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トップページ > 代表長尾が語る > 経営の道標 2011年版

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経営の道標

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2012年問題にどう備えるか

 来年のことを言うと鬼が笑う、と言っていられなくなるこの時期になると、来年のことをイヤでも考えなければならない。
 EUは揺れているし、アメリカでは大統領選もあるし、TPPはどうなるかわからないし、節電もしないといけないだろうし、来年どうなるかはよく分からない。
 だが、来年から団塊の世代が65歳を迎え始めるということは間違いなく起こる現実である。団塊の世代が還暦を迎えた2007年の時は、「2007年問題だ」「ベテランがいなくなって困る」と言って大騒ぎしていたが、あれから5年で備えは万全だろうか。
 2007年の時には、辞めてもらいたい人には辞めてもらい、いないと困る、残ってもらいたいという人には再雇用や契約社員化して、うまくすれば、給与も引き下げて、同じ仕事を継続してもらえる、ということにできたりして、騒いでいた割に大きな影響はなかった企業が多かったように思う。
 働く側にとっても、年金をもらうのは65歳だし、どうせどこかで働くことになるのであれば、気心も知れたところで働いた方が楽だし、景気も悪いからヘタに退職して再就職先が見つからない状態になるリスクもある。会社から継続雇用、再雇用の話があれば渡りに船でありがたい話だったかもしれない。
 しかし、65歳を迎えるとなるとどうだろうか。年金も支給されるようになるし、5年も余計に働いたのだから、そろそろ引退させてくれ、と言う人も多いだろう。いよいよ団塊の世代が現役を引退することになり、その後に続くベテラン世代が次々に戦線離脱していくことになる。その元年が2012年となりそうだ。
 世代間のバランスが崩れていると言いながらも、大手企業であれば、それなりに各年代に人材がいて、それなりに業務が標準化されていたりするから、一部の特殊技能を持った人以外は引退しても問題ないかもしれないが、中堅・中小企業では60歳前後が一番のボリュームゾーンだったりして、世代の間に大きな穴が開いていたりするから心配だ。
 特に困るのが、営業系の人材だ。顧客情報を頭の中に溜め込んでいて属人化しているケースが多いし、いざ引き継ぎをしようと思っても、長い時間をかけた人間関係もあるから、同じようには行かない。辞められたら困るからと、仮に継続的に雇用できても、見た目が老け込んでくるとどうだろうか。社内業務であれば、見た目は関係ないが、営業職だと顧客も心配になる。
 私自身、先日やけに見た目が老け込んだ人が営業に来て、「大丈夫か?」と心配になった。聞けば、その人はとても優秀な人で、若い頃は(!)バリバリと一流の仕事をしていた人だ、と言うのだが、残念ながら見た目はそのようには見えない。病気をして一気に老け込んでしまったと言っておられたから可哀想ではあるが、やはり60歳も過ぎれば、こうした例も増えて来るだろう。
 2007年問題の騒ぎの時にも、散々言っていたことだし、あれから5年も経つのだから、もう言わなくてもいいだろう、と言いたいところだが、この5年間、ロクに備えもせず単に60歳から65歳へ5年間先送りしただけ、という企業が少なくないから、言わずにはおられない。
 営業情報、営業ナレッジ、顧客情報の引継ぎには時間がかかる。ベテラン営業が引退していくと困るな、と思ったら、今すぐ顧客情報、商談情報を溜め始めるべきだ。日々の何でもない商談でも蓄積されていると後で参考になるし、退職者が出た後に、「言った、言わない」「やった、やっていない」というトラブルで慌てることもなくなる。そして、まだベテランの前任者がいてくれる内に引継ぎを進める。その期間は各企業によって考えてもらうしかないが、既存顧客を大切にしたければ極力時間をかけて徐々に引き継いだ方がいいに決まっている。
 引き継ぐにしても、マンtoマンの属人引き継ぎにしないことが重要だ。どうせ引き継ぎ業務が必要になるのだから、この機会にオープン化、共有化する。そうしておけば、引き継いだ人間が辞める時にも困らない。一気に顧客のダムを作り、安定的かつ継続的に営業成果を上げられる仕組みを作っておきたい。これをストラテジック・セールスと呼ぶ。この仕組みは、2012年以降、どこの企業でも必要となるに違いない。
 団塊の世代がまさに社内でも団塊となっていて、その下の50代、40代あたりがポッカリ穴が開いて、30代20代に若手がポツポツいるだけ、といった企業は特に危ない。イザとなって困らないように、早めに2012年問題に備えよう。

