代表長尾が語る経営の道標

弊社代表長尾の経営に関するメッセージを
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2022年版 経営の道標

経営の道標3月

DXの本質は限界費用ゼロの武器を使いこなすこと

 1月の道標でも触れたが、DX(デジタルトランスフォーメーション)ブームがさらに加速しているように感じる。デジタル化が遅れ、アナログ業務の負荷で疲弊している企業現場も多いし、日本企業の生産性の低さはずっと指摘されていることだから、DXに取り組もうとする企業が増えることは望ましいことだが、一過性のブームのようにすぐに熱が冷めてしまわないかと心配にもなっている。
 「これがDXだ」「DXの事例だ」と言いながら、紹介されているのは、どうしても、単発のIT導入、システム導入の成功例が多いのではないか。事例だからそれは仕方ないのだが、それを見た側は、単発のIT導入でいいのだと勘違いしてしまっているようだ。DXとは、デジタルの力を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変え、競争優位性を高め続ける終わりのない取り組みだ。一度何かのシステムを導入して業務が改善されたからと言って、それでDXが成功したと考えてはならないのだ。
 もはや、ビジネスにデジタルを取り込むことは避けて通れない。デジタル活用が当たり前であり、それが習慣のように定着してこそ、トランスフォーム(変態)が出来ていると言えるだろう。
 当たり前になり習慣になるとはどういうことかというと、その組織に適切な風土や文化が醸成されるということだ。
 工場に製造機械を入れたことに置き換えて考えてみると良い。トヨタが使っているのと同じ製造機械を導入したとしても、トヨタ生産方式が再現できるわけではない。その機械で処理する工程はトヨタと同等になったとしても、その前後のラインが旧態依然としたものだったら、ライン全体の生産性は上がらない。一つのラインすべてをトヨタと同じ製造機械で揃えたとしても、そこに流れる部品数量や品質、職場の人間の意識が違い、機械のメンテナンスの頻度も違えば、やはりトヨタと同じ品質と生産性が実現できるわけではない。機械だけでなく、KAIZENとかJITとか視える化といった風土や文化が必要なのだ。
 これと同じことをDXでやっていないだろうか。どこかの会社でうまく行った、生産性が上がった、効率が良くなったというシステムを自社にも導入したとして、それだけで同じような成果が出せるのだろうか。その業務の効率が良くなったとしても、その後工程の効率が悪ければ滞留が起きないか。業務の生産性が上がってその作業に要する時間が短縮されたのに、元々いた人員がそのままいて、ただ作業が楽になっただけなら、結果としてコストは大して下がっていないのではないか。
 機械の導入だけでトヨタ生産方式は成立しないように、DXも、システムの導入だけでは成立しない。そこにデジタル活用が当たり前でありデジタルの価値を引き出すことを全員が考える風土や文化が醸成されなければならない。そのためには、DXの本質は限界費用ゼロの武器を手に入れることであり、限界費用ゼロでビジネスを拡大していくことなのだと理解し、それを全員が目指している必要がある。
 一般に、デジタル活用で注目されるのは、情報の伝達スピードが上がり、転記や二度手間が減り、自動化が進むといった点だろう。こうしたことは効果として分かりやすいし、生産性向上、効率アップに有効であり、今やっていることが速くなったりミスが減ればデジタル化の価値があったと言えなくはない。
 だが、こうしたデジタル化は、今やっている業務範囲、コスト分の中での改善にしかならない。今の業務が速くなり、今かかっているコストが減るだけだ。しかし、デジタル化、DXが本当に効果を発揮するのは、コストダウン分野ではなく、客数、件数、業務量が増えても限界費用がゼロに近いから比例してコストが上がらないところにある。限界費用とは分かりやすく言えば変動費のことだが、これが小さいから、客数や件数が増えれば増えるほど急激に収益が上がるわけだ。さらにこの時、変動費が小さくても実際には固定費がかかっている。システム投資や人件費などは固定費だ。だがその固定費も、どんどん客数が増え、件数が伸び、業務量が増えてもデジタル(自動で人手を介さず)処理ができる(スケーラビリティが高い)から、一件当たりの固定費負担が減る。そうすると最終的には、固定費も無視できるレベルになる。1億円の固定費がかかっていても、1億件の取引があれば、1取引のコストは1円であり、ほぼ無視できる、というように。
 だから、何億人、数十億人を相手にしているグローバルIT巨人は、圧倒的な収益力を誇っているわけだ。逆に言うと同じ仕組み、同じシステムを導入しても、客数や件数が少なければ収益性で負けてしまうことになる。IT巨人と同じレベルで戦う必要はないが、規模の小さい企業はここにDXの落とし穴があることを意識しておかなければならない。せっかくデジタル化し、DXを実現したかに見えても、そこでの処理量・業務量が小さければデジタルの特性を生かし切ることが出来ないのだ。
 したがって、DXを一過性のものではなく、当たり前の継続的な取組みにして行くには、デジタルの力で客数なり件数を増やすことを常に意識することをその組織の風土や文化として定着させるべきである。DXの本質は限界費用ゼロの武器を使いこなすことなのだ。これだけ言えば、単発のIT導入では足りないことはお分かりいただけただろう。一度導入して終わりではない。そこからデジタル技術やデバイスの進化にも対応しつつ、顧客価値を高める仕掛けを次々に繰り出して行かなければならない。継続的に生産性、収益性を高めて行く企業体質を作ろう。それがDXである。

2022年3月

経営の道標1月

2022年 壬寅(みずのえ とら)

