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トップページ > 代表長尾が語る > おすすめBOOKS 2008年版

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おすすめBOOKS

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予想どおりに不合理
予想どおりに不合理 ダン・アリエリー 早川書房 1800円
 行動経済学の第一人者が書いた人間の行動研究書。普通の経済学では人は合理的であると考えるが、行動経済学では合理的ではないどころか、「はるかに不合理だ」と説く。「人々は、身近な環境から余計な影響を受けやすく、関係のない感情や浅はかな考えなど様々な形の不合理性にも影響されやすい」と言う。これらを数多くの実証研究によって証明している。プラセボ(偽薬)効果など有名なものから、性的興奮の影響などまで、確かに言われてみればそうかもしれないと納得することが多い。営業やマーケティングの仕事をしている人は必読。もちろん経営者も読むべきだろう。人がなぜ不正をするのかといった実験もある。企業経営が人で成り立ち、ビジネスが人を相手にしているとすると、人の研究は欠くことのできない重要テーマである。その点で示唆に富む一冊。
テラ・ルネッサンス T
テラ・ルネッサンス T 田原 実+西原大太郎 インフィニティ 1200円
 心を育てる『感動コミック』の第3弾。特定非営利活動法人テラ・ルネッサンスの理事長、鬼丸昌也氏を取り上げて、内戦が続くウガンダ、コンゴ、ラオス、カンボジアでの少年兵の実態やその支援活動を紹介。内容はヘヴィーだが、伝えたいメッセージは「人は誰でも自分で未来を創っていく力を持っている」ということ。鬼丸理事長はまだ20代の若者。徒手空拳でもやればできる。そんな勇気を与えてくれる。少年兵の実態を知れば、経済恐慌で騒いでいる日本がいかに平和かが分かる。恐慌くらいでへこたれていてはいけない。発行元の(株)インフィニティは、漫画というメディアで感動を伝えている会社。漫画だとバカにせず大人も読んでみるといいだろう。中高大学生にも是非読んで欲しいから、お子さんにプレゼントしてみては?私も息子に読ませました。
2009年資本主義大崩壊!
2009年資本主義大崩壊! 船井幸雄 ダイヤモンド社 1500円
 資本主義が行き詰まり、2009年には1ドルが50円、日経平均は5000円を割り込む可能性があると指摘する船井幸雄最新刊(?)。たくさん出版するらしいので最新かどうかは微妙だが、09年に向けて警鐘を鳴らすために緊急出版したことは間違いない本。最近の船井氏には神憑り的な感じがあって好き嫌いはあるでしょうし、評価も分かれるでしょうが、09年を乗り切るために読んでおいて損はないと思う。予言通りにならなくても、備えあれば憂いなし。年末までに読まれることをおすすめします。資本主義が崩壊することで、恐慌になるのか、食糧危機になるのか、それで人々の生活がどうなるのか、私には分からないが、資本主義が機能していないことは間違いないと思う。企業業績に関係なく株価が乱高下する現状を見ているととても市場が正しく機能しているとは思えない。善か悪か、是か非かを議論するのは評論家に任せておいて、経営者、実務家、一個人としては、どう生き抜くかを考え、手を打たねばならない。資本主義でも共産主義でも何主義でもいい、生き残るためには知識、情報を持っておいた方が良い。私も急いで読みました。
見抜く力
見抜く力 平井伯昌 幻冬舎新書 720円
 水泳金メダリスト北島康介のコーチが書いたコーチング論。北島康介だけでなく、背泳ぎで銅メダルを獲った中村礼子や自由形の上田春佳らのコーチもしているそうで、本書で一番大切だなと思うのは、相手によってコーチングの中身を変えよ、ということ。人によって性格も違えば、置かれた状況も違う。もちろんその日の体調や気分も違うだろう。それに合わせてコーチングの言葉やタイミングや非言語のコミュニケーションを調整してやらないといけない。これはビジネスでも大いに言えることだろう。上司のスタイルで部下を指導するのではなく、個々の部下それぞれに合わせた指導ができなければならない。それと本書で感じたのは、研究心。やはり世界と戦うためにはデータや情報を集め、画像を解析し、仮説を立て検証していく地道な研究が必要なのだろう。「これだ!」という泳ぎが見えて、金メダルを獲っても喜んで気を抜くことはないと言う。「その成功は、勝った瞬間に捨て去らなければならない。立ち止まっていたら、その日が人生のピークになってしまう。今日のこの日が人生の最良の日にならないように、これからも頑張ろう」と自戒するのだそうだ。「人生最良の日にしたい」なんて言っているようでは甘いということか。上を目指す、一流を目指す人におすすめの一冊。
史上最強の人生戦略マニュアル
