代表長尾が語る経営の道標

弊社代表長尾の経営に関するメッセージを
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2019年版 経営の道標

経営の道標11月

コネクティッドに挑戦してみる

 ちょうど一年前、2018年11月の「経営の道標」で「IoT時代に向け納入品管理を」と題して、2019年はIoT元年になるはずだから、IoT化を進めるべきだと書いた。その時には、5Gが2019年には登場してくるだろうと予想していたのだが、結局これが2020年にずれ込んで、一年遅れてしまったので、改めてここで「コネクティッド」に挑戦する提案をしてみたい。
 まず、言い訳をしておくと、すでに米国や中国、韓国などでは5Gのサービスがスタートしている。この動きに当然、日本のキャリアもスマホメーカーも対抗して5Gを前倒してくるだろうし、楽天が参入して競争も激化してくると差別化の一つとして5Gを投入してくるだろう・・・と予想していたのだが、中国や韓国に先行されて、楽天の参入も先送りとなってしまった。日本のキャリアは現状維持でいいのか?と通信キャリアの動きが遅いせいにしておきたい。

 5Gがなくてもコネクティッドにする

 遅れはとったが、2020年には日本でも5Gがスタートする。きっと大きな話題になるだろう。自動車業界で言われる「CASE」-Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)-のように、自社の商品や設備や機械をコネクティッドにすることで新たなビジネスモデルを生み出すことが求められるようになるはずだ。
 5Gは、大容量で、多接続ができ、遅延がないから、大きな可能性を持っているわけだし、自動車の自動運転も5Gがあってこそ実現するとも言える。とはいえ、5Gはそれなりのコストもかかるから、自動車くらいの付加価値(利幅)があれば、コスト吸収出来るだろうが、もっと単価の安い、付加価値の低いものだと使いづらい面もあるだろう。
 そこで、敢えて、5Gが脚光を浴びるであろう2020年に向けて、地味な通信規格をご紹介してみたい。5Gがなくても、5Gが使えなくても、コネクティッドなビジネスモデルを作ることは可能なのだ。

 LPWA Sigfox

 LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークというのをご存知だろうか。その名の通り、低消費電力で広域をカバーするネットワークのことだ。5Gは素晴らしいが、コストも高いし、電力消費も大きい。実際に、商品や設備をコネクティッドにしようとした時に障壁となるのが、コストよりも電力供給だったりするのだが、ここをクリアできる通信規格だ。
 LPWAには、いくつか規格があるのだが、おすすめしたいのがSigfoxだ。Sigfoxは、フランスのSigfox社がグローバルに提供するLPWAネットワークで、日本では京セラコミュニケーションシステムが総代理店のような形で展開している。
 当初は建物の奥まったところではつながらないとか、通信可能エリアが狭いなどの問題が指摘されていたようだが、現在は日本の人口カバー率も95%まで上昇したと言うし、弊社でもいろいろ試してみたが、特に問題はなかった。
 このSigfoxを使えば、かなりローコストにIoTのネットワークを構築でき、自社の商品や設備などをコネクティッドにすることが出来る。いろいろなセンサーを使って、今まで人がわざわざ訪問していたり、手間をかけていた部分を一気に省略して、必要な情報がタイムリーにとれるようになれば、人手不足の解消にもつながるだろうし、ビジネスモデルを組み替えて、顧客に提供する価値を高めることも出来るようになる。
 実際に、弊社では、このSigfoxを使って、社員の家族の見守りサービス「NI Collabo SOS」を始めた。当初は、別の通信規格でIoTの仕組みを構築しようとしていたのだが、コストも高いし、電力消費が大きくて、電池をたくさん入れたり、充電を頻繁にしなければならないといった問題にぶち当たった。一人暮らしの高齢の親に電池交換させたり充電させたりするのは現実的ではないし、気付いたら電池がなくなって止まっていた、となってはセンサーの意味もなくなる。
 こうした問題をSigfoxでクリアしたことで、電池交換や充電が不要になり、「NI Collabo SOS」センサーはかなりコンパクトに出来たし、コストも引き下げることが出来た。
 この仕組みは家族の見守りだけでなく、商品や設備などの見守りにも使えるわけで、5Gがなくても、コネクティッドな商品やサービスを生み出すことが出来るという一つの事例になるだろう。
 2020年を前に、是非自社商品やサービスのコネクティッド化を検討してもらいたい。弊社は通信の専門家ではないので、幅広くご相談に応じるようなことは出来ないが、Sigfoxは自社でもいろいろ試して知見が溜まっているので、お手伝いできることもあると思う。
 5Gも始まるし、Sigfoxもあり、それにつながるセンサーやスマホもあるわけだから、あとはアイデア次第。貴社のビジネスをコネクティッドにするにはどうするか、2020年に向けて是非考えてみていただきたい。

