代表長尾が語る経営の道標
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2012年版 経営の道標
メーカーになろう
衆院選挙の結果がどうなるか、現時点では分からないが、選挙戦で出てきているのは、やはり目先の人気取りばかりで、長期的な成長戦略は出てこない。相変わらず財政出動で無理矢理バブルを演出しようという話も出てくるが、そんなことでは短期的に良くなることはあっても長期的なものにはなり得ない。企業経営者は、国の景気や世界景気の浮き沈みに左右されず、世間がどんなに不景気になっても、自社は儲かる、勝ち残る、ストーリーを持つ必要があるだろう。政治家に期待するのは止めて、戦略を立てよう。
そこで、考えたいのが、メーカーになる、ということ。クリス・アンダーソンの「MAKERS」(NHK出版)という本をサラッとでもいいので読んでみて欲しい。個人でも最新のデジタル技術を使えばMAKERになれて、それをネットも利用して世に問うこともできる、という内容なのだが、個人にできるなら、企業ならもっと可能なはずだ。
自社にメーカー機能を持ちたい、独自製品を作ってみたい、仕入れて売るだけではなく自前で作ればもっと利益率を高めることができるのに・・・という声をこれまでたくさん聞いてきた。
特に、卸売業では、どの業界であっても付加価値が乗せにくいから利益率の低下に苦しんでいて、おまけにデフレで単価が上がらないから絶対額も下がって行くという二重苦をこの20年味わっている企業も少なくない。
製造業(メーカー)であっても、下請けの製造では、やはり付加価値が低く、忙しい割に儲からない。製品改良や技術開発で単価アップを狙ってもすぐに値下げ圧力がやってくる。
小売業やサービス業は、粗利は確保できても、数を捌かそうと思うと人手がかかって儲からなくなる。やはり自社で製造もやって付加価値を高めないと苦しい。現に、伸びている小売業はユニクロに代表されるようにメーカー機能を持ったSPAだったりする。
そんな悩める日本企業にヒントを与えてくれるのが、「MAKERS」だ。「そうだ、メーカーになろう」と、ちょっと京都に行こうと思うくらいの気軽さで、自社がメーカーになるイメージを膨らませて欲しい。まず、思わなければ何事も成せない。経営者が思っていなければ会社がそうなるわけがない。
メーカーになると、2011年9月の経営の道標で解説した「利益創出方程式」の値を大きくすることにつながる。
利益創出方程式とは、
利益総出力 = 独自性 × 加工錬成度 × 拡販可能性
Originality × Processing Value × Scalability
というものだが、メーカーになることで、独自性も加工錬成度も拡販可能性も高めやすくなる。もちろん、独自性を高めるためには、独自のアイデアが必要で、ここが下請け発想では意味がないわけだが、自社が独自開発をすると決めて考えてみれば、これまでは思いつかなかったようなことも思いつくようになる。(必ずなる。)
自社で作れば自ずと加工錬成度は高まる。自社で完結せずアウトソースを利用するとしても、仕入れて売るだけよりは付加価値が乗る。
「MAKERS」では、小ロットでもメーカーになれると説いているが(著者が「ロングテール」を提唱した人だけに)、自社の独自製品が売れるとなれば、拡販可能性も高まる。最初は小ロットで進めておいて、拡販の道が見えてきてから生産体制を拡充するということもやりやすくなったし、イザという時にネットを活用できれば、一気に展開を速めることも可能だ。「MAKERS」では個人がゼロから始めても世界に拡販することができると指摘していたが、既存の企業がメーカーになる場合には、すでに販路や顧客基盤があるところにメーカー機能が付加されるわけだから、立ち上がりはさらに速い。
大切なことは、やってもみないで、「無理だ」「人がいない」「やったことがない」「技術がない」と言い訳ばかり言わないこと。すぐには無理でも、10年後、20年後には可能になるだろう。10年後20年後なんてどうなっているか分からない、と言うなら自社がどうなっているかも分からないのだから、制約を設ける必要もない。
