代表長尾が語る経営の道標

弊社代表長尾の経営に関するメッセージを
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2015年版 経営の道標

経営の道標11月

負けない経営 -臥薪嘗胆-

 目先の勝利を追い、短期的に勝とう勝とうとするからか、名門企業、一流企業においても、不正会計、虚偽データ、データ流用、不正ソフトなどの事件が次々と明るみに出ている。上場している有名企業だからニュースになるとも言えるだろうが、上場し、四半期ごとに業績を問われるが故に、つい追い込まれて勝っているフリをしたくなるのかもしれない。
 孫子の兵法では、「昔の善く戦う者は、先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。」と考える。
 優れた将軍は、まず負けない準備をしておいてから、敵の弱点を見つけ失敗を待って勝てるチャンスをうかがうものだと。
 勝ちたいのは山々なのだが、まずは負けない備えを優先する。虚偽や不正処理などは、勝ったように見せかけるその場凌ぎに過ぎず、まさに大きな負けを引き込む可能性が高まる。負けない準備とは程遠い所業である。
 将来勝つためにも、まずは負けない備えを優先するべきである。これを許してくれないのが資本主義なのかもしれないが、ここでは未上場、非公開の企業を対象に負けない経営を考えてみたい。
 孫子は、「勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り。」と教えてくれている。守りを固めるのは自分次第。しかし勝てるかどうかは敵との相対関係があってこちらの都合通りにはいかない。だから、まずはこちらがやればできる守りを固める。その上で、敵を打ち負かす機会を探るのだ。
 実際には、企業経営は人間の寿命以上の長期戦だから、短期的に勝ったように見えてもそれで企業が消滅してしまっては元も子もない。SANYOやダイエーは消えてしまったが、JALやマツダは復活し生き抜いている。窮地に陥っても立ち直れる企業とそうではない企業がある。負けない準備とはその差を作り出すことだ。
 破綻しても、その企業にブランド力があり、価値があれば、株主は変わったとしても復活できる。これは未上場でも同じこと。「もうダメだ。おしまいだ。お手上げだ。」と諦めてしまわない限り、負けてはいない。臥薪嘗胆に学べば良い。
 ご存じの方も多いだろうが、臥薪嘗胆は孫子が仕えた呉王の闔廬から始まる話である。闔廬は、越に侵攻したが敗れて負傷し、それが原因で死んでしまう。闔廬の子、夫差は、父の仇を取ることを誓い、薪の上で寝ることの痛みでその屈辱を忘れないようにした。これが「臥薪」である。そして、ついに夫差は越に攻め込み、越王勾践の軍を破った。勾践は必死に命乞いをして生き延び、苦い胆を嘗めることで屈辱を忘れないようにして、後に呉王夫差を滅ぼした。これが「嘗胆」である。
 その時は負けたように見えても、生き延び、諦めなければ、また勝つチャンスはある。苦しく、みじめで、辛くても、リベンジできれば勝って終わることになる。この臥薪嘗胆を企業経営に活かそう。
 短期的に業績を落としても、仮に破綻したとしても、リベンジできるだけの備えをしておく。さてどうするか。
 一番良いのは、唯一無二、オンリーワンの企業であること。代替が利かなければ消滅させるわけにいかなくなる。少なくともブランドが残り、またリベンジのチャンスもやってくる。フォードの傘下に入って社長もフォード出身者になってしまったのに、フォードの出資をゼロに戻せたマツダのように。なぜかフォードはロータリーエンジンの開発を止めさせなかった。フォードグループに位置づけられたことで逆にマツダの存在は絞り込まれ、「らしさ」が際立った。