2019年11月

経営の道標9月

顧客価値を高めるIT投資を

 世界景気も目に見えて減速し、各国の中央銀行も利下げに動く中、日本ではいよいよ消費税が増税される。軽減税率やキャッシュレスポイント還元など混乱必至の増税対策に疑問もあるが、こうした逆風が吹く中で、4月からの「働き方改革」以降、日本企業の取り組みが、後ろ向き且つインプット削減に偏り過ぎているように感じる。このまま消費増税突入となったら、多くの企業がより一層苦しい状況に陥るのではないかと危惧している。

 生産性とは、Output/Input

 日本企業は生産性が低い。だから働き方改革で生産性を上げなければならない。そのためにはIT化を進める必要がある。そこまでは良い。
 生産性とはインプット分のアウトプットの分数である。その生産性を高めるには、アウトプットを増やすかインプットを減らすかの2方向があるわけだが、現状、インプットを減らす方に偏り過ぎている。
 まず、働き方改革が、長時間労働の是正、残業時間の削減、有給休暇の強制取得というインプットを減らす話ばかりになっている。実際、この半年で残業時間は減り、当然労働時間も減っているというデータが出ている。だが、その裏には持ち帰り残業をしているとか、残業がつかない課長以上に皺寄せが行っているという話もあるし、何より、目先の仕事を処理することに追われて将来に向けた取り組みに時間が割けなくなったという声がある。
 実際、多くの企業を見ていても、「定時で帰れ」「残業はするな」「今日はNO残業デーだ」という声が大きくなり、「ちょっと夕方ミーティングしよう」「集まって勉強会でもしようか」「部下にロープレ指導する」といったことが言いづらくなっている。
 ビジネスとしての未来を考える時間もそうだが、未来のためには人材を育てなければならない。将来のアウトプットを増やすためには、インプットを増やすことも必要なのだが、それが出来なくなりつつある。
 次に、働き方改革を進め生産性を上げるためにはIT投資が必要だということで、多くの企業がIT化を進めている。弊社でも、グループウェアのNI Collabo 360テレワーク支援機能をつけたり、ワークフロー経費精算などの機能をつけたりしている関係で、引合も増え、導入ペースも上がっている。安心して働けるようにするために家族の見守りシステムNI Collabo SOSも投入した。勤怠管理システムも売れ行きが好調なようだし、消費増税やキャッシュレス対応でレジも売れている。PC等の操作を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も話題になっている。これらへの投資が進んで、名目上はIT化投資が促進されている。
 だが、これらのIT投資は、社内の業務を減らしたり楽にしたり速くするものであって、インプットを減らすための投資でしかない。業務が楽になってコストが下がっても、それで売上が増えるわけではない。社内の業務効率が上がったからと言って、必ずしも顧客が喜んでくれるわけではない。

