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USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? |
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森岡 毅 角川書店 1400円 | ||
書名にまったく興味が持てず読む気もなかったのだが、NHKの「プロフェッショナル」で著者が紹介されていたのを見て本書も読んでみた。テーマパークに行くこともないし、映画ファンということもないので、USJがどうなっているのか大して興味はなかったが、当初の第三セクターは2004年に破綻し、経営再建されたそうだ。大阪市民の血税が結局米国資本のものになってしまったのではないか?と余計な心配をしたくなるが、本書とは関係ないのでそれは置いておこう。 著者は、その再建中の2010年にマーケティングの責任者として入社した人。元々はP&Gでヘアケア商品のマーケティングをやっていたそうだ。データを客観的に分析して、やると決めたらリスクをとって成果を出すために全力を尽くす。当たり前と言えば当たり前のことだが、多くの企業が、本当にここまで考え、必死になって努力をしているのか、振り返ってみるには良い本だろう。USJでも既成概念、過去の成功体験によって新しいチャレンジを受け入れない風土があったと言う。その事例の一つが本書のタイトル、ジェットコースターを後ろ向きに走らせるというアイデア。金もかけずに集客を伸ばすためには、そこまで考えないといけなかったと著者は訴える。単なる思い付きだろうと批評するのは簡単なことだが、ちょっとやってダメならすぐに諦めてしまう多くの人には見習うべき点があるはずだ。かく言う私も、まだまだ考えが足りないな、努力が足りないなと反省させられた。 特殊な業態であり、一定の規模と知名度もある上での話なので、中堅・中小企業などがそのまま使える事例はないが、その取り組み姿勢や、成果を出す執念などは大いに参考になるだろう。 |
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社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話 |
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小林佳徳 宝島社 1200円 | ||
STORYS.JPというサイトで殿堂入りしたという、ライブドアの元社員が書いたライブドアストーリー。著者はライブドアで開発業務をしたり、出戻りして人事をしたりしていたという人。現在はベネッセコーポレーション勤務。ホリエモンを通じて語られることの多いライブドアの中がどうなっていたのかを社員目線で見せてくれる。ライブドアが日本のインターネットビジネスにどれだけ貢献したのかはいまいちピンと来ないが、OBは各方面で活躍しており、今話題のLINEを手掛ける主要メンバーも元ライブドアだったりするそうだ。 ライブドアがハチャメチャな会社であったことは予想した通りだったが、本書は思いのほか仕事への情熱に満ちた熱い本だった。自分が良かれと思う仕事、自分が楽しいと思える商品やサービスを、自ら進んで楽しんで行く仕事働楽がこれからの働き方になるのだろうと感じさせてくれる一冊。ホリエモンのスキャンダラスな内容は一切書かれていませんので、そこに興味がある方は期待を裏切られるでしょう。 |
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経営はデザインそのものである |
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博報堂コンサルティング+HAKUHODO DESIGN ダイヤモンド社 1800円 | ||
タイトルがいい。経営をデザインという切り口で考えてみる。または、企業そのものをデザインすると考えてみる。デザインと言っても、いわゆるデザイン、意匠、グラフィックデザインとは違う。従来のデザインが、図案化であり空間配置でありカラーリングであったとすると、私が考えるデザインは少し違う。「構想を具象化し可視化して相手に何らかの意図や価値を伝えること」と定義したいのだ。これらは似て非なるものである。経営をデザインすると考えれば、「企業の構想を具象化し可視化し、その意図や価値を社内外に向けて伝えること」となる。常日頃、そう考えているので、この本のタイトルに惹かれた。 やっぱりタイトルがいい。そうなんだよ。まさにそういうことなんだよ。しかし「経営はデザインそのものである」とまで言い切ったか・・・。やるなぁ〜と思った。経営をデザインするのではなく、経営はデザインそのものなのだ、と。一体どんな提言があるのか、とワクワクして読んでみた。 うーん、期待が大き過ぎたか・・・。従来のデザインと何がどう違うのか、イマイチよく分からない。デザインの大切さや、経営にデザインを持ち込むべきであり、それによってビジョンを見える化し、共感を得なければならないという話はいいのだが、ではそれをどうすればできるのか、ちょっと分からない。事例もあるが、経営がデザインそのものである、と言うなら、その事例企業の経営はデザインでなければならないのだろうが、従来のロゴやマークをデザインしてブランド化していこうという話との違いが見つけられない。 だが、タイトルがいい。タイトルからインスピレーションを得て欲しい。経営をデザインしよう。企業をデザインしよう。それが経営なのだ。経営とはデザインだ。 |