 そういう点では、赤字続きリストラ続きのソニーも消滅はしないだろうと思う。だが、SANYOは消えた。その差はどこにあるかを考えてみると良い。
 オンリーワンだと言えるくらいなら苦労はしないとお考えの方もいらっしゃるだろうから、次の策を示そう。
 限界費用をゼロに近づける資産を蓄えておく。これを経営の神様、松下幸之助は「ダム経営」と呼んだ。だからパナソニックは強かったが、SANYOは吸収された。
 限界費用をゼロに近づけるとは、分かりやすく言えば固定投資によって変動費を抑える仕組みを作っておくということ。もう少し詳しく言うと、変動費というよりもキャッシュアウトさせない仕組みを作るということだ。
 たとえばデザイン。高いデザイン料を払って、良いデザインにしたからといって、限界費用が高くなるわけではない。キャッシュも、最初に払って終わり。良いデザインの商品を何個、何台作って売っても、最初のデザイン料が増えるわけではない。
 たとえば土地。余力があるうちに土地を買っておけば、その時にキャッシュは出ていくが、地代を払い続ける必要はなくなる。値上がり期待でレバレッジを効かせて・・・と攻めで買うのではなく、実需のあるものを先に支払いを済ませておく守りで買う。イザという時には売ることもできる。建物や機械設備も同様だが、有形資産は劣化があるから多少注意が必要となる。減価償却費はキャッシュ的にはプラスなので気にしない。
 たとえばシステム。開発費はかかるが、一度できたらコピーするのに費用はかからない。どれだけ使っても電気代がかかるくらいで限界費用は限りなくゼロに近い。このカラクリを使って米国あたりのITベンチャーは一気に無償攻撃をしかけてくるわけだが、それを守りに使う。
 たとえばロボット。人件費を置き換える。ロボットは初期費用で終わりだが、人は給与を払い続けなければならない。人の質は高めたいが、数は増やしたくない。ロボットやシステムに置き換えられる仕事はなるべく置き換えておく。
 固定資産にしておけば、イザという時に売ってキャッシュに換えることもできるが、人はリストラしようとするとリストラ費用がかかる。貸借対照表にも載らない無形の資産として積み増してダムにしておけば、固定資産税もかからない。
 これらを総じてブランド化と言ってしまうと、「なんだブランドの話か」と思われてしまうかもしれないが、そうではなくて、ユニークな取り組みで会社を唯一無二にする努力をしながら、自社の費用構造を変えていくということである。
 こうした備えをしながら、勝てるチャンスを待つ。5年10年ではなく、20年、50年、100年を考える。ROIだ、ROEだ、ROAだ何だと、経営効率ばかり追いかけていては短期の株主だけを喜ばせることになる。経営効率では企業は救えない。企業の守りは現金であり、現金にはインフレリスクもあるから実需のある固定投資でヘッジしておくとよい。
 バブル崩壊以後、すでに25年。日本企業は萎縮して、投資を絞り過ぎている。攻めの投資ではなく守りの投資は、臥薪嘗胆の精神で、余裕のある内にしっかりしておくべきである。
 負けない経営は孫子の兵法を企業経営に応用することでもある。本の紹介をしようと思って本稿を書いたわけではないが、「仕事で大切なことは孫子の兵法がぜんぶ教えてくれる」(KADOKAWA)という本を「負けない」をコンセプトに書いたので参考にして欲しい。