2011年11月

利益創出方程式

 「戦略」はあるはずなのに「戦略的」ではない、「経営方針」通り頑張っているのに儲からない、思うように利益が確保できない、という企業が少なくない。そもそも経営者が「赤字でなければいい」などと考えているようでは、なかなか利益が出せないのは当然のことで、それは自業自得だからいいのだが、「戦略」と呼んでいるものが、「戦略的」ではない、利益を出したいのに出せない企業には、是非、利益創出方程式を知っておいて欲しい。
 ここでは、申し訳ないが赤字を垂れ流すのが当り前になって存続が危ぶまれているような企業は対象外としておく。赤字を続ける企業は「入り」より「出」が大きくなっているわけだから、「入り」に合わせて「出」を削るべし。以上、終わり・・・。この意味が分からなければ、税理士さんに相談を。この道標では残念ながらお役に立てない。
 だが、それ以外の多くの企業のために利益創出方程式は必ず役立つはずだ。
 とにかく、頑張れば何とかなる、と考えていては利益体質にはならない。頑張るだけでは儲からない時代なのだ。利益を出すための要因(ツボ)を押さえた努力(それがすなわち戦略的だと言えるだろうが)をしなければ、頑張っている割に儲からないということになる。そこで必要なのが利益創出方程式。



 利益創出力を高めるためには、独自性(Originality)、加工錬成度(Processing Value)、拡販可能性(Scalability)の3つのポイントを高めれば良い。ただ単に「利益が出したい」「収益性を高めたい」と考えているだけではダメで、この3つの観点で自社の経営を変えていくことを考えなければならないのだ。また、これは掛け算だから、どれか1つだけを頑張っていてもダメ。2つ頑張っていても、あと1つがダメだと答えが小さくなるから注意が必要だ。頑張っている割に成果が出ない企業には、どれかが欠けている企業が多い。3つの観点について説明してみよう。
 まず、独自性について。これは説明するまでもないかもしれないが、自社ならではのオリジナリティがあるかどうかという観点だ。他社もやっていること、他社にもあること(モノ)を、より良くしよう、より丁寧にしよう、より速くしようとするのではない。そんなことはまともな企業ならすでに考えて努力もしているわけで、当然のことである。他社がマネできない、やろうと思ってもできないことやモノがあるかどうかを考える。
 参入・模倣難易度と言い替えても良い。独自とは言えなくても結果として他社がマネできない状態になればそれでも良い。だから、ダントツNo.1になって圧倒的なシェアをとれば、結果として独自(他社がいない)状態になる、という手もある。
 どこにでもある、どこでもできるようなことを、単に一生懸命やっていても儲かるようにはならないということだ。
 次に、加工錬成度について。付加価値を高めると言っても良いし、限界利益率を高めると言っても良いし、粗利率を上げると言っても良いのだが、単なる価格設定や原価低減の問題ではないことを意識するために、加工錬成度と名づけた。自社でどれだけ加工し、練り込み、鍛錬し、熟成させたかということ。そのために、技術やノウハウ、デザイン、思考の深さ、などが求められる。
 また、自社の川上、川下へ垂直統合する形で加工度を上げることもできる。卸業が製造加工も手がけたり、小売にも取り組めば加工錬成度が高まることはお分かりだろう。こうした具体的な手間や努力、すなわち加工錬成なくして付加価値(利益率)が高まることはない。横着して儲かるようにならないかと考えているだけでは儲かるはずがない。
 そして3つ目に、拡販可能性。独自の商品(売り物)を持ち、その加工錬成度を上げることができても、数が捌けなければ儲かるようにはならない。凄腕の職人がいて、特別な一品料理を作ったとしても、それでは顧客に提供する数に限度があって、利益創出には限界があると考えれば良いだろう。だが、それをパッケージ化し、流通に載せ、ネットに載せて、流せるような仕組みを作れば、拡販可能性が高まったことになる。有名ラーメン店の(こだわりの店主が手間をかけて仕込んだ)味がカップ麺になってコンビニチェーンの店頭に並ぶことを考えると分かりやすいはずだ。人海戦術、手作業、家内作業でしかなかったものを工業化、機械化すると言っても良い。
 また、他業種、他業態、新用途への水平展開、横展開も拡販可能性を高める。代替素材に切り替えてみたり、提供方法を変えてみるというのもあり。ネットかリアルか。これは今どきは誰でも考えることだろう。所有か利用かシェアか、という視点もある。
 ここで価格設定も問われる。価格設定によって拡販可能性が変わってくる。もちろん加工錬成度とのバランスで考えなければならない。
 この3つの観点、すなわち利益創出方程式に沿って、自社のビジネスを見直してみよう。なぜ儲からないかが見えてくるかもしれないし、ここをこうすれば利益が出るという道筋が見えてくるはずだ。あとは多少のリスクを負って新しいチャレンジをしてみる。何もせずに儲かるようにはならない。利益を生み出すには方程式があるのだ。
 この方程式の値を大きくすることを考えてみると、それが戦略ストーリーになるはずだ。自社が儲かり、利益が出るイメージが湧くようになることが大切。「経営戦略」とか「営業戦略」と言葉としては「戦略」と言いながら、全く戦略的ではない場合も少なくないが、そこに戦略性を埋め込むためにも、利益創出方程式を作ってみることをおすすめする。