2013年をどうするか、来年に向けて戦略を練り、計画を立てる人も多いだろう。現状の延長線上を進むだけでは年々厳しさが増すことになるわけだから、発想を変えて未来を自ら作ることを考えてみよう。
「そうだ、メーカーになろう」と思い立ったら見えてくるものがある。やるかやらないかはその後で考えれば良い。まずは考えてみていただきたい。
2012年11月
成長期待を捨て、自らの智恵で成長する
欧州中央銀行、米連邦準備制度理事会の金融緩和に続いて、日銀も金融政策決定会合で更なる金融緩和策を決定した。円の独歩高を避けるために追随せざるを得なかったというところか。
金融緩和は、短期的には歓迎されて、株価も上がったりしているが、すでにお金はジャブジャブになっていて、世界経済は停滞状態だ。それでも金融緩和を追加して更にジャブジャブにしなければならないほど、疲弊しているというのが現実だろう。欧州も米国も日本もアウトとなれば、新興国も売り先がないから当然成長スピードが落ちる。欧州はもとより、先進国はどこも財政が厳しいわけで、緩和策にも限界がある。だから、こうしてバブルが演出されても、いずれはバブルが弾けるのだろう。景気が良いバブルというよりも、景気を下支えしているバブルだから、バブルっぽくはないが、それが弾けたらどうなることか・・・。
すでに日本国内は20年以上に渡り停滞し、今後も人口減少なのだから、普通に考えれば成長は見込めない。先進国はどこも似たようなものだし、新興国への進出も低賃金を求めるだけではリスクを犯す意味がない。何しろ売り先が細っているのだから、たくさん作っても売れないし、安くするだけなら日本企業より現地企業の方が有利だろう。
そこでどうするか。量を追うのではなく、質を高めることに、今まで以上に真剣に取り組まなければならないと思う。量的な成長は止まったとしても、質的な成長は可能である。量的に成長しなくてもやっていける経営にシフトしなければならない。
大きな資本投下を行い、量産効果でシェアをとり、利益を確保していくといった事業モデルの日本企業は次々に破綻している。マーケットが順調に成長してくれれば、計画通りに生産量を伸ばして行けるが、思ったほどの成長がなければ、巨額投資を背負い切れない。あのシャープですら、そうだ。目のつけどころがシャープで、シャープにしかできない技術があっても、成長がなければ過大投資は回収できない。となれば、大して独自技術や独自製品もないのに、過大な投資をするような選択はできない。投資できない状態なのに、金融緩和をされても意味がない。
経済が成長しているなら、多少のリスクは負って、先行投資したものが勝つ。資本主義の論理だ。
特殊な機械を買えば、その機械でしかできない仕事が回ってくる。
大型トラックを買えば、大型トラックがないと運べない仕事がやってくる。
好立地に店舗を構えれば、多少まずくても人は行列を作る。
だが、成長が止まれば、特殊な機械を動かす機会は減り、金利負担がのしかかる。大型トラックが空気を運ぶことになる。店舗の家賃が重荷になる。これもまた当然のことだ。
ジャンボ機を世界一保有していたJALが、かつてジャンボで儲けたのに、成長が止まってジャンボで空気を運んでしまって破綻し、せっかく持っていたジャンボを売却して身軽になって復活したように。
量的成長のない時代に必要なものは資本(マネー)ではなく、智恵(アイデア)である。智恵は金では買えない。人が持っている。人は協力してもらうか、育てるしかない。金で雇っても智恵を出すとは限らない。優秀な人を高額の報酬で雇ったとしても、それは会社の財産ではない。貸借対照表に「人材」という勘定科目はなし。事業パートナーとして協力を依頼しなければならない。自社の財産でもないのに育てる必要もあるだろう。そうすると、育てたつもりが、逃げられたりする。
資本主義から智本主義へ。(人本主義でもいいけれども、ちょっと趣旨が違う解釈をされそうなのでここでは智本と呼ぼう。智恵を出さない人がいくらいてもあまり意味がないし、社員のために会社があるといった考えも戦後復興期には必要だっただろうが、市場が細っている時代には顧客不在で受け入れられない。)
