連載一覧孫子兵法「経営・風林火山」

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孫子兵法「経営・風林火山」孫子兵法 経営・風林火山~営業力強化 篇~ 其の参

 今から2500年前の中国春秋時代から伝わる、最古にして最強の兵法「孫子」。 その中には、時代の変化を超え、洋の東西を越えて評価されてきた珠玉の智恵が著されている。戦争という命がけの極限状態における指南書だけに、理想論を排した具体論であり、人の本質を射抜く洞察がある。この孫子の兵法を現代の企業経営に応用するのが本稿である。
 マーケット縮小時代には、負ければ死ぬ。企業は潰れる。人口減少の21世紀を生き抜くためには、勝たなければならない。勝つためには孫子の兵法が必要だ。
 魏の曹操も、フランスのナポレオンも、日本の武田信玄も、中国の毛沢東もバイブルにしたという孫子を企業経営に活かすのだ。



絶好のタイミングを逃さない仕掛けを作れ!

 普段はビクともしない岩が激流で流されるのは、水に勢いがあるからである。水自体に岩を動かす力があるわけではない。猛禽が一撃で獲物を打ち砕くのは、絶妙なタイミングで急降下するからだ。鳥の足自体に力があるわけではない。孫子は戦いにおいて、持っている以上の力を発揮するためには、勢いとタイミングが必要だと説いた。
 営業活動においても、当然勢いとタイミングが求められる。前号で紹介したように、「積水の計」で水を満々と溜め、顧客のダムを作ったとしても、それを一気に決壊させるタイミングがズレたら、せっかくの積水が無駄になってしまう。
 たとえば、日ごろの営業活動においても、タイミングを逸した無駄な努力、訪問、提案は徒労に終わることが多いから気をつけたい。徒労に終わるだけならまだしも、間の悪いアプローチを繰り返していると、「二度と来るな」と顧客から拒否されるようなことになってしまって取り返しがつかなくなる。上司は、ただ「回れ回れ」と尻を叩くのではなく、押すべき時と引くべき時のタイミングを教えてやることだ。商談の匂いを嗅ぐと言っても良い。こうした微妙なさじ加減は、できない人間にはできないから、できる人が教えてやる必要がある。そのためには商談プロセスを共有し、誰がどの顧客に対してどの商談プロセスにいるのかを把握しておくこと。自社の標準商談プロセス、平均商談期間、平均訪問回数などを算出してみて、「物差し」を作ってみると見えなかったものも見えてくる。
 それができたら、次はシステム化するべきだ。いくら優秀な上司、営業マネージャーであっても、複数の部下の複数の案件(見込客)を、抜け・漏れなく管理することは不可能だ。標準化できるところはすべてシステム化して、アプローチすべき先を自動的にリストアップするような仕掛けを作る。その絞られたターゲットに対して、人間にしかできない微妙なさじ加減を加える。
 そうした仕掛けを作ってこそ、営業部隊を営業活動に専念させることができるし、人間にはつき物の抜けや漏れも排除し、絶妙なタイミングで人間の智恵を発揮することが可能となる。孫子の兵法を活かして、営業力を強化する仕掛け・仕組みを作るのだ。



孫子兵法 経営・風林火山 一覧

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