代表長尾が語る経営の道標

弊社代表長尾の経営に関するメッセージを
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2024年版 経営の道標

経営の道標11月

年賀状廃止をプラスに転じる

 付き合いのある印刷会社に聞いた話だが、年賀状の印刷受注が7割減だと言う。郵便料金の値上げもあったので、2-3割は減るだろうと思っていたのだが、なんと7割減。たまたま聞いた話だから、この印刷会社の一例に過ぎず、それが全国の実状を表しているわけではないが、予想以上に年賀状を廃止する人や企業が多そうだ。
 その例に漏れず、弊社も2025年の年賀状から廃止させていただきます。誠に恐縮ですが、この場を借りてお伝えしておきます。2025年も皆様にとって良き一年となることを心から祈っております。
 なぜ年賀状を廃止するのか。
 郵便料金の値上げももちろんだが、郵政民営化に始まる最近の郵便政策に対する抵抗である。民営化したにも関わらず、サービスが良くなるどころか、サービスレベルが下がり、料金は上がって何のメリットも感じられない。今年10月に行った値上げがあっても、黒字になるのは一時的なものでまたすぐに赤字になると言う。それでまた値上げだろう。こんな調子では、想定以上に郵便離れが起こって、赤字化も早まるのではないか。
 民営化しても結局、独占的な立場に変わりはなく、コストが上がれば値上げするだけというのでは意味がない。そもそもの民営化の是非から問い直すべきではないかと思う。立ち行かないなら立ち行かないで、さっさと行き詰って、再度公社化するなどの抜本策を取るべきだろうし、いっそ国を挙げてデジタル化を進めてペーパーレスにしてしまえば、郵便自体のニーズも減るわけで、赤字を垂れ流しながら無駄な資源を使うことも減って、世の中にプラスではないかと思う。
 年賀状という文化が廃れてしまうことには一抹のさみしさや残念さがあるが、ただ印刷された文章を送るだけでは虚礼と言われてもしかない部分もあるだろう。これまで、一筆は添えて出して来たが、たしかに形式的に出すことが目的になってしまい、一筆啓上と言いつつも、同じ言葉を繰り返し書くだけのようなことになって、実のないものになっていた反省もある。
 年賀状廃止を機に、新たな顧客や関係先とのコミュニケーション方法を考えて行きたいと思う。年賀状や暑中見舞いを出しておけばいいだろう、お歳暮やお中元を贈っておけばいいだろう、というカタチだけのものではなく、本当に意味のあるやり取りを実現したいものだ。
 年賀状廃止をカスタマーリレーションを見直す良い機会にしたい。