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孫子に経営を読む |
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伊丹敬之 日本経済新聞出版社 1600円 | ||
東京理科大学大学院イノベーション研究科教授、一橋大学名誉教授である著名な経営学者が孫子の兵法を企業経営目線で斬ったというので、孫子を企業経営に活かす「孫子兵法家」を名乗っている者としては読まないわけにはいかない。 Amazonを見たら、「従来の『孫子』の解説書は、軍事研究者、中国研究者が当たることが多く、戦略を熟知した経営学者が真正面から解説することはありませんでした。本邦初の対決をお楽しみください。」と書いてある。おいおい、確かに軍事関係や中国文学者が多いのは間違いないが、俺を忘れてないか?と少々腹立たしかったが、まぁ経営学者ではないので、許すことにした。 読んでみると、孫子の一節がタイトルに来て、孫子の読み下しがあり、経営的な解説という作り。おいおい、これはどっかで見たカタチだぞ。そう「孫子の兵法 経営戦略」と同じじゃないか!と思ったが、参考文献にちゃんと書いてあったので、許すことにした。 やはり孫子をただ現代語訳するのではなく、そこから経営への応用解釈をするのが良いと思う。孫子の言っていることは、現代の経営に当てはめるとこう考えたらいいよというサジェストがあるから生きた兵法になる。これぞ兵法家。ただちょっと高名な先生だけにご自分でも書かれているが、少々小難しい解釈なので、私の「孫子の兵法 経営戦略」の方が分かりやすいとは思うが・・・(笑)。 古典としての孫子を研究したい人は、本書でも訳本として使われている金谷治先生の岩波文庫や浅野裕一先生の講談社学術文庫を読むと良いだろう。兵学者を目指すのではなく、兵法家として孫子を実践に活かしたいなら、本書や拙著を読むことをおすすめする。 |
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「好き嫌い」と経営 |
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楠木 建 東洋経済新報社 1600円 | ||
「ストーリーとしての経営戦略」で有名になった一橋大学大学院教授による経営者インタビュー集。有名経営者に「好き嫌い」を聞いていく。経営者は「良し悪し」で動くのではなく、「好き嫌い」で動いていると言う。そして、「事業コンセプトの創造は、論理演繹的なプロセスというよりも、その経営者の直観やセンスとしか言いようがないものにかかっている」とする。確かにその通りだと思うし、結果的にそうなっているというよりも、むしろそうするべきだと私は考える。特に中小企業はそれでいい。それがいい。 ということで、本書を読んでみたわけだが、出てくる会社は上場企業ばかりで、そうした経営者の「好き嫌い」の話はなかなか聞けない内容でおもしろいが、それが戦略にどうつながっているのかまでの落とし込みはなし。登場するのは、日本電産、ファーストリテイリング、ローソン、サイバーエージェント、スタートトゥデイなどなど。創業者が多いので、上場していても好き嫌いでいいと思うが、その後はどうかな。好き嫌いからスタートして、好き嫌いを超越したビジネスモデルを確立するというストーリーが欲しい。 とはいえ、経営者、後継者、起業家志望の人は読んでみるといいだろう。経営者のキャラクターが経営に影響しているのも参考になるだろうし、何より、好き嫌いでビジネスを考えていいという気付きを得て欲しい。大したシェアもない中小企業は、好きこそものの上手なれで、好きなことを真剣にやる経営がいい。それを戦略的にやるにはどうするかは、本書を読むだけでは分からないかもしれないので、その場合は、ご相談ください。 |
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熱く生きる |
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天野 篤 セブン&アイ出版 1600円 | ||
