代表長尾が語る経営の道標
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2026年版 経営の道標
2026年 丙午(ひのえ うま)
昨年に続き、年初からトランプの動きに世界中が振り回されている。ベネズエラへの奇襲と大統領夫妻の拘束はまるで映画のシーンのようだったし、グリーンランドの領有を主張し、西半球を牛耳る「ドンロー主義」を訴えたのにも驚かされた。さらには、利下げを要求して批判を続けていたFRB議長に対して刑事捜査を始めたりと、もはや法も秩序もおかまいなしの暴れっぷりだ。
日本国内では高市首相による衆院解散総選挙。予算成立を後回しにして解散・・・。と思ったら、公明党と立憲民主党が一緒になって中道改革連合という新党を作ると言う。政治信条や政策は後回しのようだが、そもそも与野党が揃って消費税減税という選挙対策最優先の公約を掲げていて、政策論議にもならないポピュリズムが露呈している。
それを見て、日本国債の長期金利は跳ね上がり、世界は日本にNOを突き付けている。インフレ対策が必要だと言いながら実質金利はマイナスのままにして、巨額の債務残高があるのに積極財政を訴え消費税減税を進めるという矛盾したことばかりしていては、さすがに日本への信認も棄損して当然だろう。
という何とも困った状態で、丙午(ひのえ うま)を迎えようとしている。
十干の丙は、「陽」や「火」を意味し「炎のように燃え広がる火」を表している。「大地から芽が出て葉が広がった状態」という意味もあり活力やエネルギーを象徴する。
十二支の午は、南の方角や太陽が1番高く昇る正午を象徴し、「真夏の火(陽・日)」や「勢いや運気が最高潮に達している状態」を表す。馬から連想される「スピード」や「勢い」もあるとされる。
ということで丙午は、火の力が重なる干支とされ、勢いの強さや激しさ、情熱を象徴し、かつては「力が強過ぎて制御できない」「丙午の年は火災が多い」などと考えられ、不吉な年ともされた。今や迷信のようなことを考える必要もないだろうが、立春の2月4日から丙午が始まる前にいろいろと懸念材料があるから、ちょっとしたことが行き過ぎ、暴走し、大事にならないようには気を付けておきたい。
丙午ということで気を付けたいのはやはり「火」だ。山火事も頻発し長期化しているが、火事には気を付けたい。特に大地震に伴う火事。そして、企業経営の道標としては、自社の経営を「火」の車にしないこと。インフレで諸経費が高騰し、原材料なども騰がっているところに、人件費増が来て、値上げが思うようにできない会社はかなり経営がきつくなると思う。借入依存度が高くて利益もカツカツなら金利上昇もじわじわと効いて来るだろう。
約30年続いたデフレに慣れ過ぎて、「まぁ前年並みでいいだろう」という緩い経営者が増えているようにも思う。これではいけない。また、「値上げなんてしたら客離れするから怖くてできない」という思い込みも強固だ。そして顧客も30年のデフレに慣れているから、値上げに対する嫌悪感が強い。だからと言って、値上げはできないと諦めてしまったらそこで試合終了。インフレには対応できないことになる。
まだ金利は実質マイナスだし、インフレ率も3%程度なのだから、今のうちに手を打っておくべきだ。金利がさらに上がり、インフレが加速したりしたら手の打ちようがなくなる。すでに新卒の初任給はかなり上がって来ているし、最低賃金も秋にはさらに5%程度上げて来るだろう。デフレ時代には待っていれば何とかなったが、インフレ時代には、待っていてはさらに高くなり損をすることになる。先手必勝。なるべく早く手を打つことが必要だ。必要な資金も早めに借りておこう。インフレは借入負担を軽くしてくれる。
値上げをし、利益を確保するための考え方は、2024年7月の経営の道標「加工錬成度を上げよう」で「利益創出方程式」を解説しているのでそちらを参考にしてもらいたい。
多少余裕のある会社は、インフレヘッジで金(Gold)の購入をしておくことをおすすめする。金(Gold)については、2025年9月の経営の道標「通貨の信用低下に備えよ」でも指摘しているので参考にしてもらいたい。わずか4カ月前に書いたことだが、そこでは金(Gold)の価格が、1トロイオンスあたり3600ドルを超え3700ドルに迫っていて、日本国内でも、1グラムあたり19000円を突破したと書いている。今(2026年1月)はどうか。