史上最強の人生戦略マニュアル フィリップ・マグロー きこ書房 1700円
 出版されてすぐに書店で見つけ読みたいなと思ったが、著者名よりも大きく訳者である「勝間和代」の文字が・・・。勝間和代ブームとも言えるくらい何冊も勝間本が並んでいる。そんなブームには乗りたくない。ベストセラー連発も嫉ましい。それに協力するのはイヤだ。しかし目次を読むと読みたくなる。こういう内容には興味がある。全米で370万部売れたと言う。読みたい。でも勝間和代の本は読みたくない。と粘ったが、書店に行くたびに平積みされていて目に入る。「まぁ訳しただけだからいいか」と納得させて購入。これは良い本です。何より「○○をするだけで成功間違いなし」といった安直な成功本ではないのがいい。人生の成功は自分が切り開け、他人のせいにするなと説く。人生を自律的にとらえる良い本です。アマゾンのレビューを見たら「勝間和代の翻訳が下手くそだ」という指摘が多かったが、意訳し過ぎて原著の文脈が伝わらないより直訳ぎみの方が英語感覚で読めていいと思った。これも「勝間マジック」かな。狙ってそうしていたらすごいな。人生や仕事がうまく行かない、自分は不運であるとお悩みの方は必読。但し鬱病など病的なまでに自分を責めるきらいのある人は止めておいた方が良いでしょう。かなりおすすめです。
クラウドソーシング
クラウドソーシング バリー・リバート+ジョン・スペクター他4000名 英治出版 1800円
 クラウドソーシングとは、「ネット上にあるクラウド(群集)の隠れた才能を開拓すること」と定義されているそうだ。Linuxで有名なオープンソースみたいなものだ。実際に、本書も4千名が著者だと言う。ネット上に書き込んだ人数ではないかと思うが、そんなことで著者と呼べるのかどうか疑問に思いつつも世の流れ、ネットの進化を感じざるを得ない。もはや19世紀20世紀に当り前とされた組織や企業の形が崩れ、新しい仕事の仕方、組織のあり方が模索されていることは間違いない。単なる労働や金儲けでは説明がつかない仕事が増えている。仕事というよりも社会との接点とか社会への価値創出と言うべきか。そこにネットがあるならネットを使えば良い。ネットなら世界中の人とコラボレーションできるし、一ヶ所に集まって同時に作業をする必要もない。こうした変化をどう活かすか、どう事業活動に取り込んでいくかが問われていくことになるだろう。
ドラッカー先生の授業
ドラッカー先生の授業 ウィリアム・A・コーン ランダムハウス講談社 1900円
 ドラッカーの大学での授業を受けた教え子が書いた「ドラッカー伝承本」。今は亡きドラッカー先生の人となりを知り、その教えをより深く理解しようと思う人は読んでみるといいだろう。内容としては決して新しいものではないが、改めてドラッカーの慧眼には恐れ入る。常識や定石と言われるものに囚われない思考力が大切なのだろう。通常のドラッカー本とは違った切り口でドラッカーを学べる良著。
サラリーマン再起動マニュアル
サラリーマン再起動マニュアル 大前研一 小学館 1500円
 大前研一大先生の最新刊、と言いたいところだが、週刊ポストの連載記事を再構成加筆したもの。それならそうとアマゾンの商品説明に一言書いておいてよ・・・と言いたくなる。ポストを毎号読んでいる人には新しい発見はないだろう。が、まとめて読んでみると参考になるし、思考のヒントが多い。大前先生が言う通りになるかどうかは分からないが、なぜそう考えるのか、そうなったらどういう影響があるのか、と考えていくと未来が見えてくるような気がしてくる。私はたまに出張のお供にポストを読んだりするので、3分の1くらいは読んだことがあるような気がしたが、いろいろとネタをもらった。30代40代のサラリーマン向けに書いたものらしいが、20代の若者も、50代60代の経営幹部にも良い刺激になる本だと思う。小学館と大前先生は二度おいしいビジネスである。
フリーエージェント社会の到来
フリーエージェント社会の到来 ダニエル・ピンク ダイヤモンド社 2200円
 2002年に邦訳が出た少し古い本だが、これからの企業組織や働き方について参考になるはずだ。フリーエージェントというとプロ野球のFAを思い浮かべるが、日本的に言えば個人事業主とかフリーランスのような感じ。組織に従属するのではなく、独立してマイビジネスのオーナーとして仕事をする人が米国で増えていると訴える。私は、日本では社会保障や個人の信用問題もあってそんなに広がらないと思うが、企業組織に属しながら「フリーエージェント」のように自律的かつ自発的に仕事をする人が増え、またそれを支援する企業が増えてくるだろうと思う。高齢者や女性の活用が必須の人口減少社会でもあるし、インターネットや携帯電話などどこにいても仕事ができる環境が整ってきている。こうした背景からよりフリーな働き方が増えてくるだろうし、そうするべきだ。大切なことは、労働者の保護を企業に求め過ぎないことである。本人がフリーエージェントとしてのプライドと自覚を持って仕事をすべきなのであって、企業が個人を保護するという発想からは組織にしがみつく「オーガニゼーションマン」しか出てこない。