2024年11月

経営の道標9月

省人数経営へのシフトを急ごう

 前回7月の「加工錬成度を上げよう」で指摘した通り、10月からの最低賃金は5.1%アップして、全国平均で1,055円となった。このところ結構なアップが続いているし、今回は特にこれまで低かった県が平均以上にアップしていて、地方の中小企業はきつい状況だろう。何しろ時給が上がることで、103万、106万、130万の壁への到達が速くなって働けなくなる(働かなくなる)パート・アルバイトが増えて、人手の確保自体が厳しくなっている。
 最低賃金を上げるなら、税金や社会保険料の壁も上げないと意味がないと思うが、さらに岸田→石破の首相交代で最低賃金を2020年代中に1,500円にするという話まで出て来た。あと5年程度で、1,500円まで上げていこうと思ったら、年に8%程度アップさせ続ける必要があり、ハッキリ言って現実的な話には思えない。余程インフレが進行するなどの環境変化があれば達成するだろうが、その時には1,500円では間に合わないような物価になっているだろう。
 何が言いたいかというと、国はあてにならないということ。人口減少で働き手が減っていることは明らかなのに、働き方改革と称する「働かない改革」をしつつ副業でもっと働くことを推奨したり、最低賃金を上げて「働かない人」を増やしつつ社会保険料などを上げて可処分所得を減らしたりする一方で、移民による労働力確保を進めて日本人の給与が上がらないようなことをしつつ、投資を促進しようとしてNISAなどをアピールしながら金融所得課税を強化すると言い出したりと支離滅裂だ。
 あてにして待っていても事態は好転しそうにはない。となれば、自力で何とかするしかない。経営の道標で何度か提言していることだが、今こそ改めて「省人数経営」へのシフトを急ぐべきである。
 まずデジタル活用、DX推進は必須だ。迷っている暇はない。デジタルに置き換えられるものはどんどん置き換えて行くべきである。来年には団塊の世代の多くが現役引退するであろう「2025年の崖」もやって来る。「年配の人にはITツールは難しくて・・・」などという言い訳は通用しない。何しろその年配の人たちがいなくなるのだから。
 AIの活用も進めるべきだろう。人間が生身で行うしかない作業や接客以外は、かなりの部分でAI化できるはずである。
 AIには無理なものは、動画コンテンツ化して、2回3回4回と同じことを何度も繰り返す業務を減らして行くべきだろう。私も、これまでは毎度リアルに実施していた研修などをどんどん動画にして行っている。リアルなLIVE感がないのはさみしい気もするが、一度動画にすれば、それが蓄積されて行って会社の財産となる。私が死んでも使えるコンテンツであり、そのうちその動画をAIに学習させると、私の喋っていることを学習して、外見や表情、喋り方などもそっくりなアバターを生み出すことができるようになるはずだ。そのためにもAIが学習できるデジタルデータにしておく必要がある。
 但し、デジタル化やAI化を進める一方で、戦争や大災害でITツールが使えなくなる非常事態に備えてアナログなデータアーカイブ(バックアップ)を準備しておくことを忘れないようにしてもらいたい。デジタル化と言えばペーパーレスにするはずなのに、敢えてアナログにしろというのは矛盾しているようにも感じるだろうが、電気もない、パソコンも壊れた・・・ネットにもつながらない・・・といった非常時を想像してもらいたい。究極のデータ保護策は電気を使わないアナログだ。世界中で紛争やテロが起こり、日本も他人事ではいられないし、いつ大地震や水害が来てもおかしくない日本では非常時に備える事業継続策が必要となる。
 もう一点、省人数経営を進めて行く時に気を付けたいのが、外部の人力を使うアウトソーシングだ。これは、自社内の人力は省いているけれども、社外の人力に依存しているという点で真の「省人化」ではない。社外であろうと人手不足やコストアップの影響があることに変わりはないので、その外部企業に依存した時点で人手不足やコストアップのリスクを負うことになるので要注意だ。
 もう猶予はない。「省人数経営」へのシフトを急ごう。