NYでは、1トロイオンス5000ドルに迫り、日本では1グラム28000円に迫っている。たった4カ月で、NYは35%、日本は47%上昇。ドル-円の為替変動があるから、細かい数字は気にする必要はないが、要するにそれだけ通貨の価値が下がっているということ。金(Gold)が騰がっているのではなく通貨が下がっているのだ。現金の円を持っているだけではこの事態を乗り切ることはできない。
金(Gold)は配当もないし、金利がつくわけでもないから、過剰投資してもいけないが、イザという時のために現金相当額の2割から3割は持っていても良いと思う。もし、通貨暴落、ドル基軸体制の崩壊といった危機が来ればさらに金(Gold)は暴騰して貴社を救ってくれるだろう。何も起こらなかったり、金(Gold)が多少下がったりしても、それはそれで現金の価値が上がっているから、保険としては悪くない。危機に備える以上は、現物で持つ方がいいが、火事に備えてそれなりの耐火金庫に入れておこう。
トランプ大統領が11月の中間選挙まではどんなことをしても好景気、株高を演出するかもしれないが、それ以降が結構危ないと思う。相場の格言に、「辰巳天井」「午尻下がり」というものがある。巳年の昨年は史上最高値ラッシュだった。まさに天井。2026年、午年は後半にかけて尻下がりとなるというのが統計的な格言。馬の勢いが止まった時、何が起こるかをよく考え、その時に備えて準備をしておくべき年。それが丙午である。
2026年1月
AI時代には営業部が購買支援部になる
毎日のようにAI関連のニュースが飛び込んで来る。実際にAIは想像を超えるスピードで進化している。今はできないこともほんの数カ月、ほんの数年先にはできるようになる。
もはやAIに対する認識を改めるべき時が来たように思う。人間の生産性を上げるための便利で賢い道具という認識から、AIが自律的に考え、必要に応じて人間を使うという認識へのシフトだ。もちろん現実には、AIは人間が導入するし、利用することを決定しているわけだし、使いたくなければ使わなければ良いのだが、人間が楽をすることばかりを考え思考停止に陥ってAIの指示通りに動くようになったら、実質的にAIに使われることになるという意味だ。
先に結論を言おう。AIがさらに普及し進化すると、営業部(営業担当者・営業マネージャー)は要らなくなり、購買支援部(「Buying Navigator」バイイング・ナビゲーター)に取って代わられることになる。私は、その現場にいるし、日本で一番この変化について語ることができる人間だと思う。
私は、紙の営業日報の時代から30年以上に渡って日本企業の営業力強化に取り組んで来た。1998年からは紙の日報で培ったノウハウを元にIT化し、SFA(営業支援システム)を自社開発し、販売もして来た。米国のセールスフォース社が設立されたのは1999年。日本に進出して来たのは2000年だ。規模は抜かされたが、こちらが先輩である。
さらに、2012年からはそのSFAをAI秘書(Sales Force Assistant)に進化させた。生成AIなどなかった時である。営業担当者の生産性を上げるために、AI秘書が自律的に営業支援を行う仕組みを提供して来た。動きの悪い案件を抽出してくれたり、放置している顧客を教えてくれたり、見込度の高い案件から順に並べてくれたり、提案すべき商品を教えてくれたり、訪問予定の顧客のホームページをチェックして更新された内容がないかをチェックして教えたり、他にも多くの支援を行う秘書機能だ。
そこに生成AIが登場し、過去の商談履歴を要約して教えてくれたり、メールの文章を作ってくれたり、録音・録画データから自動的に議事録を作成し、SFAの商談登録もできるようになるなど、さらに賢く便利になって来ている。
私は、こうした営業支援機能、秘書機能を営業担当者の雑務を減らし、商談に集中させ、商談の質を高めるために頭を使う時間を確保することを目的に開発し提供して来た。なぜなら、営業の質を高め、有効な活動をし、営業成果を挙げるためには営業担当者本人の思考(頭を使うこと)が重要だと考えるからだ。
だから、紙の日報にも、SFAにも、「次回予定」の欄を必ず用意した。その日の商談がどうだったかは覚えていたら書ける(録音・録画があれば書く必要すらない)が、次回予定、次のアクションは考えないと書けないからだ。考えないと書けないことを書かせるから考えるようになる。
