の・・・」というほどの雨がこんなに度々降るわけだから、数十年に一度レベルの災害を警告する「特別警報」も意味を成さない。こんな頻度で「特別警報」が出ては、気象庁はまるで「オオカミ少年」のようであり、「また特別警報か」と思って終わりになる。
 実は、今回大きな被害が出た広島に、豪雨のあった7月6日にいて8日の朝まで足止めを食らってしまった。たしかに雨は降っていたけれども、台風が来ているわけでもないし、広島市の中心部ではそんなにビックリするような雨が降っているようには感じなかった。だが、結果はご承知の通り・・・。JRの在来線は全面ストップ、山陽新幹線も止まり、広島空港に行く高速道路(山陽道)も通行止めになって身動きがとれなくなった。土砂や洪水に巻き込まれたわけでもないし断水や停電になったわけでもないが、身動きがとれなければ仕事が出来ない。実際には、被害に遭った社員もいるし、停電や断水が一週間経った今もまだ続いている地域もある。山陽道の通行止めもまだ解除されていない。JRも運転見合わせが続いていて、出勤に支障を来す社員もいる。
 生死を争うレベルの災害が起こらなくても、社員が出社できない、物流が寸断され、事業が継続できないという事態に陥ることは、滅多にないことではなく、年に一度や二度は起こり得ることであると証明されてしまった。
 つい先日も大阪で震度5強の地震があった。地震の予想エリアからは外れたところでだ。小学校の壁が倒れて亡くなった女の子はいたが、多数の死者を出すようなものではなかった。しかし関西圏の交通網はマヒし、新幹線も止まった。弊社でもちょうど大阪でセミナーを予定していたのだが急遽中止にせざるを得なくなったし、結局、新幹線が動かずに講師である私が大阪に行けない事態に陥った。
 こうした事態、状況が何十年に一度あるかないかではなく、案外頻繁に起こり得るわけだから、事業継続のための対策を再度見直してみるべきだ。社員の安否確認と顧客データなどの保全は最低限の対策であり、即刻取り組む必要がある。今はクラウドサービスが充実して来たから、IT専任者がいなくても、大したコストをかけなくても対策を進めることができる。
 今回の豪雨でも、紙のカルテを保護しようとして結局逃げ遅れた医師がいたという話をテレビで見たが、カルテは「医者の命」だとその医師は考えたそうだ。だとすると「企業の命」は顧客情報だろう。これをクラウドに上げて、地震が来ても洪水が来ても、停電になっても、大丈夫なようにしておくべきだ。
 それが出来る状態になったら、順次ペーパーレス化を進めて行く。それによって、出社出来なくても、家からでも避難所からでも外からでもネットさえつながれば必要な情報が取り出せるようになる。ここまで来たら、あとはグループウェアの機能を使って、ワークフロー機能で業務の流れを作り、経費精算機能でお金の流れを作る。これで時間と場所を超えて、仕事が流れ、情報が流れ、お金が流れるようになる。ここまでの備えは急いで整えるべきではないだろうか。
これが出来たら、テレワークも可能となる。7月24日は「テレワーク・デイ」で、2020年の東京オリンピックには在宅勤務が出来るようにしようという取り組みがあると昨年紹介したが、もはや2020年まで待っている余裕はないだろう。今年もまだこれから台風シーズンがやってくるし、来年にはまた梅雨もある。天候とは関係ないが、「働き方改革」法案も可決されて、柔軟な働き方を認めるしかなくなるわけだから、時間と場所の制約を超えて仕事が出来る体制を作ることは急務である。
昨年も、そのためのツールとして「NI Collabo」というグループウェアをご紹介したが、あれから1年経って、さらに機能強化され、経費精算などもかなり便利になったが、価格は据え置きで380円/月・人のまま。かかるコストよりも確実にコストダウン効果がある。ついでに言うと、これまた1年以上先のことにはなるが、2019年の10月から、「NI Collabo」の月額利用料金を360円に引き下げることを決めた。今回の豪雨災害のようなことがあっても事業継続できる体制をより多くの企業に実現してもらいたいし、こうしたITツールは利用企業が増えれば単位コストは引き下げられるので、それを還元するという目的もある。ここでそれを紹介するのを「売り込み」だと感じる方や企業には他のツールを探してもらえば良いが、こちらは本気で世のため人のため、より多くの企業や人に使ってもらいたいという一心でやっていることを理解して欲しい。今回の西日本豪雨や大阪での地震でその思いがまた大きくなった。被災地で、水や電気が止まると人々の生活が脅かされるのと同じように、企業経営を支えるインフラとして、情報のやり取りや保全はとても重要だ。弊社としてはコストもかかるが、クラウド環境の整備も進め、何かトラブルがあった時のためのバックアップも拡充して、イザという時に備える覚悟である。
 本来なら、この原稿を書いている13日に尾道のクライアントに訪問する予定だったのだが、途中の山陽道は通行止めのままで、尾道市内は断水状態・・・ということで、三連休の海の日に変更になった。その日までに山陽道が復旧し、断水が終わっているかどうか・・・。そういうギリギリの状況が続く中で、企業経営の基盤を支える決意を固めた次第である。