量的に成長はしなくても、質的に成長する。すなわち、智恵によって付加価値を高める。まったく成長がないのでは、組織、企業は存続できても、人がついて来ない。人は必ず1年経てば1つ歳をとるからだ。人に停滞は許されない。したがって優秀な(智本をもたらしてくれるような)人は、停滞する企業には協力してくれない。量的な成長を無理に追わない経営だからこそ、よりシビアに質的な成長を追求しなければならなくなる。
しかし、現状、日本の中小企業経営者には、現状維持でOK、赤字じゃなければOK、無理に利益を出して税金に持っていかれるよりはトントンでOK、といった意識の人が多いように感じる。これでは金融緩和でどうにかなるわけがない。成長意欲も、投資する気もないのだから資金ニーズなし。本来淘汰されるべき会社が延命しているだけだろう。
先日も、ある経営者と話していたら、そのご子息に「将来日本を背負って立つくらいの気概を持って勉学に励め」と発破をかけていると仰るので、「社長自身はどうなのですか?日本を背負って立つべく経営をされていますか?利益を生み、雇用を増やしておられますか?」と聞いてみた。すると「現状維持で精一杯で、とても業績を伸ばそうなんて話にならないよ」と。「バブルの頃が業績のピークで、あれから20年ほどジリジリと売上も低迷して3割くらい下がっているね」と。。。。。そこでこちらは、ちょっと嫌味で、「だったら、ご子息に日本を背負えなどと偉そうなことは言えませんね。オヤジはどうなんだ?と言われますよ」と申し上げた。すると「たしかにそうだな。子供に偉そうなことを言う前に自分が頑張らないといけないね」と言っていただけたので、少しホッとして、「まぁそういうマインドになっている経営者が今は多いですよ」と言ってあげたら、他の経営者もそんなものなら自分もそれでいいのではないかみたいな顔をされていたので、これまたガッカリだった。
中小企業の7割は赤字だとか言うものだから(私の周りには赤字企業など滅多にないが・・・)、赤字じゃなければ優秀な経営者だろうと勘違いしているのかもしれないが、ロクに利益も出せないのであれば、そもそも企業経営をしている意味がない。不動産投資でもして家賃収入でも得ていた方が余程良いのではないか。
と、先ほどの経営者に言ってみたら「実は副業で不動産を持っていて家賃収入があるから何とかやっていけている」と仰るから、もう何も言えなくなった。それなら本業は畳んでしまえばいいのだが、一応役員報酬をとった上でトントンだから、社長の食い扶持を稼ぐには有効だと考えて、大して儲かりはしないけれども廃業もしない。社長の食い扶持を稼ぐための会社に勤めている社員の皆さんは可哀想だが、仕事が緩くて、厳しいことを言われずに社員も食い扶持は稼げているわけだから、案外安い給料でも辞めないのだそうだ・・・。こういう会社が案外多いので、日本の将来を考えると暗澹たる気持ちになる。
話が逸れたが、これではいけない。売上は伸びなくても、付加価値を増し、人材にも還元し、新しい智恵を生み出す経営をしていきたい。周囲が成長し景気が良くなることに期待せず、いつバブルが弾けてもいいように、備えておこう。資本(金)はすぐに用意できても、人(智恵)はすぐに用意できない。
2012年9月
国体から五輪へ
ロンドンオリンピックの観戦をしながら日本人選手の応援をするのもいいが、自社が世界と戦うにはどうするべきか、ということについても、応援ついでに考えてみたい。日本国内での戦いは、同じ文化で、同じような体格で、同じようなメンタリティーで、相手の出方も予想しやすいし、頑張れば報われる、という素直な法則と、気合と根性とおもてなしの心、といった精神論でもある程度いける気がする。
だが、世界に出たらどうだろう?基本的なルールは同じだが、体格も全然違うし、姑息な手を使っても平気だったり、すごいハングリー精神で闘志をむき出しにして攻撃してくる者もいる。日本国内と同じように戦っていては、体格的にも恵まれない日本人選手はなかなか太刀打ちできない。
