代表長尾が語る経営の道標
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2016年版 経営の道標
IoT⇒ビッグデータ⇒AI
もうすぐ2017年がやってくるということで、来年以降に向けた戦略見直しのためのキーワードを紹介しておきたいと思う。今年はAI(人工知能)が碁の名人に勝ったりして話題になったし、弊社でも電子秘書システムSales Force Assistantに人工知能を搭載して、SAI(Sales Assist Intelligence)という機能を実現し、電子秘書がAI秘書に進化したりと第3次AIブームが来ていると言われている。そしてAIが人間を超えるシンギュラリティという事態に2045年に到達するとかしないとか言われているわけだが、普通の会社はまだAIはあまり考えなくて良い。人間を超えるかどうかはいざ知らず、今後必ずAIは普及することになるが、大切なことはそうなる必然性である。AIが賢くなるのも、必要になるのも、生身の人間ではさばき切れないビッグデータがあるからだ。なぜビッグデータが生じるかというと、モノのインターネットという訳(わけ)の分からない訳(やく)になっているIoTが普及するからだ。このIoTの普及によって、今までビッグデータなどに縁のなかった中堅・中小企業までもがビッグデータの洪水に飲み込まれ、それを処理するために自ずとAIを必要とするようになる。
要するに、これらは単体で考えるのではなく、IoT⇒ビッグデータ⇒AIという一まとまりの流れとして捉えておかなければならない。そしてその流れはすでに勢いを増し始めており、AIはまだしも、IoT⇒ビッグデータの流れはもう止まらないだろう。総務省の情報通信白書によると、2016年には世界中で170億個ほどのIoTデバイスが存在しており(すでに170億個・・・総人口の2.4倍)、これが2020年にはさらに倍近い300億個に増えると言う。そのIoTデバイスから毎秒とか毎分、毎時といったレベルでデータが吐き出されていくわけだから、とんでもないビッグデータが生まれることになる。これがすでにほぼ確実な未来なので、それを解析するためにAIは必須となる。
ここでは、それぞれの細かい説明は専門分野の人に譲ることにする。そしてIoTの機器を作ったりAIを研究したりする専門企業はそれぞれ研究してもらうとして、それ以外の一般の事業会社、普通の企業がこのIoT⇒ビッグデータ⇒AIという流れにどう対応すべきかを考えたい。
ずばり、ビジネスモデルの再構築を含めた戦略転換が必要となる。伝統工芸など変わらないことに意義があるようなビジネスもあるから、すべての企業とは言わないが、かなり広範囲に、業種業態を問わず、規模の大小も関係なく影響があるだろう。その理由は、急激にコストが下がるものだから。
すでに事例がある。現時点でIoT⇒ビッグデータ⇒AIという一まとまりを具現化しているのはスマートフォンを端末とする通信キャリアでありAppleだ。スマホは現時点で最も一般に普及しているIoT端末であり、AIデバイスだ。スマホは、そのユーザーが今どこで何をしているのか、何に興味を持って何を探そうとしているのかといった情報を随時収集し、それに応じて必要な情報を返してくる。お手元にスマホがあれば話しかけてみよう。音声応答まで完備。腕時計型のデバイスをつなげば、何歩歩いてどれだけカロリー消費したかまで情報を取っていく。そんなすごいものがわずか数万円で買えると思っていたら、格安スマホが出て来て、さらに安くなっている。要するにそれだけ安くできるということ。IoT⇒ビッグデータ⇒AIの付加価値の大半は部品や機器ではなくソフトウェアにあるからだ。ソフトウェアは拡販しても限界費用が増えないから、出来るだけ普及させて(数をさばいて)初期の開発費を多くの契約件数で割り算(割り勘)すれば良い。これを世界規模で一気にやられると太刀打ちできないから、普通の会社は、ここでは戦わず、安くなったところで利用する。
IoT⇒ビッグデータ⇒AIを利用すると考えると、ポイントは2つ。売った後の顧客とつながり続けるということと、受注発注の自動化もしくは先回りをビジネスモデルに組み込むということ。ビジネスモデルを再構築すると言っても良い。これを来年から2020年くらいまでの間に実行できるかどうかが、その後の命運を分けることになるだろう。これ以上ここにあまり詳しく書くと、ビジネス上支障があるのでヒントくらいで勘弁してもらうしかないが、「IoTなんてうちには関係ない」、「AIとか大企業が取り組むものでしょ」なんて他人事のように思っていた企業でも取り組めるものだからしっかり戦略の練り直しをしてもらいたい。
