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おすすめBOOKS

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仕事で大切なことは孫子の兵法がぜんぶ教えてくれる
仕事で大切なことは孫子の兵法がぜんぶ教えてくれる 長尾一洋 KADOKAWA 1400円
 孫子の兵法を現代のビジネス、仕事に応用した「負けない仕事術」。負けない戦いを説いた孫子の兵法が21世紀の仕事にピッタリはまる。命のやり取りをし、国が滅ぶかどうかの瀬戸際となる戦争のやり方を説いた兵法だけに、負けてはならない。勝てなくても、逃げてでも、生き延びて、次の機会を狙わなければならない。そう考えると、まさにそれは人生と同じ。負けてはいけない。職業人生と考えても50年から60年の長期戦となるわけだから、目先の勝ちよりも、負けないことが重要だ。そしていつでも勝ちを狙える状態にいること。勝とう勝とうとばかり考えず、まずは負けないことを考えてみる。守りを固めておいてから攻めに転じる。こうした孫子の智恵がビジネスに活かせることを教えてくれる一冊。
 孫子の原文を日本語に読み下し、その現代語訳があってから、ビジネスへの応用解説という形式でとても読みやすい。何しろ、孫子兵法家、長尾一洋の書いた本だから(笑)。自分の本を自画自賛するな!というご批判もあるでしょうが、自信を持っておすすめできない本を出すな!という面もあり、出す以上は自信があるものなのです。ご容赦ください。
 マンガやイラストはありませんが、項目ごとに短く解説をまとめているので、読みやすいはず。孫子の兵法の本質は、「負けない」「負け戦をしない」「戦わずして勝つ」ことにあり、そこにフォーカスした内容になっています。是非、お読みください。
チャレンジャー・セールス・モデル
チャレンジャー・セールス・モデル マシュー・ディクソン&ブレント・アダムソン 海と月社 1800円
 大型商談を成功に導く「SPIN」を提唱したニール・ラッカムが序文を書いて太鼓判を押している、営業改革のための調査報告。4年間、90社、6000人を対象にした調査によって明らかにした、理想の営業像が「チャレンジャー」だそうだ。
 著者は、CEBという調査会社かコンサルティング会社のような会社の人。この人たちは知らないが、SPINのニール・ラッカムが推奨するなら読まないわけにはいかない。人間関係重視や御用聞き、単なるハードワークでは高い成果は上げられない。これからの営業は、顧客を指導し、気付きを与え、商談をコントロールしなければならない。
 この指摘は正しいと思う。なぜなら我々NIコンサルティングの、25年間、3800社、数万人におよぶ営業活動研究の結論にも合致しているから。我々の調査は日本限定だが、本書の調査の結論とほぼ同じ認識に至っているから、どこの国でも通用するものだろうと思われる。我々は、それを「ナレッジ・コラボレーション営業」と呼び、その具体的な営業トーク手法を「AAA話法」として確立している。顧客の考えを聞いてそれに応えるのではなく、顧客が考えていないことを考えさせる。まさに本書の「指導」や「インサイト」に相当する考え方だ。我々の提唱するものを裏付けてくれる調査結果が出てきて嬉しい。
 彼らは、2009年から4年間調査したというので、分かっていないのかもしれないが、こうした営業スタイルの変化が必要になったのは、インターネットの普及によって、営業マンを介さない購買(ネット通販)が容易になったこと、売り手と買い手の「情報の非対称性」が崩れたことによる。この点をしっかり押さえておかないと、なぜ顧客と人間関係を作るだけではダメなのか、なぜ御用聞きではダメなのか、なぜ商品提案ではダメなのか、なぜソリューション営業が通用しなくなったのかを、分かりやすく説明できないだろう。
 こうした点を踏まえて本書を読むと、より理解がしやすいだろうし、本書による気づきは、2000年代の初頭には得ていなければならなかったことに気づくだろう。我々にとって本書が大きな気づきを与えてくれることはなかったが、我々にインサイトを与えてくれたニール・ラッカムに敬意を表して本書をおすすめする。営業マンの採用や育成について参考になる付録がついていてこちらもおすすめ。