2015年11月

経営の道標9月

採用(就職)がだまし合いではいけない

 今年の新卒採用、と書き出そうとして、今年とはいったいいつのことを指すのか、わけが分からなくなっていることについて物申したい。今年とは、2016年3月卒の学生さんに向けた採用のことを指すつもりだったが、すでに2017年3月卒に向けてインターン選考が始まっていたりするし、2016年3月卒に向けた活動も昨年からずっと行っていることだったりするので、「今年」とはいつなのか、頭の中がごちゃごちゃになってくる。
 これはきっと学生さんの側も同じだろう。政府が閣議決定した「日本再興戦略」に則って、日本経済団体連合会いわゆる経団連が、採用選考に関する企業の倫理憲章なるものを示して、採用(就職)活動が後ろ倒しされたわけだが、早急に撤廃するか、せめて元に戻してくれと言いたい。
 そもそも、経団連に属してもいない企業にまで自分たちのルールを強いる横暴は如何なものか。徹底するなら本当にすべての企業に対して徹底すべきであり、外資は仕方ない、中小はまぁいいでしょう、ベンチャーなんてあってもなくてもいいようなものだから・・・と曖昧にするだけしておいて、マスコミを通じて解禁日を守れ、内定日を遵守せよと訴えつつ、経団連に属する企業でも、実はOBなどを通じて実質選考している・・・というのは、これから世に出て社会人としてのスタートを切る学生さんにとって、決して良いことではないと思う。
 「世の中には、建前というのがあって、ルールなんてのはあってないようなものだよ」と学生時代に刷り込んでおきたいのか? そうではないだろう。「君たちはルール違反をして抜け駆けしてでも採用したい貴重な人材だよ」と口説きたいのかな・・・。勘違いさせて、地道な努力を厭うような若者を増殖させないようにしてほしいものだ。
 理系の研究室で毎日実験しないといけないといった学生さんを除いて、学生時代をフルオープンに就職活動していいようにできないものだろうか。短期間に一斉に動くから、どこの会社に行っても「第一志望です」と嘘をつかなければならなくなる。「まだ研究中なのでよく分からないんですよね」と正直に言える長期戦にしてあげることで、企業側も真剣に自社への志望度を上げる努力ができるだろうし、そのための時間も生まれることになる。今は、企業側も余裕がないから、「内定出したら就職活動を終われ」と迫るオワハラをしたくなるのだろう。
 今年は、この「オワハラ」なんて言葉が出来て、やりにくくてしょうがなかった。元々弊社では「第一志望じゃなければ来ない方がいいよ」と言って最終面接をしているので、「来る」というなら就職活動は終わっても平気なはず、となる。「終われ」と言わなくても「終わる」のであって、そこから入社に向けて勉強を始める。社会人として50年もの長い期間働くためのスタートが、だましだまされのだまし合いで、他を落ちたから仕方なく入ろうかという消去法の選択であってはいけないのではないか、と考えているからだ。
 世は人手不足で、卒業する学生数も大幅に減っている。長期間じっくり企業探し、仕事探しをすれば、必ず仕事はあるし、大手に行くから必ずハッピーになるわけでもない。知名度も規模もあって、大量の採用を一気に行う経団連加盟企業に都合の良いルールが、多くの中小企業や学生さんにとってマイナスになっている気がする。
 そんなことで、今年、弊社は、創業以来はじめて10月1日の内定解禁日に内定者を集める・・・。これまではわざわざこんな形式的な儀式をする必要はなかったのに・・・。来ると言った学生さんは信じてあげられたのに・・・。こんな採用(就職)ではいけない。
 では、どうすれば良いのか、ビシッとキレのいい提言をしたいところだが、一社ではどうにもならないこの非力さが歯がゆい。申し訳ないが、問題提起で終わることをお許しいただきたい。