コラボレーション組織の経営学
コラボレーション組織の経営学 日置弘一郎+二神恭一 中央経済社 2600円
 仕事の仕方、組織のあり方、企業経営の概念が変わってきている。私は98年から2000年の間に生じたICTによる「ユビキタス断層」以後、旧来のやり方と新しい現実との間に齟齬が生じ、それが組織のタコツボ化やうつ病の増加といった現象に現れていると考えているが、本書は、そうした仕事の変化と個人と組織との関係について多くの研究結果を基に整理してくれる。特に最終章の労働から「しごと」へという提言には共感できた。ただ、コラボレーション組織というタイトルの割りにコラボレーションについての考察は浅い感じがした。大学の先生方が書いた本なので、いちいち引用があって、読みづらいところもあるが、企業経営者や人事関係の人は是非読んでみると良いだろう。
人生生涯小僧のこころ
人生生涯小僧のこころ 塩沼亮潤 致知出版社 1600円
 大峯千日回峰行を満行した大行満大阿闍梨の半生記。大峯千日回峰行とは、あしかけ9年かけて一日に往復48キロ、高低差1300メートルの山道を16時間かけて歩く行を千日行う荒行である。途中で断念したらいかなる理由があろうとも自刃して果てなければならない文字通りの命懸け。「百をなさんとすれば九十を半ばとす」という胆力と「今日より明日、明日より明後日」という強烈な向上心で乗り切った実体験は、人間には途方も無い力があることを改めて教えてくれる。ちょっとやってうまく行かず弱音を吐いたり、思い通りに進まないとすぐに投げ出したりする自分が如何に弱い人間であるかを思い知らされる。著者は、どんなに苦しくても「俺は人に希望を与える仕事、人の同情を買うような行者では行者失格だ」と言い聞かせ、決して苦しそうなところを見せなかったと言う。自ら率先する姿で人を導く使命感に感動する。なんと大行満大阿闍梨は昭和43年生まれ。私より若い・・・。分かったつもり、できているつもりにならず、私も生涯小僧の心を持ち続けたいものだ。おすすめです。
これが内部統制だ!
これが内部統制だ! 八田進二+木村 剛 DMDJAPAN 1800円
 内部統制報告制度の策定に関わった青山学院大学の教授と金融検査マニュアルを作った元日銀マンが、通称J−Soxの誤解を解く対談本。米国のSox法を日本用に変えただけという印象のあるJ−Soxという呼び方から変えた方が良いかもしれない。制度策定の背景や趣旨についてよく理解できる。世の中には「にわか内部統制コンサルタント」が跋扈していると断じる。私も何人かのSOX法の対応支援コンサルと名乗る人と会ったが、そもそも日本でまだ事例もない、新しい取り組みなのに、何を根拠に指導するのか全く理解ができなかった。中には正直に「一緒に考えながらやりましょう」という人もいたが、怪しい人も少なくなかった。上場を目指す経営者や内部統制の担当者は是非読んでみると良いだろう。
人生は勉強より「世渡り力」だ!
人生は勉強より「世渡り力」だ! 岡野雅行 青春新書 750円
 テルモの「痛くない注射針」を作った職人さんが書いた処世術。但し普通の職人ではダメだと言う。人と会話したり仕事を売り込んだりせず、ただ自分の技術を磨くのが普通の職人とすると、この人は人と交わり、情報を集め、積極的にアピールすることができる「スーパー職人」である。その力を「世渡り力」と称する。いい物を作れば売れた時代は過ぎ、いい物であることをきちんと伝える伝達力、情報力が問われる時代になった以上、本書の著者を見習うべき中小企業経営者は多いと思う。大企業とのやり取りも痛快だ。すぐに下請け根性、お仕事頂戴モードにならず、言うべきことは言い、対等に交渉する意識を持つべきだし、それができるだけの技術やアイデアや品質を実現する努力をすべきだろう。経営者や後継者は読んでみるといいと思う。面白い一冊。
「私はうつ」と言いたがる人たち
「私はうつ」と言いたがる人たち 香山リカ PHP新書 700円
 「鬱の力」でリカ先生に共感したので読んでみたが、こちらの方が「うつモドキ」を見極めるのには参考になった。要するに、昔の鬱と最近の鬱では受け取り方や定義も変わってきて、今では理由は何であれ2週間抑うつ気分が続けば「鬱病」となるのだそうだ。そして最近は、鬱と診断されると喜ぶ人までいるらしい。大手を振って休めるからだそうだ。そんなのん気なことが許されるのは公務員とか一部の大企業だけではないかと思うが、休職させてもらえるからといって評価が上がるようなことになるわけもなく、腫れ物に触るような扱いをされてはまともな仕事もできないだろう。もっと定義を厳格にして、本当に鬱で困っている人はしっかりとサポートするということにすべきだと思うがいかがなものか。是非リカ先生に講演でもお願いしたいと思い連絡をとったが、忙しくて当分時間は取れないそうだ・・・。何とかお願いしたいものだ。経営者、人事担当者必読。
いざとなったら会社は売ろう!