2024年9月

経営の道標7月

加工錬成度を上げよう

 今年、2024年度の最低賃金が50円アップで確定したというニュースが流れた。現在の最低賃金は全国平均で1,004円だから、約5%のアップということになる。実は、昨年度も4.5%上がっている。今年の大手企業の賃上げが5%オーバーだったのに、実質賃金のマイナスが続いているということで、最低賃金の上昇率も5%未満はあり得なかったのだろう。働き手の立場では賃金は高いに越したことはないだろうが、経営側としては、上げるのはいいけれどもそれに見合う付加価値が生み出せているのか?と突っ込みたくなる。
 たまたま手許に東京都の最低賃金の10年間の推移データがあったので、ご紹介しよう。
2014年度 888円
2015年度 907円
2016年度 932円
2017年度 958円
2018年度 985円
2019年度 1,013円
2020年度 1,013円
2021年度 1,041円
2022年度 1,072円
2023年度 1,113円
そして、2024年度は50円アップとすると、1,163円
 この10年で30%ほどの上昇となっている。東京都が全国で一番高いのは当然だが、上昇率はどこもだいたい同じようなものである。人件費だけに限らず、このところ諸経費が高くなり、原材料などの原価も上がっているから、ザックリ考えても、皆さんの会社の生産性、生み出す付加価値がこの10年で30%以上アップできていないといけないだろう。貴社ではいかがだろうか。
 こうした状況の中で、最低賃金の上昇以上に給与水準を上げ、それを吸収できる値上げも行っていくべきであるということは、この経営の道標でも何度かお伝えしている。実行した会社は収益改善出来ていると思うが、まだ実行していない会社も少なくないだろう。そこで今回は、「それは分かっているけれども、上げたくても上げられないのだ」という会社のためにもう一歩踏み込んでみたいと思う。
 なぜ値上げもできず、賃金アップもできないのか。それは、儲かっていないからである。利益率が悪いとも言えるし、付加価値が低いとも言える。思い切って給与を上げ、その分採用コストを抑えてより優秀な人材を確保しつつ、値上げもしてみれば案外できるよと、私は考えているけれども、それが出来ない、踏み切れない、勇気がない、という場合には、そもそも事業の中身に問題があるから、「利益創出方程式」の値を大きくするところからやり直した方が良いだろう。
 利益創出方程式とは、「独自性 ✕ 加工錬成度 ✕ 拡販可能性 ✕ 顧客固定度」という計算式であり、付加価値を大きくし利益を生み出すためにはこの4つの項目の掛け算をしてみれば良いという方程式だ。
 それぞれの項目は何となく想像できるだろうけれども、簡単に説明しておくと、独自性とはまさにオンリーワン、ナンバーワンで似た競合がいない状態にあるかどうかを示す。模倣難易度と言っても良い。どこにでもあるような、誰でも簡単に真似が出来るようなことをしていて儲かるはずはない。
 次に、加工錬成度。これは加工度を高め、手間をかけ、知恵を絞り、川上から川下まで垂直統合し、自社が生み出す付加価値をより大きくするという項目だ。何でも外部任せで、自社で手も加えず右から左に流して行くような商売では儲かるはずがないということ。
 3つ目は、拡販可能性。これは水平展開、横展開、新用途や提供方法を刷新することで数を捌けるかどうかを表す。商品を一つひとつ手作りをしていては、加工錬成度は高まるが、拡販可能性は落ちる。この2項はトレードオフの関係になっている。
 最後は、顧客固定度。これは今やDXで顧客といかにつながるかを考えるものだと思えばいいだろう。顧客にとってなくてはならない存在になるということが出来れば、顧客生涯価値が高まり儲かるようになる。
 今回、特にお伝えしたいのは、加工錬成度である。「値上げも難しい、賃上げも出来ない」「値上げもできないのだから賃上げなんて出来るわけがない」「賃上げもできず大した人材も集まらないから当然付加価値も低くて値上げなんて到底無理」などと、賃上げや値上げに対して、二の足を踏み、やれ「円安だからだ」とか「国が最低賃金を決めるのはおかしい」とか、果ては「自民党が悪い、岸田首相がダメだからだ」などと他責の言い訳ばかりを言っている経営者とその経営する会社は、概ね、加工錬成度が低い。要するに、自社の商品やビジネスに対する研究心、探求心、創意工夫、手間を惜しまず汗をかく努力が明らかに弱いのだ。
 過去のやり方、売り方、商品では利益も出せず社員の給与も増やして上げられないのだから、もっと自社のビジネスを真剣に改善、改良、研究し、ひと手間、ふた手間をかけて少しでも付加価値(利幅)を確保する懸命な努力を経営者をはじめ全社員で行うべきである。
 10月には、最低賃金が引き上げられる。そうなれば正社員の給与にも上昇圧力がかかるだろう。人手不足倒産する前に、危機感を持って自社の利益創出方程式の値を大きくする努力をすべきである。特に、加工錬成度はその気になれば中小企業であっても取り組みやすいものだ。やれば必ず効果が出る。
 世間では人手不足倒産が増えていると言う。しかし、人手不足倒産の本当の名前は、「利益がないから給与も上げられず人も辞めて行った倒産」であることを肝に銘じよう。人口減少とか人手不足とか、自社ではどうにもできない外部環境のせいにしている限り、会社を変えることは出来ない。