天皇陛下の心臓手術の執刀をしたことで有名になった順天堂大学の心臓血管外科医が語った「医師道」の本。土井英司さんのビジネスブックマラソンで紹介されていたので、読んでみた。タイトルに違わず熱い本だ。プロとして、「医師道」を究める求道者として、どうあるべきかをシビアに語った本である。だが、きっとビジネスブックマラソンで紹介されていなければ読んでいなかっただろう。土井さんに感謝。 毎日かなりの数の手術をこなし、さらに緊急の手術などに備えて病院に泊まり込んでいるという。自宅に帰るのは土曜日の夜。そして月曜日からまた病院。世のため、人のために生きているから、当然のようにそうしているのだそうだ。熱い。さらに「自己犠牲の気持ちを持たなければ、信用されることはない」「思いがあれば、3倍の努力は当たり前だ」「受けた恩に報いるために、最低20年は世の中のために働く」などの熱いメッセージが溢れている。 私は、「医療に限らず、自分で選んだ仕事をしていて自分の行っていることに『飽きる』という感覚があるとしたら、中途半端に妥協していることにほかならない。」という指摘に己を振り返ることができた。「このぐらいでいいだろう」という甘えがあるのではないかとさらに突っ込まれた。そして先生は「自分の行っている仕事につねに完璧な完成度を目指し、そこをひたすら求めていく限り、飽きるということはまったくない。」と言い切る。長くやっていて、ちょっと結果も出たりすると、ついもういいだろう、これくらいのものだろう、俺も頑張っているという自己満足に陥りがちだ。これには気を付けたい。 プロフェッショナルな仕事をしたいと考えている人は必読。それ以外の人にはちょっと火傷しそうなほど熱い。良著。 |
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競争優位の終焉 |
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リタ・マグレイス 日本経済新聞出版社 2000円 | ||
ポーターの競争戦略はもはや通用しないという指摘。著者はコロンビア大学ビジネススクール教授。「持続する競争優位」を確立することは無理だから、「一時的な競争優位」に基づいて、どういう経営をすべきかを考えよという内容である。そもそも本書でも指摘しているが、競争戦略とは業界内での相対的な競争であり優位性を競う概念であって、今現在、業界の垣根を越えた複雑な競争が当たり前になっている時代に不適合である。それが持続するか一時的なものかというよりも、どのような優位性を構築するのかより重要である。その点について本書に有効な指摘がないのは残念だ。 変化が激しく、業界の枠組みも固定的ではないために、必要となるのが、「仮説指向型思考」だと言う。こちらが著者の元々の主張のようだ。これには同意する。変化が当たり前、常態化するならば、如何なる戦略も経営計画も仮説に過ぎない。日々の経営は仮説検証だ。これを我々は「可視化経営」というコンセプトで提示してきた。そして、それを実践するには、「耳が痛い情報をあえて求める」ことが大切だと本書では説く。これもまさに「現場の見える化」であって、トップマネジメントが現場の情報をバイアスなしで「見る」ことが仮説検証を実行する鍵である。本の帯に、C.クリステンセンが「競争について、私が読んだ本の中でも珠玉の一冊だ」とコメントしていたので、過大な期待をして読んだが、それほどでもなかった。だが、未だに業界、同業種の中での相対的競争意識から抜け出せない経営者が多いから、そういう人には是非読んでもらいたい。 |
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営業のゲーム化で業績を上げる |
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長尾一洋 + 清永健一 実務教育出版 1800円 | ||
ゲームの仕組みや人を惹きつける力をゲーム以外のことに応用する「ゲーミフィケーション」を、営業という仕事に適用した解説本。一年前に、「仕事のゲーム化でやる気モードに変える」という本も同著者で出していて、シリーズの2作目。前作の仕事全般のゲーム化から、本書では営業にフォーカスしたものとなっている。より具体性が増し、実際にゲームを進める手順や事例も細かく書かれている。 営業はきつい、営業は大変な仕事だ、とネガティブに捉えられることの多い仕事だけに、ゲーム化することの効用は大きい。もちろん営業は業績に直結する部分であり、企業経営全体を考えても、まず取り組んでみるべき領域だろう。だから、本書のサブタイトルは「成果に直結するゲーミフィケーションの実践ノウハウ」となっている。 何を隠そう、本書は、私と弊社の清永の共著であり、良い本に決まっている。営業ならではの課題をクリアするゲームの事例は、数多くの営業現場を見てきた我々だからこそ書ける内容だと自負している。そして、もちろんゲーム化だけですべてが解決するわけではないから、その限界の超え方も解説した。営業マンにもっとやる気を持ってほしい、もっと前向きに営業に取り組んでほしい、顧客に喜ばれる営業という仕事をもっと楽しんでほしいと願う、すべての企業におすすめである。経営者、営業責任者必読。営業マネージャーさんも是非。 |
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会社が消えた日 |
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大西康之 日経BP社 1600円 | ||