次回予定を意識して商談をすると、その日の商談の落としどころが決まり、商談の進め方の主導権を握ることができる。そして、SFAに次回予定を書くためには、その日の顧客の反応や聞き出した相手の事情を書いておかないといけない。そうでなければ次回予定の意味が分からないからだ。そこで顧客の反応(情報)や競合の情報なども書くことになるから、SFAに有効なデータが蓄積される。営業担当者の活動データなど蓄積されても大した意味はないが、顧客の情報は溜まれば溜まるほど価値が出る貴重な情報になる(それによってAIも顧客情報に基づいた動きをするようになる)。
さらに、次回予定を本人が書いていると、それを見た上司がアドバイスしやすくなる。結果報告だけ書かれると「ご苦労さん」くらいしかコメントのしようもないが、「次はこういう手を打ちます」と書いてあると、「だったら早めに」とか「であればその人ではなく上司に当たろう」と自分の経験知を加えた事前アドバイスがしやすくなる。事前にアドバイスするから本人の行動が変わって成果につながる。
日々のこうした取り組みが営業担当者を成長させるし、組織として有効な顧客データの蓄積になって企業の財産を作るわけだ。
だがしかし、生成AIが登場して便利になればなるほど、現場の営業担当者からは「次にどうするべきかAIに教えてもらいたい」「どういう商品を提案すべきか教えて欲しい」「AIにメールや電話でアポをとって欲しい」「提案書や企画書、見積書はAIに作ってもらいたい」などと自分達で考えたり工夫したりすることを一切拒否するかのような要望ばかりが上がってくる。
悲しいことに、営業マネージャーや経営者からも「日報をいちいち見るのが面倒臭いから、AI が自動的にトピックを抜き出して報告するようにして欲しい」とか「コメントを入れて指導するのも大変だから、AIに自動でコメントを入れておいてもらいたい」などと言われている。
すでに技術的には可能になっているが、商談の録音や録画データがあれば、顧客の心理状態や発言の真偽も教えてくれるようになり、商談中に次に何を言うべきかを教えてくれるようなことも出来るようになる。営業担当者は自ら考えたり工夫したり、顧客の本音を探ったりする必要がなくなるわけだ。それを本人たちが望んでいる。それもかなり渇望している。私はそれを日々全国から集まるSFAのデータから把握している。悲しいことだ。
私の会社ではそれを「顧客の声」と呼び、それに基づいて提供しているシステムの改良、新機能の投入を日々行っている。AI秘書は日々進化し、より一層便利になろうとしているのだ。
さて、貴方は、すべてAI任せで自分では考えることもせず、ただAIの指示通りに動く人間のことを「営業パーソン」「営業職」「営業マン」と呼べますか?
自部門の業績や部下のマネジメントに自ら向き合うこともなく、部下指導もAI任せにしようとしている人間のことを「営業マネージャー」「営業部長」「営業責任者」と呼べますか?
私は呼べません。呼びたくもない。もちろん、営業職、営業管理職に相応しい給与も支払いたくない。ただの指示待ちの思考停止人材に高い給与を支払う必要などないからだ。
営業部を購買支援部に
もし、本人たちが自分で考えず、楽することばかりを優先させて、AIに依存するなら、営業部は廃止し、「購買支援部」と名付けた新しい部署を作って、買い手サイド、購買サイド、顧客サイドに立ったナビゲーターという位置づけにした方が良い。その職種名を「Buying Navigator」(バイイング・ナビゲーター)と呼ぶことにしよう。
AIの指示によってしか動けないような営業マンでは、どうせ大した提案もしないし、いくら隠しても顧客からは「どうせAIが考えているんだろう」、「AIが提案書を作っているに違いない」とバレてしまうだろうから、バイイング・ナビゲーターは初めから「弊社の提案はAIで行います。私はお客様とAIとの橋渡し役であり、お客様の購買を支援する係です」と宣言させれば良い。そうしておけば、商談を隠れて録音・録画したり、AIからの指示をコソコソ隠れて見る必要もなくなる。
「どうせ買うなら〇〇さんから買いたい」と言われるような営業パーソンでもなければ、AIの提案の方が「あなたはちょっと頼りないからAIが考えてくれた方がいいね」と言われて、顧客から歓迎されるだろう。
売り込まない 追いかけない 圧迫しない
購買支援部のバイイング・ナビゲーターは、顧客の立場に立って購買(お買い物)を支援するわけだから、無理に売り込んだり、朝から晩から盆から正月まで顧客を追いかけたり、売り手の都合でクロージングして圧迫したりしない。
バイイング・ナビゲーターが間違って売り込まないように、ノルマなしにする。無駄に追いかけたりしないように、残業なしにする。焦って顧客に圧をかけたりしないように、上司からのパワハラも厳禁だ。