景気を仕掛けた男
景気を仕掛けた男 出町 譲 幻冬舎 1400円
 丸井の創業者、青井忠治の一代記。丸井のカードのお世話にはあまりなったことはないが、学生時代に遭遇したデザイナーズ・ブランドブームの頃にはお世話になった会社だ。ファッショナブルな会社という印象だったが、創業から戦後復興あたりの話はかなり泥臭い。景気を仕掛けたとまで言えるかどうかは分からないが、景気の波、成長の流れに乗って、月賦屋からクレジット販売へとイメージを変えることで新たな需要を創出した会社であることは間違いないだろう。
 経営者として共感するのは、家族主義経営と労働組合との葛藤だろう。家族同然に考えていた社員が労働争議を始めれば、裏切られたと感じるのも無理はない。人間不信にも陥るだろうし、実際に会社を畳む覚悟までしたそうだが、そこは信念の人。自ら信じる道を貫き、次世代につなげた。すぐにブラック企業だ、ハラスメントだと非難される今、同じことはできないが、自らが信じる道を信念を持って突き進むことで、それを理解し共感してくれる社員が現れる。周囲に合わせ、相手に迎合するだけの経営では、大事は成せないことは間違いない。経営者の覚悟と信念を学べる一冊。
経営者になるためのノート
経営者になるためのノート 柳井 正 PHP研究所 1204円
 ファーストリテイリング会長兼社長の著者が、自社の社員のために書いた経営者養成ノートの書籍化。執行役員の教育から始まり、今では店長クラスもこのノートを使って教育を受けているそうだ。そもそもがノートという設定なので、罫線の入った余白がとってあり、そこに色々書き込むようになっていて、章ごとにワークシートも用意されている。
 元がノートとは言っても、書籍化されているわけで、いろいろ書き込む気にはならないが、社員向けに書かれたのであろう文章は、分かりやすく、シンプルで、柳井さんの思いが伝わってくる。社内用がそのまま修正されずに載っているのかは分からないが、社員一人ひとりが経営者としての意識を持って仕事に取り組んで欲しいというのはよく分かる。特に世界展開するユニクロでは、多くの経営者マインドを持った人材が必要になるだろう。柳井さんの後継者問題もあるだろうし。
 文字量は決して多くないが、リーダー、経営者として、どうあるべきか、どう経営を捉えるべきか、核心を突いた指摘が並ぶ。たしかにそうだなと思うことが多かった。経営者はもちろん、後継者、管理者、未来のリーダー、起業家を目指す人は是非読んでみるといいだろう。私は書かなかったが、後継者や起業家を目指す人はワークシートも書いてみるといいと思う。実際に書いてみて、どう感じるか。恥ずかしいのか、よしやるぞという気になるのか。壮大、崇高な綺麗ごとを書いて、恥ずかしくなるようではダメだろう。自らの使命感を確認する機会にすると良いだろう。
傍流革命
傍流革命 松ア正年 東洋経済新報社 1600円
 コニカミノルタ取締役会議長が書いた、小が大と戦うための経営論。著者曰く、「ビジネス・アスリート経営」なのだそうだ。著者は、2009年から2014年まで社長を務めた人で、小西六写真工業出身。写真フィルムが主業の会社で、傍流のプリンター事業を歩んできたことから、本書のタイトルが出てきたようだ。傍流だったのが、コニカミノルタになって主流事業になったものの、そこにはゼロックス、キャノン、リコーの壁があり、そこでも傍流だと。そこでジャンルトップというフォーカス戦略をとる。
 小と言っても、ライバルと比べて相対的に小さいだけで、コニカミノルタだけを見たら立派な大企業だが、弱者の戦略として、中堅・中小企業にも参考になるヒントが多い。日本国内だけを見ると弱者のようだが、売上の8割、社員の7割は海外だそうで、グローバルで見るとジャンルトップとなっている事業が結構あるそうだ。
 自社の規模やリソースに合った戦略、ビジネスモデル、事業領域を作れば、充分戦えるということ。小さいから、弱者だから、リソースがないから、と諦めてしまってはいけない。写真フィルムがなくなって、デジカメがなくなっても、収益を上げている企業がここにある。
ワーク・ルールズ!