そこで戦い方を考えることになる。力があるから勝つわけではない。身体が大きいから勝つわけでもない。開会式前に行われた男子サッカーで、日本が優勝候補のスペインに勝った試合は、その典型例と言えるだろう。
前線で執拗にボールを追い掛け回す。本来、FWは点取り屋であって、守備はお任せしてしまうのが普通だ。そこを覆して、FWが前線で守備をする。それもかなりしつこく・・・。常識通りにやっていたのでは勝てない。しかしやり方次第では世界と戦えるのだ、ということを示してくれた。
最近では、中小企業であっても海外に向けた販売、拠点開設を進めている企業も少なくない。従来は生産拠点としての海外進出がほとんどだったが、今は売り先を探している。生産拠点を探すだけなら、自社の体制やコストを考えていればいいが、販売、営業となると敵との戦いを考えなければならない。新興国は人口も増えていてマーケットが大きい、と言っても、そこに向けて世界中のプレイヤーが集まってくるわけだから、まさに五輪状態。国内で、日本語に守られて国体レベルの戦いをしているのとは訳が違う。国内で戦う以上に、より差別化され、尖った価値を提供しなければならない。前線で走り回ったFW永井のように。
今すぐ海外進出するかどうか、に関わらず、せっかくオリンピックもやっていることだし、もし自社が世界に出て戦うとしたら、どういう戦い方をするべきか、を考えてみて欲しい。今すぐには戦えないかもしれないが、そうであれば、尚のこと準備を始めておく必要がある。
先日も、「戦略的ビジョン構築研修」という講座をやっていたら、すでに海外に販路を展開している企業もあったし、受講者の7割方は、海外に行くしかない、という話になった。私共NIコンサルティングが提唱する「可視化経営」では、20年後のビジョンを作ることを勧めているが、20年も先には、日本国内のマーケットはかなり縮小することになり、イヤでも海外での戦いを意識するしかなくなる。
今まで、国体に出ればいい、日本一になれればいい、と思っていたのが、五輪に出よう、メダルを獲ろう、と考えるのだから、やるべきことが変わってくるのは当然だ。「国内では、うちもそこそこやっている」「うちの製品力はまずまずだ」などと思っていたとしても、世界で戦えるのか、という視点で見直してみれば、改善、修正、見直しすべき点がたくさん見つかるのではないか。まだ国内で何とかなっている間に、五輪に出る準備を始めておくべきである。世界で戦う準備さえしておけば、海外から日本に攻め込まれた時にも慌てる必要はなくなる。備えあれば憂いなし。
今すぐ焦って海外に出る必要もないし、焦って出ても五輪では通用しないから、五輪を目指して自社の特長、強みに磨きをかけ、戦い方を変える準備をしよう。間違っても国内と同じ戦い方で世界と戦おうとは考えないことだ。オリンピックを見ていたらそれを実感できるはずである。
2012年7月
ゲーミフィケーションを仕事に組み込め
ソーシャルゲーム会社が提供するコンプリートガチャが、景品表示法違反と判断されたニュースは、日頃ゲームに興味関心のない人でもご存知だろう。ゲームはしなくてもプロ野球のDeNAは知っているだろう。子供も大人も月に何万円もつぎ込んでしまうほどゲームにはまってしまう。プロ野球の球団オーナーになれるほどゲーム会社は儲かっている。それだけゲームには力がある。私もゲームはしないが、このゲームの持つ力は無視することができない。ゲームの持つ力をゲーム以外のこと、たとえば企業経営やビジネス、仕事などに活かすことを「ゲーミフィケーション」と言う。このゲーミフィケーションを組織活性化や社員のモチベーションアップに応用することを考えてみたい。
ゲーミフィケーションとは、「ゲームデザイン(ゲームメカニクス)の手法をゲーム以外のことに応用し、楽しみながら進んで取り組む仕掛けを創り出すこと。」と定義できる。要するに、ゲームで遊ぶのではなく、ゲームの要素を取り入れて、自発的かつ楽しく、ある事に取り組ませることを言う。
では、そもそもゲームの効用とは何か。
