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長尾一洋の営業・風林火山

長尾一洋の営業・風林火山 其の六

 孫子の兵法を現代に活かすIT日報は「報告書」ではなく「計画書」であり、属人的な営業を排し、営業組織力を強化することで、必ず成果を出す。これは一部上場の大企業から社員が十名もいない小企業まで、すでに千六百社以上で実践してきたノウハウであり、これを正しく運用した企業は、必ず強くなる。例外はないと断言できる。それを今回は孫子の「積水の計」によって証明してみたい。


顧客をダムにして確実な釣果を生む「釣り堀」を作る

◇孫子曰く◇
勝者の民を戦わしむるや、積水を千仭の谷に決するがごとき者は、形なり。


 孫子は、部下を戦わせる時には、水の流れをせき止めてダムを作り、それを一気に決壊させて谷底に落すような勢いを作らなければならないと説いた。「積水の計」である。この「積水の計」を現代の営業部隊に適用するには、「顧客のダム」を作る。ダムが出来れば、そこには顧客の「釣り堀」みたいなものができて、そろそろ買う頃だなという見込客がプクーッと浮き上がって来る。何年か前に競合に獲られた失注客が、「そろそろ買い替え時期ですよ」と言って顔を出す。こちらはそこに釣り糸を垂らす。当然だが、自然の海や川よりも確実に釣れる。多少面白みには欠けるが確実に釣れる。何しろ自然界は、人口減少のマーケット縮小だから、どんどん獲物が減っている。自然界の獲物が減ってしまう以上、釣り堀で確実に釣れる仕組みを作っておくべきなのだ。
 若手の営業マンも釣り堀で釣って自信をつけてから新規開拓に行けば良い。魚を釣ったこともないのに、いきなり外海で釣って来いというのは難しい。そんなことを若手営業にさせていると、すぐに辞めてしまう。ベテラン営業マンは、顧客をダムにして釣り堀に魚を供給することで、ベースの売上を作る。売上の基盤を作ることがベテラン営業マンの置き土産である。こうしていくと、失注した客までダムに貯めていくわけだから、どんどん顧客が貯まっていく。人口減少で顧客が減る時代には、常に顧客を貯めていく発想が求められる。


顧客の判断基準が分かるから確実に釣れる

◇孫子曰く◇
之を策りて得失の計を知り、之を作して動静の理を知る。


 「顧客のダム」がそう簡単に作れるのだろうかと疑問に思う人もいるだろう。作れる。「釣り堀」みたいにうまく行くのかと不信に思う人もいるだろう。うまく行く。これはIT日報が「報告書」ではなく「計画書」だから可能になる。次にどうするのかという「次回予定」を書こうと思えば、どうしてもその日の顧客の反応を書かざるを得ない。この情報が商談履歴として蓄積されると、顧客の判断基準、利害得失が把握できる。だからダムの中の顧客の判断を先につかんで手が打てる。孫子も、敵軍に揺さぶりをかけて相手の損得勘定をつかみ、敵を突付いて行動基準を把握せよと説いている。敵がどう動いているかをつかむのではなく、どう判断してどういう動きをしているのかをつかめと言うのだ。
 一回だけの商談では見えてこない顧客の判断基準も、ずっと積み重ねられることで明らかになってくる。それがITによって整理され、買い替え時期や検討時期が来た時にタイミング良くIT日報からお知らせが来て対応するから、受注確率は劇的に高まる。何しろ顧客の考えは把握されているし、前回どういう判断をしてどういう購買をしたのかをつかんでいる。ゼロから提案するよりも確実に成果が出るのは当然である。よく「顧客を囲い込む」と言うが、実際に顧客を囲い込むことなどできない。できるのは顧客の情報を蓄積することだけだ。その情報を適切に蓄積し、絶好のタイミングで活用していくための仕組みがIT日報であり、それが人口減少時代の「釣り堀」となる。孫子の「積水の計」を現代に活かせば確実に成果が出る。



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