いざとなったら会社は売ろう! 岡本行生 ダイヤモンド社 1429円
 M&Aアドバイザーが書いた会社売却のためのノウハウ本。ノウハウというよりM&Aの勧めかな。基本的に買う方ではなく売る方の内容です。これから企業経営は難しくなる。人口減少、マーケット縮小で、他社の物真似をやっていたのでは生き残れないし、過去からのやり方を踏襲するだけではジリ貧となる。そんな環境下で、後継者本人も継ぎたくないと言っている。経営者の息子とは言え経営者としての適性がない。といった場合に無理して後継者にすると、本人も、社員も、そして会社自体も不幸なことになる。こうした事例が増えるだろう。これからは中小企業もM&Aを当たり前のように取り入れるべきである。やりたくない仕事を無理してやらずに、やりたいと言う人がいれば会社を売ってしまえばいい。もちろんマーケット縮小時代だから、他社を買うこともあるだろう。それも経営の選択肢として必要になる。M&Aに対する考え方を変えてみるための、最初の一冊として本書はおすすめである。
日本経済を襲う二つの波
日本経済を襲う二つの波 リチャード・クー 徳間書店 1700円
 あのリチャード・クーがサブプライム問題とグローバリゼーションに対する日本の処方箋を提示した一冊。バブル崩壊後の20年近い低迷期を「バランスシート不況」という視点で解説するあたりはとても分かりやすく、さすがクー。ただ、読んでいてグリーンスパンやバーナンキ、クルーグマン、榊原英資、竹中平蔵など実名を挙げながら、「俺はわかっているけど、奴らはわかっちゃいない」という話が多いのが鼻につく。鼻にはつくが、グリーンスパンやバーナンキですら分かっていないことを教えてくれるわけだから、ありがたく読ませていただくしかない。私は経済学者ではないので、マクロの世界がどうなろうと知ったこっちゃないと言いたいのだが、その中で個別企業がどう判断し、どう動くべきかを考えなければならない。そのためにはやはりマクロな動き、国際的な流れを知っておく必要がある。それは個々の経営者も同じことだろう。そういう意味で、読んで損はない一冊。同じような話が何度も出てくるので、もうちょっと簡潔に書いてくれと言いたくなるだろうが、偉い人のお説は我慢して拝読するしかない。大部な割に読みやすい本ではあります。
日本人はどこまで減るか
日本人はどこまで減るか 古田隆彦 幻冬舎新書 760円
 2005年から人口減少時代へと突入した日本。21世紀末には4千万人程度まで減少するのではないかと言われているが、本書では、「人口容量」という概念に基づき、2086年に6665万人で底を打って2100年には7014万人まで回復するのではないか、と予測する。いずれによ、今現在すでに生まれている人にとってはこれから人口減少の時代に生きることは間違いない。何より私はこのまま行ったら、日本の人口を云々する前に地球環境や食料問題でアウトになるのではないかと危惧しているので、21世紀の終わり頃になって日本の人口が増えようが減ろうがあまり関心がない。ではなぜ「おすすめBOOK」なのか?どんなに楽観的に見ても、日本の人口はピークから半減することは間違いないということを知っておくべきだと思うからだ。合計特殊出生率が上がっても女性の数が減っていれば出生数は増えない、などと当たり前じゃないかと言いたくなるような指摘もあって、どこまで参考になるかは分からないが、新書で気軽に読めるし、人口が減ることは認識できるだろう。人口が減ったからと言って日本人一人ひとりが不幸になるわけではないし、かえって住みやすい国になる可能性もあるが、企業経営という面から見れば、厳しい環境となるだろう。救世主はロボットだろうと思うが、地球環境や資源問題を考えれば、地球人、地球市民として国境のない世界を作ることが大切だろう。でもそれはきっと無理なのでやはりロボットか。
鬱の力
鬱の力 五木寛之+香山リカ 幻冬舎新書 740円
 有名作家と有名タレント(?)精神科医の対談本。テレビのコメンテーターとして拝見することが多いので、タレントのような感じがしていたリカちゃんが、医師であったということに気付かされる。それはどうでもいいが、気分が鬱なのと「うつ病」は違うと訴える。「鬱は力であり、無気力な人は鬱にはならない」と説く。確かに、何に対してもやる気のない人間は、常に「鬱っぽい」が、何かをしようとしているわけでもないので、自分を責める必要もなく、ただ気だるく時が過ぎるだけで、それでは鬱とは言えまい。知り合いの精神科医に聞いたら、最近は「鬱モドキ」が増えていると言っていたが、まさにそのような指摘が本書でもされている。ちょっと悩みがあって、落ち込んだりして、食欲がなくなって、と病院に行くと「鬱の気がありますね」とか言われる。そこで「うつ病患者」の出来上がりである。それを否定して自殺でもされたら困るから、「鬱でして・・・」とか言われると「そうですか」としか答えようがない。鬱を力に変える強さを多くの人に持って欲しいものだ。「鬱かな?」と思った人は是非本書を読んでみよう。
暴走する資本主義
暴走する資本主義 ロバート・B・ライシュ 東洋経済新報社 2000円