2015年9月

経営の道標7月

マイナンバー制度を自社の体質強化に活かせ

 2016年1月から「社会保障・税番号(マイナンバー)制度」が運用スタートし、今年の10月からはマイナンバーの通知カードが送られてくる。とすれば、あと2ヶ月しか準備期間がないのに、ほとんど手つかずの企業が多いのではないか。すべての企業が対象になるのに、「うちは小規模だから関係ないだろう」と勘違いしてしまっている経営者も少なくない。混乱は必至であり、きちんと制度運用されるのかと疑問もあるが、だからと言って対応しないわけにもいかないわけだから、あと2ヶ月で準備体制を整えなければならない。
 人的にも資金的にも余裕のある大手企業は、すでに着手もしているだろうし、それ相応のコストと人手をかけて準備をすれば良いが、問題は、中堅以下の企業である。人も金もないからと躊躇しているうちに追い込まれて、必要最低限のことだけでお茶を濁すようなことでは、かえって無駄な出費となりもったいない。どうせ取り組むなら、マイナンバーの対応だけで終わらせず、企業体質強化につながる取り組みにしていただきたい。
 まず、相互牽制の仕組みを社内に定着させることを考えたい。情報のセキュリティを考えたら、一社員にすべてを任せるのではなく、複数名での相互牽制が働いている必要がある。企業規模が小さくなればなるほど、業務と個人が1対1対応になって属人化してしまっていることが多い。「あの人に聞けばわかる」となる時は話が速くて良いが、「あの人でなければわからない」となった時には、組織のボトルネックとなる。そして、「この業務は自分しか分からない」「他の誰にも干渉されない」となった時に、魔が差すことがある。よくあるのが経理業務。ベテラン経理担当者が、自分しか分からないからと自由に引き出して使い込んでいた・・・なんてことがあるのは、相互牽制機能がないからだ。お金のセキュリティも情報のセキュリティも同じこと。相互牽制させる仕組みが必要となる。
 マイナンバーの管理だけでなく、顧客情報の管理などにも、相互牽制の仕組みを作ること。たとえば、顧客情報を大量に出力する場合には、複数人が立ち会わないといけないようにするなどだ。システムの機能でチェックするというよりも、複数人が目を光らせる。システム的にセキュリティ対策するツールは金を払えば充実させられる。だが、そのセキュリティツールを設定している人間が一人だったとしたら? その人間がやろうと思えばセキュリティなどあって無きが如しだ。
 マイナンバーの情報漏洩があった場合には罰則規定があるので、マイナンバーだけは対応しておかないといけないと考える企業が多いが、実際に漏洩して悪影響が大きいのは顧客情報である。ベネッセの例を見れば分かるだろう。顧客からの信用を落とし、場合によっては法律はなくても賠償しないといけない。それなのに、マイナンバーのセキュリティ対策はするけど、顧客情報はしなくていいと考えるのはおかしいだろう。せっかくマイナンバー制度に対応してセキュリティを考えるなら、顧客情報や個人情報などのセキュリティも同時に強化すべきである。
 そして、マイナンバーの管理を始めるこのチャンスに、ペーパーレス化を進めると良い。紙での管理は手軽なようでいて、場所もコストも案外かかるし、マイナンバーで必要な自動廃棄などはできない。ここは、小さな会社であっても、IT化するべきと考える。今いる人数が少なくても、人には出入りがあるのだから、長年運用しているとかなりな数になる。パートやアルバイトなども対象だから、社員が少なくても結構人数は多いということにもなる。
 特に、外部の個人への支払いにおいて、マイナンバーの収集をIT化してスマートにしたい。外部の人だけに、必ず郵送なり何なりのデリバリーコストがかかるし、外部の人のマイナンバーを預かる以上、きちんと安全に管理しますよと言えなければならない。外部の人とインターネット経由でセキュリティの効いた状態でつながる仕組みを作ったら、それは社員ともつなげられるということであり、マイナンバーに限らずいろいろな情報を共有したり伝達したりすることが可能になるということである。
 せっかくマイナンバーでそうした仕組みを作ったら、顧客ごとの専用WEBページ「マイページ」を作ってみてはどうだろうか。それが職人さんや協力業者さんとの「マイページ」であってもいいし、たとえば、学校や幼稚園などでは、保護者との「マイページ」であっても良い。このペーパーレス化で、それまでの郵送やFAXや電話でのやり取りが無くなるか、少なくなって、郵送費や通信費の削減にもつながる。封書を往復させただけで、切手代は164円。これに中身や封筒の印刷代もかかる。毎日のようにFAXで情報のやり取りを行っているような場合には、かなりなコストダウンが実現できるだろう。おまけに伝達が速いし、集計などもデジタルデータだけに簡単になる。
 メールでやり取りすればいいだろうと考える企業もあるかもしれない。場合によってはLINEでいいじゃないかとも。だが、そこはセキュリティを考えたい。きちんと認証機能を経て、尚且つデータは暗号化するなどした上でのペーパーレスにすべきである。メールでIDやPassワードなどを送るのはもってのほか。メールなどでは安易にやり取りできない情報をペーパーレス化して共有しよう。
 IT活用やシステム担当の配置などが不充分な企業は、このマイナンバー制度への取り組みをキッカケにして、自社のレベルアップ、企業体質の強化を図るべきだと思う。そうしなければ、面倒なことをやった挙句、ただ国の徴税率を上げ、年金未加入者の捕捉率を上げ、従業員の副業をあぶり出して終わりになってしまう。時間切れになってしまわないうちに着手すべきである。とはいえ、時間もあまりなくお困りの企業も多いだろうと考えて、「マイナンバー導入準備パック」をご用意してみた。他社にもいろいろなサービスがあるから急いで検討いただきたい。その際に、マイナンバーだけで終わらせないことを意識していただくと良いと思う。