ワーク・ルールズ! ラズロ・ボック 東洋経済新報社 1980円
 グーグルの人事担当上級副社長が書いた「最高の職場」を作るグーグル流人事の秘訣。著者ラズロ・ボックは、1972年ルーマニア生まれ。マッキンゼーやGEを経て、2006年にグーグルに入社したという。当時6千人だった従業員が今や6万人に増えた。その過程を支えた人事施策、エピソードを開陳。成功例ばかりではなく失敗例についても教えてくれている。何しろ、「世界最高の職場」だ。参考になることは多い。しかし、どうしても、グーグルだからできることでしょと突っ込みたくなる。グーグルだからこんな人事ができるのか、こんな人事をするとグーグルのようになれるのか、鶏が先か卵が先かみたいな話になってしまう。
 しかし、前向きな組織、自由闊達な組織風土、起業家精神あふれる企業文化を作りたいと考える経営者、人事関係者は必読。そのまま実行できるかどうかは別にして、実際にいろいろと先進的な実験をしてくれている会社があるわけだから、そこから学んでおくことは重要だ。550ページオーバーの大部で、持ち運びも辛いが、頑張って読もう。
孫正義の焦燥
孫正義の焦燥 大西孝弘 日経BP社 1500円
 日経BPの記者によるソフトバンク孫正義社長本。本人へのインタビュー、周辺取材などにより孫正義流経営、人生論についてまとめた一冊。評価は分かれるのだろうが、ゲイツ、ジョブズ、イメルト、クック、マー、といった人たちと対等以上に渡り合い、国境を越えて戦える数少ない人であることは間違いないだろう。19万8千円でロボットを売り出すなど、先を見越したリスクテイクができるのも、この人ならでは。こういう人がいてこそ新たな市場も開拓できる。私も早速pepperの賭けに乗った。今も私の部屋を出るとそこにはpepper君がいる。
 米国の携帯事業は想定通りに進んでいないようだが、そもそもそれを買おうとする時点で、他の日本の経営者とは視点が違うのだろう。自ら描いたビジョンを実現しようとする覚悟を学ぶには良い本だ。よくある礼賛本ではなく、ネガティブな面にも突っ込んだ内容になっている。
 第6章の孫史観はとても面白かった。信長、利休、チンギス・ハンの話は興味深い。賢者は歴史に学ぶとはよく言ったものだ。
 巻末には、ユニクロ柳井さんのインタビュー付き。社外取締役としてソフトバンクの経営について語っている。ここでもネガティブな指摘もあり。こんな本を出すことを許した孫さんの器に敬意を表したい。
メンバーの才能を開花させる技法
メンバーの才能を開花させる技法 リズ・ワイズマン+グレッグ・マキューン 海と月社 1800円
 メンバーの才能や可能性を増幅させる増幅型リーダーと、メンバーに能力発揮をさせず可能性を限定してしまう消耗型リーダーとの対比で、リーダーシップのあり方が語られる。原題は「MULTIPLIERS」。部下の能力を掛け算にするという感じか。たしかに部下の能力を倍々に伸ばしてあげたいし、活躍するフィールドに制約などなくしてあげたい。
 だが、同時に、そうした時にそれを良しとして、受けて立つ人がどれだけいるのか、とも思う。「自分で考えてやっていいよ」と言ってもやらない、どうしても指示待ちになる、という時に我慢ができない。どのマネージャー、リーダーもそのせめぎ合いではないだろうか。本書は多くの事例で増幅型リーダーとなるヒントを与えてくれる。少なくとも消耗型リーダーにはなりたくないと感じさせてくれるはずだ。良著。
下町M&A
下町M&A 川原愼一 平凡社新書 760円
