代表長尾が語る経営の道標
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2025年版 経営の道標
大災害・サイバー攻撃への備え
3.11と聞くだけで、多くの人が東日本大震災の惨禍を思い起こすだろう。災害対策やBCP(事業継続計画)の策定などはできているだろうか。「あの時は大変だった」「被災者は可哀想だ」と振り返り、同情するだけで終わっていないだろうか。3月11日の前後に過去のこととして思い出すだけでなく、過去の教訓を未来に活かしたいものだ。
東日本大震災だけでなく、阪神淡路、熊本、北海道胆振東部、能登半島と結構大きな地震が数年置きに起こっている。首都直下や南海トラフなど大規模地震が予測されている地域だけの問題ではなく、大地震は日本中どこで起こってもおかしくない。
さらに、最近無視できなくなっているのがサイバー攻撃やウイルスによる被害だ。ウイルス感染させてコンピュータをロックしたり暗号化して使えなくさせ、それを解除する「身代金」を要求するランサムウェアという手口も横行し、何ヵ月にも渡って業務が停止、支障を来したという事例が増えている。大手企業ではニュースにもなるが、ニュースにならないだけで中堅・中小企業でも被害が発生している。
DDoS(ディードス)攻撃と呼ばれるサーバー攻撃も増えている。これは複数のコンピューターから大量のアクセスを送りつけて、ウェブサイトやサーバーなどの運用を妨害するもので、侵入や破壊されるわけではないので、逆に防ぐのが難しいものだ。家には入られていないけれども、家の前の道路を渋滞させて家に入れない(出られない)ようにするわけだ。戸締りして鍵をかけていても意味がないことになる。
サイバー攻撃を受けて、事業活動ができない、もしくは業務に支障が出た場合の対応マニュアル、対応手順、対策は立てられているだろうか。
もっと言えば、テロ、紛争、有事への備えはどうだろうか。日本は徴兵制もなく平和が当り前のようになっているが、紛争地域に隣接した危険なエリアにあることを忘れてはならない。何かあった時に、自国第一を掲げる米国が守ってくれる保障はどこにもない。
加えて、これは日本全土というわけではないが、富士山の噴火もあり得る。もし、噴火すれば降灰は首都圏にも及び、灰が30センチを超えるほど積もる可能性もあるとされる。そうなると、電気、水道などのインフラはもとより交通網もストップし、都市機能は完全停止すると言ってもいいだろう。
富士山は5600年前から小中規模を含めて約180回噴火しており、1707年の「宝永噴火」から300年にわたって大きな火山活動がないものの、気象庁が噴火リスクを常時監視している活火山である。「宝永噴火」の時には途中に小康状態もありながら16日間降灰が続いたとされ、必要な備蓄は首都直下地震で推奨する1週間分よりも多く用意するべきだと内閣府が注意喚起している。
こうした、いつ起こるか分からず、その規模や強度も予測が難しいリスクに対して、企業がどこまで準備しておくかについては、個別の事情や判断があって当然だが、まったく検討もしていない、何の備えもない、という状態ではまずいだろう。滅多に起こらないことではあるだろうが、万一起こった時には致命的、壊滅的なダメージを被る。
非常時の水や食糧、避難用具などの備蓄は説明するまでもないので割愛するが、事情継続という観点からは、まずクラウド化・リモート化・拠点分散でリスク軽減しておく必要があるだろう。自社でサーバーなどを管理するのではなく、堅牢なデータセンター(クラウド)に置く。地震や水害にも強いし48時間までの停電なら自家発電もあるから耐えられる。
社員が出勤できなくなる可能性も高いので、リモートで仕事ができるようにしておくことも必要だ。普段から在宅勤務をする必要はないが、イザという時にはできなければならない。何の準備もせずに自宅にいたのでは、在宅勤務ではなく自宅待機でしかない。
そして、ビジネスが一定の規模を超えていたら拠点を分けたい。できれば東日本と西日本くらいに距離をとってどちらかが被災、被弾、被爆、倒壊、焼失、占領されても、一方の拠点で事業継続できるようにしておきたい。
何としても守りたいのが、社員およびその家族の人命、そして顧客情報である。何か起こったとしても命さえあれば再起は可能だ。そして再起しようとした時に必要となるのが顧客情報である。
社員の安否確認は発災時に自動発報するデジタルツールを用意しておきたい。電話やメール、チャットなどで連絡するといった誰かが手動で行うようなものでは、イザという時の対策にはならない。建物が倒壊して下敷き、生き埋め状態になっているような場合でも、安否確認で応答があれば位置情報が分かって救出もしやすい。
顧客情報は、当然デジタル化、データベース化してクラウドに置いておく。データのバックアップも東日本と西日本に分けて分散させておきたい。顧客対応を考えると、社員のスケジュールとメールデータも必要だろう。
