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孫子に学ぶ売るためのIT化

孫子に学ぶ売るためのIT化 (其の八)

 SFAやCRMの運用に成功している会社は、日報入力に抵抗がない。上司がうまく部下をコントロールしているわけでも、入力することで何かインセンティブを与えているわけでもなく、自分自身のためや、会社のためでなく、「ただ顧客のために」という考えを皆が心から理解し、それが浸透しているからである。ここでも孫子の教えが生かされている。


顧客のためになすべきことを部下に徹底しよう。IT化は顧客の要請である

◇孫子曰く◇
将、弱くして厳ならず、教導明らかならずして、吏卒常無く、兵を陳ぬること縦横なるを、乱と曰う。


 管理者や経営者が部下に対して、厳しく指導できない、やるべきことを徹底させられないというのでは、組織を動かし、ライバル企業に打ち勝つことは到底できないだろう。経営者の中には、社員に遠慮して言いたいことも言えない人がいる。自分の個人的な利益のために部下を使えと言うのではない。顧客のためなのだ。顧客に対する責任を果たすために、部下にどうしてもやってもらわなければならないことがあるのに、それを言わないというのは言語道断である。ビジネスは戦いであるという認識ができていないのだろう。二代目、三代目の経営者が、古参の社員に遠慮して言うべきことを言えない、ということはよくあるし、創業経営者であっても、何かにつけて社員のせいにしたいがため、自ら指示を出さずに社員に決めさせる社長もいる。平和な時代であればいいだろうが、マーケットが縮小する人口減少の厳しい時代がやってくるのに、そんなことでは到底戦えない。
 例えば、SFAやCRMを導入しても、日報入力を徹底できない会社がある。「日報を打て」と言っても打たない社員を許してしまう会社である。顧客情報を共有し、顧客からのクレームや要望を吸い上げるのは、自社のためというより顧客のためである。顧客のニーズに全社で応えるためにやっていることであり、営業担当者個人が属人的に対応していたのでは、その社員が病気や事故にあったり、退職した時に、顧客に対して迷惑をかけることになるから取り組んでいるものでもあるのだ。それを打たない営業担当者を許すようでは、顧客に対する背任行為を見逃していることになる。


物事には必ず表裏がある。定量情報と定性情報を重ね合わせ、真実を掴むべきであろう。

◇孫子曰く◇
智者の慮は、必ず利害を雑う。利に雑うれば、而ち務めは信なる可し。害に雑うれば、而ち患いは解く可し。


 自社の商品が売れて、業績が上がっていたとしても、顧客が仕方なく買っていたとしたら決して喜べない話である。逆に商品が売れず、顧客からのクレームがあったとしても、売れない原因を把握することができ、改良することで、次にヒット商品が生まれれば、それはそれでプラス情報であると言える。やはり、目先の情勢、動向を一面的に見て表面的に判断を下すのではなく、利と害を知り、表と裏を勘案すべきである。  例えば、定量情報である販売実績データだけを見て売れ行きを判断するのは非常に難しい。ある顧客の売上が伸び、前年実績対比でも、目標対比でも実績が上回っていたとしても、すべての商品が売れているわけではないのだ。また、売上が伸びて、目標も達成しているから特に問題はないとしてしまうと、次の手が打てない。売れているなら、なぜ売れているのか、売れていないなら、なぜ売れないのかの原因を掴まなければならない。
 これを実現するのが、日報でありSFA、CRMである。顧客の現場で集めてきた定性的な情報を整理、集約することができ、定量的なデータである販売実績を見て、ある商品が売れているとなれば、その商品に対する現場の顧客の声を探してみる。定量情報は、あくまでも過去の事実しか表さない。定性情報にはそれを書く本人の主観が混じったり、言い訳が入ったりして事実に反する可能性がある。従って、その両方を重ね合わせて、その奥にある「真実」をつかむのである。



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