2011年9月

自己発働と仕事働楽

 今年3月の「経営の道標」として、東日本大震災を受けて書いた「イザという時のバックアップ」の中で、「今回の震災で、必要性を再認識したので、緊急時に社員の安否確認をもっと簡単にできるような機能を追加することにした。ワンクリックで全員に通知が行き、アクセスがあったかどうかをチェックできる仕組みを作ろうと思う。」と触れていたのだが、それがようやく形になった。社員の位置情報と画像情報をスマートフォンから吸い上げる「NIコラボNow!」である。ちょっと当初考えていたものとは違うものになったが、安否確認だけでなく、外勤時の情報伝達や在宅勤務時の位置確認なども想定して少し用途を拡げた。地震や津波による被災も大変だが、原発事故による節電問題もあって、オフィスの電力を使わない直行直帰型の営業スタイルや在宅勤務による事業継続も考えなければならなくなったのだ。困ったことではあるが、従来の仕事のやり方を見直すきっかけになれば、それはそれで新しい価値を生むものになるだろう。
 さて本題は、この「NIコラボNow!」の開発が社員の「自己発働」(自主的活動)で進んだことである。ある社員が、3月の震災後に「今、自分にできること」として業務外で始めてくれたのだが、ゴールデンウィークあたりはまさに休日返上で(といっても趣味の延長線上ということなのだが)開発してくれたようだ。最終的に会社として世に出すためには、社内の業務工数を使って品質検証したりマニュアルを作ったりしないといけないわけだが、ある程度の形ができるまでは「自己発働」でやってくれた。ありがたいことだ。きっと本人も楽しかったのではないかな、と思う。多少は私にやると宣言した手前仕方ないかな・・・という気持ちもあっただろうが、あれこれ自分なりに工夫してくれて、世に出せる形になった。自分の作品だ。
 これからの仕事は、こうした自発的、自律的な仕事にシフトしていくはずだ。頭を使ってする仕事は、いずれそうでなくてはならなくなる。自分で考えて、自分が作って、自分が売る。極端に言えばそういう仕事がいい。思い入れもあるし、自分の頑張りに対するフィードバックも分かりやすい。まさにゲーム感覚だ。そしてこれが本当のゲームではなく、リアルなビジネスにつながる仕事でもあるから、世に問うたものが、金銭的に報われることもある。趣味の延長を仕事にするわけだ。これができれば楽しいし、うまくいけば見返りもある。見返りを求めてやったのでは趣味としての楽しみが減ることになるが、見返りもあったらまぁいいな、くらいの感覚で取り組めばいい。これがただの趣味なら、楽しいだけで終わり。趣味を楽しみながら、それを仕事のレベル(対価を要求して世に問えるレベル)にまで高めれば、「仕事働楽」となる。
 おまけにそうして世に出したもの(こんかいの場合はシステム製品)が、世の中のお役に立ち、お客様から反響でもあれば最高だ。そしてもちろん、そうした自発的かつ自律的な仕事をしたという事実を評価しない会社はあるまい。周囲からも認められ、そして情意考課もプラス評価となる。いいことずくめだ。
 私はそうした仕事を「自己発働」と呼ぶ。そうした仕事の仕方をしてくれる社員を「自己発働社員」と呼ぶ。ついでに言うと自己発働研修という研修もやっているからご興味のある方は是非ご受講いただきたい。
 仕事が自分のものになれば楽しいし、持っている能力を思う存分発揮することもできる。イヤイヤやっていてはせっかくの力を出し切ることができないし、余計なストレスもかかる。進んで取り組んで、リアルな現実で成果が出れば、「仕事働楽」となって趣味か仕事か、分け隔てする必要もなくなる。
 頭を使ってする仕事は、会社にいなくてもどこでもできてしまう。通勤中も自宅にいても、風呂の中でもトイレでも、寝転がっていても、旅行に行って温泉につかっていても、頭は回転する。イヤイヤやっていては辛いばかりだ。イヤなら辞めて好きな仕事をしたらいい。どうせやるなら、寝ても覚めてもそのことを考えるくらい楽しんでやった方がいい。
 NIコンサルティングでは、社員のみなさんにイヤなら辞めろとお願いをする。やるなら「自己発働」で自発的・自律的にやってくれとお願いをする。自己発働社員ばかりになって、みんなが「仕事働楽」を楽しむようになったら、もっと世のため人のために役立つシステムやサービスを世に出せると思う。そういう経営を実践し、そのやり方をまた多くの企業の皆様にお伝えしていくのが私の「仕事働楽」である。