2024年7月

経営の道標5月

人手不足対策としての動画活用

 人手不足、人材難が続いている。時給や給与を上げても採用が難しい、応募すらない・・・という企業もある。仮に、採用できたとしても、質の問題があり、育成も難しく、早期離職リスクもある。人がいない時には「猫の手も借りたい」と言っていた現場の人間が、いざ人が入ってみると「こんな人ならいない方がマシ」「教えるのに余計に手間がかかってムダ」などと言い出す始末。半年、一年と辛抱して、ようやく猫の手くらいにはなったかなと思った頃には「辞めます。次はもう決まっていますので〇月〇日で・・・」と一方的に伝えられて(場合によっては退職代行会社から伝えられて)ご退職。
 こんな状況で、賃上げしろだの定年を延ばせだのと国から言われたら、「もう人はいらない」「採用などしたくない」という企業が増えて当然である。
 そこでどうするか。まず大前提はDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めて「省人数経営」をすること。人がいなくても回る仕組みをどう作るかを考え、デジタルの力を使って実現すべきである。DXについては、何度も指摘して来たし、「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」や「売上増の無限ループを実現する営業DX」を読んでいただきたい。
 だが、いくらDXを進め「省人数経営」を実践しても、人をゼロにすることはできない。そもそも企業の実体は「人」であって、社長一人の会社では個人事業と変わらず企業とは言えない。AIが少々進化しようとも、現場作業や顧客接点において生身の人間の手足や判断が必要になることもまだまだ多い。もし完全にデジタル化、AI化して「無人経営」ができたら、すぐに大手企業やIT企業に真似されてアッと言う間に消滅する運命となる。「無人」ではより大きな、よりグローバルな企業の餌食となるだけである。  人はゼロにできないのだから、「省人数経営」にとどめ、採用した人材を何とか戦力化し、できれば一騎当千に仕立てるために動画活用を進めるべきである。これはDXの次のステップと考えても良いし、DXの中に内包されると考えても良い。昔は動画と言えば「ビデオテープにダビングして・・・」とかなりアナログなものだったが、近年は「DVDに焼く」ものとなり、今や完全にデジタル化されて配布コストもかけずにネット経由で簡単に見ることができるものになった。
 人も足りないのだから、採用した人材を育てる時間ももったいない。今こそ動画マニュアルを作成すべきである。研修を録画しておいて研修動画として見てもらうのも良いだろう。営業DXの一環で考えれば、顧客に自社商品を紹介したり、使い方などを教える動画も欲しい。営業人員やサポート人員も限られているのだから、それらを動画に置き換えて、省人化して行くべきである。
 YouTubeを筆頭に動画系SNSもかなりな数があり、若者を中心にテレビは見ずにネット動画を見るという人も増えている。そう考えれば、教育だけではなく採用にも動画は有効だと言えるだろう。
 教わる側も、スマートフォンを使ってスキマ時間に見たりすることも出来るし、倍速で見ればタイムパフォーマンスも上がる。2010年には4%程度だったスマートフォンの所有比率は、2015年に5割を突破し、2019年に8割、2021年には9割を超え、2024年には97%になっている。ほとんどの人がスマートフォンを持っていて、その料金体系も従量課金から固定の定額プランが主流になっており、動画を見ると通信費がバカ高くなるということも少ない。動画を使わない手はない。
 若者を中心とする活字離れ・文字離れも動画を活用すべき理由だ。若い人に限らず、今の日本人はほとんど本を読まない。読むのは専ら漫画。そんな人たちに、文字だらけのマニュアルを渡して「読んでこい」と言っても読んでもらえない。仮に読んでも理解してもらえない。活字や文字を読んで文意をつかむ力が落ちているからだ。
