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長尾一洋の営業・風林火山

長尾一洋の営業・風林火山 其の四

 ビジネスにおいて負け戦をしないためには、相手の情報をつかみ、先回りして手を打つことが必要であると前号で述べた。それを日頃の営業活動で実践するにはどうすれば良いかが、今回のテーマである。顧客や競合の動きをつかんで先手を打つ。言うのは簡単だが実行するのは難しい。私はそれを日報を「計画書」にすることによって実現してきた。たかが日報、されど日報で、既に千六百社で実施した実践ノウハウであるから信用して試して欲しいと思う。孫子の兵法を読者の会社の営業部門に定着させる仕組みが、日報を「計画書」にすることによって構築できる。


次にどうするかを常に考える習慣が重要

◇孫子曰く◇
勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、
敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。


 勝利する軍は、まず敵に勝つ段取り、道筋をつけておいてから戦闘に移り、負ける軍は、先に戦闘を開始してから、どうやって勝とうかと考えるものだ、と孫子は説く。勝敗は戦ってから決まるのではなく、事前に勝敗は決しているわけだ。勝つための準備をし、勝てるイメージを持って戦いに臨むのと、ロクに準備もせず勝算もないのに戦い始めるのとでは大きな差がある。
 企業の営業組織でもよくあることだが、売れない営業マンというのは惰性で顧客を訪問して、「何かないですか」とやっているものだ。だから「成行き数字」しか上がってこない。しかしよく売る営業マンは、必ず訪問前に商談のイメージやストーリーを持っている。ストーリーが描けているから、必要な営業ツールや資料なども事前に準備できる。よく売る営業マンは、「先に勝って後で戦う」という孫子の兵法を実践しているわけだ。
 これを営業組織全体に当てはめ、全営業マンの習慣にしてしまうには、日報を計画書にして、「次回予定」を必ず書かせるようにすると良い。通常、日報は「報告書」だと思われているから、その日の商談内容を事後報告する。戦い(商談)の後で事後報告しても、注文はもらえない。大切なことは、事前に考えることであり、それによって上司や先輩などから事前にアドバイスをもらい、戦い(商談)の精度を上げていくことなのだ。
 だから日報はIT化して「IT日報」にする。事前相談、事前アドバイスを商談前にやり取りするためだ。紙の日報や面と向かって話をしようとするとどうしても遅くなる。IT日報で次回予定を書くようにすれば、そのままそれが次のスケジュール登録となり、抜け漏れの防止もできるので一石二鳥だ。


次回予定は頭を使って考えないと書けない

 日報を計画書にするために書く次回予定は、頭を使って考えないと書けないところが良い。その日の報告は、覚えていたら書けるが、次にどうするかは頭を使わないと書けない。「頭を使え」と営業マンに指示をするより、頭を使わないと書けないことを書かせるようにする方が、頭を使うことを習慣化できる。ここが21世紀には重要である。マーケット縮小時代に営業成果を挙げるためには、頭を使うしかない。決められたことを決められた通りにやっているだけではジリ貧になるのは目に見えている。そして更に、事前に予定を書くから、それに対して事前にアドバイスができる。全員の智恵や経験知を営業マン本人に注入できるわけだ。これによって経験の浅い、営業力のない営業マンでも商談のストーリーが描けるようになるし、成功をイメージできるようになる。こうして孫子の兵法を自社の営業組織に定着させる仕組みを作ってしまえば、確実に営業の質が高まる。



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