 新しい時代の胎動。土の中から芽が出てくるかどうか。2年以上続いているコロナ禍に耐え忍んで来たことが、次の一手につながるかどうか。今年は、これまでの常識に囚われず、過去の延長線上で動くのではなく、新たな挑戦を始める年にしたい。コロナパンデミックで抑え込まれたパワーをプラスに活かして爆発できるかどうかが問われる。
 「メタバース」を知らない経営者は、急いでネットで情報を集め、Facebookが社名を変えた経緯を調べよう。そして、メタバースが普及し、多くの人が自分のアバターを通じて「別の世界」でも生きる時代になった時、自社のビジネスがどう変わることになるかを想像してみると良い。想像もできなかったら、自社の若手社員の中にもいるであろうゲーマーの若者に、「10年後にどうなっていると思う?」と聞いてみると良い。若者には嫌がられるだろうが、ゲームの画面を見せてもらっても良いだろう。やってみなくても良いが、こういう世界がすでに存在していることは知っておいた方が良い。
 コロナパンデミックによって強制されたテレワークで、すでに多くの企業がネット経由、パソコンやスマホの画面越しに、リアルに人とは会わずに仕事をする体験をしている。どうしてもテレワークできない企業もあるだろうし、人と人との触れ合いというリアル世界でしか味わえない体験があるのも当然だが、案外ネット経由でも問題ない、直接会わなくても進めていける、わざわざ会社に行ったりしなくてもできて良いという仕事があることにも気付いているはずだ。
 こうした時代の変化、働き方や生き方の変化、社会の在り方の変化の胎動がすでにある中で、自社はどうあるべきか、自分はどう生き、どう仕事をするべきか考えてみなければならない。急に変わることはないが、必ず変わる。インターネットが出て来た頃のことを思い出してみると良いだろう。それから30年近くが過ぎようとしているが、今やインターネットを使わずにビジネスはできないし、知らず知らずのうちにネットにアクセスしたりさせられたりしている。急には変わらなかったが、ジワジワと確実に変化し進化して来たことは間違いない。
 メタバースも急に今年や来年で世界を変えるようなことにはならないだろう。しかし、だからと言って無視して良いわけではない。苦手意識を捨て、長期的な展望を持って検討してみていただきたい。
 この一年、短期的に考えると、デジタル人材、できればデジタルネーティブ(ネットは当り前で気付いたら自分のパソコンがありましたという若者)を採用したい。いっそ出社もせずテレワークとなれば引きこもり気味のゲームオタクでもパソコンオタクでもOKだ。なんとか、外注、業者発注ではなく、自社内でデジタル化を進められる体制を作りたいところだ。
 とはいえ、世間ではDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームで、デジタル人材は引く手あまたとなっており、IT企業でも有名企業でもない普通の中堅・中小企業では採用は難しいだろう。そこでおすすめしたいのが、コンピュータプログラミングを必要とせずシステム構築を可能にするNo Code(ノーコード)ツールの活用だ。Codeとはプログラミングのことであり、No Codeとは要するにノンプログラミングでできるシステムだ。
 これなら、プログラミングができるデジタル人材ではなくてもチャレンジできる。大切なのはプログラミングではなく業務設計であり、発想の転換だ。逆に、いくらプログラミングが書けても、誰かに指示されるか設計書がないと書けないようなら、分業体制のない一般企業では使い物にならない。自社の業務を知っていて、自分で考え、創意工夫できる人材ならプログラミングなどできなくて良い。これがNo Codeだ。
 もちろん、プログラミングを書かないわけだから制約もあるが、なぜ自前のデジタル人材、自社内でのNo Coderであるべきかというと、スピードの圧倒的な違いだ。戦略の仮説検証スピードと言っても良いし、システム構築のPDCAと言っても良いが、戦略の見直しにせよシステムの見直しにせよ、いちいち外部の業者を呼び、見積をとって、仕様について打ち合わせして、そこからシステム開発して・・・とやっていては時間がかかり過ぎる。時間がかかるということはコストもかかるわけで、そんなことではこのデジタル時代を生き抜くことはできない。
 多少見た目が悪いとか、やりたくてもできない機能があるといったことがあっても、自社でカタチにしてみて、動かしてみて、どう改良すべきかが見えたら、その時点で自社では作れないシステム構築部分を外注しても良いだろう。一番ダメなのが、外部の業者に丸投げし、完全依存してしまうことだ。自社のビジネスのコア部分を外部に依存したら、自社の競争力が落ちて行くことは自明だろう。今やデジタル活用も自社のコアであり、デジタルなくしてどんなビジネスも成り立たないのだから、そのコア部分を外部に完全依存してしまっては、いずれ衰退への道を歩むことになる。
 今年は、デジタル化に自社主導で対応して行く企業とデジタル化を諦めて他社に依存する企業の二極分化が進む一年になるだろう。IT導入、システム導入、外部委託しているだけでは、デジタルを武器にできない。デジタルを武器にするためには、自前でデジタル化を進める気概を持つことだ。全てのシステムを自社で作る必要はなく、定型的、標準的な業務にはパッケージを導入すれば良い。しかし、自社ならではのビジネスモデルや業務プロセスを実現する部分は自社主導で作り込めるようにしておきたい。
 どこかで始めなければ、いつまで経ってもできるようにはならない。誰もが皆、最初は素人であり初心者である。はじめの一歩を踏み出す年、それが壬寅(みずのえ とら)である。

2022年1月

経営の道標 年度別

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