 中には本が好き、何冊も本を読んでいるという人もいるだろうが、その場合でも教育用のマニュアルとしては文字よりも動画が優位となる。
 文字情報には、ただ文字を追うだけでなく、そこから本人の想像力を発揮させ、その人ならではの感性や創造性を引き出すという点で意味があり、それが読書の楽しみであったりもするわけだが、たとえば業務マニュアルなどでは、文学作品ではないのだから、文字情報に基づいて、本人の勝手な想像や解釈をされては困ることになる。動画マニュアルであれば、本人の想像力や創造力に左右されず、伝えたい情報をそのまま、正しく伝えることができる。
 動画のデメリットは視聴するための時間が必要となることだが、それも1.5倍速や2倍速にしたりすることである程度は緩和できる。何よりも、伝達する情報量が圧倒的に違う。画像だけでなく音も入るわけだから、視覚だけでなく聴覚にも訴えることができる。
 図や静止画の場合には、パッと見て分かるというメリットがあるが、場所や位置を示すのには有効であっても、手順やプロセスを示すのにはやはり動画が有利である。弊社が提供している可視化経営システムでも当然文字ベースのマニュアルがあって、画面ショットなどをふんだんに使って分かりやすくしているつもりでも、なかなか読んでくれないし、読んでも理解してもらえないことが多い。そこで機能解説する動画を作って見てもらうと「分かりやすかった」となる。動画を見る時間よりもマニュアルをパッと見た方が速い気もするが、やはり動画は有効である。(YouTubeチャンネルあり)
 私自身の卑近な例で恐縮だが、動画の威力を実感していることがある。ギターの解説動画だ。恥ずかしながら何十年もギターを弾いているのだが、万年初心者で楽譜は読めないし、耳コピ(音を聴いて音階を知ること)も出来ないのでTAB譜がないとまともに弾けない。このTAB譜というのは、五線譜ならぬ6本の弦を示す六線譜になっていて、音階をどの弦のどこ(フレット)を押さえれば良いかで図示して、パッと見て分かるようになっているスグレモノなのだ。
 だが、たしかに何弦の何フレットを押さえれば良いかは分かるのだが、しかし流れが分からない。どう押さえれば良いか、指の運び方(運指)まで分かるのが動画である。音もあるので、曲に合わせて弾くには動画の方が圧倒的に分かりやすい。ということで、私はYouTubeのギター解説動画に大変お世話になっている。という実体験からも、作業手順などを教えるような場合や物事の流れを伝えるような場合、音楽や音声、効果音もあった方がより伝わりやすい内容の場合には、動画を活用すべきであると確信したわけである。
 但し、YouTubeなどのネット動画の場合には、広告表示があったり、セキュリティの問題もあり、視聴管理にも限界がある。YouTubeには限定動画という機能があって、特定のURLを知っている人しか見られないようにするといったことも可能だが、そのURLをばら撒かれると拡散してしまうことになるし、社員であれば退職後にもそれを見ることができるようになる。特に、やりたいのが、誰がどの動画をどこまで見たのかといった視聴管理だが、そこまではYouTubeでは無理である。
 視聴管理ができれば、顧客へのPRにもアフターフォローにも威力を発揮するし、社内であればe-ラーニングのような使い方ができる。視聴した後には、理解度を測るためのテスト・アンケートに答えられるようにしておくと尚良い。
 こうした動画活用によって、人手不足の採用難、育成難を乗り越え、顧客フォローの省人化を実現して生産性を上げることにチャレンジしていただきたい。生成AIで動画を作ることもできるようになれば、さらにその動画をどう活用するかが重要になるだろう。