2011年7月

フォーカス!

 人口減少でマーケットが縮小する、少子高齢化で客数が伸びない、長引くデフレスパイラルで単価が上がらず数量が出ても売上金額が伸びない、という企業は、そのまま事業を継続していてもジリ貧になるわけだから、どうしても多角化、多品種化し、事業分野を拡大したくなる。既存マーケットが縮小するのだから、その分新規マーケットを拡げなければならない・・・と考える。
 だが、それによってフォーカスが失われる。何でも屋になろうとする。総合○○業と呼びたくなる。しかし、中途半端な事業がいくら増えても戦いには勝てない。勝てない事業が加算されていっても、売上高は増えるかもしれないが、利益率は上がらない。ヘタをすると赤字となる。ではいったい何のために多角化し、事業分野を拡げたのか、という話に逆戻りとなる。利益を減らすためだったのか?と。
 バブル崩壊後、「失われた20年」の中で、このあたりを行ったり来たりして、じわじわと業績を落としている企業が少なくない。先日訪問した企業も、バブル期(90年か91年か)が売上のピークで、その後じわじわと下がっているという話だった・・・・・。かつては結構儲かっていた会社だ。このあいだ訪問した企業は、本業は堅調だが、今後ジリ貧になることが見えているので、新規事業に果敢にチャレンジしていた。しかし、思いつきのようにあれこれ手を出して、どれも小粒で、優位性もないビジネスだった・・・・・。本業が持ちこたえている間に何とかしたいところだ。
 そこで必要なことが、フォーカス!である。それも事業分野を絞ってフォーカスするのではなく、切り口をフォーカスする。事業分野は結果として拡がってもいい。だが切り口は絞り込まなければならない。逆に言えば、切り口を絞り込んでフォーカスするから、事業分野を拡げることができるとも言える。ここで言う切り口とは、製品・商品・サービスが実現する機能や効用のことだと考えれば良い。
 たとえば、絶対に弛まないネジという切り口(弛まないという機能)にフォーカスすれば、新幹線でも橋梁でもロケットまでもマーケットを拡げることができる。普通のネジ屋さんは、自動車業界の下請け、造船業界の下請け、という具合に限定された売り先に対して、言われた通りに言われた価格で売っていて、普通のネジしか作れないから「ネジを作って50年!」とネジ一筋であることをアピールしても(ネジにフォーカスしていたとしても)、価格でしか判断してもらえない。いくらその道一筋でも、どんなネジなのか、その切り口がなければ優位性は生み出せない。優位性がなければ、事業分野、マーケット領域を拡げることはできないに決まっている。
 先日、自動車業界の下請けをしているという経営者と話をしていると、量産品の部品供給をするにはQCD(品質・価格・納期)のすべてを上げて行かなければならないのでフォーカスが難しい、という話になったので、発注元(親会社)から要求されるQCDを満たすのは当然であって、そんなことは他社だってやっているし、すべてを強化することは難しいから、たとえば「スピードを売る」と考えてみてはどうですかと教えてあげた。
 本当はもうちょっとヒネッた切り口にしたいけど、まぁタダで教えてあげるのだからこの程度でも上出来だ。「スピード」なら特許や特殊技術がなくてもその気になれば取り組めるだろう。「スピード」という切り口にフォーカスして事業を見直せば、面白い展開になる。社内のすべての業務を「スピード」で斬る!!朝礼もスピード!掃除もスピード!会議もスピード!生産ラインのスピード!は当り前だが、設計もスピード!協力会社との打ち合わせもスピード!ラインの組み換えもスピード!という具合に、あらゆるものでスピードアップに取り組んでみる。「スピード」こそが売り物であり、利益の源泉であると全社員が共通認識を持つほどになれば、きっと自動車業界だけでなく、他業界でも通用する利益の出る強い会社になるだろう。そうなってこそ売上も増やせるのであって、利益も出ないような会社が無理してマーケットを拡げようとしても大した成果は見込めない。
 孫子の兵法では、『我は専りて一と為り、敵は分かれて十と為らば、十を以て其の一を攻むるなり。』と教えてくれている。自軍は、一点に兵力を集中させ、一方の敵軍は、分散して10隊に分かれたとすると、敵の10倍の兵力(敵が自軍の10分の1の兵力)をもって攻めることができる、という教えだ。フォーカス!である。何でもやろう、とにかく顧客の要求に応えよう、と拡げ過ぎてはすべてが中途半端になる。 そこでどうフォーカスするか、というと切り口をフォーカスする。この切り口では絶対に負けない、この切り口では日本一だ、という独自の優位性を作ることを考えるべきである。どういう切り口にするかは自由なのだから、自社が日本一になれそうな切り口を作れば良い。
 安易に事業分野を拡げずに、独自の切り口で事業をフォーカスすること。マーケットが縮小する時代だからこそフォーカス!が求められている。フォーカス!するから拡げられる。