まず、売った後の顧客とつながり続けるというビジネスモデルのモデル(シャレではないが)はコマツである。コマツのKOMTRAXを知らない人は調べてみよう。ネットで検索するだけで情報はたくさん出てくる。これと同じようなことが簡単にできるようになるということ。そうなった時、自社のビジネスがどうなるか考えてみれば良い。
次に、受注発注の自動化もしくは先回りというビジネスモデルのモデルはセコムである。客が「泥棒が入ったから緊急出動してくれ」と発注しなくても自動というか先回りして急行する仕組み。これと同じことを自社でできないか考えてみよう。
これら2つの例は、いずれもIoT⇒ビッグデータ⇒AIなんていうキーワードがなかった時からビジネスモデルを構築したものである。要するに、最先端の特殊な会社だけがやろうとすることではなく、一般の会社でもできるということだ。モデル企業はIoT⇒ビッグデータ⇒AIがない時代に苦労して実現してきたのに、これから取り組む企業は、IoT⇒ビッグデータ⇒AIが安くなって同じようなことをより簡単に実現できるようになるということだ。
難しくはないけれども、早くやらないと他社にやられてしまって市場を席巻される可能性があるから注意が必要となる。その後はコモディティ化するので、さらに先を考えておかなければならないが、それはまたそのうち紹介してみたい。まずは2020年の東京オリンピックくらいまでに、今回ご紹介した2つのビジネスモデル改革に取り組んでもらいたい。
ちなみに、IoT⇒ビッグデータ⇒AIが当たり前になろうかとしている今、紙⇒IT化を進めるかどうかといったレベルで逡巡されている企業は、危機感を持って世のトレンドを眺めてみて欲しい。すでにIoT⇒ビッグデータ⇒AIの流れは止められないのだから。
2016年11月
東京都から学ぶ可視化経営
豊洲移転、オリンピックと、小池知事に代わって問題が噴出している東京都を見ていると、改めて可視化経営の必要性に気付かされる。問題は知事が代わったから発生・噴出したのではなく、すでにあったものが可視化、見える化されたに過ぎないということだ。すでに盛り土はされずに建物が建てられていたのに、盛り土されていることになっていた。そして、盛り土されているとマスコミでも繰り返し報道されていた。それを盛り土されていないと知っている人間も見ていただろう。「本当は盛り土してないけどな」と思っただろうが、それを明らかにすることはして来なかった。見て見ぬフリだ。
そして、盛り土しないと決定されたプロセスを調査したけれども責任者は特定できなかったと言う。東京都ほどの組織で、そんなことになるわけがない。社長や親方がワンマンで仕切っている5人10人の組織ではないのだ。議事録もあるだろうし、決裁印もあるだろう。何より複数の人間が関わっているはずだから、仮に、全容を把握しているという人はいなくても、複数の証言をつなぎ合せれば事の経緯はつかめるはずだ。だがそれが隠蔽される。
それが人間の所業である。東京都に極悪人が揃っているわけではない。比較的、真面目で正直な人が揃っているくらいだろう。それでもこういうことが起こる。だから普段から可視化、見える化しておかなければならない。
何かあったら記録に残す、重大なことは相談する、などと裁量の余地を残していては可視化できない。すべてを可視化する、見える化することを原則とするから、隠蔽しようとしても問題にならない内に周囲が気付くし、もし問題が表出した時には事の経緯や責任の所在が明らかになる。「記憶にない」「勘違いしていた」などと適当なごまかしは出来なくなるし、そもそもその時点で可視化していないとすると、問題が起こるかどうかの前に、可視化していないことを原則ルール違反として罰する。
必ず可視化するというルールを日頃から徹底しておくことがまず第一に必要となる。しかし、人間は必ず都合の悪いことを隠そうとしたり、悪意はなくとも忘れてしまったりすることがある。可視化のルールが徹底されていれば、何かあった時の責任の所在は明らかにできるが、問題が起こってからでは遅いということがある。だから責任者、リーダーは時に、現場に降りなければならない。現地に行かなければならない。