2024年5月

経営の道標3月

値上げを恐れない経営

 大手企業を中心に賃上げが確実となり、マイナス金利も解除され、にもかかわらず円安が続き、4月から物流や建設分野での残業規制が始まってコスト増は間違いない・・・という状況の中で、今一度お伝えしなければならないのは、値上げへのチャレンジである。昨年からこの経営の道標でも値上げの必要性について触れて来たが、新年度を前に改めて値上げできる経営に変えて行くことをおすすめせざるを得ない。
 多くの日本企業は、デフレに慣れ過ぎて、インフレに対応できなくなっているように思う。クライアント企業の経営者と話していても、値上げには非常に消極的だ。如何に安く売るか、下手をすると採算割れでも顧客の要望に応えないと商売を失うのではないか、という意識が習い性になってしまっているように感じる。物価も上がらず、金利も低くて、そんな利益度外視経営でも何となくやって来ることができたこの30年程が、経営者のマインドをデフレマインドに固定させてしまっている。
 ロクに利益も出せない経営をしていては、人件費が上がり、諸経費が上がり、原材料費が上がり、金利も上がる中で事業の継続もままならなくなるだろう。「まだ何とかなっている」「今はまだ耐えられている」と言っていられる内に値上げをし、業務効率を上げ、賃上げや経費増があっても利益を出せる経営にシフトすべきである。
 ともかく、まずは値上げを検討すること。「顧客が納得しない」「値上げなど無理」と端から言い訳して思考停止しないように。諸経費も人件費も原材料等の仕入も上がっているのだから、値上げと言っても暴利を貪ろうとしているのではない。適正な利益を確保させていただくというだけのことだ。
 真剣に値上げを検討して、本当に値上げできない商品やサービスがあったとすると、そこに改善の余地があるわけだから、集中して改善するか、別の売り先を開拓するか、撤退、停止を検討しよう。いくら顧客が大事だからと言っても、採算の取れない商売など成り立つわけがないという大原則に立ち返るべきである。値上げすると言えば、顧客は必ず文句を言う。値上げが1円であれ2円であれ、値上げを喜ぶ顧客はいない。「この値上げをご理解いただけない顧客とはご縁がなかったと諦めよう」と覚悟を決めるべし。
 そして、その分、商品力アップ、サービス力アップ、他社との差別化に注力を。それを実行する現場の社員の給与も上げなければならない。「うちは中小企業だから賃上げはできないよ」などと言い訳ばかりしていては、社員もいなくなり人手不足倒産に追い込まれることになるだろう。いずれにしても行き詰るのであれば、値上げにチャレンジしてみる方が、うまく行く可能性があるだけ良いではないか。
 秋にはまた最低賃金が上がることになる。この春の賃金動向を見ていればそれはほぼ確実だろう。最低賃金が上がる前に先手を打って賃金アップすれば人の確保もできるだろうが、最低賃金アップに合わせて最低ラインの賃上げをするだけでは、新規の採用に結びつかず、既存のパート・アルバイトの賃金アップだけになって、人手不足で現場を疲弊させ、経営的にも苦しいという何も良いことがない結果となる。
 もはや、猶予はないので、値上げを恐れず、値上げできる経営を目指そう。現状のまま単に値上げするわけではない。値上げするに足る経営にシフトするのだ。そうしようと思わない限り、そうはならない。
 すでに値上げ済みで収益改善もできて、余裕も出て来たという企業やそもそも値上げなどしなくても利益は十分確保できているという企業は、ここで敢えて値下げしてみるのもまた良し。値上げしないとやっていけなくなっている弱った企業をここで一気に叩くのもまた戦略である。
 といったことを考えている競合企業があることも踏まえて、値上げをし、利益確保を急ぐべきである。値上げを恐れてはならない。デフレマインドから脱却しよう。

2024年3月

経営の道標1月

2024年 甲辰(きのえ たつ)