「いつまでもゲームで遊んでいるんじゃない!勉強しなさい!」と子供に説教したくなったり、「ゲームなど何も価値を産まないただの暇つぶしだ」と考えてしまっては、ゲームからプラスの価値を引き出すことができない。ゲームに効用などありはしない、で終わってしまう。正直なところ、私もそう思っていた。グリーとかDeNAとかどうでもいい。愚息がゲームをしているのを見ると腹立たしくなる。まだ小さかった頃は任天堂のマリオなんとかで一緒に遊んだりしたこともあるが・・・まぁゲームなんて言うのは子供のオモチャに過ぎず、勉強の邪魔になる存在でしかないと思っていた。
だが、うちの愚息は父親から「ゲームばかりするな」と言われてもする。一日中やっている。「そんなに楽しいか」と聞くと「楽しい」と言う。そこで、ゲームの効用を考えてみた。
ゲームの効力で、やるなと言われてもやる。徹夜してでもやる。ついついやりたくなる。それだけやる気を出させるのは、一応効用であると考えていいだろう。
次に、楽しんで取り組める。単純に面白い。イヤだけどついやってしまうのではなく、楽しくやる。これも効用と捉えることができる。
そして、自分のレベルアップや成長を実感しやすい。だんだん強くなったり、使える技が増えたりする。ステージが上がり、階級が上がったりする。対戦型だとランキングがあったりするし、勝ち負けも分かるから、自己成長を実感できるのだ。自己効用感と言ってもいいだろう。自分がやることに対して反応があり(それはバーチャルでしかなかったりするのだが)、自分の存在価値が高まったように感じる。出て来る怪物や対戦相手を倒していけば、なんだか自分が強くなったような錯覚を覚える。
こうした効用がゲームにあるとすると、それがゲームで遊んでいる時にではなく、ビジネスをしている時にもその効用が得られるといい。それを実現するのが、ゲーミフィケーションだ。
仕事に対して、やるなと言ってもやる。楽しくやる。仕事を通じて自己成長を実感し、自己効用感を得ることができればどうだろう。いいに決まっている。ゲーミフィケーションを仕事に組み込もう。
このゲーミフィケーションが成立するためには4つの条件がある。
1.何をすべきかが明確になっていて、
⇒目標・課題・アクションの明確化
2.自分が今どこにいるのかが可視化され、
⇒現在地・現状の可視化
⇒ランキング・ポイント・レベルの見える化
3.アクションに対するフィードバック(称賛)があり、
⇒即時フィードバックによる自己効用感
4.ゴールするか達成すると、報酬がもらえる。
⇒達成感および達成に対する報酬の魅力
この4つの条件が揃うとゲーミフィケーションが成立したと考えて良い。そして、これがゲーミフィケーションの骨子、骨格となって、味付けが加えられる。
ゲーミフィケーションの味付けには、
☆サプライズ・シークレットルール・裏ワザ・隠しアイテム
☆ストーリー性 戦略ストーリー
☆面白み、可愛さ、愛着、楽しさ
☆参加実感、自主性、自己カスタマイズ
☆プレイヤー(ユーザー)同士の協力、コミュニケーション(交流)
などがある。これらの味付け、工夫によって、ゲームにのめり込むような状態を作り出すことができる。コンプガチャなどはその典型だ。最初は乗り気でなくても、惰性でやっていたとしても、レアカード(隠しアイテム)が出てきた途端にもったいなくなって、だんだんとのめり込む。ついついやってしまう。それに対して課金して儲けようとすると話が違う方向に行ってしまうが、それを仕事に対するパワーに変えてあげることができたら、本人も楽しく仕事に取り組めるし、当然、それは組織にとっても会社にとっても良いことだ。
弊社が提唱する「可視化経営」は、こうしたゲーミフィケーションを企業経営に取り込むことを可能にするフレームワークである。
可視化経営に取り組むと、
可視化マップやスコアカードによって、
1.何をすべきかが明確になり、
それが可視化マップスコアラーや経営コンパスコープによって、
2.自分が今どこにいるのかが可視化され、
DMV(日報)へのコメントやグリーンカード、GoodJobポイントは、
3.アクションに対する即時フィードバック(称賛)であり、
それらを社内表彰や、人事制度へリンクさせることで、
4.ゴールするか達成すると、報酬がもらえる。
というゲーミフィケーションの骨格が組織に埋め込まれる。