2011年3月に上場廃止となり、10万人の社員を抱えていたにも関わらず消滅してしまった三洋電機。なぜそうなってしまったのか、日経ビジネスの記者として、日経新聞の編集委員として三洋電機を見てきた著者が明らかにする。創業家親子、救世主として登場したジャーナリスト、翻弄される社員。登場する人たちはそれぞれ頑張っていて、可哀想にもなるが、会社がつぶれるにはそれ相応の原因があるということがよく分かる。そして、元々兄弟会社でもあるパナソニックが、救済したはずなのに、9千人を残して、売却してしまう。すっかり悪者だが、パナソニックの側に立てば、それもまたビジネスの必然。甘いことを言っていては自社も危ない。 企業とそこで働く人たちは一心同体。つぶれる原因を作るのも人なら、成長のエンジンとなるのもまた人である。勤めていた会社が行き詰まれば、決して他人事では済まず、その会社にいた事実は消せない。会社が消えて以降の日々を紹介されている人も何人かいるが、ここで著者の取材を受けているような人はまだ恵まれた人だろう。取材の声もかからず、取材されてもとても人には言えないような事情を抱えている人が実際には多いのではないか。 本書を読んで、社員も経営者も危機感を共有できるといいと思う。10万人もの社員を抱えていた会社も消えてなくなる。それでは自社はどうなのか?と一緒になって考えてみるといい。勤めていた会社が倒産して良いことになった人はいない。経営者はもちろん、社員もだ。 |
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日本の存亡は「孫子」にあり |
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太田文雄 致知出版社 1800円 | ||
元防衛庁情報本部長が書いた孫子兵法解説書。いかにして中国の横暴を孫子の兵法で食い止めるかが書かれている。サブタイトルは、「中国は孫子の兵法で日本を征服しようとしている。日本も孫子に学び、これに打ち勝たねばならない。」というもの。防衛大学を出た軍事の専門家だけに、孫子の解説も生々しくて興味深い。また事例も古代の戦史や日本の戦国時代の話ばかりでなく、現代の中国と日本の間の紛争などが取り上げられていてリアルである。改めて、2500年前から伝わる孫子の兵法が現代の国や組織の在り方にも応用できるのだということを実感できる。 孫子の解説も全文ではないが、とてもわかりやすく書かれている。中国文学の先生による古典解釈とはちょっと違った趣きの孫子兵法である。ただ、剣道のたとえも出てくるのだが、剣道をやっていない人にはちょっと伝わりにくいように感じた。 国同士は今もなお国益のため、領土拡張のために、せめぎ合っているのだということを知るためにも参考になるだろう。中国とどう戦うかは別にして、これからの日本を考えていくためには孫子の兵法くらいは知っていなければならない。孫子を学ぼう。 |
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ツイッター創業物語 |
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ニック・ビルトン 日本経済新聞出版社 1800円 | ||
ニューヨーク・タイムズの記者が書いた、ツイッター創業にまつわるストーリー。かなり細かい取材と長時間のインタビューによって、創業メンバーたちの心情や言動が明らかにされている。ブログの延長線上のちょっとした思い付きが世界中を席巻するSNSの代表格になった。しかしそのプロセスは、よくこんな経営で成長できたなと思うほどの杜撰さだ。さすがアメリカ。ベンチャーをサポートする仕組みや資金供給がある。今になって思えば、ツイッターをやり始めた頃は、サーバーが止まることが多かった。それはなぜかが本書を読めば分かる。 サブタイトルは「金と権力、友情、そして裏切り」。仲間を裏切り、裏でコソコソと画策する辺りも細かく書かれていて、野次馬根性は満たされるが、気分の良い話ではない。 だが、私はTwitterを利用している。余計な機能がなくて、シンプルなのがいい。米国政府の情報開示要求にも抵抗しているらしい。この体制に迎合しない点もオタクっぽいが、腹の括り具合がベンチャーらしくていい。つぶさないように頑張って欲しいものだ。 起業家志望の人は是非読んでみるといいだろう。社員の集め方や組織を大きくする時にぶつかる人の裏切りなどを予行演習できる。Twitterユーザーでもない、普通の会社の人にはあまり参考になりそうにないので、他を読みましょう。 |
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暴露 スノーデンが私に託したファイル |
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グレン・グリーンウォルド 新潮社 1700円 | ||
アメリカの国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)の機密情報をリークした、エドワード・スノーデンの情報公開を支援したジャーナリストによる暴露本。スノーデンとのやり取りや、情報公開後の顛末などが詳細に語られる。ハッキリ言って、個人的なやり取りには興味がないが、暴露された情報の中身が問題だ。ネット上のやり取りや電話の会話など、米国の主要IT企業の協力もあって、NSAやCIAがすべてつかんでいるという。もちろん、それらの諜報は米国以外の国にも及ぶ。当然日本もだ。こうした国家権力対、元職員、シャーナリストの戦い。本書を読むと、ここまでやるのかと驚くと同時に、こうした暴露本が世界24ヵ国で同時刊行される平和さも感じる。もちろんスノーデンは、亡命して生きていて自由の身だそうだ。 テロリストや反体制派、犯罪者などでなければ、情報をとられたからといって何かされるわけではないだろうが、日本の政府関係機関や公的な団体などが米国企業にデータを預けたり、運用を任せたりするのはいかがなものかと疑念を持たざるを得ない。 これからの情報通信のあり方や国家のあり方などを考えておくべきと思えば読んでおくといいだろう。日本は平和なんだからアメリカさんに全部任せておけばいいじゃないかと思う人は読んでもつまらないことこの上なしだろう。 |