 顧客に喜ばれるIT投資をすべき

 インプットは無駄に多いよりも少ない方が生産性を高めるためにも良いわけだが、それによってアウトプットが減ってしまったり伸びなかったりしては本末転倒だし、IT投資もアウトプットを増やすために行うべきである。
 ITを活用して顧客に喜ばれることでアウトプットを上げて行くには、まず顧客対応スピードを上げることを考えてみると良い。顧客から問合せがあった際の対応スピード、見積依頼があった際の対応スピード、顧客から呼ばれたらすぐに行くスピードは上げようと思ったらこちらの効率が悪いから、呼ばれる前にこちらから行って驚かせることを考えてみる。
 こうした取り組みをITを活用して実現すると、提供する商品・製品はそのままでも、その企業が顧客に提供する顧客価値が高まる。おまけにITだと限界費用はゼロだから、初期投資は必要になるが、一件一件の対応にコストが追加でかかるわけではない。さらにおまけに、IT活用だから社内の処理や作業も効率が上がってインプットを削減する効果もある。アウトプットを増やしつつインプットを減らすわけだから生産性向上効果が高くなるのは当然であって取り組まない手はないだろう。
 たとえば、弊社では顧客対応スピードを上げるために、Sales Force Assistantに顧客情報を一元化し、誰でも顧客の状況が分かるような仕組みを提供している。顧客担当以外の人間が対応した場合には「他者コンタクト通知」が担当に飛び、その状況が共有される。このスピードはITを使うからこそ実現するのであって、人の努力だけでは対抗できない。
 見積作成や再提出のスピードを上げるためには、Sales Quote Assistantを使って、いつでも、どこでも、誰でも見積書が作成できて、承認も時間と場所の制約を超えて行える仕組みを提供している。顧客からの依頼に担当者以外が対応することも出来るし、担当者が外出中でもスマホやタブレットで見積作成や提出が可能だ。これも、見積書の作成や印刷、承認印をもらうためにわざわざ会社に戻ったりすることを考えたら、格段にスピードアップになり、顧客対応力が断然高まる。
 顧客に呼ばれる前に対応するには、IoTが有効だ。Sales Force Assistantには「納入機器管理」という機能があるのだが、それとNI Collabo SOSで利用するIoTセンサーをつなげて、客先に納入した製品や客先の在庫状況などをIoTでチェックして、顧客に呼ばれなくてもこちらから動けるようにすると良い。自社の効率も上がるし、顧客側でも必要な時に的確に来てくれるわけだから満足度が上がるだろう。コマツのKOMTRAXの簡易版みたいなものだと考えれば良いだろう。簡易版だからコストも劇的に安い(笑)。
 せっかくIT投資を行うなら、インプットを減らす(社内の業務効率を上げる)投資ばかりではなく、アウトプットを増やす(顧客価値を高め売上増につながる)投資にすることをもっと考えるべきである。
 これから消費税も上がって、世界景気も減速すれば、景気低迷は避けられない。勤怠管理やレジの軽減税率対応など義務的に行う後ろ向きなIT投資だけでは、乗り切れないのではないか。今こそ、顧客価値を高める攻めのIT投資を行うべきである。