そこに、ゲーミフィケーションの味付けをするために、Sales Force “Assistant”という電子秘書を作ったことは前回紹介した通りだ。自分で選んだ秘書にお気に入りの服を着せ名前をつける。この自己カスタマイズが大切だ。愛着も湧く。情報を登録したり、受注したりすると秘書が即時フィードバックをくれ、コインが貯まる。秘書を褒めてやったら、喜んでくれ、それがポイント加算されて秘書レベルが上がる。すると秘書の機能が強化され(隠しアイテム)、より便利な存在になる。
そうなってくれば、楽しく愛着を持って専属秘書を活用することができ、当然それが仕事にも役立つ。営業マン一人ひとりにリアルな専属秘書をつけることなどできないだろうが、月額3千円の電子秘書なら可能だろう。仕事にゲーム感覚を取り込みながら、訪問予定先の顧客情報を読み込んで教えてくれたり、過去にクレームが発生していないかチェックしてくれたりする。さらに顧客の誕生日をチェックして事前にお知らせしてくれたりもする。
仕事中にゲームで遊ばせるわけではなく、ゲームデザイン(ゲームメカニクス)の手法を仕事に応用し、楽しみながら進んで取り組む仕掛けを用意するのだ。
あまりゲームに馴染みのない世代には、ふざけているように受け取られるかもしれないが、客観的に自社の20代30代の若い社員を見てみよう。本も読まずマンガばかりで、携帯かスマホでずっとピコピコやっていないか。仕事に対する意欲はどうだろう。進んで取り組む姿勢に欠け、指示待ちになっていないだろうか。そんな世代を中心に、ゲーミフィケーションは現実的な組織活性化策として取り組んでみるべきものだと思う。
2012年5月
AutomationからAssistantへ
SFA(Sales Force Automation)というIT用語がある。日本名では「営業支援システム」と呼ぶ。私共NIコンサルティングが提供する可視化経営システム(VMS)の中の中核と言えるシステムでもある。私共でも、多くの企業にご導入いただいているし、他社製のものも出回っている。大手企業では自社開発されている例も少なくない。今や、まともに顧客対応しようとしている会社、まともに営業マネジメントをしようとしている会社であれば、当たり前のように導入し活用しているSFA(Sales Force Automation)なのだが、それが本当に営業活動を支援するものになり、業績アップにつながっているかと問われると心許ないケースも多いのではないか。
およそ3000社に及ぶSFAの導入を行ってきた私共NIコンサルティングだからこそ、敢えて言おう。真の営業支援システムは、Sales Force “Automation”ではなく、Sales Force “Assistant”でなければならない。SFA(Sales Force Automation)はすでに陳腐化してしまったのだ。管理者、経営者が営業マンを管理するためのものではなく、現場の営業マンをサポートしアシストするものが、真のSFAである。
なぜ、AutomationからAssistantへの転換が必要なのか。それは市場が飽和し、または縮小している中において、営業マンを管理するだけでは売上が上がらないからである。未だに訪問件数を増やし、行動量を増やせば売上が上がると主張する人がいるが、そんなことは当り前であって、行動量を増やす余地があるなら増やせば良い。今までサボっていたなら、その分は売上アップにつながるだろう。だが、問題は、行動量を増やすには物理的な限界があり、行動量を増やしてもまだ足りない分をどう積み上げて、売上を上げていくか、なのだ。そもそもマーケットが縮小していては行動量を増やす余地も狭まる。
そこで私共NIコンサルティングでは、ストラテジック・セールスという戦略的に営業を進める手法を提唱している。営業を諜報活動と捉え、集めた情報をダムに溜め、見込客を観覧車に乗せて、確実に売れるプロセスを作る。これによって営業から無駄足や水の泡や失注をなくしていく、というものだが、それを実行するにもやはり一日は24時間で一年は365日しかない、という時間的な制約がある。そこで必要となるのが、Sales Force “Assistant”、ITを活用した営業秘書(アシスタント)である。