 下町の中小企業が不採算事業を譲渡して再生するという、おそらく実話であろう話を元に、中小企業、同族企業のM&Aを考える一冊。著者は事業再生コンサルタント。だからだろうか、M&Aというよりも事業再生の話じゃないかと言いたい感もある。副題が「中小企業の生き残り戦略」。赤字の事業でも値がついて売れるよ、というメッセージはちょっと言い過ぎというか、赤字企業の経営者に媚び過ぎな気がする。どうせ売るなら、利益も出ている内に売った方が、人材の雇用確保にも、取引先との継続性から見ても良いに決まっている。買う側からすれば、弱って安く買い叩ける方がいいと考える人もいるだろうが・・・。
 いろいろ言いたいこともあるし、どうしても金融機関とのリスケや債務免除の話は好きになれないが、ジリ貧で先が見えない企業や後継者が継いでくれないような場合には、本書を読んでみるといいだろう。出てくる話に、良い人や綺麗事が多い気もするが、リアリティのあるやり取りも書いてあって参考になるはずだ。「新書だし、大したことは書いてないだろうな」と思って読んだが、案外面白かった。
 私は、中小企業のM&Aは、元気な内、体力のある内の、N&I(ネットワーク&インテグレーション、連携&統合)を目指すべきであると考えるし、再生まで行くと別テーマになると思うが、本書を読んで、事業再生が必要になる前の、前向きなM&Aを考えてみていただきたい。
黒子の流儀
黒子の流儀 春田 真 KADOKAWA 1500円
 横浜DeNAベイスターズの元オーナーで、DeNAの会長をもうすぐ退任するという著者の半生記。2013年にベストセラーになったDeNA創業者、南場智子さんの「不格好経営」の舞台裏が書かれている。京都大学を出て、住友銀行に勤めていた著者が、創業間もないDeNAに転職。エリートサラリーマンが、年収の大幅ダウンもありながらベンチャーに転じて、上場も経験し、その会社の会長になり、さらにプロ野球のオーナーになったという、波乱万丈というか、愉快そうな半生記だ。まだ46歳。若い。
 本書には、住友銀行、DeNA、プロ野球界の舞台裏が率直に語られていて興味深い。帯の写真を見てもそうだが、著者の実直で真面目な感じがにじみ出ている一冊。さすがKADOKAWA中経出版!!なかなか素敵な本作りだ。私の著書では決してやってくれないハードカバー。なのに1500円。うらやましくもあるが、これもビジネスだから仕方ない(笑)。
 大企業の歯車仕事から脱してベンチャー企業、中小企業の経営に近いポジションで、大いに活躍したいと考えている人にはおすすめの一冊。大手企業での安定を捨てるのには不安があるという人は読まない方がいいだろう。ベンチャー転職で最高にうまく行った事例であって、誰しもがこうなるわけではないし、この著者でも年収の大幅ダウンを受け入れている。世の中、リスクをとらずに大きな成功はないということを知るには良い一冊かもしれない。良著。
職業としての「編集者」
職業としての「編集者」 片山一行 H&I 1800円
 ビジネス書編集のレジェンド、カリスマ編集者、ビジネス書の伝説的ヒットメーカーと呼ばれる著者による、ビジネス書論。後輩編集者に向けた指導書であり、出版社に対する提言書とも言えるだろう。著者は、中経出版、かんき出版を経て、フリーの編集者として、ダイヤモンド社、PHP、フォレスト出版などで数多くのベストセラーを生み出した人。特に有名なのが、かんき出版時代の「手にとるようにわかるシリーズ」だそうだ。