孫子の兵法には、『軍の以て進む可からざるを知らずして、之に進めと謂い、軍の以て退く可からざるを知らずして、之に退けと謂う。是を軍を縻ぐと謂う。』という教えがある。「軍が進撃してはならない状況にあるのを知らずに、進撃せよと命令し、軍が退却してはならない状況にあるのを知らずに、退却を命令するようなことでは、軍事行動を阻害し、拘束しているに過ぎない。」と言うのだ。現場を可視化せず、状況を把握していないのに、あれこれ口出しをする国王を諌めたものだ。これを現場の人間は、「だから上の人間は黙って引っ込んでろ」「現場のことを知らないくせに口出しするなと孫子も言っている」と都合よく解釈する。
そして東京都の職員のように隠し始める。悪意はないだろうし、現場を知らないくせにあれこれ口出しする都知事が実際問題として邪魔だったのかもしれない。しかし、ここで重要なことは、孫子は現場に口出しするなと言っているのではなく、現場の状況を把握していないのに口出ししてはいけないと言っているということだ。現場の状況が見える化され、きちんと把握できていれば、当然、リーダーとして長として国王として指示命令を発しても良い。特に、前例のない新しいこと、リスクを伴うこと、選択肢がいくつかある中で決定を迫られていることであれば、現場に判断を任せることはできず、リーダーが意思決定すべきである。リーダー、国王、知事、社長は、現場に口出してしてはいけないのではなく、現場の把握、可視化をしなければならないのだ。もちろん現場は自分たちの都合が良いように現場の情報を隠してはならない。
可視化のルールを徹底し、必要に応じて現場に赴く。抜き打ちで現地に行ってみる。現場の人の話を聞いてみる。これができていないことが東京都の問題ではないだろうか。
そしてさらに現場は、隠した問題を時間の経過を利用して乗り切ろうとする。時間切れでなし崩そうとする。「今さら無理です」「もう間に合いません」「すでにお客様が来られています」「2020年のオリンピックを延期はできないのです」と。しかし、これを許していては何でもありになってしまう。ここが難しいところだ。豊洲もすでに建物は完成しているわけだから今さら白紙撤回はできないだろう。豊洲はまだ東京だけの問題だから都民が認めれば無かったことにできても、オリンピックは世界中に恥を晒すことになるし、恥では済まないだろう。やるしかない。間に合わせるしかない。現実問題としてそうであったとしても、それで問題をなかったことにしてはならない。責任は明確にして必要な責任はとってもらわなければならない。このままだと東京都は、この責任問題もうやむやにしたままで終わらせそうな気配だ。
知事が代わったことで、ゼロベースで見直しが出来たのは良かった。だが、現実問題として豊洲もオリンピックもやるしかないのだから、問題ばかりを論っていないで前に進めていかなければならない。だが、その場合にも問題を生じさせた、もしくは時間稼ぎをしてうやむやにしようとした人間の責任は見逃してはならない。「済んだことだから」「今さら仕方がないから」と曖昧にしてしまっては、時間の経過を利用しようとする人間の思うつぼだ。次もまた都合の悪いことは隠して、時間切れ、なし崩しを狙ってくるだろう。
そのためにも、日頃から業務内容を可視化し、記録に残すルールを徹底しておくことである。遡って事の経緯を明らかにできるようにしておくことで、隠蔽しよう、時間稼ぎで取り繕おうとする人間に歯止めをかける。どうせバレてしまうと思えば、早く明らかにして問題を大きくしない方が得策だとなる。すべては人間の性である。
東京都の議論で気を付けたいのは、議事録や文書の開示を可視化、見える化だと勘違いすることである。議事録が開示されると思えば、余計にまずいことを隠そうとする人間が出る。そんなことでは可視化はできない。日頃から、何もない時からすべて可視化、見える化するという風土、環境、ルールの徹底が必要なのだ。
これは東京都だけの問題ではない。どこの組織、企業でも起こっていることだ。改めて可視化経営を勉強してみていただきたい。
2016年9月
リオ五輪で経営を見直す
2016年8月5日から8月21日まで、ブラジル・リオデジャネイロでオリンピックが開催される。4年に一度のスポーツの祭典。トップレベルの選手が世界ナンバーワンを競う戦いが繰り広げられる。日本ではちょうどお盆休みの期間にも当たるし、今年は「山の日」も始まるからじっくり観戦する時間もとれるだろう。
