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長尾一洋の営業・風林火山

長尾一洋の営業・風林火山 其の壱

 今年の大河ドラマは「風林火山」。武田信玄の旗印である。この風林火山とは孫子の兵法の一節だ。孫子は、今から約2500年前の兵法家、孫武が著したとされる、最古にして最高の兵法書である。既に司馬遷(前145―前86)の史記には、兵法書として広く読まれたとの記述があり、三国志で知られる魏の曹操は、孫子の注釈書を残している。その後中国や日本のみならず、ヨーロッパにも影響を与え、ナポレオンが孫子を愛読したことも有名である。最近では米国のペンタゴンでも孫子の研究が行なわれるなど、二千年以上の長きに渡り、軍事や組織統率、人間洞察における参考書として用いられてきたことは、その内容の秀逸さを物語るものであろう。
 私は、この孫子の兵法を現代企業の営業力強化に活かし、最新のIT活用にも応用することで、1500社を超える企業の営業改革をお手伝いしてきた。
 本稿では、その孫子の兵法を現代に活かす実践術を「営業・風林火山」としてご披露しよう。


営業風林火山とは営業力強化の基本

◇孫子曰く◇
其の疾きこと風の如く、其の徐なること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。


 孫子の風林火山を現代の営業に置き換えると、「営業の速きこと風の如く、傾聴すること林の如く、提案すること火の如く、値引かざること山の如し」となる。営業においても大切なことはスピードである。コストをかけずにライバルに差を付けることができるし、忙しい顧客を射止めるにはタイミングが重要となる。そして次に聴く。相手を知らずに良い提案はできない。相手の言葉を素直に静かに聴き、木立の中にいるような心地良さを与える。いざ提案となったら、火のように熱い提案をしたい。顧客のためにという熱い思いをぶつける提案である。どうも最近は型にはまった心のこもらない営業が多い。自分の商品に自信があるなら、思い入れを持って熱く提案して欲しい。しかし、いくら顧客に対して思い入れを持つと言っても、過度な値引や過剰サービスを要求されたら山のように頑として動いてはならない。値引とは最も安易で誰でもできる販促方法であり、一度やると抜け出せなくなるアリ地獄でもある。


風林火山を実現するポイントは情勢力にあり

◇孫子曰く◇
衆を闘わしむること寡を闘わしむるが如くするは、形名是なり。


 孫子は、大軍や大組織を、少数精鋭部隊のように動かすには、旗を立てたり、鐘を鳴らしたり、太鼓を叩いて合図をするなど、情報共有と情報伝達が肝要であると説いた。これを応用したのが武田信玄の風林火山の旗印であろう。これを現代組織で考えればIT活用に他ならない。昔も今も、組織を動かすためには、情報活用力が欠かせないのだ。孫子の兵法では、情報力を重視する。営業のスピード対応も顧客を知ることも提案の内容も全ては情報力である。そしてそれがあるからこそ理不尽な値引などとは無縁の営業が実現できるのだ。私はそのための道具としてIT日報を使い、孫子の兵法を現代の営業に活かすことを可能にした。



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