問題は、火山の噴火による降灰で、電子機器が使えなくなったり、地震や津波、被弾によって停電が長期化した場合だ。サイバー攻撃でせっかくバックアップしてあったデータが見れなくなった場合も同様だ。
普段の情報の取り回しや短期間のバックアップを考えれば、デジタル化が有効で、クラウド化もリモート化もそれが前提となる。しかし、一週間、二週間、さらにはそれ以上長期化した場合、デジタルだけでは解決できない。そこで必要となるのが、究極のバックアップ、紙による情報保全だ。せっかく紙からデジタルに移行したのに逆行することになると言うなかれ。情報の取り扱いはデジタルにすべきであってそれが正しい。だが、万が一のための、究極のバックアップと考えれば、紙でもバックアップしておきたい。
先日、あるIT企業の人に、紙による究極のバックアップの話をしたら、「時代に逆行していますね。停電に備えてローソクを用意しておくようなものに過ぎない」と一笑に付された。自分達が進めて来たペーパーレス化、デジタル化への反論、反対と捉えられたのかもしれないが、万が一の究極のバックアップではIT業界は自己矛盾を抱えてしまいアテにならないことが分かった。笑われた私の答えは、「まさにそのローソクですよ」というもの。停電への備えとして、ローソクや懐中電灯を用意しておくべきなのだ。みなさんはローソクや懐中電灯を用意しているだろうか。もし、用意がないなら、万一の時のために用意しておこう。
IT業界に期待していても、究極のバックアップ体制を作ってくれそうにないので、仕方なく自社で作ることにした。定期的に顧客情報やスケジュール情報を紙に超極小の文字でプリントアウト(資源とコストを節減)して、それを耐火金庫か鍵付きのキャビネットに格納する。マイナンバーの保管に準ずれば良いと思う。社員個々人のメールデータを紙で出すのはプライバシーの観点からも微妙な話になるので、スマホのアプリにバックアップさせる仕組みを作った。急な停電でもスマホの充電が残っている間は情報を確認できる。紙による究極のバックアップがあれば、サイバー攻撃で自社データが見れなくなった際にも有効である。
イザという時にしか役に立たないし、役に立たずに終わった方が良いようなものなので、究極のバックアップ機能は無償で提供することにした。イザという時にローソクよりは役に立つと思う。
いずれにせよ、もし、大地震、大津波、大水害、長期大規模間停電、サイバー攻撃、富士山の噴火など万が一の事が起こった時のことを想定して、自社の事業継続についてイメージトレーニングしておくことをおすすめする。社員の安否確認は予行演習もしておいた方が良い。避難訓練もそのためにやっているだろう。ビジネスの避難訓練も万一に備えてやっておくべきなのだ。
2025年3月
2025年 乙巳(きのと み)
トランプ大統領の復活で幕を開けた2025年。トランプの動きに世界中が振り回されて右往左往している。なぜトランプに再度出番が回って来たのか。トランプに託された役割は何か。何かしらの意図があるだろうが教えてもらえるわけがない。彼が起こす変化がプラスに作用するかマイナスに作用するかはなかなか見通せない。
乙巳(きのと み)のキーワードは、再生と復活であり、脱皮し変化する年となる。
相場の格言に「辰巳天井」という言葉がある。辰年と巳年に株価が天井をつけやすいというものだ。昨年の辰年には日経平均の最高値を更新した。まさに新たな天井を示した格好だ。巳年の2025年にさらに天井を高くできるかどうか。いずれにしても、辰巳が天井ならやがて下降局面に移ることになるだろう。
トランプはドル安に誘導して輸出を有利にしたいところだろうし、それに呼応して日銀も金利を上げたが、いずれも物価が上がって、金利差は縮まらず、結局ドル高円安に逆戻りとなる気がする。
だが、そんなことばかり考えていても、自社の経営は良くならない。株式市場がどうであれ、為替相場がどうであれ、大切なことは自社が確実に利益を生み出すことである。環境変化は必ずあるのだから、金利が上がろうとも、円安になろうとも、キッチリと利益を残せる経営をしたいところだ。
「2025年問題」も「2025年の崖」も何年も前から言われていたことなのだから、今さら言い訳にはならない。そこでどうするのかを考えるしかなし。
脱皮である。そして再生。
トランスフォーメーションだ。
人口が減るのだからデジタルトランスフォーメーション(DX)は必須。言うまでもなし。
自社の事業、ビジネスモデル、事業戦略、経営方針を過去のしがらみに囚われず見直すべし。過去から脱皮し、再生しよう。
株式相場に左右される必要はないが、「辰巳天井」を忘れないようにしたい。今年が天井で、来年以降は下がる一方だと想定してみると良い。今年のうちに何とかしておくべきことが見えて来るのではないだろうか。
今年は変革の年である。脱皮し生まれ変わろう。
2025年1月
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