2018年7月

経営の道標3月

フィードフォワードでAI・IoTを活かす

 AIやIoT、ビッグデータなど最新のテクノロジーに関する記事やニュースが連日テレビや新聞を賑わしている。こうしたテクノロジーは必ず企業経営にも浸透してくるだろうし、これからの生活と切っても切れないものになるだろう。
 だがこのままでは、今後浸透し、導入されるテクノロジーをうまく活用する企業と、振り回されて却って害になりかねない企業とに分かれることが懸念される。その二者の差は、AIやIoTという道具を「フィードバック」に使うか「フィードフォワード」に使うかによって生まれる。
 フィードバックは重要なことではあるが、終わったことを取り上げて、人を批判し、上から目線で評価する傾向がある。
 それに対して、フィードフォワードは、これから先の未来をどうするかを、一緒に考え、肯定的に支援する性質を持つ。
 そのために、導入されたテクノロジーから、否定的なフィードバックを受けると、人間はそのテクノロジーに対して嫌悪感を持ち忌避したくなる。
 だが、同じテクノロジーを使っても、そこから肯定的なフィードフォワードを受けると、人間はそのテクノロジーを好意的に受け入れ、活用したくなる。
 そもそものテクノロジー自体は中立であり便利なものであるのに、その使い方によって薬にも毒にもなるのだ。

テクノロジーによるフィードバックでがんじがらめにしてはならない

 そんなことを心配していたら、案の定、ひどいIoTツールが出て来た。客先を回っている営業担当者の歩数をカウントして集計するそうだ・・・。それで出来ることは、極めて厳密な行動管理であり、終わったことへのフィードバックでしかない。せっかく最新のテクノロジーを使っているのに、それによって伝えるメッセージは「営業は足で稼げ」という何とも古くさいものだ。効率よく客先を回って、歩数が少なかったら怒られる(笑)。そのテクノロジーを導入した企業の営業担当者は、なるべく非効率なルートを通って歩数稼ぎして時間稼ぎもするようになるだろう。
 エグゼクティブコーチングの第一人者として有名なマーシャル・ゴールドスミスは、「コーチングの神様が教える『できる人』の法則」という著書で「人が『正しい』形になるように手助けをするのは、彼らが『間違っている』と証明するよりもはるかに生産的だ。だからフィードフォワードはうまくいく。フィードバックでは誤りや欠点を話すことが多いが、フィードフォワードでは、問題ではなく解決策に焦点を当てる。」と指摘している。まさにその通り。いくら、テクノロジーが進化し、AIやIoTが普及しても、人は心で動くということを忘れてはならないということである。

フィードフォワードのためにAIやIoTを使う

 過去を振り返り、問題を論うためにAIやIoTを使うのではなく、これからどうするかを考え、未来を変えるためにAIやIoTを使うべきである。それがフィードフォワードであり、逆に言えば、AIやIoTなどのテクノロジーがあることで、フィードフォワードが可能になったとも言える。
 なぜなら、未来を変えるためには、行動の前、投入の前、実行の前にフィードする必要があるからだ。次にどうしたら良いかというアドバイスを「事前」にしたのに、本人に届いた時には「事後」だったとなっては意味がない。そのためにAIやIoTといったテクノロジーを使うのだ。
 こうすることで、テクノロジーは、人間にとって「役に立つもの」「便利なもの」になる。そう認識するから、テクノロジーに正しい情報を伝える。それによってさらに精度の高いフィードフォワードが可能となる。この善循環を回さなければならない。
 単なるテクノロジーの導入ではなく、フィードフォワードによって仕事の精度を上げ、業績を上げるテクノロジーの活用を進めていただきたい。