そうしたら、採用もしやすくなり、給与水準を下げても人が採れるようになる。「バイイング・ナビゲーターは、営業ではありません。AIを使い、AIの指示に基づいて顧客に連絡したり質問に答えたりするお仕事です。商品説明などもAIや動画で行うので心配はいりません。ノルマもなく残業もありませんので安心して働けます。」と求人情報には書いておこう。これで応募増は間違いなし。
給与水準も年間100万円程度は下げてもOKだろう。営業職の給与水準は人手不足と職種の不人気でどうしても高くなりがちだが、バイイング・ナビゲーターは事務職や飲食・販売・サービス職並の給与で良いだろう。そうした業界、職種の人が喜んで転職して来てくれるのではないか。
もっと言えば、AIマニュアルや動画マニュアルなども充実してくるだろうから、場合によっては非正規社員でもバイイング・ナビゲーターとして働くことは充分可能になるだろう。
「そんなことをしたら受注率が落ちるのではないか」と心配になる人もいるかもしれないが、ご安心を。
従来の営業職よりもバイイング・ナビゲーターは2倍から3倍、場合によっては5倍、10倍の顧客数もしくは案件数を担当させることができると考えよう。AIがあれこれやってくれるし、無理に追いかけたりしないのだから充分可能になる。そうなれば、少々受注率が落ちたとしても、トータルで言えば従来の営業職よりも多くの売上・受注を挙げることもできる。それでもインセンティブなど必要なし。むしろインセンティブなど無い方が良い。
「そうは言っても新規開拓はできないのではないか」と突っ込みたくなる人もいるだろう。これもご安心を。
私がLead Creation Approachと呼んでいる新規見込創出方法を進めて行けば大丈夫。従来難しかったようなこともAIを利用することでできる範囲が広がっている。
購買側もAIを使うようになると、いずれにしても従来とはマーケティング手法も変わってくる。AIに認めてもらう、気付いてもらう仕掛けを用意しなければならない。古い営業スタイルではいずれにしても新規開拓も難しくなる時代になるだろう。
ついでに書いておくと、商品力がないのを営業が無理して売り込むのも購買AIが合理的に判断するようになったら難しくなるから、いずれにしてもゴリ押し営業は通用しなくなる。
営業組織は二極分化する
ここまでの購買支援部、バイイング・ナビゲーターの説明を読んで「そんなことにさせるものか」「まだまだ営業職がいなければモノは売れない」「こいつは何を言っているんだ」と憤慨した人もいるだろう。その心意気や良し。しっかり頭を使い、創意工夫して、AIに依存せずに(アシストレベルではAIを活用したらいいが)頑張ってもらいたい。何しろ私はそれを30年以上支援して来たのだから。
だが、残念ながら多くの営業現場の声を聞いていると、自分の頭で考え、創意工夫するよりも、AIの指示に従っていればOKで、ノルマも残業もない仕事の方がいいという人が、今の日本には多いのではないだろうか。貴方および貴社はどうだろうか。
この「経営の道標」は、経営者向けのまさに道標だから、どうせそうなるなら先手を打って先に変革すべきであるとお伝えしておきたいと思う。
私の会社では、すでに「Buying Navigator」というAI活用を前提としたAIネーティブの仕組みを、AIを使って開発している。開発手法も大きく変わってきている。時代はどんどん進んでいるのだ。
とはいえ、営業部と購買支援部では180度立ち位置が違い、意識の転換が難しいだろうし、いきなり真反対になってやっていける自信がないということもあるだろう。その場合は、従来の営業部と新設の購買支援部を併存させて、どちらが成果が出るかを実験してみてはどうだろう。今の営業部員にどちらの部署に行きたいかを聞いてみても面白いと思う。大半が「購買支援部でバイイング・ナビゲーターになる」と言い出したら、営業部を廃止する決断もできるだろう。「いやいや、まだまだ営業として頑張るぞ」と言うならそれもまた良し。
業を営むという意味で言えば、「営業」機能が企業から無くなることはない。しかし、「営業職」や「営業部」は必ずしも必要ではない。AI時代にはAI時代にふさわしい組織とビジネスモデルがあることを理解しておく必要がある。従来の業務や組織のままで、ただAIを導入してちょっと効率が上がるくらいでは勝ち残ることはできないのだ。
時代は、購買支援部、Buying Navigator(バイイング・ナビゲーター)を求めている。
2026年3月
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