2019年9月

経営の道標7月

IoTで介護や子育ての支援を

 2018年9月に、北海道胆振東部地震を受けて社員のご家族の安否確認の仕組みが必要ではないかと、この経営の道標に書いた。あれから約1年。ようやくIoT技術を応用して、離れて暮らす親や一人で留守番をしている子供たちの安否を確認する仕組みが出来上がった。名付けて「NI Collabo SOS」。
 仕組み自体は、象印の電気ポットを使った「みまもりホットライン」やセコムの「親の見守りプラン」などと同じようなもので、他にも類似のサービスはあるのだが、それを会社として従業員のために提供するということをご提案したい。
 本来、こうしたサービスは個人で契約して、何かあった際にも個々人が対応するものだろうが、それを会社がコスト負担し、何かあった時には組織的にバックアップするという取り組みにしてはどうかという提案である。
 たとえば、象印の「みまもりホットライン」であれば契約料が5,000円で月額が3,000円である。個人が契約したサービスのコストを会社が負担するという支援もあって良いだろう。だがこの場合に、みまもりのアラートは本人に届き、その後の対応はその本人か家族がするしかない。その本人は仕事中かもしれないし、他に頼るべき家族がいない可能性もある。コストも大した額ではないからそれを支援しただけではありがたくもないだろう。
 そこで、「NI Collabo SOS」では仕事中でもアラートを受け取りやすくし、何かあった際には組織的にそれをバックアップするように、グループウェア「NI Collabo」に通知を表示する。組織として家族も支える互助システムである。
 そこまで会社でやる必要があるのかと疑問に思われる方もおられるだろう。だが、今や従業員の健康に配慮し、休みを取らせ、残業も少なくした上に、副業や兼業まで認めるべきだと言われる時代である。従業員が仕事に前向きに集中でき、時間当たりの生産性が上がると考えれば、月に3,000円程度のコスト負担とイザという時の組織的な支援など高が知れている。
 また、多くの中小企業が「社員は家族」「会社は社員のためにある」などと家族的な経営を標榜しているのだから、社員の家族もまた家族(親族)であり、その介護や育児に配慮し支援するくらいはやるべきだろう。都合の良い時だけ「家族です」と言いながら、都合が悪くなったら「どうなっても他人だから知りません」という態度では、人として如何なものかということになる。
 もちろん、私はそのような家族主義経営を推奨したいわけでも、社会福祉の一翼を私企業が担うべきだと考えているわけでもない。なぜこのようなことをNIコンサルティングが提案するかというと、介護離職の問題に企業として対応すべきだと考えるからだ。現状、すでに300万人程度の人が働きながら介護をしていて、年間10万人程度の介護離職を生んでいる。これから団塊の世代が要介護世代になり、その子供世代の団塊Jr.が50代に突入して行く中で、生産年齢人口全体は減っていくわけだから、介護を理由に退職しなければならないという状況をなるべく減らして行くことは企業経営の継続性を考えても重要なことである。
 実際にフルに介護が必要になったら、テレワークによって在宅で仕事が出来るようにすることが一つの対応策だと思う。そこですでに「NI Collabo」にはテレワーク支援機能を標準搭載して、在宅ワークをサポートしている。お年寄りは、認知症になっていない限り、聞き分けも出来るし、用があったら呼んでもくれるから、言葉が通じず我慢も出来ない乳幼児よりはテレワークの妨げにならない。そして、デイケアなどのサービスもあるから、その時には出社したり客先訪問も可能だ。
今回の「NI Collabo SOS」はその一歩手前、介護予備軍のケアや一人で留守番も出来るけどまだちょっと心配だというお子さんのケアのために作ったものだ。こうしたサポートを介護や育児が必要な従業員に提供することで、働きやすい職場を作っておきたい。人がいなくなってから慌てふためいても時すでに遅しだ。
 そして、この「NI Collabo SOS」は、IoTの仕組みでもある。わざわざそこに人が行かなくても、その場の状況が把握できる仕組みを作ることで、どう省力化、省人化でき、スピード対応できるビジネスモデルを作れるかという戦略的な実験を介護・育児支援も兼ねて行っていると考えても良いだろう。
 この「NI Collabo SOS」を客先の自社納品物にセットしておいて、そこの変化・変動を収集する仕組みだと考えれば、わざわざその現場に行かなくても業務処理が進められる仕組みに出来る。
 「NI Collabo SOS」は、「みまもりホットライン」よりもお安く、月額2,000円で提供する予定だから、わずか2,000円でそれまで営業担当者なりメンテナンス担当者がその場まで行って時間とコストをかけていた無駄を解消出来るなら安いものだろう。
 介護離職の大量発生が迫り、IoTは実用化の時代を迎えている。時代の変化による経営環境の厳しさを嘆いている暇があったら、さっさと具体的に手を打つべきである。その実験はわずか月額2,000円で始められる。

2019年7月

経営の道標5月

梅雨入りする前に

 先日、5月18日に、九州南部で大雨が降り、屋久島では50年に一度の記録的な大雨となって、260人以上が土砂崩れで下山できなくなった。その翌々日には首都圏でもかなりな大雨となって、交通機関にも乱れが生じた。まだ梅雨に入ったわけでもなく、台風が来たわけでもないのに、だ。
 と、思っていたら、5月26日には北海道で、39.5度の暑さを記録。史上初の高温記録だそうだ。39.5度であれば、本州でも記録的な暑さだろう。それが北海道で起こった。気温が上がれば、水蒸気が上がり、やがて大雨となる。気象の専門家ではなくとも分かる道理だ。もちろん、私は気象の専門家ではないわけだが、どう考えても異常気象なのではないか。もはや、毎年のように大雨に土砂災害や浸水被害、ゲリラ豪雨などが発生していて、異常というよりも恒常的に気温が上がり大雨をもたらしているから、やはり温暖化が進んでいると考えるべきなのか・・・。
 屋久島で50年に一度の大雨が降ったと言っても、これから50年大雨が降らないわけではない。今年また降るかもしれないし、来年も怪しい。この「何十年に一度の」という形容は止めた方が良いのではないか。歪みが蓄積してパワーとなる地震ならまだしも、その時々の気象状況で毎年でも起こり得ることを「何十年に一度の」ことだと言ってしまってはミスリードになる気がする・・・。