2015年7月

経営の道標5月

「構築」から「設定」へのパラダイムシフト

 前回の「ウェアラブルで変わるIT活用」に続いてITネタで恐縮だが、企業経営を考える上で言わずにおられないことがあるので、ご容赦願いたい。何が言いたいのか。それは・・・。
 システムの原価は時間であり、一度作れば、後は変動費がかからない。コピーしても劣化しないし、追加費用はかからない。自社で作ろうと思えば、作れる人を雇っておく固定費がかかるが、できたものを買うか利用すれば、その固定費も必要ない。従来は、出来合いのものを買って来たら、自社に合わせたシステムにならないことが多かったが、買ってきたものが、自社に合わせて簡単に変えられるような柔軟なものになり、吊るしの既製服ではなくイージーオーダーのようになって、さらにそれがDIY(Do It Yourself)で出来るようになったことで、オーダーメイドに近いものが自社で作れるようになった。
 そして、前回のウェアラブルのように、次々に新しいデバイス(ITツール)が出てきて、ネット環境が良くなり、CPUの性能も上がって、メモリーは安くなっている。どんどん安くなり、便利になっても、機能が増えても、コストが上がらない「武器」を企業経営において使わない手はないのではないか。むしろ、それを積極的に取り入れ、武装すべきであるということだ。これが言いたかった。
 特に、情報システム部門もなく、システムに詳しい人材も乏しい、中堅・中小企業の経営者に声を大にして言いたい。「今こそIT武装せよ」と。なぜなら、情報システム部門がなくても「設定」くらいはできるし、「構築」せずに「利用」するだけなら、開発期間も必要ないから、コストもかからず、経営スピードも上げられる。スキルやコストがなくても大丈夫なら、拒否する理由もないだろう。
 だが、実際に、多くの企業を回っていると、IT活用に否定的だったり、端から自社には無理だと諦めていたりする例が多い。しかしこれだけIT化が当たり前になり、日々生活するのにもITにお世話にならない瞬間はない位なのだから、企業経営者たる者、本音のところではITを活用したいと思っているはずだ。そうは思うけれども、「ITに詳しい人間がいない」「ITにはお金がかかるから無理」と諦めて、「うちにはITはいらない」「アナログの方がいい」などと強がりを言っているだけではないだろうか。
 しかし、もうそんな子供が一度ついた嘘を意地になって認めないような議論は止めて、少ないコストで時間を買い、時間が短くなるから余計に安上がりになるIT活用にシフトすべきなのだ。システムは「設計・構築」するものから「設定・利用」するものに変わった。今、経営者には、そうしたパラダイムシフトが求められている。
 情報システムが、自社開発→パッケージ購入→クラウド利用→イージーオーダー→DIYへとシフトしてきたことで、かつてのオフコン、今ではサーバーが必要なくなり、パッケージ選定のための要件定義もDIYだから、作ってダメなら直せば良い。
 何しろ、コストも劇的に下がった。我がNIコンサルティングの例で言えば、ノンプログラミングで自由に設定できるクラウド型のデータベース「nyoibox(如意箱)」が、一人月額480円。一日当たりに直せばたったの16円で利用できる。仮に100名で利用したとしても、月額48,000円。改めて考えると、安過ぎる・・・。だが、これが実現可能なのが、今のITなのだ。
 100名使っても、たったの48,000円で素人でもデーターベースや業務アプリが作れる(設定できる)のに、情報システム部門やシステム担当者を、高い人件費をかけて雇う意味はどこにあるのかと問われることにもなるだろう。逆に、情報システム部門がなくても、必要なデータベースや業務処理の仕組みを作ることができるわけだから、そうした専門部署も専門人材もいなかったような企業も、ITの活用を進めるべきである。
 「構築」は無理でも「設定」ならできる。「設定」だけでやりたいことができるなら、それで充分であり、大切なことは、何をするか、どういう経営を目指すか、である。ITが分からない、ITが分かる人がいない、ということを言い訳にするのは止めよう。