2011年5月

イザという時のバックアップ

 未曾有の大地震、大津波・・・想像を超えた大惨事に言葉を失った。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。被災され未だに避難生活をされている方には心よりお見舞い申し上げます。
 そして、想定外の原発事故。いくつものバックアップシステムを持ち、最悪の事態に備えていたはずなのに、複数の原子炉が一気に機能不全に陥るのはいかがなものか・・・。同一地点にバックアップシステムを置いていてはイザという時のバックアップにならないという反面教師となった。
 さらには、みずほ銀行のシステム障害。いくら合併を繰り返しシステム統合が継ぎ接ぎ状態であったとしても、天下のメガバンクである。システム開発には万全を期して、慎重に動かしているはずだが・・・、トラブルからの復旧に時間がかかった。
 こうした一連の出来事から、バックアップシステムの必要性を改めて感じる。イザという時に、すぐに復旧し、事業継続できる体制は整っているだろうか。今すぐ、経営情報、顧客情報等の複数拠点でのバックアップ体制を作って欲しい。恐らく、同一拠点において、データのバックアップをとっている企業は多いだろう。だが、今回のような大地震や大津波が来たらアウトである。数百キロ離れている拠点にバックアップするか、クラウド(インターネット上)のデータセンターに置くか、しておく必要がある。
 ちなみに、今回の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)において、社屋がすべて津波に流されてしまった弊社のクライアント企業があったのだが、クラウド環境に置いた顧客情報は無事だった。クラウドに置いているのだから当たり前ではあるが、もしこれが社屋内に置かれていたら、すべての情報が消失して、事業を復興しようとした際に不都合があっただろう。
 クラウドも、本当に雲の上にあるわけではなく、実際には地球上のどこかのデータセンターにあるわけだから、その場所と耐震性、堅牢性などが問われることになる。原子力発電所が停電になり、機能不全に陥ることがあるわけだから、絶対に安心ということはないかもしれないが、どの程度の対策がとられているのかは確認しておきたい。
 自社の拠点が複数あれば、拠点間でバックアップをとって、もし一ヶ所が壊滅状態になっても、バックアップ側ですぐに復旧できるようにホットスタンバイ(かウォームスタンバイ)させておきたい。弊社では東京と広島でバックアップをとっており、もし東京本社が倒壊するなり停電になってシステム停止になっても、すぐに広島で立ち上げて継続運用することができるようにしている。データのバックアップだけではダメだ。サーバーや電源などが復旧しない限り、バックアップデータがあっても使えない。すぐに代替運用ができるようなバックアップ体制をとることが必要である。
 一般企業では、生きるか死ぬかという時に、システムが停まってもそれどころではないと考えておられるかもしれないが、是非安否確認や非常時の連絡手段としても経営支援システムを活用してもらいたい。実際、弊社においても、安否確認にグループウェアが活躍した。携帯電話の通話やメール送受信ができなくても、ネットに接続し、パケット通信することは可能(ツイッターやフェースブックならつながったというのと同じ)だったから、緊急時には、グループウェアにアクセスして、状況報告するようにしておけば、社員の安否確認もスムーズに行える。