旧コンセプトSFA(Sales Force Automation)は、1990年代初頭に米国で提唱されたITコンセプトである。初期のSFAの代名詞ともなったSiebel Systems, Inc. が設立されたのが1993年だから、遅くとも93年にはSFAという用語、仕組みが確立されていたと考えて間違いない。生まれてからすでに20年も経つ古い概念であることはお分かりいただけるだろう。Sales Force Automationはその名の通り、Office Automation(OA)、Factory Automation(FA)から派生した概念であり、営業部門、営業活動を自動化し省力化することを狙いとしたものだ。
生身の人間である営業マンやその営業活動を工場に喩え、まるで機械のように扱い、そのプロセスを自動化することで、営業マンの創意工夫や智恵を不要なものとした人間不在の“Automation”幻想がそこにあったのだ。
今や、管理しなければサボってしまうような営業マンにはGPSを持たせてやればいい。私はそんな次元の低いことに余計な手間とコストをかけるのはバカらしいと思う。そうではなく、頭を使い、智恵を絞り、情報を操って、営業活動をより戦略的に進める営業マンを増やすべきであり、それを支援する仕組みを用意することが求められているのだ。
視点を変えれば、営業マンに頭を使い、智恵を絞ってもらうためには、苦しい事をさせておいて手を抜かないように見張っておく、のではなく、自ら進んで、楽しみながら、営業活動に取り組んでもらわなければならない。そこにはゲーム感覚が求められる。ゲーム感覚で重要なのは、それ自体が楽しいこともそうだが、常にフィードバックがあり、自分の進み具合やレベルアップ度合いが「見える化」されることである。こうした要素をビジネスに取り入れることを「ゲーミフィケーション」と言うが、ゲームやアニメで育ってきた今の40代以下の営業マンを前向きに動かすためには、考慮すべきテーマである。恐らく、50代より上の世代には、「仕事にゲームなんて不謹慎だ」と抵抗感があるだろう。だが、そうした世代も、かつて麻雀やパチンコにはまった経験があるのではないか。今はそれがソーシャルゲームだったりするだけの話だ。是非「ゲーミフィケーション」を取り入れてみて欲しい。
日々の営業活動に取り組むと、それに対するフィードバックがあり、進捗状況が「見える化」され、自分のレベルアップが実感できる仕組みがあり、営業マンをアシストする情報を教えてくれたり、ヌケやモレをそっと教えてくれるような秘書(アシスタント)がいてくれたら、営業マンは助かる。限られた時間の中で、成果を出していくためには生産性を上げなければならない。できれば本物の秘書が専属でいてくれたらいいだろうが、コストも高い。そこでITによる営業秘書(アシスタント)を用意してあげよう。これを実現するのが、Sales Force “Assistant”である。専用サイトがあるのでそちらを参考にしてもらいたい。月額たったの3千円で雇える秘書である。
Sales Force “Assistant”が実現できた背景には、いつでもどこでもつながるユビキタス環境がある。そして24時間365日営業マンに寄り添うスマートフォン、携帯電話の存在。せっかく肌身離さず持ち歩いているのだから、それを秘書として活用すればいい。営業マンを監視し管理するためのIT活用ではなく、営業マンを支援するためのIT活用にすべきなのだ。
この旧SFAから真(新)のSFAへの転換は、紙の営業日報の時代から営業指導に取り組み、20年以上にわたり、旧SFAを研究し、開発し、自社でも運用し、およそ3000社に及ぶ導入実績を残して、その利も害も見てきた私共NIコンサルティングだからこそ実現できたパラダイムシフトだと自負している。生身の営業マンが、感情を持つお客様と向き合う営業現場は、残念ながら決して“Automation”にはならないということを理解して欲しい。米国流の旧SFAでは、我が国の人口減少、マーケット縮小の厳しい環境を乗り切ることができないし、営業マンは管理され、歯車の一つとして回転させられて、思考停止に陥ることになる。営業マンが厳しい環境下で、頭を使い、知恵を絞って営業活動を進めるには、専属のAssistantが必要となるのだ。