2015年5月

経営の道標4月

ウェアラブルで変わるIT活用

 4月24日に発売となるApple Watchを楽しみにしておられる方も多いだろう。予約が殺到して何ヶ月待ちにもなっているモデルもあるそうだ。これを機にウェアラブル端末の普及が一気に進むのではないかと考える。MM総研によると、日本で2013年度に40万台だったウェアラブル端末市場は2020年度には600万台を超えるまでに成長すると予測されている。米国においては1,500万台を超える規模になる予想だそうだ。
 実は、私は、Apple Watchに先立って、ソニーのSmartWatch3を買ってウェアラブルの可能性を実証実験中だ。スーツ姿にはちょっと恥ずかしいので、自宅でつけて寝る時もしたまま。寝て起きただけなのに、何歩か歩いたことになっていて笑える。そんなことも含めてウェアラブルだけに身につけてみてどう感じるかを自ら確かめている。
 少し寂しいのは、頑張れニッポン!負けるなソニー!と思ってソニーにしたのに、実際にはGoogleのAndroid Wearというアプリで動いていること。結局、Google対Appleの戦いで、悲しいことに日本は蚊帳の外。
 それはさておき、このSmartWatch3は、AndroidスマホとBluetoothでつながって連動して動く。メールや電話の着信があるとお知らせが来て、ブルブルと振動し、音声での返信も可能。いろいろできることはあるのだが、大切なことはいちいちスマホを取り出したり手に持ったりせず、情報のやり取りができるという点だ。
 これによって、今まで水があったり、粉塵があったりして、PCやスマホ、タブレットなどを持ち込めなかった現場でも、タイムリーな情報共有や伝達が可能になる。ちなみに、SmartWatch3は、IP68という防水・防塵性能らしく、水深1.5mのところに本体を沈め、約30分間放置後に取り出したときに通信機器としての機能を有し、防塵試験用粉塵(直径75μm)が入った場合でも、所定の動作および安全性を損なわないように保護されているレベルだそうだ。
 工場や建設現場、海、川、水回りなど、これまでIT活用が難しかった環境で、両手をふさがずに情報のやり取りができるようになる。貴社において、このことで業務改善できることはないだろうか。情報の流れを変え、スピードを上げられる業務プロセスはないだろうか。今すぐ、考えてみて欲しい。
 Apple Watchの方が、そのファッション性からも話題になるだろうが、ビジネスでの実用性から言えばAndroid Wearだろう。一番安いモデルで4万円、高いものは200万円もするApple Watchは、個人でならいいだろうが、法人ユースは厳しそうだ。それに対して、ソニーのSmartWatch3は、2万5千円。ジョギングなどでも使えるような軽い仕様で、ファッション性はないが、安くて軽い。と思ってソニーのホームページを改めて見てみたら、メタルバンド仕様の3万5千円モデルが登場していた。Apple Watch対抗かな? それでもApple Watchの最安値より安い。そしてもちろんこちらはAndroid陣営だから、ソニー以外にもサムスンなどのウェアラブルウォッチもある。
 基本機能は、AppleもGoogleも似たような感じだが、Appleの方が竜頭などもあって多少機能が多いようだ。だが、多少の機能差は、Google側も追随してくるだろう。気になるのがバッテリーの持続時間。SmartWatch3でも短いように感じていたが、スペック表を見ると、通常使用で約2日となっていた。それに対して、Apple Watchは18時間。どれくらいの充電時間でフル充電になるのか分からないが、Apple Watchは毎日充電が必須であり、肝心な時に充電切れということがないか心配だ。但し、これはソニーさんに是非改善してもらいたいが、SmartWatch3の充電用の口にかぶせてあるカバーが充電時に邪魔で、扱いづらい。
 いずれにしても、数万円の投資で、SF映画やSF漫画に出てきたような腕時計型の情報通信機器が手に入る時代がやってきたことは間違いない。私共NIコンサルティングでも、すでにウェアラブル端末対応の開発に着手している。すでにスマホに通知情報が来るようなものはウェアラブルウォッチにも通知が飛ぶのだが、これに加えて、営業マンやサービスマンが客先に訪問したという情報を簡単に登録できる「Touch!」という機能と、社内SNSである「UP!」という機能をウェアラブルウォッチ側で操作できるようにする。特に社内SNSの「UP!」は音声での登録もできるようにすると、製造現場、建設現場、作業現場、水回りなどでの業務プロセスと情報共有を大きく変えるインパクトがあると考えている。
 まだApple Watchは、実機でのテストができないので、Android Wearへの対応を先行で進めるが、5月末くらいには出せるのではないかと思う。乞うご期待。ウェアラブルで仕事のやり方を変え、業務プロセスを改善し、生産性を高めるご提案をしたいと思う。すでに未来は現実のものになっている。信じられない人は、今すぐウェアラブルウォッチを買ってみよう。

