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長尾一洋の営業・風林火山

長尾一洋の営業・風林火山 其の拾

 たくさんの反響をいただいた「営業・風林火山」もついに最終回。二五〇〇年前から伝わる孫子の兵法とIT活用を融合させ、いかに営業力を強化するかを述べてきたが、最後の締め括りとして、IT武装の極意について、やはり孫子の兵法で解説したいと思う。


情報収集のためのコストをケチるリーダーは「不仁」

◇孫子曰く◇
相守ること数年、以て一日の勝を争う。
而るに爵禄百金を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。


 前回、現代企業の営業担当者は孫子の時代の間諜(スパイ)に当たると指摘した。孫子はこの間諜に対する報酬をケチって、大切な情報を取り損なうのは、最も愚かなことだと説いている。敵と何年も対峙して、いよいよ決戦という日がやってくる。その日のために敵情を探らせ、敵の弱点をつかむために間諜を放つわけだが、それには当然報酬を与えなければならない。この報酬を出し惜しんで敵の情報を集められず、結局何年も準備してきた戦いに敗れるようなことになったらどうだろう。「不仁の至り」だそうだ。「駄目リーダーの典型」とでも言えばいいだろうか。
 どこの企業でも、営業担当者の人件費やその他経費を考えれば、最低でも一人当たり月に五十万円以上の支出をしている。それに対し、IT日報の活用を例に挙げると、月額利用料は約五千円である。すでに費やしている五十万円のコストの活用度を上げ成果を出すために、プラス五千円、このわずか1%の追加投資すらケチる企業がある。すでに五十万円投下しているのに、である。もしIT武装しても1%分の成果すら出せそうにない営業担当者がいたら、その人間には辞めてもらい、浮いた五十万円で残った担当者にIT武装させてやったらどうだろう。百名分の武装が可能となる。営業強化のIT投資はコストダウンではないので、ITの投資効果が測りにくい。しかし、プラスアルファの効果を狙う投資である以上、わずかな追加投資をケチって、大きなコストを浪費してしまい、孫子から「不仁の至り」と叱られないようにしたいものである。


部下に対する愛情なくして営業力強化なし

◇孫子曰く◇
卒を視ること嬰児の如し。故に之と深谿にも赴く可し。
卒を視ること愛子の如し。故に之と倶に死す可し。


 そして、IT日報で武装したら、それを活用し成果につなげなければならない。日報と言うとすぐに行動管理を思い浮かべる人がいるが、それでは上手く行かない。行動管理して欲しいと考える営業担当者はいないからだ。ところが頑張っていることは知って欲しいと思っている。苦労していることは理解して欲しいと思っている。「営業は売ってナンボ」とは言っても相手のある仕事である。頑張っていても良い結果を出せないこともある。頑張ったプロセスは認めて欲しいのだ。
 孫子は、我が子や赤ちゃんを見つめるかのように、慈愛をもって部下を見守れと説いた。これがなければ部下を厳しい戦いに突撃させることはできないと言うのだ。営業現場は、厳しい戦いの場だ。そこに向かって部下が突撃してくれるのは、上司が常に部下を見守り、部下を認め、部下に関心(部下愛)を持つからだ。これを示すためにIT日報のコメントを使う。部下の行動は管理するものではなく、見守り、アドバイスをする対象である。部下が書いた日報を読みもせず、コメントも入れないようでは、この上司のために突撃しようという部下を持つことはできないし、組織の勢いを作ることなどできない。それではせっかくのIT武装が無駄になってしまう。人の心が動いてこそITが活かされる。これが孫子の教えである。



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