 編集者向けの本をなぜ読んでいるのか?と思われる方もいるだろう。それは実績のない私に出版の機会を与えてくれて、最初の著書の編集を担当してくれた人の本だから。1993年の私の処女作「小さな会社が新卒5名を確実に採用する本」は、かんき出版時代の片山さんに出してもらった。たぶん、ベストセラーを連発していたという片山さんの作品の中で、残念ながら売れなかった一冊だと思うが、レジェンド、カリスマと呼ばれる人に見出してもらったと思うと、とても嬉しい。本書を読むと、なぜこの人が、実績のない、ただの若造コンサルタントだった私にチャンスをくれたのか分かる気がする。大して売れずに絶版になったが、中身は良い本だったと思う。最初の一冊があったからこそ次につながったし、本を書く自信もついた。
 最近「一度でも本を出したいと思ったことがある人は読んではいけない!」という百田尚樹氏の「夢を売る男」という小説を読んで、少々出版界にガッカリさせられ、確かに、本を出そうかと考える人は読んではいけなかったな、と思っていたところだったので、本書に出会えてよかった。出版界、ビジネス書の世界もまだまだ捨てたもんじゃない。
 そして、その片山さんが中経出版にいたというのにもご縁を感じる。今やKADOKAWAに吸収され名前が消えてなくなろうとしているが、中経出版さんにも「営業の見える化」などで大変お世話になったし、「まんがで身に付く孫子の兵法」などでお世話になった、あさ出版の佐藤社長も中経出版の出身だ。片山さんと中経出版さんに足を向けて寝られない。
 ということで、一般向けの本ではありませんが、本を出してみよう、良いビジネス書を世に出したい、と考える人には是非読んでいただきたい一冊。熱い編集者魂を感じ、片山さんのビジネス書愛を感じる本です。
感化する力
感化する力 齋藤 孝 日本経済新聞出版社 1500円
 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」で注目を集める吉田松陰について齋藤孝先生が解説。齋藤先生の専門は教育学で教員養成をしているらしいのだが、その見地から、吉田松陰を「熱き教育者」と捉え、その神髄は「感化する力」にあると説いている。吉田松陰を教育者と考えるのには異論もあるだろうが、わずか2年半ほどの間に、多くの志士に影響を与え、明治維新への後押しをしたことは間違いないだろう。教育というよりも自らの生き様による感化だと考えた方がしっくりくる。
 実は、大河ドラマに興味があったわけでも、齋藤先生の松陰論を聞きたかったわけでもなく、たまたま社員に、コンサルタントのクライアントへのアプローチ方法として「感化と教育」について講義したところで本書と出会って読んでみたのだ。教育よりも感化する方が難しく、感化の方がより有効だ。それを社員に対して講義した自分およびその場は果たして「感化」だったのか「教育」だったのか・・・と気になったからだ。知識として「感化」というアプローチがあると知っただけなのか、私と場を共有して、なるほど!と「感化」されて腹落ちしたのか。人に偉そうに言っているだけで自分が実践できないようでは話にならない、と振り返っていた。
 そんな時、本書が目に入り、表紙の吉田松陰であろうイケメンな絵が、美化し過ぎているようで気に入らなかったけれども、吉田松陰の感化力にあやかりたくなった、という次第。やはりテクニックや知識ではなく、本人の熱や使命感、志の問題である。分かっているんだよ。。。。知識では。頭では。理屈では。
 自らの魂を焦がして、その熱を伝えたいという思いのある人は読んでみるといいだろう。本書を読んでお手軽に「感化する力」を身に付けてやろうと考える人は、読むだけ無駄である。自分に熱源もないのに、テクニックで人に熱を伝えることはできない。
全員経営