 クリントン政権で労働長官を務め、「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」などの著作で知られる著者が、民主主義が弱まる中での資本主義がどれほど危険なものかについて警鐘を鳴らす。原題は“Supercapitalism”。著者は現在、バラク・オバマ氏の政策アドバイザーをしているそうだ。米国の大統領候補を支えている人間が資本主義が行き過ぎることに懸念を持っていることは嬉しいが、そんなことを言っていたらオバマは大統領になれないのではないか・・・そんな気がしてくる。我々は消費者としては安くモノを買いたい。そうすると安く売ろうとする企業は人件費を切り詰め、仕入値を下げようとする。そうすると低賃金労働者が増え、社会不安が増す。それを市民としての我々は受け入れたくない。では高くモノを買うかというと難しい。地球環境にも配慮したモノが買いたいと思うが、それにはそれ相応のコストがかかる。高くて売れないのではビジネスにならないから企業は環境に配慮していられない。といった矛盾が民主主義と資本主義の間に生じ、民主主義は暴走する資本主義の前に力を失いつつある。綺麗事では世の中を変えることはできない、と思い知らされる一冊。誰か資本主義の暴走を止めてくれ。
なぜビジネス書は間違うのか
なぜビジネス書は間違うのか フィル・ローゼンツワイグ 日経BP 1800円
 「企業の成功法則」や「これをやれば成功間違いなし」といった成功の秘訣を説くビジネス書の多くは妄想だと斬り捨てる。確かにそんな安直な本が最近多い。しかし著者は「エクセレントカンパニー」や「ビジョナリーカンパニー」などの大ベストセラーも妄想に過ぎないと言う。思い切った提言である。業績が良い時には、経営者に戦略性とリーダーシップがあり、社員は前向きで顧客志向だと評価される。しかし同じ会社でも業績が悪くなると、経営者が傲慢になりコアビジネスを軽視し、社員のモラルが低下していると言われる。確かに「勝てば官軍」式の後付けの理屈が多い。経営は数学でも物理学でもないから、これをやれば必ずうまくいくという方程式や公式はない。このことを知るには良い本である。何でも安易に正解やノウハウを求め過ぎる経営者やビジネスマンに是非読んでみて欲しい一冊。経営とは複雑かつ変化の激しいものであり、人の心を扱うものでもある。科学というよりはアートに近いだろう。どれが正解とは言えない。それぞれに味があり、人の心に響く。ピカソの絵とマチスの絵を科学的に比べることには意味がないのと同様に、経営も企業ごとにやり方があってしかるべきである。だから経営は面白い。
右手に「論語」左手に「韓非子」 
右手に「論語」左手に「韓非子」  守屋 洋 角川SSC新書 740円
 性善説の「論語」と性悪説の「韓非子」をそれぞれ40節抜き出して対比させた古典解説。儒教の影響を受けている日本人としてはどうしても「論語」の方が馴染みやすいが、確かにそれだけでは世の中が回らないこともある。「韓非子」の主張は、そんなにひねくれて考えなくてもいいじゃないかと言いたくなるようなことが多いが、現実的であり痛いところを突くものでもある。徳の高い性善説のリーダーを目指しつつも、現実的には性悪説も理解して、いざという時のために用心し、「論語」7:「韓非子」3くらいの割合で生きると良いのかもしれない。「論語」は有名で多くの人が知っているから、敢えて「韓非子」を勉強してみることも必要だろう。「韓非子」は多少難解で読み辛いので、その入門書として本書を読んでみることをおすすめする。
部下を、暗闇の中で働かせていませんか?
部下を、暗闇の中で働かせていませんか? 柴田陽子 インデックスコミュニケーションズ 1500円
 タイトルがいい。帯には「すべてのリーダーへ。組織のゴールを示せていますか?」とある。このメッセージもいい。タイトルと帯を読めばいい。中身は読まなくてもいい。(というと言い過ぎか・・・)企業のビジョンを示し、そこに至るための指針を明示して組織に浸透させる必要性と方法論を説いた一冊。JOMO、ロッテリア、日本交通タクシーが事例として紹介されている。パート、アルバイトなども含めて周知しようとする企業が想定されているからか、内容は一昔前のCI(コーポレート・アイデンティティ)からデザイン部分をカットしたようなものになっていて、ビジョンというものも「企業スローガン」とか「キャッチフレーズ」のような感じで具体性、戦略性に欠ける。しかし、企業のビジョンやゴール、目的や使命感を示し、それを組織に浸透させていくべきであるという提言は非常に重要。私はそれを「ビジョンマップ」や「可視化経営」という手法で実現しているが、先が見えない時代であり従業員の多様化も進み価値観の変化もある中で、ビジョンを示す必要性が高まっている。二世三世経営者は是非読んでみるといいだろう。
不機嫌な職場
不機嫌な職場 高橋克徳 ほか 講談社現代新書 720円
 売れている本である。それだけギスギスし冷ややかな職場が多いのだろう。副題は「なぜ社員同士で協力できないのか」。何となく書いてあることが想像できてしまって読まなくてもいいかなと思っていたのだが、出張のお供に新書なのでついつい買ってしまった。概ね内容は予想通りではあったが、読みやすく良書であると思う。言いたいことを言ってくれた感もある。確かに多くの企業、組織は病んでいる。その原因はお互いの無視無関心にある。他者と関係を持つ(変な意味ではない)ことに臆病になってしまっているようだ。これはストローク不足を生む。ストロークとは相手を認める働きかけのこと。本書では挨拶や感謝を伝えることを奨励しているが、まさにこれがストローク。多少わざとらしくても意識的に増やす努力をした方がいい。私はこれを得意の日報で実現し「日報ストローク」を提唱しているが、これはなかなか効果的だ。いずれにせよ多くの人が本書を読み、職場がうまくいかないメカニズムを知り、自分たちで職場は変えていけるということを知って欲しいと思う。売れているだけの価値がある。おすすめです。