そこで考えてみたいのが、世界レベル、グローバル基準、世界一の技やスピードと比べ、自社の経営、商品、営業、マーケティング、研究開発などが、どの程度戦えるものになっているかということだ。日本国内でそこそこの評価をもらっているからと調子に乗っていないか。井の中の蛙になっている社員はいないか。グローバル展開など自社には無理だと初めから諦めてしまっているようなことはないか。リオで世界と戦う日本選手を応援しながら、自社が世界と戦うために何が必要かを考えてみたい。
普段は、「百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」という孫子の「戦わずして勝つ」兵法に従って、他社とは別のこと、違うこと、差別化されたことに取り組んで、戦わないようにすべきである。だから、オリンピックの競技種目になるような選手人口が多く、競合の激しい種目ではなく、独自の競技を作るくらいでなければならない。
100メートルを前に走ったらウサイン・ボルトには勝てないので、後ろ向きに走って世界一を目指すような、他の選手がやらないことで世界一を目指す。これが戦略の基本。戦いを略す。だから、桐生君が何秒で走ったとか、ケンブリッジ君という日本人離れした名前の選手が出てきたとか、そういうニュースも気にせずに、後ろ向きに走るという我が道を行く。周囲を見すぎると、どうしても前向きに走りたくなるだろう。前向きに走った方が人気が出るのではないかと考えるだろう。そもそも後ろ向きに走っていては、いくら速くても競技会がなくて出番もないじゃないかと考えてしまうだろう。
しかし、そんなことを考えて、前向き走りに転向してもボルトには勝てない。桐生君にも勝てないだろう。そんな中途半端なことをするのではなく、独自領域を磨く。それが戦略であり、少なくとも経営資源に乏しい企業の戦い方だ。自分が信じた、我が道を行く。独自の技をひたすら磨く。雑念を振り払い周囲の雑音に惑わされない。
だが、4年に一度くらいは世界レベルを研究してみることをおすすめしたい。ボルトの走りを見たら、後ろ向きに走る際にも応用できる何かしらのヒントがあるかもしれない。世界レベルの選手が取り組んでいるトレーニング方法やコーチの指導方法などにも気付きがあるかもしれない。そしてオリンピックにも変化がある。廃止される競技もあれば、新しく採用される競技もあったりする。そうした世の流れ、グローバルな動きを知ることもたまにはいいだろう。
そういう意味で、私が注目しているのは、7人制ラグビーだ。ラグビーと言えば15、フィフティーンじゃないのか。サッカーと言えばイレブン。野球と言えばナイン。それなのに7人。どういう経緯で五輪の正式種目にまでなったのかは知らないが、元はマイナーな存在だろう。しかし、15人の普通のラグビーではタックルやスクラムなど身体がぶつかり合うことを前提にしてしまい、どうしても体格的に劣る日本やアジアは不利になるが、7人ならスペースも広くなり、スピードや連携勝負もしやすくなり、小さな身体でも活躍できる余地が拡がる。昨年のワールドカップで日本のラグビーも脚光を浴びたが、世界の強豪がひしめく15人制ではなく、日本の特徴が活かせる7人制にリソースを集中させてはどうか。といったことをラグビー協会の関係者でもないのに考えてみる。私がもし「日本ラグビー」という会社の経営者ならそうする。戦いのルールが変われば、戦い方を変えなければならないし、自社に有利なルールを作るにはどうするかと考えることも必要だ。オリンピックを見ながら、自社の戦略を練り直そう。
そしてこの機会に、自社と競合するグローバル企業、世界一と言われている企業の研究もやってみよう。何度も言うようだが、普段はあまり意識し過ぎなくて良い。進むべき道は違うし、同じことをやっていては勝てない。だが、世界一と言われる中には何かしらヒントもあるはずだ。実際、私の会社でもグローバルでナンバーワンと言われている企業の研究会をやってみたのだが、改めて見てみると「なるほどさすがだな」というところもあるし、「これは大したことないな」と感じることもある。学ぶべきは学び、勝てる領域では勝つためのストーリーを明確にしていく。パワーでは負けてもスピードでなら勝てるとか、スピードでは負けていても連携プレーでなら勝てるといったことがオリンピックでもあるように、ビジネスでもすべての分野で負けっぱなしということはない。勝てる分野、勝てる技、勝てるエリア、勝てる売り方があるはずだ。
リオデジャネイロ五輪を見ながら、自社の経営をグローバル視点で見直してみよう。あなたの会社は世界で通用するだろうか?