2018年3月

経営の道標1月

2018年 戊戌(つちのえ いぬ)

 繁栄と滅亡。始まりと終わり。新と旧。大きな変化が予想される年。絶頂を極めればまた無に帰す。バブルも膨らんで 大きくなれば破裂して無に帰す。
 今年は、平昌オリンピックにロシアワールドカップがあり大いに盛り上がるだろう。東京オリンピックへの準備も進み消費増税前の駆け込み需要も生まれて盛り上がるだろう。日経平均も年初から騰がっている。
 だが、北朝鮮への先制攻撃の可能性もあり、中東問題もある。世界中が金融緩和のカネ余りで、株高、資産高を演出しても実態はどうか。
 戊戌は、良いことは良い、悪いことは悪いとハッキリ明暗が分かれる年だと言う。バブルの絶頂と奈落の底がやってこないことを祈りたい。

 バブルはいずれ弾ける

 だが、間違いないことは、バブルはいずれ弾けるということ。それが2018年のことになるか2019年なのか、東京オリンピックまでは特需で弾けないのかは分からないが、いつか必ず弾ける。バブルのプラス面は謳歌しつつも、バブルに浮かれないようにしたい。備えあれば憂いなし。縮こまる必要はないが、備えておくに越したことはない。
 80年代のバブル時とは違って金利は低いので借入過多は多少許されても、権利保護が進む人員過多には気を付けたい。人手不足で賃金が上がり、目立たないところで社会保険料が上がってじわじわと人件費負担が重くなっている。人が足りないほど売上が伸び景気が良い時は多少時給が高くなっても笑っていられるが、バブルが弾けて売上がダウントレンドになった瞬間に耐えられなくなるだろう。
 そうなれば、またバブル入社組のリストラをやらなければならなくなる。人は、物でも機械でもないのだから、慎重に扱わなければならない。機械なら使わずに置いておいても無駄になるだけで腐らないが、人は使って活かしてあげないと腐ってしまう。活躍の場がないなら早目に転職した方が本人のためだと思っても、辞めてもらうことも難しくなる。バブル期の採用のように、頭数だけでも揃えよう、拘束してでも採用しよう、猫の手じゃなくて人の手ならいいというような採用は、いくら人手不足になってもやってはいけない。

 IoT、AIを活かしたビジネスモデル転換を

 ではどうするか。2018年はIoT元年とでも言えるような年になるから、IoTやそれに伴うAI活用でビジネスモデルを変え、付加価値を高め、収益性を上げつつ人員を増やさないという経営にシフトすべきである。これまで人がわざわざチェックしたり、確認に行ったり、手間ヒマをかけていた部分をIoTに置き換える。そうすると人間の能力では処理し切れないほどのデータが集まって来るから、この解析をAIで行う。そのAI活用でどう付加価値を生むかは各企業の工夫次第。ここで大切なことは人間がやっていたことをテクノロジーに置き換えるだけではダメだと言うこと。テクノロジーを使うからこそ可能になるビジネスモデルに転換することが重要だ。
 これによって、いつバブルが弾けても、いつミサイルが飛んで来ても、いつ難民が押し寄せても、雇用を守り、組織を守ることができるよう備える。
 2500年前に孫子は、『用兵の法は、その来たらざるを恃むこと無く吾が以て待つこと有るを恃むなり。其の攻めざるを恃むこと無く、吾が攻む可からざる所有るを恃むなり。』と説いた。「用兵の原則は、敵がやって来ないだろうという憶測をあてにするのではなく、自軍に敵がいつやって来てもよいだけの備えがあることを頼みとするものであり、敵が攻撃して来ないことをあてにするのではなく、自軍に敵が攻撃できないだけの態勢があることを頼みとするのである」と教えてくれているのだ。
 バブルはいずれ必ず弾ける。IoTやAIは今後必ず普及し競合も活用するようになる。そうであるなら、先行してそれに備えて、いつそういう時が来ても良いようにしておくことが重要である。とりあえず、有事の金も買っておこう。

2018年1月

経営の道標 年度別

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