 今回の震災で、必要性を再認識したので、緊急時に社員の安否確認をもっと簡単にできるような機能を追加することにした。ワンクリックで全員に通知が行き、アクセスがあったかどうかをチェックできる仕組みを作ろうと思う。システム開発メンバーの一人が、「今、自分にできること」として通常業務のプラスアルファで作ると申し出てくれたのだ。
 生きるか死ぬかの危機を乗り切ったら、今度は事業継続のための顧客情報だ。これがなければ連絡もできない。紙の台帳では津波や火事に耐えられないし、複製もリアルタイムにできない。やはりデータでバックアップしておく必要がある。もし、社員が行方不明になったり出社できないような状態になったり、最悪の場合亡くなったとしても、顧客対応がきちんとできるように、日頃から顧客情報を共有しておくのは当然であり顧客への責務だ。
 「自社の一番の財産は顧客」「顧客があってこその自社」と言うのであれば、イザという時に最も大切な財産を失わないように備えておくべきである。後悔先に立たず。備えあれば憂いなし。今回の未曾有の大災害を教訓にしてプラスに活かそう。また地震は来るし、津波もあるだろう。火事もあれば、インフルエンザのパンデミックもある。想定を超えたことが実際に起こったのだから、想定の範囲を広げて準備しておかなければならない。
 複数拠点がないか、あっても距離があまり離れていない企業のために、クラウドへのデータバックアップサービスを開始してみようと思う。単なるデータバックアップだけでなく、イザという時には、そこで復旧運用できるようにする。(よし、すぐに検討しよう。)  今回の大惨事を無駄にせず、そこから学んだこと、気付いたことをプラスに活かそう。生き残った人や企業が、小さなことでも「自分にできること」「自社にできること」を積み上げていけば、新しい価値を生み出すこともできるのではないか。お亡くなりになられた方や流された家や車は、元には戻らないが、だからと言って落ち込んでばかりはいられない。次にもまたどこかで地震や津波が起こるかも知れないのだから。明日は我が身。決して他人事ではない。備えは万全にしておきたい。
 経営上のバックアップとしては、社長、経営陣が行方不明もしくは亡くなった場合にどうするかも考えておこう。あまり良い気分ではないが、そういう現実もある。経営者のバックアップを考えることは、マネジメントレベルを上げるキッカケになるはずだ。いつ社長や役員がいなくなってもいいように、創業の理念、使命感を共有し、マネジメントスタイルを組織型に変えて行く。金の管理は当然だが、資本関係も整理して相続にも備えておく必要がある。こちらはシステムのようにササッとホットスタンバイというわけには行かないかもしれないが、最悪な事態を想定してバックアップ構築を進めておこう。
 企業とは、人の寿命を超えて存続する存在である。とすれば、企業経営とは、人の寿命を超えて企業を存続させる活動でなければならない。「俺がいなくなったらこの会社は終わりだ」と言っていては、経営者失格となる。イザという時に備えよう。

