≪事例研究≫日雑卸売業H社の場合~Step3 ビジョン、戦略、戦術をマップ化する(その7)2011年07月12日

こんにちは、“経営の見える化”エバンジェリストの本道です。

前々回に作成したビジョンマップは、会社の将来ビジョンがこれまでの延長線上にないものとして、20年後に会社のありたい姿となすべき事を具体化したものとして作成しました。

前回は、ビジョンマップを参考に3年後の中期経営計画を戦略マップとして具体化しました。

今回は、中期経営計画を見える化した戦略マップをさらに具体化した
年度計画を戦術マップとして作成する予定で、プロジェクトメンバーが集まりました。

ここでH社のプロジェクトメンバーから以下のような質問がありました。
20年後の将来ビジョンから逆算して中期経営計画を策定し、さらにその具体化として年度方針を立案する場合、まさしく現在売り上げに貢献している取り組みに対する問題や課題は、可視化マップにどう取り組めばよいのかという点です。



わたしは、基本的を成長戦略と基盤戦略の2つに分けて考えた方がすっきりすると考えています。
会社の将来ビジョンの逆算でビジョンマップや戦略マップを『成長戦略』として検討します。
これは、過去の成功体験の積み上げというよりも、これまでに経験したことのない戦略を試行錯誤しながら取り組むようなことを意味します。
そういう意味では、これまでの取り組みの抜本的な見直しですから活動自体が《変革》ということになります。

一方でH社のプロジェクトメンバーからの質問のように、
日頃の活動から発生する問題や課題についての取り組みは、基盤戦略と位置づけることができます。
この基盤戦略は、現場のちょっとした《改善》の積み重ねで実現します。
そして、日々発生する課題に立ち向かうための基盤戦略も、
また可視化マップで作成することができるのです。

❖戦術マップを作成するための大まかな作成手順は、次の通りです。

① 現状の外部環境と内部経営資源を把握するためにSWOT分析を行います。

② SWOT分析から自社の当面の戦略を決定します。

③ 戦略の決定にあたっては、自社のビジョン、先に作成したビジョンマップ(ワークシート10)、戦略マップ(ワークシート13)と整合しているかを確認します。
決定した戦略を基に、戦術マップ(ワークシート14)を作成して行きます。

④ 収益増大戦略と生産性向上戦略の2面から財務の視点の戦略目標を決定します。

⑤ 顧客ニーズの抽出 ⇒ 顧客ニーズの集約 ⇒ 顧客ニーズの優先順位づけという3つの手順を経て、顧客の視点の戦略目標を決定します。

⑥ 顧客の視点の戦略目標を満足させるための理想の業務プロセスをプロセスマップで描き、
業務プロセスの視点の戦略目標を特定します。

⑦ 理想的な業務プロセスを日々回して行くためのボトルネックを洗い出します。
そのボトルネックがどうして発生するのか。
理想的な業務プロセスを実現するための阻害要因を検討します。

⑧ 業務プロセスの視点の戦略目標を阻害する要因に対する解決策を検討し、
その検討策を人材と変革の視点の戦略目標として人材能力開発、情報システム、
組織改革などに大別して設定します。

⑨ 各視点で洗い出した戦略目標を、並べて線で結んで見ます。財務の視点、顧客の視点、
業務プロセスの視点、人材と変革の視点の流れで、線が結べたか確認します。
また、逆からも各戦略目標がスムーズに流れるか確認します。

⑩ 先に作成したビジョンマップと戦略マップとの整合が取れているか最終確認して、
戦術マップが完成します。

これら一連の流れに沿うことでタテの因果関係のしっかりとした戦術マップが、出来上がります。

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