マインドセット ものを考える力
マインドセット ものを考える力 ジョン・ネスビッツ ダイヤモンド社 1600円
 「メガトレンド」で知られる著者が、未来を読み解くための11個のノウハウというか視点を紹介した本。要するに見方によって見え方が変わるということ。11のマインドセット(パラダイムと言った方が私には馴染みがある)は、読めば「なるほど、そうだよね」と納得するようなことなのだが、通常は思い込みや常識に囚われてしまって、そのようなものの見方ができていないことに気付かされる。個人的には「パレードの先を行きすぎるな」「足し算は引き算の後で」という2つが参考になった。ついつい後続のパレードを忘れて先走ってしまうことがあるし、足し算に次ぐ足し算でどんどん積み上げたくなる衝動にかられることが多い。気をつけたいと思う。
営業ドキュメント「同行指導」の現場
営業ドキュメント「同行指導」の現場 山本藤光 プレジデント社 1429円
 製薬会社の営業力強化プロジェクトのドキュメント。700人の中から選ばれた24人の売れる営業マンが同行営業によってスキルを転移させ、意識改革を拡げていくという内容。それだけの規模・人数がいてはじめて可能になることであり、同行営業は一軒の訪問に二名を投入することで効率性を損なうため、どこの企業でも実現できる方法ではないが、営業の実態を知り、営業現場の改革を進めていくには参考になる一冊。営業マンは、KKD(経験・勘・度胸)やGNN(義理・人情・浪花節)を必要とする高度ナレッジ・ワーカーであり、そこで必要とされる暗黙知は、単にIT化や標準化だけでは共有できない。安易にITツールを導入して営業改革ができると思っている会社は是非読んでみると良いだろう。
幸之助論
幸之助論 ジョン・P・コッター ダイヤモンド社 1800円
 リーダーシップ論で有名なハーバードのコッター教授が書いた松下幸之助論“Matsushita Leadership”の復刻版。幸之助の私生活にも触れ、如何にして丁稚奉公から天下の松下を築き上げたのかを詳細に探る内容。学歴や資金や人脈や技術や知識がなくても、経営者自身が成長していくことで、企業も成長すると言う。どんなに苦しい苦難があっても、経営者の信念と熱意があれば乗り越えていけるという勇気をもらえる一冊。経営者必読の書。時代が大きく変化する中で、先行きを見失っている経営者には是非読んでいただきたい。松下電器が偉大な創業者の名前を捨ててパナソニックになる時代だからこそ、創業の原点である幸之助論が求められているのだろう。
日本でいちばん大切にしたい会社
日本でいちばん大切にしたい会社 坂本光司 あさ出版 1400円
 法政大学大学院教授である著者が6000社の企業を回った中で選び出した5つの企業を紹介。帯に「なぜこの会社の話を聞いて人は涙を流すのか?」と書いてある。大袈裟な本だ。そもそも一番と言いながら5社紹介するのはおかしいのではないのか。などと半信半疑で購入し、「涙なんか流さないだろ」と思って出張の新幹線の中で読んだら、涙が出てきて大変だった。良い仕事をしている企業があるものです。金儲け以上の価値を生んでいる経営者がいるものです。素敵な企業が紹介されています。経営者必読。必ずやヒントになる箇所があると思う。ただ著者が会社(経営者)と社員を分離して考えていることには異を唱えたい。会社は社員の集合体であり、社員はまた会社の一部である。これを私は「全個一如」と呼ぶが、会社と社員を統合し一体化する経営を目指して欲しいと思う。企業経営の可能性を拡げてくれる良書。思わず涙がこぼれても良い場所で読まれることをおすすめする。
ザ・リーダーシップ
ザ・リーダーシップ ケン・ブランチャード+マーク・ミラー ダイヤモンド社 1429円
 「1分間マネージャー」などの著作で知られるケン・ブランチャードの最新刊。リーダーシップのあり方を、新任女性マネージャーを主人公にストーリー形式で示している。リーダーシップの要諦はSERVE。部下に奉仕する姿勢を持てと説く。さらに5つのポイントをSERVEをそれぞれ頭文字として列挙している。簡単に読める本ではあるが、富を生む工場が社員個々人の頭の中にある21世紀に求められるリーダーシップのあり方を教えてくれる。人は機械の代わりとしての「手・足」ではなく、頭脳を持ち、心で動く存在(頭脳工場)である。リーダーの役割は、その頭脳工場をつないだり、支えたりすることで価値を生んでいくというものになるのだろう。マネージャー、経営者必読の書。
経営の未来
経営の未来 ゲイリー・ハメル 日本経済新聞社 2200円