2011年3月

2011年 辛卯(かのと う)

 今年は、辛卯の年。辛苦・辛酸の中から抑圧されていたエネルギーが噴き出て来て、広がり生い茂る。これまでの矛盾や対立が昇華してプラスに転じるかどうか。新しいものを生む勢いをどの方向に導くかが問われる。
 米国の景気回復や新興国の需要増で、景気の全体観は浮上してくるのだろうが、果たして内需はどうか。大学を出ても6割程度しか就職できない。高齢化も進む。2012年からは団塊の世代が65歳の年金受給年齢に突入し、現役世代の急減が始まろうとしている。決して楽観はできないだろう。
 だが、それを傍観しているわけにはいかない。日本の人口減少や高齢化は年々確実に進んで行く。先送りは衰退への一歩を意味する。政治家のせいにはできない個別企業の経営においては、早めに手を打って行くことが求められる。
 その第一歩は、自社の企業評価をしてみることだろう。今、自社を売却するとしたらいくらで売れるのか、査定してみる。専門家に頼むと高くつくから、まずは顧問税理士さんに相談してみるといいだろう。もちろん、NIコンサルティングに相談してもらってもいい。事業を清算するよりは、売却した方が取り分は多いし、雇用や取引関係の維持などが可能になる。
 企業評価(査定)して、「安い!」と思ったら、企業価値を高める経営を意識してみよう。「安い」と感じるのは、それなりに自社の事業に魅力があると思っている証拠だから、その魅力(ネタ)を第三者が認めるように経営していけばいい。
 企業評価(査定)してみて、「思ったより高いな」と思ったら、今のうちに売却を考えた方がいい。どうせ売るなら早い内だ。困ってからでは売るに売れない。社員の雇用維持を考えても、余力のある内に手を打った方がいい。
 そして、次に自社の持続可能性を考えてみよう。さて、あと何年経営を維持できるか。人口減少でマーケットは縮小する。社長も社員も毎年1つは歳をとる。団塊の世代が経営を支えているような会社であれば、彼らがあと何年頑張ってくれるか考えてみよう。団塊の世代が自社の業務を支えていて、その下の世代が育っていない、というような会社であれば、持続可能性は低いと判断せざるを得ない。あと何年持続できるかをシビアに考えて、必要な手を打とう。
 日本の企業経営者の平均年齢はおよそ60歳。事業承継がうまくできなければ、あと20年で限界が来る。その時、残された従業員はどうするか。経営者の年齢や後継者の有無も重要なポイントだ。
 企業が素晴らしいのは、人間の寿命を超えて半永久的に持続できることだ。人には寿命があるが、企業には寿命はないのだ。家業として、子や孫につなぐことだけでなく、企業を長く存続させることを考えてみて欲しい。そうすると、自社の事業を存続、発展させてくれる企業に売却することも当然のことのように思えるし、逆に必要な企業を買収して両者の持続可能性を高めることもあっていい。
 現状をシビアに見たり、自社を支えてくれている社員がいなくなることや、自分がこの世からいなくなることを考えるのは、辛いことかもしれないが、辛いからこそ、今やるべきことへのエネルギーも噴き出してくるはずだ。辛いことから目を背けていては、新たな飛躍はない。そういう一年になると考えよう。

2011年1月

 

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