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タックスヘイヴン |
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橘 玲 幻冬舎 1700円 | ||
普段はビジネス書ばかり読んでいて、あまり小説のようなものは読まないのだが、幻冬舎創立20周年記念特別書き下ろし作品という広告が気になって読んでみた。Amazonで注文したので本の厚みが分からなかったのだが、届いてみたら400ページオーバーの厚さ。とたんに読む気がなくなって置いていたのだが、読み始めたら面白くて一気に読んだ。 タックスヘイヴンというタイトルではあるが、税金の問題ではなく裏社会や国際金融が中心のドラマだ。そこに恋愛ありサスペンスあり裏切りあり友情ありのストーリー。そして最後はどんでん返し。あまり書くとネタバレになるのでこれくらいにしておこう。フィクションだから、割り引いて考えないといけないだろうが、旬なネタも多くて、なるほどそういうことかと気付かされることも多かった。いざという時、国はあてにならない。自分で自分を守るしかないと感じる。たまにはこういう本もいい。 |
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勝つまでやめない!勝利の方程式 |
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安藤宏基 中央公論新社 1500円 | ||
日清食品の二代目社長による経営論。タイトルがいいから買ってみた。競合他社が出したヒット商品にはすべてカウンターヒットを狙った「セカンドベスト」商品を出す。二番煎じでも、一番茶を超えるものを出せば、元々体力はあるのだから、必ず勝てる。勝つまでやめない!という戦略。 インスタントラーメン、カップ麺で、世界に先駆けた会社とは思えないが、創業者と同じことができるはずがないという、この開き直りが二代目経営者には必要なのだろう。ナンバーワン企業だからこそできる囲い込み戦略であり、悪くない。 さらに、ユニクロなどのデザインで有名な佐藤可士和氏を招いて、グローバル・ブランド戦略を推進していると言う。本書でも後半に対談つき。「コカ・コーラ、マクドナルド、カップヌードル」が世界三大ブランドになると、佐藤可士和氏が豪語。ユニクロに行った時には、「コカ・コーラ、マクドナルド、ユニクロ」が三大ブランドになると言っていないことを祈る。 カラー刷りで、ビジュアルを多用した本書は、社内向け、採用向けに書かれた意識改革本だろう。「安く作って、安く売って儲ける」というグローバル戦略を浸透させ、「勝つまでやめない!」という戦う意識を徹底させる狙いのように感じる。 日清食品だからできるんでしょ、と言いたくなるかもしれないが、企業経営者、後継者は、経営戦略、マーケティング戦略の参考として読んでみるといいだろう。特に、すごい創業者から引き継いだ後継者にはおすすめ。創業者と同じ土俵で戦ってはならない。 |
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情熱の伝え方 |
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福岡元啓 双葉社 1300円 | ||
「情熱大陸」を担当する毎日放送のプロデューサーによる仕事論。「情熱大陸」がTBSの制作ではなく、MBSの制作だということにまず驚いたが、いつも見ている番組だけに裏話が面白い。本論は、MBSに追加募集で補欠入社し、失敗ばかりだったところから、看板番組のプロデューサーになるまでの体験的仕事論である。特殊な仕事で、かなり特殊な登場人物ばかりなので、一般企業の仕事に直結する話題は少ないが、仕事に対するこだわりは参考になる。 「情熱大陸」では、話題の人、時の人、一流の人に密着するだけに、刺激も受けるだろうし、著者の成長ぶりも楽しい。出てくるエピソードが実際に見た番組だったりするので、へぇ〜、ほう〜、そういうことだったのか、と思えて、これもまた面白い。ということで、「情熱大陸」をよく見ている人には楽しめる一冊。私も「情熱大陸」に取り上げられるくらい頑張りたいと思う。 |
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私の起業ものがたり |
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本郷孔洋 東峰書房 1400円 | ||
