自分の軍隊が前進してはいけないような状況にあるのに、前進せよと命じたり、退却してはいけないような状況にあるのを知らずに、退却せよと命じるようなリーダーは、部下を鎖でグルグル巻きにして邪魔しているようなものだと孫子は説く。現代の企業でも現場を見もせずに、過去の自分の経験だけを頼りに「ああしろ、こうしろ」と口を出す経営者、管理者がいる。これでは組織の害悪になりかねない。
　あなたは大丈夫だろうか。
　やはり、経営者、管理者が正しい意思決定を行い、タイムリーなマネジメントを行うためには、経営が「見える化」され、現場の動きが見えていなければならない。だからと言って、すべての現場を歩いて回ることは物理的に不可能だから、現場をモニタリングする仕組みが必要となる。それが「可視化経営」という経営手法であり、ＩＴを活用した「デイリーモニタリングシステム」である。
　企業を人体に喩えれば、現場の社員は、手であり足であり目であり耳である。マーケットや現場に出て、そこでの情報をキャッチしてくる。その情報を大脳に届ける「神経」が「デイリーモニタリングシステム」だ。経営者や管理者、ベテラン社員の智恵や知識や情報を活かすには、現場の情報がタイムリーに「見える化」され、それに基づく指示がまた瞬時に現場にフィードバックされる仕組み、仕掛けを作っておく必要があるのだ。
　経営の「見える化」は、決して現場の社員を監視し縛りつけるものではない。全社の智恵を有効に活用するための情報共有と情報伝達を実現するものであり、孫子の兵法に従った経営施策である。現場を見ずに経営はできない。「見える化」せよ。