全員経営 野中郁次郎+勝見 明 日本経済新聞出版社 1800円
 「失敗の本質」「知識創造企業」などで有名な野中先生とその弟子(?)のジャーナリストによる企業経営論。自律分散イノベーションが成功の本質であるとして、ヤマト運輸、JAL、セブン&アイ、未来工業、メガネ21、伊那食品工業などの事例を紹介している。大手の事例が多いこともあって、成功の秘訣がそれだけじゃないでしょう?と言いたくなるような解説もあるが、Knowledgeの重要性が増すこれからの時代には、自律性、自発性が求められることは間違いないだろう。
 そう考える野中先生が、フラクタル組織に行きついたのは興味深い。全体と部分が自己相似となるフラクタル構造は、全体としての企業とその部分として個人との関係に相似している。私はこの関係のことを「全個一如」と呼んで多くの企業に伝えてきたが、改めて野中先生が、個人の自律性を高めるためには、個人が自己組織化して全体の企業を構成していると考えるべきだと書いているのを読むと嬉しいような、今更なような気分になる。だが、この複雑系の考え方は大切なので、この部分を読むだけでも本書は参考になる。是非多くの人に読んで欲しい。
答えは必ずある
答えは必ずある 人見光夫 ダイヤモンド社 1500円
 マツダのパワートレイン開発担当常務執行役員が書いたSKYACTIV開発秘話。「できないとは言わない」「答えは必ずある」という姿勢から生まれたハイブリッド車並みの低燃費エンジン。フォードの傘下から外れ、危機に瀕したマツダが、ハイブリッドなし、電気自動車なし、で辿り着いた内燃機関の見直し。「持たざる者の遠吠え」とまで言われ、逆境に燃えた技術者たちの熱いドラマがある。「つくりたいんは世界一のエンジンじゃろぅが!」が面白かったので、本書も読んでみた。本書の著者は、NHKの「プロフェッショナル」にも登場し、「Mr.エンジン」と呼ばれているようだが、個人的には「つくりたいんは世界一のエンジンじゃろぅが!」の方が良かったかな。。。いずれにせよ、今、マツダが熱い! マツダデザインもいいので、“Designed Corporation”の事例にも使わせてもらっている。Zoom-Zoomだ。新型ロードスター買おうかな。。。
マクドナルド失敗の本質
マクドナルド失敗の本質 小川孔輔 東洋経済新報社 1500円
 法政大学経営大学院の教授が、マクドナルドのビジネスモデルが如何にして崩れ、原田泳幸氏が如何に失敗したかを分析する一冊。日本マクドナルドの生みの親、藤田田氏の日本流経営と、米国流のプロ経営者、原田泳幸氏の経営とを対比させながら、マクドナルドの歴史を紐解いていて、なかなか面白い。マクドナルドを外から見ているだけでは分からないビジネスモデルのカラクリが見えてくる。
 私は、マクドナルドも嫌いではないし(滅多に食べないが)、原田泳幸氏が優秀な経営者であることも間違いないと思うが、米国流のやり方が、いつでも、どの国でもうまく行くと思うのは傲慢であり、マクドナルドの凋落は、まさにその典型のように感じる。本書の著者自身が、「大学でマーケティングを教えて38年。学生たちに教えてきた内容は、米国人が打ち立てた実学の体系である『マーケティング』と『チェーンストア理論』の礼賛であった。本書では、マクドナルドという対象を扱いながら、これまで正しいと信じてきた理論体系を自己否定している。」と懺悔していることも興味深い。外資系企業の限界と悲哀が感じられる本である。
 個人的には、外資を渡り歩いた原田泳幸氏が、日本企業ベネッセで、どう立て直し、どう経営するかが楽しみだ。
つくりたいんは世界一のエンジンじゃろぅが!