「ゆるキャラ」ならぬ「ゆる本」。かなりユルい語り口で、たった147ページしかない薄い本だが、起業、経営に関してのするどい指摘が満載。職員720名を抱え、全国に30もの支所を擁する国内最大規模の税理士法人の理事長が著者。顧問先6500社の経営を37年間に渡って見てこられたリアルな知恵や見識が感じられる一冊。 実際に何度か本郷先生にお会いしたことがあるのだが、真面目そうな感じで、会計士さんらしい印象だった。しかしその後、届くようになったメルマガが、おやじギャグ満載で「クスッ」と笑えて、そのギャップに驚いたものだ。そして本書。メルマガ同様、笑えるし、学びも多い。多くの企業を見てきたこともあるだろうし、実際にご自身が事務所を開設され、規模を拡大してこられた実践者だからこそ言える箴言が書かれている。 起業家志望、経営者、後継者は是非読むといいでしょう。読みやすい割に、きっと多くの気付きがあるはずです。 |
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申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 |
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カレン・フェラン 大和書房 1600円 | ||
経営コンサルタントによるコンサルティングの限界論。細かいデータを集めて、グラフの体裁を整え、大量の報告書を残して去っていく、従来型のコンサルタントが如何に役に立たず、流行の経営手法が業績改善につながるとは限らないという実例を、著者自らの経験を通して示してくれている。どんなに優秀なコンサルタントがいても、どんなに高いコンサルフィーを払って膨大なデータを分析したとしても、「必ず成功する」戦略など立てることはできない。過去のデータから未来が分かるわけでもなく、そもそも正解はないし、競合や環境が変われば、変更も必要となる。 したがって、戦略は実行し、仮説検証しながら随時修正していくべきである。そうなると経営コンサルタントが戦略レポートを書くだけではダメで、現場のモニタリングを行う仕組みが必要となる。それがないのに、戦略を打ち出しても、絵に描いた餅となる。 こういう本で、コンサルタントやコンサルティング会社を十把一絡げにされるのは迷惑だが、きちんと読んでもらえれば、NIコンサルティングが提唱する「コンサルティングの新しいカタチ」が正しく、また必要であることを理解してもらえるだろう。コンサルタントを雇う側も、何でもコンサルタント任せにせず、余計な時間フィーを払わないようにして、自分たちでできることはしようと主体的に考えることが必要だ。 ちょっとタイトルは、大袈裟というか、トリッキーな感じだが、コンサルタントやコンサル志望の人、コンサルタントに痛い目に遭わされた経営者は読んでみるといいだろう。「やっぱりコンサルタントはダメだ」と思われた方は、是非「コンサルティングの新しいカタチ」を実現したNIコンサルティングにご相談を。 |
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従業員をやる気にさせる7つのカギ |
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稲盛和夫 日本経済新聞出版社 1600円 | ||
稲盛さんの主宰する「盛和塾」での問答集。過去にも2冊、同様の本が出ていて、それも読んだ気がするが、今回の本が一番グイッと深い稲盛回答が入っているのではないか。叩き上げの創業者で、京セラ、第二電電、JALと実績を残してきた、稲盛さんだから言える厳しい箴言。稲盛さんと言えば、リストラしない、従業員のために経営する、といったイメージが強いが、「信賞必罰」「ついてこられない社員には辞めてもらう」「調子のいいことを言う人にかぎって簡単に辞めていく」など、シビアな言葉が並ぶ。 いつの時代も、どんな会社も、問題を突き詰めると人の問題に行き着く。この「人」に対してどういう姿勢、信念で臨むかが経営者の要諦だろう。その参考になるのが本書である。中期計画を立てないとか、アメーバ経営とか、あまりピンと来ない経営手法もあるが、経営者が稲盛イズムを学びに「盛和塾」に集まる気持ちはよく分かる。稲盛さんの言うことなら素直に聞けるということだろう。本書も経営者、後継者は必読。フィロソフィーを学ぼう。 |
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資本主義の終焉と歴史の危機 |
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水野和夫 集英社新書 740円 | ||