 交通機関がストップしても業務を止めない備えを

 素人が気象庁にケチをつけても仕方ないので「何十年に一度」かどうかは置いておくが、これから梅雨が始まる。梅雨でもないのに、大雨が降るのだから、梅雨入りしたら余計に可能性は高まる。そしてもちろん台風がやってくる季節の始まりでもある。今のうちに、交通機関がストップして、従業員が出社できない状態になった時にどう対処するか、事業継続計画(BCP)を見直し、対策を講じておくべきである。
 特に必要なのが、東名阪の三大都市圏だ。鉄道によって広域からの通勤が可能になっているエリアは、イザという時に、在宅でもどこでも、顧客情報や業務情報を見ることができ、最低限の業務処理ができる体制を作っておくべきだ。今年も一度や二度は計画運休が行われるのではないかと思われるからだ。
 元々は、JR西日本で行われていた計画運休だが、昨年から東日本や私鉄でも実施するようになった。ギリギリまで動かして電車内や駅に人が溢れてしまう事態を避けるという点からは有効だろうが、逆に言えばギリギリまでは動いてくれなくなるわけで、何としても通勤や移動したい、しなければならないという人にとってはマイナスとなる。
 計画運休となったら、今までは、何とかギリギリまで動いてくれて、JRがダメなら私鉄、遠回りになっても別路線、数駅程度なら歩き、バスやタクシーも駆使して出社してくれていた人がいなくなる。動くか動かないか分からなかったから、早めに家を出たり、迂回したりして、頑張って出社して業務を止めないでいてくれたものが、明日は計画運休で鉄道が止まるとなった時、「何としてでも出社せよ」と言えるだろうか・・・。
 これはさすがに現場任せ、従業員任せには出来ないだろう。会社として、どう対処するのか、どう顧客対応するのか、どう業務を処理するのかを明確にする必要がある。「事業継続計画を作っておいた方がいいですよ」というレベルではなく、現実にどうするかを決めておかないと、身動きできない状態に陥りかねない。

 時間と場所の制約を超えて仕事ができる体制に

 これまで何度か、この経営の道標でも事業継続計画の必要性については述べて来たので、ここでは敢えて長々とは書かないが、いつでもどこでも必要な時にはITを駆使して業務が処理できる体制にしておくべきである。
 イザ、会社に行けない、客先にも行けない、となった時に最低限必要な情報が、自分のスケジュール情報と顧客情報だ。それにプラス、できれば電話も転送できるようにしておきたいが、少なくともメールはどこでも受信できるようにしておく必要があるだろう。
 もちろん、これだけでは緊急連絡ができるくらいのことだから、やはりグループウェアワークフロー経費精算の仕組みは必須だと思う。そのためのコストは、NI Collaboを使えば、わずか月額380円。コスト以上にコストダウンにもなるから、費用負担を気にする必要もないほどだが、今年の10月からはさらに360円に価格を引き下げる予定だ。消費税が上がっても支払総額は減る。コストは言い訳にはならないということだ。
 気を付けて欲しいのが、単なるメッセージングだけでIT化されたと満足してしまうことだ。個人間のやり取りならスマホのチャットツールで充分だろうが、組織で仕事をする以上、メッセージング機能があるだけでは、時間と場所の制約を超えて仕事ができる状態にはならない。
 ついでに言えば、大雨や地震などに備えて、安否確認の仕組みも用意しておきたい。安否確認の仕組みがあれば、何事かが起こらなくても、営業担当者の直行直帰時の勤怠管理にも使えるし、在宅勤務時の位置確認にも使える。NI Collaboには、NI Collabo NOW!という安否確認アプリが無償でついてくるから、安否確認も含めて月額360円で賄えることになる。
 梅雨入りする前に、急いで検討していただきたいと思う。「なんだ、自社の売り込みか」と思われた方は、是非、他社のグループウェアワークフロー経費精算安否確認ツールがいくらのコストになるか調べてみていただきたいと思う。普通のコンサルタントであれば、あるべき論を言うだけで終わって、あとは勝手にツールを探してくれとなるだろうが、私は口先で理屈を言うだけでなくそれを実行するための道具も低価格でご用意している。それを知らずに他社の高いツールを導入すると後悔することになるだろうから、一応情報提供としてお伝えしておく。それが気に入らなければ他社に依頼してもらえば良いが、梅雨入り前に時間と場所の制約を超えて仕事ができる体制にすることだけはお忘れなく。