2016年7月
人工知能で人を置き換えられるか
6月1日の採用選考解禁日が近づいてきて、すでに内定(内々定?)が出た学生さんも増えてきた。そして毎年思うのが、このルールに何の意味があるのかという疑問である。だが、今回はそんな批判がしたいわけではなくて、やはり企業の採用意欲の割に学生数が少ない「売り手市場」であるということが言いたい。特に優秀な人材を採用しようと思うと競争は激しい。
新卒採用ではなくても、中途採用やパートやアルバイトの採用であっても、事情は変わらない。現にクライアント企業でも、パート募集に応募がなく已む無く時給を上げたが、それでも足りない・・・というところが少なくない。人がいないのだから仕方がないと急場凌ぎで時給も上げるわけだが、これがいつまでもつかどうか。労働集約的な職場であればあるほど人件費がじわじわと上がってくるのは痛い。
そして、そもそも大きな問題は、こうした状況が改善されていく見込みが立たないということだ。人口減少で若年層が減り続けることは間違いないし、最低賃金を上げられ、同一労働同一賃金で非正規雇用の待遇改善を要求されて行くと、パート・アルバイトで成り立っている現場は立ち行かなくなる。そこでさらに定年後の再雇用で同じ仕事をしてもらったら給与を下げられないなんてことになったら、ベテランも雇いにくくなる。
そこで考えておきたいのが、人工知能(AI)だ。人工知能を搭載したロボットと言っても良い。人間がやっていた仕事をAIに置き換えることができれば、未来に光明が見えてくるだろう。そう思って、弊社でもAIの研究を進めている。生身の人間がいなくてもAIが問題を見つけ出し、考えてくれるようにするにはどうするか。これが案外いける。生身の人間だとどうしても人によってバラツキが出るが、AIにはバラツキ無し。微妙な匙加減までは難しいにしても、ある程度定型的なことなら人間よりも精度高くこなしてくれる可能性がある。
AIだけだとリアルな作業ができないので、実体のあるロボットの可能性もいろいろと試している。ソフトバンクさんのPepperと弊社のグループウェア「NI Collabo Smart」をつなげて受付業務をやらせると、登録されたスケジュール情報があるから対応の精度もあがる。また営業支援システム「Sales Force Assistant」とつなげて顧客情報を参照させるとより正しい来客認識ができる。これが案外いける。そしてこちらは弊社だけでなくロボットや人工知能の専門家が日夜研究し改善してくれているから、日々進化しているし、競合ロボットも増えてくると低価格化も進むだろう。物を持ったり運んだりすることがテキパキとできるようになると、飲食や建設などの現場でも使えるようになるだろうが、そこまで行くには安全性の問題などもあるからすぐには難しいか・・・。
そうした状況から考えると、まず定型的な業務を行っているオフィスワーカー、事務作業員からAIへの転換を検討してみるべきだろう。これによって浮いた人材を現場にシフトできるようにする。そこで時間を稼いでいる間にロボットの進化もあって現場作業や接客の代替なども徐々に可能になってくるだろう。そもそも人がいない分野、領域ではそうするしかないのだから、どうせそうするなら、早めに着手してよく検討しながら進めた方が良い。現在、人がいてAIやロボットに置き換えられてしまいそうな人には、早めにその情報を伝え、生身の人間にしかできない配慮やコミュニケーションを磨くか、より創造性の高い知的ワークに挑戦させるかしておかなければならない。気付いたら手遅れでロボットにクビにされた・・・とならないようにしておいてあげよう。
実際、AIの検討をしていると、「これはヘタなコンサルタントは要らなくなるな」という気がしてくる。教科書に書いてあるような決まりきったことを言うだけなら、生身のコンサルタントがいる必要なし。AIコンサルタントなら、ローコストで確実に問題を指摘してくれる。そうなると生身のコンサルタントは、独自戦略や定石を超える発想と人と接する愛嬌がないといけない。中途半端な人材が一番AIやロボットに置き換えられるということだろう。この最後の6行は弊社のコンサルタントに読ませたい(笑)。そんなことを考えながら採用選考解禁日を迎えようとしている。5年後10年後に向け、貴社の人材戦略、人事政策を再考してみていただきたい。