日本大学国際関係学部の教授による資本主義終末論。ゼロ金利が長く続くということは、資本を投下して配当(利潤)を得る先がないということであり、資本主義が資本主義として機能していないことを示していると指摘する。無理矢理景気を刺激して、インフレ期待を起こそうとして、それで本当に金利が上がってしまったら、日本の財政は破綻することになる。まさに袋小路。行き場がないのに、マネー供給を続ければバブルを生むことになり、バブルは必ず弾ける。そこで本書では、定常状態を維持せよと説く。定常状態とは、ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ。このモデルになれるのが日本だと言うのだ。 一人当たりの仕事量を減らしてワークシェアせよという処方箋は気に入らないが、資本主義が限界を迎えていることは間違いないと思う。現物の裏付けもなくマネー供給されて、企業実体と関係のないところで株価が上がったところで、いずれ弾けるバブルに過ぎないし、そんなことをしていてはそもそも地球環境がもたないと思う。 経済はゼロ成長でもいいけれども、人々は成長を目指す「仕事道」を今こそ世界に訴えるべきではないか。その成長は心の成長であり、人格の陶冶である。日々の仕事の中に自分の精神を投影し、それを練磨する。売上や利益が増えなくても、己の鍛練と成長があれば良しとする。これが「仕事道」だ。 アベノミクスで多少浮かれた気分になっている今、本書が多くの人に読まれることを願いたい。 |
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仕事に生かす孫子 |
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越智直正 致知出版社 1600円 | ||
靴下屋、タビオの会長による孫子兵法解説本。中卒からたたき上げで上場企業を作るまでになった秘訣が孫子にあったと言う。孫子の学び、活用はこうでなくてはならない。実戦に活かしてナンボ。字句の解釈や歴史的経緯を研究するのは「兵学者」。それを実践し、現場に応用するのが「兵法家」。正しく日本語訳をしようと思うのは学者の仕事であって、兵法家は2500年前の孫子の心を読み、それを現在に活かすのだ。 昭和30年に著者が中卒で奉公に出る時に、国語の先生から「中国古典を読め。分からなくても読め」と言われたと言う。素晴らしい先生だ。それをまた実践した著者もえらい。そして、論語や韓非子や老子や孟子などではなく、孫子に行きついたのはさすがだ。企業経営には断然孫子が役立つ。戦争という命のやり取りをする現場をどう生き抜くかという真剣勝負の智恵だからこそ、企業経営に生きる。私も孫子兵法家として、日々そのことを実感している。本書は、そうした孫子の兵法をビジネスの実戦に活かすためのエッセンスが詰まっている。 ただ、孫子の第一章と言える計篇は丁寧に触れているのだが、それ以降の篇はサラッと流したものになっている。もうちょっと解説しても良かったのではないかなと思う。そこが少し残念だったが、単なる古典の解説本ではないから、企業経営に関わる人には読みやすいだろうし、孫子を現代に活かす参考になるはずだ。孫子を読んでみよう。 |
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ハーバード戦略教室 |
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シンシア・モンゴメリー 文藝春秋 1500円 | ||
ハーバード・ビジネス・スクールの教授による戦略論。年間売上が10億円から2000億円の企業のオーナーもしくは経営者だけが受講できるEOPプログラムが元になっている内容。EOPとは、Entrepreneur(起業家)、Owner(オーナー)、President(経営者)の略だ。原題は「THE STRATEGIST」。プログラムの受講者に、ストラテジストとは何か、ストラテジストになるにはどうするべきか、問いかけていくのと同じように、本書でも読者にストラテジストたるにはどうあらねばならないかを問いかけてくる。ハーバードだけに、イケア、アップル、グッチなど有名企業のケーススタディーもある。 印象に残ったのは、「決定的な独自性を持て」という主張である。単なる差別化とは違う。決定的に違わなければならない。そして、「もし今日、あなたの会社が消えたら、明日、世界は変わっているだろうか」と問いかける。なかなかガラッと変わっていると答えられる企業はないだろう。 そして、その企業がなぜ存在し、どのようなニーズを満たそうとしているのかを明快な文章にまとめよと説く。たしかにこれは大切なことだ。戦略を立てたと言いながら、それを明快に説明できない経営者も少なくない。説明もできないようでは実行もできない。実行できない戦略など無意味だ。 さて、あなたの会社の戦略はどういうものだろうか。あなたはストラテジストだろうか。この問いにサッと答えられない人は本書を読んでみるといいだろう。 |
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奇跡の職場 |
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矢部輝夫 あさ出版 1400円 | ||