2019年5月

経営の道標3月

働き方改革のマイナス面から目を背けるな

 ここ数年、議論されて来た「働き方改革」がいよいよこの4月から法的にもスタートする。過重労働を減らし、働きやすくなり、働く人誰もが公平な処遇を得て、100年という長い人生を楽しめるようになるという、働き方改革のプラス面が実現するのは誠に結構なことだ。「休みも増えて労働時間も減るなんていいことずくめじゃないか」と感じている人も多いだろう。
 だが、もちろん、企業経営者としてはそのプラス面を実現する企業経営(経営改革)を行なわなければならないわけで、「今の売上や利益を維持しながら、休みも増やして労働時間も減らせるなら、とっくにやってるよ」と言いたくても我慢しなければならない。現状かなり深刻な人手不足にも直面しており、労働条件の改善はその対策としてもやらなければならないし、ヘタなことを言って「ブラック企業」などと批判されて人に辞められたらますます困るから、「働き方改革なんて出来るわけないだろ」などと反論出来ない状況だ。
 働き方改革に誰も異論を唱えられない、否定的なことを言うとバッシングされるという空気の中で、働き方改革のマイナス面、負の影響についての議論があまりになされていないのではないかという点を危惧している。

何事にもプラスとマイナスがある

 働き方改革がどんなに素晴らしいものであっても、物事には一長一短、裏と表、プラスがあればマイナスもあるというのが、当たり前の常識であって、孫子の兵法でも、「智者の慮は、必ず利害を雑う」と教えてくれている。智将は必ず物事の利と害の両面を考えるものだと。
 私も働き方改革にケチをつけたいわけではないし、バッシングされて「ブラックだ」などと批判もされたくないので、誤解のないようにしていただきたいが、働き方改革をうまく進めるためにも、そのプラス面だけを見るのではなく、そのマイナス面も直視し、決して目を背けていてはならないと指摘したい。
 まず、「早く帰れ」「休みをとれ」と言うだけで、残業が減り、休みが取れるなら、そもそも仕事に無駄が多かったということであり、帰りづらい、休みづらい空気があったというだけの話であって、それだけでは生産性が上がったと喜ぶことは出来ない。やはり生産性を上げるためには、何らかの改善を施さねばならず、「それが簡単に出来るくらいならとっくにやっているよ」という話なるだろう。
 無駄をとるだけでなく、実質的な改善を実現するには、やはり時間と場所の制約を超えて仕事が出来るようにするテレワークを考えることになる。テレワークのためには、ペーパーレス化も必要となり、当然ITツールの活用が必須だから、ITベンダーからはバラ色のテレワーク像が提示されるが、ここにも当然、利ばかりではなく害があることを忘れてはならない。
 ちなみに、私もテレワークを実現するITツール「NI Collabo」を提供しているし、テレワークは特に育児や介護の問題、特に介護離職問題への対策として必ず必要とされるものと確信しているのだが、だからと言ってマイナス面に触れないわけにはいかない。テレワークを推進しているような人はきっと知っているだろうが、テレワーク先進国とされる米国でもテレワーク(リモートワーク)に対して否定的な意見もあって、米国のYahooやIBMで在宅勤務の禁止というルールが出来たりしたことは結構話題にもなった。要するに、ITツールが発達して便利にはなっても、実際に会って生で話をするのとは違う、ということだ。普段顔も合わさず、働く時間がズレていてもITの力で協働は出来るが、毎日顔を合わせて同じ空間で仕事をしている人と比べれば疎遠になるのは当然だ。
 MITの組織学習センターをピーター・センゲらと共同で創設したダニエル・キムは、「成功の循環モデル」で、結果や行動や思考の質を問う前に、組織内の「関係の質」を良くしなければならないと指摘した。人間関係を良くするためには、接触回数が多い方が良いに決まっている。これを「単純接触効果(ザイアンスの法則)」と言う。心理学者のロバート・ザイアンスが提唱したものだが、心理学者に言われなくても分かるだろうと思う。こうした問題から目を背けたままで、テレワーク、働き方改革を進めていては短期的にはうまく行ってもいずれ問題が露呈するだろう。