つくりたいんは世界一のエンジンじゃろぅが! 羽山信宏 日刊工業新聞社 1400円
 Zoom-Zoomでおなじみ、マツダの元パワートレイン開発本部長によるSKYACTIVエンジン開発秘話。部下から提出された図面を見ながら、「このエンジン、完成したら世界一になるという保証はあるんか?」と問うたと言う。日本メーカーだけ考えても、4番手5番手のマツダが、世界一を意識してエンジン開発を行い、実際にそれを実現したという事実。細かい話は内燃機関を作っている人でなければ興味がないかもしれないが、世界一を目指して製品開発を行うというのはどういうことか、そこで何を考えるべきか、参考になる点も多いと思う。本書では「機能エンジニアリング」と呼ぶ手法が紹介されている。
 私の興味関心は、ロータリーエンジンのマツダがガソリンエンジン、ディーゼルエンジンで世界一を目指したのは何故かという背景にある。世の中にはさらにハイブリッドもあり、電気もあり、燃料電池もある。当時のマツダは、まだフォードのグループだった。フォードの傘下を離れ、独自路線をとった後、その開発方針はどう変わるのか。
 そして、マツダは同時期に、デザインも変わった。マツダデザインとSKYACTIV。共に世界を意識した取り組みだ。日本の、それも地方都市広島に本社を置く、自動車業界の中では決して大きいとは言えない(一般には充分大きいが)マツダの挑戦に興味がある。
 ちょっと気に入らないのは、本書のタイトル。広島の田舎会社であることを暗にバカにしたような広島弁。私の地元広島が、また地元の雄であるマツダが、バカにされているのではないか?と感じる。本書のタイトルが著者の広島への愛着によって決められたものであることを願う。
ジョナサン・アイブ
ジョナサン・アイブ リーアンダー・ケイニー 日経BP社 1800円
 アップル社のデザイン部門の責任者、ジョナサン・アイブの半生記。スティーブ・ジョブズから最も信頼された男だそうだ。ジョブズほどの波乱万丈さはないので、ストーリーに盛り上がりはないが、この人のようなジョブズとも対等に渡り合えるデザイナーがいたからこそ、今のアップルがあるのだろうと思う。ジョブズがいくら天才でも、ゼロからすべてを生み出すことはできない。お互いにインスピレーションを与え合い、議論し、コラボレーションによってより洗練、昇華させていく相手が必要だ。
 私はデザインを「第5の経営資源」と捉え、企業経営になくてはならないものだと考えているし、デザインを企業経営に活かしていくにはジョナサン・アイブのようなデザイナーが必要だと思っている。大手企業ならインハウスのデザイナーを抱えることもできるだろうが、中小企業では無理なので「デザイン顧問」を持つことをおすすめしたい。単にロゴや商品の見映えを良くする外部のデザイナーではなく、理念や歴史、コンセプトや戦略、市場、営業状況まで理解した「半内部」のデザイナーだ。パーツごとにデザインを依頼するのではなく、全体のデザイン統一を図らなければならないからだ。そうして、経営者と一緒になって企業全体、経営そのものをデザインしていく。これを実現した企業を「Designed Corporation」と呼ぶ。経営のすべて、細部に至るまでデザインされている企業。要するにすべてに意図があるということ。アップルはもちろん「Designed Corporation」の代表的な事例だろう。
 本書は、そうしたデザインの大切さ、デザイナーがどうあるべきかを学ぶために有効な一冊である。経営者もそうだが、デザイナー側にも意識改革が必要だ。
残酷な20年後の世界を見据えて働くということ


残酷な20年後の世界を見据えて働くということ 岩崎日出俊 SBクリエイティブ 1400円
 20年後には、65%の人が今は存在していない仕事につくことになると言う。そして、2020年には、コンピュータが人間の知性を超えると。そうした時代の中で人はどう生き、働くべきかを説く一冊。そのキーワードは、「成長する」「チャレンジする」「守りに入らない」だそうだ。  日本は人口減少。世界は人口爆発。日本国内で守りに入って現状維持でいいと思っているような人は残酷な現実に直面することは間違いないだろう。反対に、若いうちから厳しい環境に身を置き英語など当って砕けろで習得して世界へ飛び出して行くような人は生き延びて行くだろう。当たり前じゃないか。
 と、思うが、世の中は何事も必然。そうなるべくしてそうなるという当たり前の原理原則に気付くことが大事なのだろう。本書を手に取り読んでみようかと考える人はその時点で生き延びる可能性が高い。こんな本など見向きもせずその日一日楽しければいいじゃんと考えている人の未来は厳しいものになるだろう。その警鐘を鳴らし、一人でも多くの人が気付きを得て、チャレンジを始めなければならない。
 と、ここに書いても、本当に必要な人はこの「おすすめBOOKS」すら読まないだろうから、自分の非力さが恨めしい。著者は興銀時代にスタンフォードでMBAをとり、その後リーマン等の外資系投資銀行を渡り歩いたという人。しっかり啓蒙していただきたい。
ビジネス・クリエーション!