 「コア・コンピタンス経営」の著者が書いたマネジメント改革論。20世紀の前半に生まれた現行のマネジメント論はすでに過去のものであり、新しいマネジメントが求められていると説く。社員の手足を強制的に動かせば生産性が上がった時代には通用していたマネジメントも、社員の自発的、自律的な思考や行動が求められる時代には通用しない。富の源泉が工場や店舗から、社員の頭脳へとシフトしたのだ。社員の頭の中が「工場」になったのだとすると、その「頭脳工場」の生産性を上げるためには、可視化し、改善することが求められる。私はそれを「可視化経営」と呼ぶが、いずれにせよ旧来のマネジメント手法を盲目的に信じるのではなく、時代の変化に合わせたマネジメント革新が求められていることは間違いない。おすすめです。
すべての「見える化」で会社は変わる
すべての「見える化」で会社は変わる 長尾一洋 実務教育出版 1800円
 これから人口減少が加速する我が国において、企業経営には「勝つこと」が求められる。市場が拡大し、「引き分け」でも成長できた時代はすでに過去のものとなり、他社に勝たなければ成長はない。勝つためには、他社がやっていないことに取り組む必要がある。これによって勝つ可能性も上がるが負ける可能性も出てくる。勝たなければならない企業経営に求められるのが、「可視化経営」である。本書は、戦略の可視化、マネジメントの可視化、現場の可視化を実現し、企業経営のコクピットを整備することで経営の質とスピードを高め、人口減少のマーケット縮小・人材不足を乗り切っていく手法を紹介。著者(実は私)の20年間に渡る経営コンサルティングの集大成と位置づける一冊。発売後10日で増刷も決定し売れ行き好調のようだ。21世紀の価値創出工場は人間の頭の中になる。この頭脳工場の生産性を上げるためにも頭の中の「見える化」が必要だ。見えないことには改善できない。経営の見える化と社員の思考の見える化を実現する「可視化経営」の実践指南書。経営者、マネージャー必読の書。当然おすすめです。
私はこうして受付からCEOになった
私はこうして受付からCEOになった カーリー・フィオリーナ ダイヤモンド社 1600円
 ヒューレット・パッカードの会長兼CEOを解任された著者の自伝というか解任劇の釈明本。どこまでが本当なのか、立場の違いで見解も大きく違いそうだが、事の経緯を細かく記してあり、リアリティがある。経営者の仕事はどんなものか、大企業の舵を取ることがいかに難しいかを知るには参考になるだろう。タイトルを見ただけだと元HPのカーリー・フィオリーナが書いた本だとはイメージできなかった。どこかのベンチャー起業家の成り上り自叙伝か何かだろうと思って無視していたのだが、よく見てみるとカーリー・フィオリーナと書かれている。「え?あのフィオリーナ?」「HPのCEOになったエリート女性が元は受付嬢だったの?」とようやくタイトルと中身がつながった。ダイヤモンド社にしては珍しくタイトルの付け方が悪いと思う。帯でも良いから著者の写真があった方が良かった。原題は“Tough Choices”こっちの方がピンと来る。彼女がキャリアを積み上げる過程で下してきた「苦渋の決断」は、多くの経営者、ビジネスマンの参考になるだろう。大部ではあるが、読みやすく、面白い。おすすめです。
論語力
論語力 于丹 講談社 952円
 北京師範大学教授の著者がテレビ番組で「論語心得」なる講義を行ったところ中国全土で『論語熱(ブーム)』が巻き起こり、「于丹(ユー・ダン)現象」と呼ばれているそうだ。本書はその講義録を本にまとめた「于丹〈論語〉心得」の日本語翻訳版。中国だけでなく台湾や韓国でもベストセラーになっているのだそうだ。単に古典を現代語訳し、講釈をつけたものではなく、現代風に解釈し直したところが特に若者に受けたらしい。日本で言うと渋澤栄一の「論語と算盤」の現代版のようなものだろう。2500年前から伝わる中国古典の英知を現代に活かすことは中国だろうと日本だろうと良いことだと思う。中国で原点回帰がブームとなるのは、それだけ社会環境変化が激しいからだろう。激動の時代には誰しも原点を求める。読みやすい論語講義本。
人を伸ばす力
人を伸ばす力 エドワード・L・デシ+リチャード・フラスト 新曜社 2400円
 内発的動機付けで有名なデシ先生の本。私の師匠筋から教えてもらって読んだ一冊。自発的、自律的に取り組んでいる作業や仕事に対し、金銭などの外的報酬が与えられると、せっかくあったはずの内発的な動機付けが低下し、外的報酬をもらうために作業をこなそうとするようになるという指摘。一般には、金銭や評価など外的な報酬があるからこそモチベーションが上がると考えられているが、実はそうではないのだ。誉めたり叱ったりするのも当然外的な報酬となる。誉めるのは良さそうなものだが、誉められるために頑張るようになると内発的な動機付けが低下する。他者に統制されることになるのだ。デシ先生は「本人の自律性を支援せよ」と説くが、これがなかなか難しい。もちろん放任でもいけない。じゃーどうすればいいの?と聞きたくなる。結局は「自分の人生は自分が作る」という認識を持たせ、自己と環境の関係性を正しく理解する以外に道はないように思う。私は内発的動機によって動くことを「自己発働」と呼んでいるが、それを実践するためには、自分の人生は自分のものであるという自覚が必須である。いずれにせよ、部下や社員を思うように動かそうとすることは難しいし、それでは本人の持つ可能性を最大限に引き出すことはできないと知る必要がある。これからの仕事は社員個々の頭の中で行われる以上、自律的に仕事に取り組む内発的動機付けは重要テーマになるだろう。経営者、管理者必読の書。
自分のために働け!