人生100年時代だけに二刀流も良いが

 また、働き方改革で、副業や兼業を解禁すべしという議論がある。人生100年時代ということを踏まえれば、定年後の人生も長くて、セカンドキャリアも必要になるから、本業だけに縛り付けるべきではないという考え方には賛成だ。だが、それを本業となる会社側、経営側が推進すべきことなのだろうか? 私ははなはだ疑問に思う。
 もちろん、メジャーに行っても二刀流が許された大谷翔平選手のような体格とセンスを持ち合わせているような人はどんどん副業でも兼業でもやって、思う存分その才能を発揮すれば良いと思う。だが、その大谷翔平選手も同じ野球という業界内で、投手と打者という2職種をやっているに過ぎない。決して野球とサッカーをやっているわけではない。投手としての経験が打者としても生きることがあるだろうし、その逆もあるだろう。
 これまで会社員としてしか仕事をしていなかった人が、急に片手間の副業で活躍出来るくらいなら、すでにその道で独立して仕事をしているフリーランスの人はもっと活躍してバンバン稼いでいるのではないか。そのフリーランスでも稼げるのは一部の人だけだと言うのに、片手間の副業でそう簡単に活躍できるとは考えにくい。
 この副業、兼業で、付加価値の低い(賃金も大してもらえない)仕事をやっていては、勤務間インターバルをとって休養をしっかりとろうという施策に反するし、非正規のパート程度の時給であれば、本業で残業した方が割増もされてよっぽど時給が高いことになるだろう。
 そして、有給休暇の取得も義務化され、今まで休みを取れなかった(取らなかった)人も休ませなければならない。そうなると、仕事が属人化されて、「その人でなければできない」という状態ではまずいので、他の人でも代替できる体制を作らなければならない。そもそも人数の多い大手企業では当り前のことだろうが、中堅・中小そして零細規模の会社では、「その仕事を担当している人は一人しかいません」という属人仕事のオンパレードだ。そもそも複数人で担当するほどの仕事量がないのだから、それを複数人で対応するとなると必ず人の無駄が出る。その余分な人員を採用するコストはともかく、採用したくても来てくれない場合はどうすれば良いのか、という中小の現場には切実な問題がある。
 それよりも私が問題視したいのは、「君にしかできないのだから」と言って任される仕事だから意気に感じて頑張れるものを、「他の人でもできるからいつでも休んでいいよ」と言われてしまってはモチベーションが下がってしまうのではないかということだ。この話を逆手にとって、過重労働を正当化させてはいけないが、代替の利かない仕事、人材であるからこそ価値があるのであって、いつでも替えが利く人材に高い処遇をするとは思えない。

相関関係と因果関係を混同してはならない

 もう一つ、働き方改革の議論の中で気になる点として、「労働時間が減って早く帰るようになったら創造性(付加価値)が高まる」かのような雑な議論が平気でなされていることを指摘したい。多くの場合、総労働時間が減って、有給の取得率も高い大手企業が例として取り上げられ、その企業が売上や利益を伸ばしているから、労働時間を減らして休日を増やせば、社員の創造性が高まって会社としての付加価値も高くなるのだとされる・・・。こうした議論は、相関関係と因果関係をごちゃまぜにしている。
 大企業になるほど付加価値の高い業務をしていて、優秀な社員も多く、IT化投資なども充分出来て、時間外の急ぎ仕事などは下請けに投げるか断ることが出来るような企業だから、労働時間を減らして休日を増やしても業績を伸ばせたかもしれないのに、労働時間を減らしたら付加価値が上がったかのように論ずるのは因果が逆になっている。
 大手企業は労働生産性が高く、中小規模だと労働生産性が低いというのは相関関係であって、労働生産性が高い業務をしているから大手になったのであって、労働生産性の低い仕事に甘んじているから中小規模に留まっているに過ぎない。もちろん、大手になって規模の経済が働くことで生産性が高まったとも言えるし、中小規模だから生産性の上昇には限界があるとも言える。
 付加価値の高い仕事をしている企業は労働時間が短くても休みが多くても業績を伸ばしているかもしれないが、だからと言って、労働時間を短縮して休みを増やせば付加価値の高い仕事が出来るようになるわけではない。
 もちろん、「今日はNO残業だぞ」「何時までに終えるように」と期限を明確にしてやることで、集中力が増し、作業効率が高まったりすることはあるだろう。だがそれは、あくまでも単純な作業などの場合であって、知的な創造性を必要とするような場合には時間の制限がプラスに働くとは限らない。むしろ、時間で区切るようなことをすると、「他者から統制されている」と感じて内発的動機付けが阻害される。ミハイ・チクセントミハイは、「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態、その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態」を「フロー」と呼び、時間を忘れて没入する、忘我状態が創造性を発揮するためには有効であると指摘している。
 時間を区切って効率的に仕事をするというのは、もちろん大切なことではあるが、作業レベルの仕事はそれでこなせても創造性を発揮し付加価値の高い仕事を生み出す知識労働、頭脳労働には必ずしも有効ではなく、場合によっては阻害することもあると知っておかなければならない。
 言い出せばキリがないのでこれくらいにしておきたいが、働き方改革にはプラスもあるが、マイナスもある。一言で言えば、組織に遠心力をもたらす。したがって、働き方改革を成功させるためには、その遠心力に対応する求心力が必要になるのだ。長くなるので、その解決方法については、別の機会に譲り、セミナー等でお伝えして行くが、ここでは、働き方改革を成功させるためにはそのマイナス面から目を背けず、しっかりと議論すべきであることを指摘しておきたい。