2015年4月

経営の道標1月

2015年 乙未(きのと ひつじ)

 屈曲し、抵抗され、曲折に耐えながら、上部が繁茂し、重石を載せられ、暗さを忍ぶ一年。面倒があり、抵抗があり、暗くなるが、「始めは処女の如くにして、敵人、戸を開くや、後は脱兎の如くす」で、しおらしく、忍耐して、脱兎となる力を蓄える年にするべきだろう。上層、上っ面、見た目は繁栄するが、トリクルダウンは起こらない。富める者はさらに富み、貧しい者に恩恵は行き渡らない。
 株価は上がるだろう。いや、上げられるだろう。だが、株を持たない一般庶民には関係なし。これだけ円安になったら、外貨を稼げる大手は良いだろうが、国内企業にはデメリットが大きいだろう。二極分化が進み、トリクルダウンで恩恵が下々に滴ることはないだろう。
 では、どうするか。耐え忍び、自力をつけるしかなし。無くてはならない人や企業になるしかなし。やはり孫子の兵法か・・・。「始めは処女の如くにして、敵人、戸を開くや、後は脱兎の如くす。」
 昨年、NHKの大河ドラマ「軍師 官兵衛」から孫子ブームを予想し、孫子兵法家に出番が回ってくることを予想したら、本当に出番が回ってきて、おかげさまで「まんがで身につく孫子の兵法」(あさ出版)という本が出て、これが結構売れている。今年は「花燃ゆ」。吉田松陰の妹が主人公。もうこの時点で、屈曲し、抵抗され、曲折に耐えながら、重石を載せられ、暗さを忍ぶ一年を予想せずにおられない。
 吉田松陰が立派な人であることは認めるが、そもそも活躍した人とは言えない。派手な成果があるわけでもない。そして安政の大獄。思想は残したが、若くして命を落とした。その兄を支えた妹。なんとも地味だ。久坂玄瑞と結婚して死に別れ、群馬県の県令と再婚。大変な苦労があっただろう。明るいドラマになるのかどうか・・・。
 と思って、1月4日の第一話を見たが、やはり地味だ。人と話せず、いつも一緒にいる弟は耳が聴こえず話せない。可哀想過ぎて涙が出た。今後の展開に期待しよう。
 吉田松陰が、山鹿流兵法の指南役で、『孫子評註』という著作もあるほど孫子の兵法にも通じていたことに希望を託すしかない。第一話でも、孫子の一節を用いて、叔父を論破した。孫子兵法家としては、孫子ブームの再燃を願う(笑)。若くして死んでしまう吉田松陰とその妹から何を学ぶか。それは、知識、思想、勉学、研究、そして智恵の力。
 貧しくても、牢に入っても、小さな納屋のような私塾であっても、思想は伝え、また学ぶことができる。そして、それが歴史を動かし、歴史に名を残すことにもなった。株を持っていなくても、分散投資する資産がなくても、実質賃金が下がっても、勉強はできる。企業の業績が悪くても本くらい読めるだろう。本を買う金がなければ図書館もあるし、WEB上にも知識や情報はたくさんある。吉田松陰やその妹の苦労を見て、自由に勉強できる幸せを噛み締めよう。そしてまた勉強。
 貧しくても勉学はできるし、勉学によって貧しさから抜け出すこともできる。そう私は信じているが、貧しさによって学ぶ機会を得られない子供たちもいる。本当は貧しさというよりも親の影響だと思うが、ともかくそういう子供たちに学ぶ機会を与えてあげることも考えたい。そう思って、フェアスタートというNPOを支援している。若い代表だが頑張っている。本当は自分でやりたいところだが、出来ないので彼に託す。一人でも多くの支援者が現れるといいと思うのでここで紹介しておく。是非スポンサーになってあげてください。
 話が横道に逸れたが、とにかく今年は耐え忍び、勉強し、脱兎となる自力をつける一年にしたい。いつ何が起きても、必ず誰かに必要とされる人や企業になっておくことを目指したい。
 皆さまが良い一年を過ごされますように。

2015年1月

経営の道標 年度別

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