2012年3月
2012年 壬辰(みずのえ たつ)
今年は、壬辰の年。孕み、増大し、膨らみ、震えて、揺れる年。問題がじわじわと膨らみ、決壊寸前までダムの水嵩が増しているところに、大きなショックが加われば、どうなるか。何が起こるか分からない。決して油断できない年になるのではないか。
すでに火種を抱え、今にも火を噴きそうなEU諸国はもちろん、指導者が変わる米国や中国、ロシアなどの動きがどうなるか。すでに変わった北朝鮮は間違いなく揺らいでいるだろう。台湾はどうか。中東もキナ臭い。日本の財政も問題を抱え、これから現役引退していく団塊の世代を抱え、大きなショックがあれば一気に崩壊しかねない。東海、東南海、南海の地震もいつ起こってもおかしくない。首都直下地震の発生確率も高いと言う。
昨年の東日本大震災、福島原発事故で、不幸なことは出し切った、と言いたい気分であるが、まだ続く可能性がある。想定を超えることが起こり得ることが分かってしまい、想定レベルを上げざるを得ないのだから、より一層の備えが求められる。
そう考えると、今年はリスクに備える年と考えるしかないか・・・。もちろん消極的になって守る一方ではなく、将来に向けた前向きなリスクマネジメント、リスク分散の手を打っていくことを考えたい。イケイケどんどんというわけにはいかない。常に何が起こってもいいように、フェイルセーフを考えておかなければならない。BCP(事業継続計画)は必須となるだろう。パンデミックの時も、大震災の時も、原発事故の時も、節電の時も、その時には騒ぎになるが、ノド元過ぎれば熱さを忘れる。新型インフルエンザが大流行する可能性がないわけではない。大地震が起こる可能性は高い(らしい)。原子力発電が止まれば当然節電も要請されるだろうし、電力料金も上がるだろう。その時どうするか、考えておきたい。
円高はデメリットが強調されるがメリットもあるわけだから、各企業で対応は分かれるだろうが、高くなっている内は想定できても、一気に暴落でもされたらどうなるか。円が紙くずになってハイパーインフレになる、などと言うシナリオは考えたくもないが、それを予測する人も少なくないから、そうなった時に「想定外でした」とは言えない。海外へのシフトも考えなければならないだろうが、日本がアウトになるようなら世界中が混乱するだろう。キャッシュを現物に変えておくにも限界があるし、無理してキャッシュを減らすのもまたリスクとなる。
2012年問題で、団塊世代が引退していくのは確実なのだから、日本全体ではマイナス面が大きくなるだろうが、個別企業ではそれをプラスに転じていくしかない。ベテランからの世代シフトを進め、業務の標準化や見直しを進めたい。
一企業、一個人ではどうにもしようのないことが多いし、どうなるのかもよく分からないから、こういう時こそ歴史に学ぶしかない。長い歴史の中で考えれば、大地震も戦争も国家破綻も恐慌も原発事故も放射能被曝も、かつて起こったことがあり、それがあってもまた人類の営みは続いている。あれだけの津波が来て壊滅的な被害が出ても、またそこには復興の息吹が吹き込まれる。こういう時こそリーダーは前向きな姿勢を崩さず、リスクに備え、あらゆる事態に対応できるよう準備しておこう。何が起こるか分からないから何もできないと、リーダーが思考停止に陥っては、それこそ酷いことになってしまいかねない。
経営コンサルタントの立場からすれば、「○○すれば良い」「これをやればうまく行く」と簡単、単純に道標を示したいところだが、今年は「備えあれば憂いなし」と陳腐な決まり文句くらいしか言えない。
どうなるか分からない激動の乱世こそチャンスも多いと考えて、前向きにいきましょう。ただし、壬辰(みずのえ たつ)は震えて揺れる可能性大。備えは慎重に・・・。良い一年にしていきましょう。
2012年1月
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