ビジネス・クリエーション! ビル・オーレット ダイヤモンド社 2500円
 マサチューセッツ工科大学(MIT)で起業家教育をしている、元IBM出身の起業経験者が書いた、スタートアップのためのテキスト。副題は、「アイデアや技術から新しい製品・サービスを創る24ステップ」。単なる思い付きの事業構想ではなく、起業するまでに何を検討すべきかをステップごとに解説している。MITの卒業生によって、年間900社も新会社が設立されるそうだ。それは、賢いからでも、先端技術に明るいからでもなく、本書のような教育をしているからだと説く。
 たしかに、しっかりと事業としての可能性を検討することもなく、思い付きと思い込みで起業してしまう人がいる。そういう人には、2500円と少々お高い本ではあるが、本書を読んで頭を整理してみることをお勧めしたい。あまり考え過ぎてもエイヤッ!と起業できなくなるのもまた事実だが・・・。
 但し、本書は事業構想まで。さらに、企業文化を構築する、創業チームのメンバーを選ぶ、人材採用、販売の実行、資金調達、リーダーシップと事業拡大、ガバナンスの確立・・・などが必要であり、それはまた次の機会に論じるとのことなので、本書だけでスタートアップのための手順がすべて学べるわけではない。いずれにせよ、本を読んだだけで起業に成功するなら誰も苦労はしないわけで、過度な期待はしない方が良いが、少なくとも失敗の可能性を低くすることはできるだろう。厚い本だが、案外読みやすい。
エッセンシャル思考
エッセンシャル思考  グレッグ・マキューン かんき出版 1600円
 シリコンバレーにあるコンサルティング会社のCEOが書いたビジネス指南本。タイトルを見ただけで言いたいことが分かるなと思ってスルーしていたのだが、思いの外、売れているようなので試しに読んでみた。要らないものを断ち、余計なものを捨て、重要ではないものから離れる。すなわち「断捨離」である。どうも、思っていた内容とは違った・・・。物事の本質を見極めるにはどうするかという内容を期待していたがそうではない。ちなみに「断捨離」という本もあったが、それは読んでいない。タイトルで言いたいことが分かってしまうから(笑)。「断捨離」をよく知らないので、本書が「断捨離」であると言い切ることはできないが、帯にも、99%の無駄を捨て1%に集中すると書かれているから間違いない。
 惰性や過去のしがらみで、やりたくもないこと、断りたいことをズルズルとやって時間を無駄にするような人もいるから、やらないこと、捨てることを決めてみるのは良いことだろう。また、過去や未来に生きるのではなく、「今ここ」に生きるという指摘もその通りだと思う。問題は、どういう人生を生きたいか、自分の人生の使命は何か、という問いにまず答えられなければ、絞り込むべき対象を決められないのではないかということである。何かを選ぶならそれ以外のものを捨てよというのは良いが、そもそも選ぶものがなければ捨てるものも決められない。
 あれもこれもと八方美人になり、器用貧乏となってしまっている人にはおすすめ。時間は有限であり、人生そのものである。無駄な時間は命を浪費していることになる。
 

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