JR東日本テクノハートTESSEI、おもてなし創造部長による新幹線清掃チームのプライド作りストーリー。清掃業務という、きつい、汚い、危険な3K職場であっても従業員に働く喜びと誇りを持たせることができるという事例。清掃会社と言っても、JR東日本の100%子会社で、やりやすい面はあっただろうが、どのような中小企業であったとしても、自分たちの仕事に誇りを持ち、楽しく仕事に取り組むことはできるし、とても大切なことだと思う。本書は、そのためのヒントが満載。 リッツ・カールトンやディズニーでも似たような話があるが、このTESSEIの方が現実的で、多くの企業が参考にしやすいだろう。「ついて来れない人には辞めてもらう」などシビアな話もある。おまけに仕事は清掃だ。 やはり、仕事のネーミングや服装(制服)など、目に見える工夫は重要だと思う。ちなみに社名も、鉄道整備からTESSEIに変更になっている。鉄道整備という会社で、如何にも清掃員ですみたいな制服を着て、人から「掃除の人」なんて呼ばれたら、誇りも吹き飛ぶだろう。 著者は、国鉄からJR東日本指令部長を経て当社へ移り、専務取締役を退任して、嘱託でおもてなし創造部長になっている人。JR東日本には、11の清掃子会社があって、話題になるのはこのTESSEIだけだから、この人がいてこそ「奇跡の職場」ができたと言えるだろう。 組織変革、社員活性化のヒントになる一冊。 |
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ジェフ・ベゾス果てなき野望 |
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ブラッド・ストーン 日経BP社 1800円 | ||
Amazon創業者ジェフ・ベゾスの人物像、経営思想を有名ビジネス誌の記者が生い立ちまで遡って浮き彫りにした一冊。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどを取り上げた似たような本はたくさんあったが、ジェフ・ベゾスは初なのかもしれない。ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2013を受賞したそうだ。 500ページもあり、面白かったけど、読むのに疲れた。ジョブズもそうだったが、幼少期というか生い立ちが複雑で、こういう起業家はパラノイア的な偏りがあった方がいいのかなとも思う。参考にしようと思っても参考にできないが・・・。もちろん、ネットの世界、クラウドの世界がどう動いているのかを知るためにはとても参考になる本だ。 特に参考になったのは、「スティーブ・ジョブズの失敗を繰り返さない」という点。利益率を下げて、競合を排除し、顧客を集めるという戦略だ。巨大資本を投じながら、赤字覚悟で、この戦略をとられたら、なかなか太刀打ちできない。こういうITベンチャーは、成功すると高い利益率を維持し、豪華なオフィスや多大な福利厚生で無駄遣いしてくれて、自ずと消えて行ってくれるが、「倹約」を掲げ、ローコスト経営を徹底されると簡単には戦えない。そうしたビジネスモデルの研究をするには、良い題材になると思う。 そして何故か、起業家は宇宙を目指す。イーロン・マスクもホリエモンもリチャード・ブランソンも、そしてジェフ・ベゾスも。お金の使い道がないのかなと余計な心配をしてしまう。ただ、そうした果てなき野望を持っていてくれるから、弱みを見せてくれることもあるだろうと思ったりもする。 スティーブ・ジョブズ亡き後、ネットの世界では、このジェフ・ベゾスに注目だ。 |
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イーロン・マスクの野望 |
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竹内一正 朝日新聞出版 1400円 | ||
映画「アイアンマン」のモデルになったと言われる起業家の半生記。電気自動車のテスラモーターや宇宙ロケットのスペースX社の経営者が主人公である。それがまた若い。1971年生まれ。若い起業家も読んで刺激をもらえば良いと思うが、1971年生まれよりも年長者が読んで、この若造にここまでできるのに、自分はいったい何をしているのか!?という痛い刺激を受けると良いだろう。かく言う私もその一人。若い若いと思っていたが、もう全然若くはない。 本書はちょっと本人を美化し過ぎではないかと思うが、地球と人類を救うために、電気自動車と太陽光発電で環境を守り、宇宙ロケットで火星への移住を目指すと言う。それが本当なら、でか過ぎる。とても真似できない。だが、将来を見越した手の打ち方や経営観は参考になる。戦略実行のヒントも多い。企業経営が楽しくなる一冊。負けずに頑張ろう。 |
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会社を絶対につぶさない仕組み |
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高畑省一郎 ダイヤモンド社 1900円 | ||
中小公庫に勤務中に公認会計士資格をとったコンサルタントの書いた経営書。副題が「経営者が最低限身につけておくべき7つの原則」。会計士だけに財務面の指摘が多いが、経営戦略やビジネスモデル、経営者のリーダーシップにまで言及していて、バランスが取れた内容になっていると思う。読んで面白いという本ではないが、経営者や後継者は読んでみるといいだろう。特に、第5章、経営は先行管理に帰着するという指摘がいい。財務データは過去の結果を示すが、その財務を良くするためには、未来を先行して変えて行かなければならない。良著。 | |||
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