自分のために働け! 高橋裕二 講談社 1500円
 ホンダの元人材開発センター所長が書いた「ホンダ式朗働力経営」の本。同じ働くのであれば、働かされる「牢働」ではなく、自発的に取り組む「朗働」をすべきであると説く。世の中には、イヤイヤ働いていたり、義務感で最低限のことだけで済ませようとする働き方をする人が多い。残念なことだ。手や足を動かしていれば仕事になった20世紀までであればそれでも通用したかもしれないが、頭を使う仕事では自ら進んで取り組まないと成果が出せない。同じ時間働いても成果が出ないから、給与も上がらず褒められることもなく余計つまらなくなる。イヤイヤ働く「牢働」は本人にとっても会社にとってもプラスにならないことを知るべきだ。その点で本書で紹介されているホンダの事例は参考になるだろう。創業者の残したワイガヤなどの「ホンダウェイ」が自発的な仕事をしやすくさせているのだろう。ホンダにも不平不満分子はいるのだろうが、他社よりは少ないような気がする。本書で言う「朗働」を私は「自己発働」と呼んでいるが、どうせやるなら人から言われる前に進んでやった方が気持ちも良いし、楽しい。どこの会社でも可能なことである。
ウサギはなぜ嘘を許せないのか?
ウサギはなぜ嘘を許せないのか? マリアン・M・ジェニングス アスコム 980円
 米国のコンプライアンス・コンサルタントが書いたビジネス小説(?)。小説というよりも絵本に近い。絵の少ない絵本。「後ろ指さされずに成功する新・ビジネス読本」だそうです。「それは正直じゃない、正しいことじゃない」と詰め寄る大きなウサギと主人公との成長記録。要領よく悪いことも誤魔化しながら立ち回る友人たちを尻目に正しいことをしていくのだが、これが失敗の連続。しかしそれが最後には成功につながるという話。企業の不祥事が頻発する中でコンプライアンスの徹底が求められているが、その教科書としてよい本だろう。正直なのはいいけど、もう少し要領よくやれよと言いたくなるほど、少々回りくどいが、悪銭身につかず、急がば回れといったことを教えるのにおすすめ。コンプライアンスに限らず何事においても上辺を整えるだけでは本物にはなれない。そのことを教えてくれる良著。
法人営業 驚異の次世代モデル
法人営業 驚異の次世代モデル 西村宗晃 東洋経済新報社 1600円
 DELLの元取締役が書いた電話営業部隊(営業コールセンター)を活用した営業力強化論。対面営業とネット営業、営業コールセンターの3チャンネルを融合することをセールスミックスモデルと呼び、これが次世代モデルだそうだ。話の中心は著者がメイン業務としている営業コールセンター(要するに電話営業をメインとする部隊)の活用についてで、驚異の次世代モデルと呼ぶのには少し無理があるのではないかと思うが、ネットと電話営業を主力の営業部隊と分けて整備することは重要なことだろう。人口減で営業人員の確保も難しくなっているので、分業化と標準化は避けて通れない。その際に単なるアポ取り部隊としてコールセンターを位置づけるのではなく、ネットとの連携で営業してしまうというのは必要なことだろう。顧客データベースを構築して、非訪問で営業を進めてしまうのは究極の営業生産性向上策である。
武田家滅亡
武田家滅亡 伊東 潤 角川書店 1900円
 昨年の大河ドラマ「風林火山」を見て、甲斐武田家がその後どうなったのか知りたくなった人におすすめの一冊。信玄亡き後、隆盛を誇った武田家がいかに滅亡への道を辿っていくかを詳細に描く大作。周到かつ緻密な研究取材と深い人間心理の洞察力があってこそ書けたのだろうと感心する。作者はなんと元IBMの人でITの専門家。緻密なデータ分析、資料調査はIT活用の賜物か。ただ、登場人物にマイナーな人が多いので登場人物の相関図か何かがあればもっと良かった。それは編集者の問題だろうが・・・。人間の持つ欲得や嫉妬、羨望、愛憎など組織を動かすメカニズムを知るにも良い参考書となるだろう。
 

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