孫子に学ぶ売るためのIT化
孫子に学ぶ売るためのIT化 (其の七)
孫子の名前は聞いたことがあるが、本稿を読んで、実際の営業改革にどのように役立つのかがよくわかり、早速実践していると言われると、純粋にうれしい。現代のITキーワードであるSFAやCRMと、2500年前の兵法とは特に相性がよく、時代を乗り越えて営業改革のさまざまな場面で応用できることは多くの企業で実証済である。
正には奇・奇には正・相手によって柔軟に打ち手を変えることが営業の奥義
孫子曰く
凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。
故に、善く奇を出す者は窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し。
「うちのお客様」「自社の顧客」と一括りにしてみても、顧客はすべて別人、別企業であり、一つの型にはまることはない。それぞれ違う顧客に対し、いつものマニュアル通りの正攻法で攻めるだけでは通用しない。相手に合わせ、時節に合わせ、天気に合わせ、立場に合わせ、趣味に合わせて、さまざまな奇法を繰り出す必要がある。
ここで大切なことは、正とは目に見えるものであり、奇とは目に見えないものであるという解釈である。目に見える顧客の状態や、実際に言葉として発した内容によって相手を理解したつもりにならず、目には見えない相手の心や裏の事情を探り出し、把握することが必要である。顧客は心で買うか買わないかを決める。理屈だけでは決して判断しないし、良いものだから買ってくれるとも限らない。とにかく、顧客は人それぞれであって、決まったやり方、決まった手順で物事が解決すると考えてはならない。
そこで、SFA・CRMが重要になってくる。顧客との商談において大切なのは、何を話したかではなく、声にならない声を聞くことである。心の声だ。商談情報と一緒に営業マンが何を感じたかをSFAに書き残すのである。これを商談の履歴として追うと聞こえなかった声が聞こえてくる。そうした顧客情報を共有することで、相手に合った策が生み出される。
IT活用によって、動きを見破られることもなく、不必要なコストをかけないことが肝要
孫子曰く
千里を行きて労せざる者は、無人の地を行けばなり。
攻めて必ず取る者は、其の守らざる所を攻むればなり。
守りて必ず固き者は、其の攻めざる所を守ればなり。
孫子は、敵が防御していない所を攻め、敵が攻めてこない所を守り、敵にとってつかみどころのない無形となり無声となれと説く。一般には通用しないことのようにも思えるが、SFA・CRMの活用により、それが実現できるのである。
例えば、競合企業が、東京と大阪に拠点を持ち、大都市を中心に展開し、地方には出張対応と代理店活用で営業展開をしている。自社は、規模も小さく、拠点も東京一ヶ所だけである。何社か代理店はあるが、充分に活用できているとは言いがたい。
そこで、競合との直接対決を避け、地方重視の展開を図る。札幌、仙台、新潟、名古屋、京都、神戸、広島、高松、福岡に拠点を出し、地方のマーケットを競合に先んじて押さえる戦略だ。しかし、自社は、小規模、少資金力、人材薄だ。ここにITを活用するのである。各拠点は、レンタルオフィスを借りたり、マンションオフィスとして住所を確定させ、電話は東京の本社へ転送とする。SFA・CRMがあれば顧客対応も問題ない。これにより、拠点を借りる費用・電話番が不要で、コストをかけず全国の拠点網が整備できる。
金もかけず、人員も増やさず、一気に拠点展開したのちは、通信ネットワークとITを活用し、徐々にリアルな体制を作っていけば良い。各地に拠点があるということになれば、地元の代理店を開拓しやすくなる。代理店を開拓し、そのエリアでの成果が見込めそうになったら、リアルな拠点を開設し、人員も増やせば良いのである。SFA・CRMは無形、無声の戦略展開を可能にする道具でもあるのだ。
孫子に学ぶ売るためのIT化 連載一覧
- 情報共有、情報伝達が組織運営の基本
- 現場を知らずに命令を下す指揮官ほど邪魔な存在はいない
- 勝つためには準備が必要であり、一気呵成の勢いが肝要
- 属人的能力に頼った営業は組織を弱体化させる可能性を孕む
- 営業とは、相手をいい意味で欺くことである
- 顧客情報を社外漏えいする者を絶対に許してはならない
- 正には奇・奇には正・相手によって柔軟に打ち手を変えることが営業の奥義
- 顧客のためになすべきことを部下に徹底しよう。IT化は顧客の要請である
- 顧客の判断基準を読み取るべし
- 事前に「お役に立てる」確信を持った顧客を訪問するべきである
孫子兵法 参考書籍

「小さな会社こそが勝ち続ける
孫子の兵法経営戦略」
[著者]
長尾一洋

「これなら勝てる!必勝の営業術
55のポイント」
[著者]
長尾一洋
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