2016年5月
2016年 丙申(ひのえ さる)
カタチになり、明らかになり、固まり、伸びる年。株式相場の格言では「申は騒ぐ」と言うそうだが、まさに年初から日経平均は暴落続きの大騒ぎ。プラスの面が明らかになるのであれば良いが、マイナスの面が現れて固まってしまっては困る。
うるう年のオリンピックイヤーで、参院選あり、大統領選あり。波乱や騒ぎがあるのだろうか。台湾では政権交代、北朝鮮は水爆実験、中東では国交断絶、欧州では難民騒ぎ。
中国の成長率も落ちてきて、米国も金利を上げ始めたばかりですぐに利下げはできないとなったら、事が起こった時に救世主がいないかもしれない。日銀黒田バズーカをまた撃って、日本が食い物にされることになるのか。
丙には、かまどの火が燃えているさまを表す意味もあるそうだ。火山活動が活発になると予想する人もいる。東海地震や首都直下地震が心配にもなる。と、書いていたらどんどんネガティブな気分になってきた。
心配ばかりしていても、問題は解決しない。必要な注意やケアをしながら前や上を目指したい。「負けない経営」だ。これについては、拙著「仕事で大切なことは孫子の兵法がぜんぶ教えてくれる」(KADOKAWA)を読んでもらい、出版記念セミナーにでも来てもらいたい。
負けない備えが出来たら、「人」の問題に取り組むべきである。これから日本では優秀な人材を確保することが難しくなり、人材を雇用するコストが高くなっていく。人が減り、人が高くなることが明らかになる年。すでにじわじわと人件費は高騰しているはずだ。あまり意識はしていないだろうが、社会保険料なども上がっている。新卒採用は解禁日をいつにするかという騒ぎに紛れてしまっているが、中堅・中小での採用はとても難しくなって来ている。頭数を揃えるのも大変だが、元々少ない優秀な人材は、さらに少なくなっていて大手に持って行かれている。今年は解禁日が6月になったが、協定破りと中小の苦戦は繰り返されるだろう。
そして、破綻することが明らかな年金制度を守るために支給開始年齢の引き上げが固まるだろう。それは自ずと企業に対する定年年齢の引き上げ義務化につながる。ストレスチェックもしなければならない。育児休暇を男性にも取らせるようにせよと言われるだろう。育児は終わりが見えている目出度いことだから良いが、介護離職させないための介護休暇も義務化されるだろう。介護の方は終わりが見えない。いつ復帰できるか分からない人材をどれだけ抱えておけるのかが企業に問われる。
こうした現実が明確になっているのに、いつまで「企業は人なり」と言っていられるだろうか。それを真剣に考えてみるべきである。たしかに、人がいないと回らない。人がいてこその企業である。それは間違いない。
だが、その人材はなるべく少なく、精鋭揃いの方が良いのではないか。私はこれを「省人数経営」と呼ぶ。単に少人数なのではなく、本来100名必要なところを50名でこなす「省人化」が必要だからだ。
「人」は大切である。だが「人」は高くつく。それを踏まえた上で、「人」の問題をどうするか、将来的にどうしていくべきか考えてみて欲しい。当然、その企業の目指すビジョンによってあるべき姿は変わってくるだろう。
ここで少しクールダウンして、「日本でいちばん大切にしたい会社5」(あさ出版)でも読んでみて、「人」こそが財産であり「人」を大切にする企業の考えを取り入れてみるのもおすすめだ。このシリーズも5冊目になっていて売れているようだし、私も嫌いではない。つい涙してしまう。本書を読んで明太子はふくやのものしか買わないことに決めた(笑)。
それでも「人」は高くつくことは間違いないから、やはり「省人数経営」で行くしかないのではないかというのが私の結論である。「サルが騒いで」大騒ぎになる前に、手を打っておきたい。
今年がみなさまにとって良い一年でありますよう祈念いたします。本年もよろしくお願いいたします。
2016年1月
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