 いよいよ新時代の幕開け、となるかどうかの分岐点。古い体制や常識が崩壊し、新しい社会、新しい環境、新しい価値観が現れる。その新しい動きが運気を上げる「昇龍」となるか、旧体制を一気に破壊してしまう「キングギドラ」となるか。ちなみに、キングギドラが誕生したのはちょうど60年前の甲辰、1964年である。東海道新幹線が開業し、東京オリンピックが開催された年である。まさに、戦後復興期から経済成長期への分岐点だった。
 今年もオリンピックイヤーであり、米国大統領選を始めとして多くの国で選挙もあって、世界的な景気は無理矢理にでも上向きになるだろう。日本では新紙幣が発行されて、日銀の政策も変わって、新時代の始まりとなるかどうか。
 一方で、ウクライナに続いてイスラエルでも紛争が起こり、今年はそれが第五次中東戦争へと戦線拡大することもあり得るのではないか。それがさらにアジアにも飛び火すれば第三次世界大戦となるのだろうが、そこは何とかゴジラに食い止めてもらいたい。
 中東紛争の煽りを受けて石油危機のようなことが起これば、株価の暴落もあるだろう。昇龍のように株価が上がれば良いが、上がれば下がるのが株式市場というものだろう。「まだ上がるだろう」と思っている間に利益確定した方が良いように思う。
 4月1日からは、建設業、物流・運送業、医療業界で時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」の影響が出て来る。建設費の高騰は避けられず、物流はコストアップだけでなく一部運べない地域や時間帯も生じる可能性がある。ビジネスとは直接関係なさそうではあるが、医療分野での影響は結構大きいのではないか。ドクター不足で診療時間が制約を受けることになるだろう。
 そうなって来ると、業界を問わず、人材獲得のために賃上げ競争も激化するだろう。政府からの賃上げ要請によるものではなく、給与を上げないと人が採れないという切実な事情によるものだ。大手が上げれば、中小は余計に人材獲得が難しくなる。同時に最低賃金も上がることはほぼ確定だろうから、新規の採用もせず現状維持でいいという中小零細ビジネスにも影響が出るだろう。
 金利も多少なりとも上がって来るだろう。低金利で救われていた中小企業は人件費アップや諸経費増に加えて金利上昇でじわじわと首を絞められることになる。
 と、予想していると、ネガティブな内容が多くなって来たのでこの辺で止めておく。
 そこで、どうするべきなのかを考えよう。
 まずは、どんな騒乱や天変地異が起こっても持ちこたえられるように、収益性を高め、事業継続の備えをしておくべきである。元旦に能登半島で大地震があったのはたまたまとしても、天変地異は正月だからとかお盆だからとか人間の都合を考えてはくれない。
 人が生き残っていなければ話は進まないが、企業が存続するためには収益性があることが大前提となる。儲からない商売では復興しようという気にもならないだろうし、借入しても返せない。諸経費が高くなり、人件費も上がり、原材料費、仕入価格も上がっているのだから、それに見合った価格改定をしよう。もし値上げができないとしたら、そこにこそ解決すべき問題があるわけで、できないから仕方ない・・・で放置してはならない。値上げできないのには原因がある。気分は悪いだろうが冷静にそれを認めて改善すべきである。今までのやり方ではダメなのだ。現状維持では済まない現実が突きつけられているのだ。そもそも天変地異があろうとなかろうと、世界で紛争が起ころうと起こるまいと、金利が上がろうと上がるまいと、収益性を高める手を打っておくべきだったのだ。
 そんなことを言われてもどうしていいか分からない・・・それができるくらいならとっくにやっているという企業も少なくないだろう。が、本当だろうか? 本当は何をすべきか分かっているのでは? 言い訳を探してやっていないだけなのでは?
 個別企業の細かな事情を置いておくと、どんな企業でもやるべきことはまず客数を増やすことである。ディスカウントせずに客数を増やすアクションを始めよう。じっとしていて客が増えるわけがない。下請け企業で営業マンがいなくても、経営者自ら発注元を増やす努力を。客にこちらからアプローチし、ビラを配り、メールを送り、電話をかけよう。
 客数増が実現したらそれに応じて給与アップを。営業のインセンティブではなく全社員が対象だ。そして商品やサービスの改善に全員で取り組もう。同じモノを同じように売っていて、急に儲かるようになるわけがない。
 商品の改良・改善ができたら、値上げを実施。ここで「難しい」「客が逃げる」と自分たちが感じるなら、まだ商品改良が足りない。客に逃げられそうだと感じる点を改良せよ。自社の商品が負けそうだと感じるのは、理想の姿との乖離を認識しているからだろう。何をすべきか、答えは分かっているはずだ。
 要するに、収益性を高め、事業継続させるためには、やるべきこと、当り前のことを、逃げずにやることである。それもやらずに、景気が悪いだの、国がどうした、世界がどうのと批判めいたことを言うのは止めよう。
 次にやるべきことは、デジタル活用による省人化。如何に少ない人数で業務を回すかをデジタルを使う前提で考えるべきである。人を雇う時には給与を高くしてなるべく優秀な人を。その代わり人数は減らして少数精鋭に。デジタルを活用するにも人はなるべく優秀な方がいい。少ない人数で仕事を回せるなら高い給与も払える。高い給与を払うから、人手不足の時代でも人を採用できる。
 そして3番目に、自社のドメインを変えて、戦略ストーリーを見直す。自社は何屋さんか、何業か、というところから自社を変革していくことである。そうすると、将来への見通し、勝ち筋が見えてくる。災害復興でも大切なことは未来への希望が感じられることだ。目指すべき行先が分からないのに、一緒に努力しようとは思えないし、踏ん張りも効かない。経営論の教科書的には、この3番目から始めるべきだと書いてあるが、客もいない、商品もイマイチ、人もいないし低賃金でやる気もない、デジタルのデの字も分からない・・・といった状況でいくら考えても「下手の考え休むに似たり」で前向きな考えなど出てこないし、耳障りの良い綺麗事を並べ立てても何の役にも立たない。
 龍の如く、空高く舞い上がり、過去の経営(しがらみ)から脱却して新しいステージに舞い降りることができるかどうか。甲辰(きのえ たつ)は新しいものが動き出す年である。

2024年1月

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