2019年3月

経営の道標1月

2019年 己亥(つちのと い)

 今年は波乱の年、変革の年になりそうだ。株価も乱高下、元号も変わる。働き方改革が起き、消費税も上がる。米中関係もドル円もEUも中東も怪しい。火をつけるのは、トランプか中国経済かBrexitか・・・火種はたくさんあり、いつ着火するか、いつ破裂するか分からない。個人的には日本開催のラグビーワールドカップで、日本がまた大番狂わせを演じて波乱を起こしてくれることを期待したいところだが・・・。

 さて、今年、そうした動きをどう抑え整理するかだが、変化の激しい時だからこそ、目先の事象に対する対症療法ではなく、10年後20年後を見据えて、今何をすべきかを考えたい。景気は廻り、バブルはやがて弾けてまた膨らむ。干支もまた同じ。変化が激しいからと言って、その変化に一喜一憂せず、焦って手を出さず、将来に向けて冷静に手を打ちたい。
 2030年でも2040年でも良いが、自社の将来ビジョンを描いてみよう。自社の未来の「見える化」だ。もし、それが描けないとしたら、目の前の変化に翻弄され、流されて、やがてはDisruptされる運命にあると言って良いだろう。時代の流れに身を任せているだけで乗り切れる時代環境ではなくなっていることを改めて考えてみるべきだろう。株価がどうだとか景気がどうだとか外部環境を論じる前に自社の根幹となる事業構造、ビジネスモデル、戦略戦術を見直そう。
 その際に、ITやAIを活用した戦略やビジネスモデルを考えるのは当然だが、如何に限界費用をゼロに近づけるかという視点を盛り込みたい。限界費用とは要するに変動費のこと。この限界費用ゼロで攻撃を仕掛けてくるのが、Digital Disruptorだから、その破壊攻撃に立ち向かうためには、こちらも限界費用ゼロの武器を持っていなければならない。その武器も、金さえ払えば簡単に手に入るようなものなら、資金力のあるDigital Disruptorはさらに武装してくるわけだから、ある程度時間をかけてはじめて構築できるものである必要がある。そのためにも10年後20年後に向けたビジョンが必要になるのだ。
 Digital Disruptorに業界ごと破壊されてしまう脅威を考えれば、目先の株価の暴落や景気変動など大した脅威ではないので、イザという時に備える災害対策のように、Digital Disruptionへの備えを己亥の今年進めておきたい。変化を波と捉えれば、その波に逆らうか、その波に飲まれてしまうか、その波に乗るかを選択できる。大波に逆らうことは出来ないし、飲まれてしまえばお終いだ。となればその波に乗るしかない。変化の波にサーフィンのように乗って楽しめるかどうか、それが魅力のあるビジョン作りの要諦だ。楽しめる将来ビジョンを作ろう。

2019年1月

経営の道標 年度別

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